公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意
元子(原日出子)は真夜中に帰ってきた。寝ずに待っていた大介(中村雅紀)に怒られ、トシ江(宮本信子)からも小言を言われた元子だが、自分を心配して待ってくれていた大介の成長がうれしい。そして再び、締め切り間近の夜、編集室に電車の衝突事故が起きたとの一報が入る。大勢の死傷者が出た模様で、福井(三木弘子)は元子に、犠牲者が運ばれた寺へ取材に行くように命じる。元子は「出来ません、そんなこと」と断るが…。
昨日の続きから
玄関
元子「ただいま」
大介「何してたんだよ、こんな時間まで!」
ここまでが昨日の回だけど、すぐ元子のセリフも始まってるし、昨日の回の再放送ではなく、新撮だと思う。
元子「大介…」
大介「事故でもあったんじゃないかと心配したんだぞ、僕もおばあちゃんも」
元子「ごめん…。例によって、また書き直しだったのよ」
大介「だったら電話ぐらいしたっていいじゃないか! いくら締め切り前だからって、そのぐらいの時間はあったんでしょう!」
トシ江「まあ、とにかくお上がりよ。こんな所でどなり合ってたんじゃね、ご近所だって、びっくりするしさ」
大介「おばあちゃんだって帰ってきたら、はり倒してやるって言ってたじゃないか」
トシ江「そりゃ、気持ちはね、そうなんだけどね」
大介をなだめるトシ江。あんまり大介が怒ってるから、気がそがれた感じだね。
トシ江「何してんの。ほら、さっさとお上がりよ」
ダイニング
元子「本当にごめんなさい。けど、遅くなったからって車で送ってくれたのよ」
トシ江「そんなこと当たり前でしょう」
大介「とにかく僕が明日、抗議に行ってくる」
元子「抗議!?」
トシ江「抗議って、大介、お前一体…」
大介「だって、別にお母さんだって手ぇ抜いてるわけじゃないんだから、そいつは、よっぽど意地悪か頭が悪いんだ」
元子「何言ってんのよ」
大介「だってそうじゃないか。僕や道子の作文じゃあるまいし、お母さんは『週刊毎朝』の特選だって取ってるんだぜ。それをいつも書き直させるなんて絶対、注文の出し方が悪いに決まってるんだ」
トシ江「ああ、そうだとも。そりゃ、大介の言うことが本当だよ」
元子「ちょっと待ってよ」
トシ江「もういいから、そこお座りよ」
大介「仕事をもらうからって、何でもかんでも向こうの言いなりになることはないんだからね」
トシ江「ああ、そうだとも」
元子「本当に申し訳ないことしました。けどね、子供のけんかに親が顔出したって笑い者になるのに親のことで子供が文句言いに行くっていうのはね…」
大介「僕は子供じゃないと言っただろ!」
元子「だったら分かってちょうだい。お願い」
大介「何をだよ」
元子「今度の仕事のことはお母さんもただの物好きで始めたんじゃないってこと最初にちゃんと話したわよね」
大介「だから道子だっていろんなこと我慢してるさ。けどね、こんなに遅くなるってことは…」
元子「だから謝ったじゃないの。そりゃね、連絡もせずに遅くなったことは重々申し訳ないと思ってます。けどね、遅くなったなりに納得のいく仕事できたんだし、それだけのお金ももらえるのよ。お金がとれるってことはプロってことなのよ」
大介「でも…」
元子「いいえ。そりゃ、お父さんが大けがして、そのために生活が変わって、あんたたちにも随分と不自由させてると思う。けど、確かに大介は、もう子供じゃないわ。誰が悪いわけじゃないし、少々の不満や不自由は乗り切っていける年だもんね。だから、お母さんだって心の中でごめんって言いながら、一生懸命頑張ってんのよ。それで頑張ったら頑張ったなりのことはあったのよ。現に今日の頑張りで、お母さん、ずっと『女性時代』のリライト仕事もらえることになったの。本当にありがとう。お母さん、謝るより先にお礼が言いたかったのに」
大介「僕たち、体のこと心配してたのに…」
心配のあまり、大きな声が出たってことか…。元子も心配のあまり、千鶴子さんに怒ったりしてたけど、あれは何とも思わなかった。息子が母親にというシチュエーションが嫌なんだよね。
病室
のぼる「うわぁ、かわいいわ」
元子「でもね、あの子があんな真剣な顔して怒ったの、初めて見たわ」
正道「大介も成長したんだなあ」
元子「ええ。怒られていながら私、なんだかうれしかった。それでね、あの子、また今度みたいなことがあった時は必ず電話連絡さえすればって。最終的に私の仕事を認めてくれたみたい」
正道「それにしてもだな」
のぼる「いいえ。大介君ね、男の子として、お父さんの代わりに一生懸命、お母さんを守ろうと必死なのよ。すてきなことじゃないですか」
