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ドラマの感想など

【連続テレビ小説】本日も晴天なり(123)

公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意 

宗俊(津川雅彦)は元子(原日出子)に見守られながら心電図の検査を受ける。検査結果は正道(鹿賀丈史)の予想通りだった。心配するトシ江(宮本信子)に元子は、宗俊の心臓は大騒ぎするほど悪くはないが、ひびの入った茶碗のように大事に扱わないといけないものだと、説明する。オリンピックが終わり雑誌の仕事に一息ついた元子は、鉄道事故で亡くなった遺族の信子(壇まゆみ)の家を訪ねるが、家はすでに売り払われていて…。

診察室

小雪「ちょっとだけ冷たいですからね」

宗俊「こ…これにちょ…ちょっと電気が通るんですかい」

小雪「電気といったって、ほんのほんのごく弱いものですよ」

宗俊「おい、元子!」

元子「お父さんったら」

宗俊「俺ぁ、やっぱり看護婦さん帰(けえ)るわ」

小雪「いい子だから、これが終わってからね」診察台に押さえつける。

宗俊「いやぁ…俺ぁ、この、で…電気ってやつが苦手なんだよ、おい、元子」

元子「駄目よ。その大雪さんにかかったらね、正道さんだってえいって担ぎ上げられちゃうんだから」

小雪「よろしいですね」

 

心電図検査の機械を動かしているのは、看護指導の小菅美代子さんかな? 津川雅彦さんは医者役も多いので、こういう役も面白い。しかし、元子、大雪さんと本人の前で言うのね。陰口じゃなく公認でそう言われてるのかな?

 

さて、この診断結果はどうだったでしょうか。

 

桂木家茶の間

元子「大丈夫。正道さんが言ったとおりだったから。だから、取り立てて今は大騒ぎするほどのことじゃないそうだけど、暑い盛りとね、寒中は特に気ぃ付けて、例えば大酒飲んで騒ぐとか我慢比べのほら、煮えたぎるような熱いお風呂に入るとか、そういうむちゃは絶対に禁物なんですって」

トシ江「ああ、昔からお父さん、からすの行水のくせに飛び上がるほど熱い湯じゃないと入った気がしないってねえ」

元子「それからね、こう考えたらいいって、先生、おっしゃってたわ」

トシ江「え?」

元子「お父さんの心臓はね、ひびの入った茶わんなんですって」

トシ江「ひびの入った茶わん…」

元子「うん。だから大事に使えば水漏りもせず、普通のものと変わらず毎日使える。けど、乱暴に扱ったり、ぶつけたりするとポンッて、そのひびが割れてしまうんだって」

トシ江「分かった。せいぜいお父さんには大事に使ってもらいましょう」

元子「私たちもなるべく協力するけど、よろしくお願いね」

トシ江「ああ」

 

元子「それじゃ、私、これで失礼するから」

トシ江「ご苦労だったね」

 

宗俊「おい、トシ江」

トシ江「はい」

宗俊「おう、何だ元子まだいたのか」

元子「うん、これから行くところよ。時間に遅れるとね、うちの編集長、そりゃ怖いんだから」

宗俊「じゃあ、早く出かけんだな。女の長っ尻(ながっちり)ってのはな始末が悪いほど…ねえんだから」

元子「はいはい」

 

宗俊「おい、川端さんのな、型ぁ出しといてくれねえか」

トシ江「あっ、はいはい」

宗俊「おい、元子」

元子「はい?」

宗俊「俺ぁ、こう見えても病人なんだからな、おめえ、大事にしねえとバチが当たるぞ。しっかり行ってくれ、この野郎」

元子「はい、行ってきます」

 

どうも陽気な病人さんがあったもんですが。

 

幸い、心臓病に悪い夏も何事もなく過ぎて秋です。東海道新幹線がスタート、世界一の夢の超特急ひかり号が東京大阪間を4時間で突っ走りました。

www2.nhk.or.jp

ドラマではカラーの映像だったから、昭和39年じゃなく昭和57年の東海道新幹線の映像かもしれない。

 