元子「はい」お茶を出す。
のぼる「あっ、どうもありがとう。今はみんな大変かもしれないけど、長い目で見れば子供にだってきっとマイナスにはならないと思うのよ」
元子「うん。だから、あなたもうちのことは本当に心配しないで」
正道「何だか2人がかりで引導渡されてるみたいだな」
のぼる「だってね、ジョーの時だってね、あなたには焦ることしかできないのって毎日、病院で大げんか」
元子「えっ?」
正道「病院で?」
のぼる「こっちだって必死ですもの。一日でも早くよくなってもらうためにはしかたないでしょう」
元子「いいこと聞いた。そうよね。何事もそれぐらいの迫力がないと駄目ね」
正道「分かった分かった。観念しますよ」
笑い声
そして再び、魔の夜がやってきましたが…。
女性時代編集部
福井「いいじゃないの、なかなか」
元子「はあ」
福井「一にメリハリ、二にメリハリ、三四がなくて五が甘さと涙。いい線出てきたわよ」
元子「ありがとうございます」
電話が鳴る。
元子「はい、女性時代です。はい、いらっしゃいます。ちょっとお待ちくださいませ」
福井「誰?」
元子「お向かいのロンのマスターです」
福井「しょうがないわねえ」
元子「すいません。いないって言った方がよかったですか?」
福井「いいから。ねえ、まだ仕事がたくさん残ってるのよ。マージャンの相手だったら誰か…。えっ! 事故!? うん、どこで? うん…うん。それで、けが人、たくさん出てるもよう? あっ、そう…。うん、どうもありがとう」受話器を置く。
元子「あの、どこかで事故があったんですか?」
福井「うん。今、テレビの臨時ニュースでね、やってたらしいんだけど鶴見で電車が衝突して大勢けが人が出てるらしいの」
元子「まあ」
福井「まだ詳しいことは分かってないらしいんだけど…。そうだ! 大原さん、放送局にいたのよね」
元子「ええ…」
福井「すぐ電話して」
元子「電話って?」
福井「決まってるでしょ、報道部よ」
元子「でも、私は…」
福井「あっ、直(ちょく)報道部でなくてもいい。誰か知ってる人いるでしょ。そこからでも分かること聞いてほしいの。ねっ、いいから早く」
元子「あっ…はい」
この夜、9時50分、横浜市鶴見区付近で貨物列車が脱線。それに上り横須賀線が衝突。更にさしかかった下り横須賀線が突っ込んでの大惨事になったのですが、この日は三井三池の三川鉱でガス爆発があり、死者458人、負傷者700人余りという戦後最大の事故が発生した魔の土曜日でした。
このニュースを読んでるの「本日も晴天なり」の青木一雄さんに似てる気がする。
1963(昭和38)年11月9日(土)…魔の土曜日を土曜日に放送したんだ。今回は資料映像ではなく、列車事故の写真。
東洋テレビ
のぼる「そうなのよ。私もね、呼び出されて、今、飛んできたんだけれどね、もう、三池へ飛んだ組もあって、とにかくこっちは今、てんやわんやなの。そう、カメラは出払っちゃってるしね、私もこれからマイク担いでね、總持寺(そうじじ)へ飛ぶところなのよ。うん…」
報道部員「六根さん! 車、表玄関ですから!」
のぼる「はい、分かりました! すぐ行きます!というわけなの」
報道部員…細谷昌一さん。81年から82年にドラマ数本出演。
女性時代編集部
元子「こんな時、ごめんなさいね。それじゃあ、気を付けて」受話器を置く。
福井「どういうこと?」
元子「NHKも東洋テレビも、もうニュース班は空っぽでやっぱりテレビでやった以外のことはよく分からないんです」
福井「うん」
元子「ただ、大変な事故で亡くなられた方は鶴見の總持寺へ運ばれることになったようです」
福井「じゃあ、あなたすぐ總持寺に飛んでみて」
元子「えっ?」
福井「私が行ければいいんだけど、私、取材の約束があるの」
元子「でも…」
福井「別にね、事件記者的な目で見ることはないの。後追い取材でじっくりと…。あなたにとってはせっかくのチャンスだし、ルポライターを目指すならいい経験になると思うわ。すぐに現場に飛んでみて」
元子「チャンスだなんて」
福井「ごめん、不謹慎でした。でも、現場の雰囲気だけでもつかんできて」
元子「できません、そんなこと」
福井「大原さん…」
元子「主人が事故に遭っていますので、現場の雰囲気なら行かなくても分かります。駆けつけた家族にとって、やじ馬ほど不愉快なものはないと思います」
福井「やじ馬になるか記者の目で見るかは、それはあなた次第じゃないの」
元子「でも私、行きたくありません。誰かほかの人(しと)をあたってください」
福井「だって、ここには私とあんたしかいないじゃないの!」
元子「でも、何のために!」
福井「そんなこと、現場で考えなさいよ!」