桂木家茶の間

元子「でね、オリンピックに来た外人さんたちも乗るんだろうけど、どうせなら普通の人(しと)の同乗ルポも書いてみたらって編集長が言いだしたのよ」

トシ江「何よ、その普通の人っていうのは」

幸之助「いやだからさ、つまりこの俺たちってことよ」

宗俊「おう、お前、初物食わずに何が江戸っ子だい」

トシ江「何言ってんですよ、あんたって人は、もう」

友男「だ…だけどよ、そんなことならな、ちょうどいい人たちがいるからって、もっちゃんがもうその仕事とってきちまったんだよ」

幸之助「となればさ、人形町の三羽がらすが乗り出さなくてどうするってんだよ」

トシ江「駄目ですってば、もう駄目駄目。とにかく私は反対です」

元子「どうしてよ。せっかく秀美堂のおじさんたちだって、こんなに喜んでくれてるのに」

トシ江「だって、体でも壊したらどうすんのよ」

 

宗俊「バカ野郎! んなことは心配いらねえや。今度のオリンピックの時だってよ、え、おめえ、夜なべで俺ぁ指図して5年分の浴衣と手拭い染め上げてもブルッとしなかったこの体だ。な。医者にお前、大事にしろとは言われたよ。だけど、俺は病気じゃねえんだからよ」

トシ江「けど新幹線っていうのは光(しかり)のように速いから、ひかり号っていうんでしょ」

宗俊「下手なシャレを抜かしやがって」

トシ江「そんな目の回るような速い乗り物に乗って、また気分でも悪くなったらどうするのよ」

宗俊「知らねえよ。そんなこたぁ、てめえで考えろ」

トシ江「もう、あんた」

 

元子「分かったわ。じゃあ私、もう一度、編集長に話してみる」

宗俊「何だ何だ、おい」

幸之助「何だ?」

一斉に突っ込まれる元子。それより、タバコをやめた方がいいと思う。

 

新幹線車内

幸之助「けど、すげえな。ついこないだまでは大阪行くなんてのは、おめえ、一日仕事だったのによ、その日のうちに行って帰ってくるなんざ、夢のようだぜ」

宗俊「だからおめえ、夢の超特急っていうんじゃねえか」

幸之助「ああ、ハハ…」

 

手前の席の人はシートをひっくり返して乗ってるのに、幸之助、友男はシートをひっくり返さず、後ろに座っている宗俊、元子の方へ身を乗り出して話しかけている。車窓は当然合成。

 

友男「時速200キロっていえばな、宗俊」

宗俊「おう」

友男「翼つけたら空飛んじまうんじゃねえか」

幸之助「けど、俺、嫌だぜ。その日のうちには帰らねえよ」

宗俊「大丈夫(でえじょうぶ)だよ。そこは元子がついてらぁ。まあ、向こうへ行きゃあな、ちゃんと宿がとってあらぁ」

幸之助「お~。ハハハハ…」

 

車内販売「コーヒーにサンドイッチ、ジュースはいかがですか?」

 

宗俊「おい、誰だ? え、速すぎて景色が目に入(へえ)らねえんじゃねえかって…ちゃんと見えてるじゃねえか」

友男「俺じゃねえよ」

幸之助「俺じゃねえよ。俺じゃねえ、俺じゃねえ」

宗俊「バカ野郎、おめえじゃねえか…」

幸之助「違うわ、本当にもう」

 

友男「おねえちゃん、おねえちゃん」

車内販売「はい」

友男「ビールはあるかい?」

車内販売「はい、ございます」

友男「とりあえず2本もらおうかな」

車内販売「はい」

幸之助「あ~、コップ4つにおつまみもね」

 

宗俊「おい、コップは3つでいいぞ」

幸之助「何言ってんだよ。もっちゃんだっていける口だろ」

元子「ええ、私、頂きます」

宗俊「俺ぁ遠慮しとくよ」

幸之助「河内山」

宗俊「ガタガタ揺られながらな、お前、胃袋ん中、泡だらけにするよりもよ、お前、向こうへ行きゃ京都の舞妓のだらりの帯がな、『旦はん』とか言われてだ。それで飲むんだからさ、ハハハハ…」

 

そうです。あのだだっ子宗俊が十分、体に気を付けていてくれたのです。

 

車内販売…中村香澄さん。同姓同名の人は出てくるけど、このドラマより後に生まれてるからなあ。

 