元子「編集長!」
福井「あなた、昔、報道の腕章をつけて非常線を突破したことがあるって売り込みの時に私にそう言ったわね。だからこそ頼んでいるんじゃありませんか。行って見てきなさいよ、ご主人のためにも。憎い事故というものの正体をその目ではっきりと。さあ、車の手配をしてくるから、その間にお宅に電話してちょうだい。さあ、早く」
腕章エピソード。のぼるや黒川先輩の話だけど。
大原家
電話が鳴る。
大介「はい、大原です。あっ、お母さん? うん、知ってる。臨時ニュースでやってたから。うん、うん…ああ、道子は寝てる」
結局、元子は福井編集長の強引さに押し出され、夜の京浜国道を鶴見に向けてひた走った結果、總持寺で東洋テレビ取材班ののぼると出会うことができました。
のぼる「どうしたのよ!」
元子「私、もう駄目」
のぼる「何言ってんのよ。向こうの納骨堂にも新しく運ばれ…」
元子「夢中で肉親を捜してる人たちの中に入って、あれこれ見るなんてこと、私もうできない」
のぼる「ガンコ」
元子「六根と私では立場が違うもん。報道班でもない私がこれ以上、立ち入るってことは亡くなられた方にも、ご遺族にもこれ以上の冒とく、ないと思うのよ。ありがとう。私、もうここでいいから。六根、最後まで頑張ってちょうだい。お願いします」
のぼる「分かった。じゃ、ここで別れるけど気を付けて帰ってね」
遺体を収容した總持寺の境内も惨状を極めておりました。
門のところにもたれかかる元子。近くに境内から出てきた女性が膝から崩れ落ちる。
元子「お嬢さん…」
元子にしがみついて泣きだす女性。
元子「どなたが!?」
信子「兄です…兄が…兄が…」
元子「で、お兄さんは!」
信子「もう嫌…もうたくさん!」
元子「お嬢さん!」
信子「お義姉(ねえ)さんには赤ちゃんが生まれるんです。それなのに兄さん、私のところに洋服を届けに来たばっかりに…」
元子「でも、あの電車に乗ったとは限らないでしょ」
信子「いいえ! 乗ってたんです! だって川崎の駅で別れたばかりなんですもの。間違いなんかありません。ドアのところから私に手を振ってくれて時間からいっても、あのすぐあとなんです。ですから、兄はそのまま…」
元子「お嬢さん…」
信子…檀まゆみさん。クレジット”檀”となってたけど、wikiには壇まゆみとなっていた。「獅子の時代」「なっちゃんの写真館」などに出演。しかし、芸能活動は1989年まで。
アナウンサー「失礼ですけれども、お亡くなりになられたのはお身内の方ですか」
元子「いいえ」
アナウンサー「お悲しみのところ申し訳ありませんが、何かひと言」
元子「まだ何も分かってないんです。だから何もお答えできません」
アナウンサー「何かひと言!」
元子「あっち行ってください! お願いします!」
アナウンサー「失礼しました。おい…」
アナウンサー…須永慶さん。
元子「さあ、しっかりしてちょうだい。さあ…」
元子が待ち受ける編集長のところへ戻ったのは既に朝でした。
女性時代編集部
福井「一休みしたら、お兄さんを亡くしたその娘さんにもう一度会ってくれない? そして、話を聞いてちょうだい」
元子「編集長」
福井「見たんでしょう、その目で。記事にするのよ。あなたの名前で全てを書くのよ」
元子「嫌です。私、できません」
福井「どうして? 何か勘違いをしているようね」
元子「何がでしょうか」
福井「人間の幸せが一瞬にして崩れる事故の恐ろしさ、それを書けって私は言っているのよ。際物的な読み物なんか期待していないわ。私はね、そうした事故がなぜ、どうして起こるのか、あなたのその目ではっきりと確かめてもらいたいの。裏返して言えば、幸せとは何か。今もご主人はベッドから動けないんでしょう? だとしたらこの記事は絶対にあなたがあなたの名前で書くべきです。どうなの、大原さん」
元子「行きます。でも書かせていただくかどうか分かりません」
福井「いいわよ。行ってちょうだい」
元子「分かりました」
つづく
来週も
このつづきを
どうぞ……
元子の仕事に対する姿勢を批判するツイートも見かけるけど、元子が好きな仕事を選んでやって何が悪い。妻側が仕事で帰りが遅くなると怒られて、夫が飲んで帰っても怒られないのも不公平だよね~。
それにしてもここ数日、福井役の三木弘子さんが意外と長身なことに気付く。金八の頃は男の先生に囲まれることが多かったから小さく見えていたのかな。
近藤富枝さんは主婦の友社でルポライターをしていたそう。「主婦の友」は、ふだんは料理や女性からの手記などを載せていた婦人雑誌なんだから、別に事故の取材に絶対行かなければならないってことはなかったんだろうけどね。それがどうつながっていくか。