東北新幹線は1982年6月23日開業だから、このドラマが放送された時点(1982年の2月あたり)ではまだなんだね。新幹線に乗ったことない人も意外と多かったかも。

 

女性時代編集部

福井「ご苦労さま。なかなか面白く出来てるわ」

元子「ありがとうございます」

福井「今度はいよいよオリンピックですよ」

元子「はい」

オリンピック・マーチ

オリンピック・マーチ

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カラーの東京オリンピック開会式。権利の問題かNHKアーカイブスになし。

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開会式の映像はNHKのテレビ放送用で、映画のカラー映像ともまた違うんだよね(多分)。日本選手団の入場行進と聖火点灯の様子。鳩が飛び交う競技場。資料映像がカラーになったのが何だか感動。

 

新体操の映像は白黒。バックに流れるのはアレンジバージョンのオリンピック・マーチ。スーパーで流れてそうなゆったりしたテンポになってる。

 

編集部で原稿を書く元子。

 

白黒映像の男子体操、重量挙げ。

 

原稿を書き続ける元子。

 

白黒映像の男子マラソン。1964年10月21日(水)の平日昼間なんだね~。

テレビ「…先頭のアベベ。そして…3分10秒とついております。果たして後半になりましてどのような追い上げを見せますか…」

 

大原家茶の間

正道「けどな」

元子「えっ?」

正道「何もかもオリンピックが目標だったけども、こうやって改めてテレビで見ると東京も実に変わったなあ」

元子「ええ。ここ2~3か月の傾向なんだけど、主婦の実話手記にね、農村から来るものに夫が出稼ぎに来て蒸発したり、事故でけがをしたり亡くなったりっていうのが結構あるのね」

正道「うん」

元子「オリンピック自体は本当にすばらしいと思うけど、私…」

正道「まあ、どんなものでも華やかな舞台があれば、その裏側もあるんだよ。その裏方に徹したと思えば、自分も自負を持てるんだろうけれども…途中で無念の思いをした者もいるよ」

元子「無我夢中だったけど、あの事故からもう1年になるのねえ」

正道「うん」

 

元子の心の声「あの人たちもそろそろ1年になるんだわ」

 

元子はふと、あの鶴見事故の遺族のことを思い出していました。

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事故の被害者の妻、節子が住んでいた家の表札が”持田”に変わっていた。

 

元子「すいません、こちら山村さんのお宅では?」

主婦「いえ、この春、売りに出ていたもんですから知り合いの世話でこのうち買ったんですよ」

元子「そうだったんですか…。で、今、どちらにお住まいかご存じありません?」

主婦「ええ…お母さんたちがいらしたアパートで一緒に暮らしてるんじゃないかしら」

元子「どうもありがとうございました」

主婦「いいえ」

 

主婦…木村翠さん。「マー姉ちゃん」の江田夫人。へえ~。「おしん」にも出てる。

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信子たちの住むアパート

テーブルの上に置かれた遺影と鈴など。元子が手を合わせる。

信子「でもよくここがお分かりになりましたのね」

元子「ええ、どうしてらっしゃるかなと思ったら、無性にお会いしたくなってしまって」

信子の母「向こうのうちへ訪ねてくだすったんだって」

信子「そうですか」

元子「別の方が住んでいらしたんで驚きましたわ」

信子「ええ…」

ハイテンションだった節子は下を向いて座っている。

 

元子「失礼ですけど、補償金が出たんじゃなかったんですか」

信子の母「ええ、まあ」

元子「あそこは空気もよかったし」

信子「でも、ローンだったんです」

信子の母「あの子がいたから少々無理して建てたんですけどね、返すとなるとなかなかだし、頂いたお金は孫の学校の費用にも取っといてやりたかったもんですから」

元子「はあ…」

信子の母「いろいろ考えたんですけどね、小さい子もいますし一緒に暮らした方がいいと思って…。節子さん、今、近くのマーケット行って働いてんですよ」

元子「そうなんですか…」

信子の母「世の中、オリンピック景気で物は高くなるばっかりだし、男手がなくなると本当に暮らしにくい世の中ですねえ」

 

信子「で、その後、ご主人のおけがの方は?」

元子「ええ、おかげさまで…」

 

赤ちゃんの泣き声がして、節子が赤ちゃんのところへ。節子はひと言もしゃべらない。

 

信子の母…たうみあきこさん。2006年くらいまでいろんなドラマに出演している。

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おしん」の215話にも出演。知らないおばさん役かなあ?

 

華やかな陰にオリンピックと無縁の家族がここに一組おりました。

 

オリンピックの陰の部分を描いているのがよい。節子さん、実家に頼れなかったのかなあ。義母と小姑と暮らすってなんだか…。

 

白黒の閉会式の映像

アナウンサー「今、入場してまいりました。そして、日本の福井選手がついに各国選手に胴上げされました。そして、肩車、肩車をされまして、今、第1コーナーから、これからバックストレートに入るところ、日本の旗がその日章旗がついに各国選手たちに取り巻かれました。肩車によりまして、歩くことができない日本の福井選手。オリンピックは平和であります。見事であります」

www.47news.jp

日本の旗手の福井誠選手は水泳の選手だったみたいです。

 

元子の原稿を書く姿に閉会式の聖火の映像がかぶさる。

 

大原家ダイニング

元子「ようやく終わりました。もうヘトヘト。でも、皆さんにも長い間、ご不自由おかけして申し訳ありませんでした」

大介「さすがのお母さんも目が引っ込んでるね」

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以前、元子が忙しい正道にかけた言葉。”目が引っ込む”という表現、何だか面白くて笑ってしまう。

 

元子「大丈夫よ。しばらくお休み頂いたから。お父さんの付き添いをしながら、お母さんもゆっくり休養をとるつもり」

正道「うん」

道子「痛いんだろうなあ、もう一度、足を切るなんて」

正道「大丈夫だよ。今度はな、金属棒を取るだけなんだから」

大介「頑張ってね」

正道「うん、頑張るぞ。それでな、みんなに相談なんだけども、今度、退院してきたら、お父さん、仕事を変えることになるかも分からんな」

大介「何の仕事に?」

正道「うん、人間の体に合った家具の研究や設計をする事務所で働くことになるだろう」

 

道子「分かった。え~っと…人間工学でしょう」

元子「まあ、道子ったらもう覚えちゃったのね」

道子「だって、お父さんず~っとお勉強していたもの。このお椅子がそうなんでしょ」

元子「そう。お父さんに言わせるとね、お母さんは実験台なんですって。でもね、この机にこのお椅子で書いてると、本当に背中が全然疲れないし、足もね、むくまないのよ」

正道「いやぁ、まだまだ改良の余地ありだよ」

元子「えっ。また取り替えるんですか? これ」

大介「つきあいついでだから、しかたないよ、お母さん」

 

正道「まあ、そういうことだな、ハハ…。お父さんもな、いろいろつまづいたり、回り道してきたけれども足悪くして、自分に一番合った仕事を見つけたような気がするんだよ。頑張るぞ」

元子「みんなも頑張りましょうよ。力合わせて。ねっ」

大介「だけど、僕はいつも応援団のような気がするな」

正道「ん? ハハハ…。いや、大介もな、すぐその番が来るよ」

元子「そうよ。お母さんたちはね、いわば、その時のためのグラウンド整備をやってるようなもんなんだから」

大介「ほら、そうやってすぐ恩着せるんだから」

笑い声

 

あれから1年と1か月。折れた大たい骨を支えている金属棒を取り外す今日は、その再手術の日です。

 

病院

ストレッチャーで運ばれる正道を見送る元子と順平。

第二手術室のプレートに灯りがつく。

 

手術が成功して正道がこのドアから出てきた時、大原家の生活は、また新しいスタートを切るのだ。元子はそう考えておりました。

 

つづく

 

来週も

 このつづきを

  どうぞ……

 

最近また資料映像が多くて楽しい。「おしん」は1年をかけて長く人生を描いたけど、ほかの再放送の作品だと、戦争を挟んで、せいぜい昭和30年代前半くらいで終わる作品が多いから、どんどん現代に近づいてるのが面白い。年取ってるのも違和感ないしね。

 

昭和19年から始まって目まぐるしい進歩の様子がよく分かるし、やっぱり面白いなあと思う。「いだてん」見たくなった~!

peachredrum.hateblo.jp

東京オリンピックのとこだけ見ようかな。全話ブルーレイに焼きました。