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【連続テレビ小説】本日も晴天なり(121)

公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意 

正道(鹿賀丈史)の足も順調に回復し、近所に買い物に出かけられるようになる。元子(原日出子)は一家の主婦が雑誌の仕事をして、主人の男が買い物を…と近所の目を気にするが、助け合うのが平等の精神と正道はひょうひょうとしている。順平(斎藤建夫)は宗俊(津川雅彦)の指導に食らいついて藍染修行にいそしみ、福代(谷川みゆき)もトシ江(宮本信子)から台所仕事を仕込まれている。そんな二人に、いよいよ結婚話が出て…。

正道の足も春に向かって確実に回復しつつありました。

 

松葉杖を右手で持って、左手で紙袋を抱えている正道が家の前の路地を歩いている。

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正道さんはケガした方の足側に松葉杖持ってる。

 

宏江「まあ、大原さん、お買い物でしたの?」

正道「あっ…いやぁ、今日も特別天気がよくて気持ちがいいですなあ」

宏江「どうぞお持ちしますから」

正道「いや…大丈夫です」

宏江「嫌ですわ。奥さんがお留守の時は、お買い物ぐらいお手伝いしますって申し上げてたのに」

正道「いや、もう散歩のついでですよ。それに表出ないと履き物の感覚も忘れてしまいますからね」

宏江「まあ、それにしても、お気の毒に…」

正道「いえ、店の品物を見て歩くのも結構楽しいもんですよ。ハハ…それじゃ、失礼します」

宏江「あっ、はいはい」門を開けて、正道が中へ入ったら閉めた。「それじゃ、ごめんくださいませ」

正道「どうもごめんください」

ため息をつきながら家へ帰る宏江。

 

大原家ダイニング

元子「お帰りなさい」

正道「はい、ただいま」

元子「あら、たばことお散歩じゃなかったんですか」

正道「ん…物はついでだよ。今日はね、鶏が安かったから、今夜は鶏の唐揚げだな」

元子「あなた…」

正道「それ書いたら持っていくんだろ? としたら、僕にできる料理をと思ってな」

 

元子「でも、こんなもの抱えて、またご近所の人(しと)にでも会ったらどうするんですか。松葉づえついて野菜なんか持ってたら誰だって、ひどいって思うでしょう」

正道「いいから早く書いてしまいなさい。早く持ってけば、それだけ早く帰れるんだから」

元子「ええ…」

正道「できる人間ができることをやっていく。家庭が成り立つ上で当たり前のことだぞ」

元子「それはそうですけど」

正道「別に迷惑かけてるわけじゃなし、言いたい人には言わしときゃいいじゃないか。気にすることないよ。その家には、その家の事情があって、それに合わせて、みんな生活してるんだから。割り切ってしまえばいいんだよ、スパッと」

元子「そうは言っても」

正道「そういうところが元子らしくないんだよ。男が外へ仕事行って、女が家の仕事をするのが当たり前なら、女が外へ行ってる時に男が家の仕事して何の不思議があるんだ」

元子「だからって」

正道「大丈夫だよ。僕だってずっと主婦業をやるつもりはないんだから。都合の悪い時は、お互い持ちつ持たれつ。なっ、この精神でいこうよ」

元子「すいません」

 

「助け合うこと、これ平等の精神」と正道は言いますが、なかなかスパッとそれが割り切れないのが、やはり昔の教育を受けてきた元子たちの年代なのでしょうか。

 

大正生まれの正道さんがめちゃくちゃ先進的。まあ、でもこういう場合、女がやらせていると見る人もいるからね~。元子も世間体を気にするのかも。

 

一方、こちらでも苦しい壁を乗り越えようと頑張っている順平がおりました。

 

吉宗作業場

宗俊「この野郎! え! 何度言ったら分かるんだ! あおりってのはな、ただ伸子(しんし)を開(しら)けりゃ、それでいいってもんじゃねえんだ。こうやって空気に触れさせることで藍が酸化して色が出てくるんじゃねえか。同じようにあおってやらなきゃ染めにムラが出るんだよ、ムラが」順平の頭をペチペチたたく。

彦造「んなこと言ったって、大将」

宗俊「てやんでぇ! おめえ、俺ぁこいつが新米を承知で5年先のことを教えてやってるんじゃねえか。彦さん、おめえもな、気が付いたことがあったら、どんどん教えてやれ。え、おめえだって10年も20年もこれから達者でいられる保証はねえんだぞ」

彦造「それでも、5年先の仕事の手順についてこられるお人なんだから、やっぱ若旦那は血ですよ。筋でさあ」

宗俊「てやんでぇ、おめえ、これがおめえ、な、手拭いだから間に合ってるんだ。これがお前、浴衣であってみろよ。袖も胸んところもムラムラで、とんだぼかしの仕上がりだ」

彦造「へ…へい」

宗俊「こら! 腰だ! 腰がお前、なってねえんだ。だからお前、あおりがお前、よれてくるんじゃねえか。足、足、足! ピンと伸ばせ、ピンと! ほら、手が…」

 

台所

 

⚟宗俊「手がお留守になってるんじゃい、この野郎!」

 

トシ江「大丈夫よ。憎くてどなってるわけじゃないんだから」

福代「はい」

トシ江「口の悪いのは生まれつきの上にね、本当のところ、順平が食いついてきてくれるのが、うれしくてたまんないのよ。ところがこれも悪い癖でね、うれしくなるとすぐに張り切っちまうもんだから」

福代「はい」

トシ江「フフ…。あっ、その大根っ葉、どうするつもり?」

福代「はい、捨てるのもったいないけん、油で炒めようかいなと」

トシ江「あ~、それもいいんだけどね、順平はぬかみそに漬けたのを細かく刻んて、ごはんの上にかけて食べるのが好きだから」

福代「あっ、そうだったんですか」

 

トシ江「そいじゃ、それ、きれいに洗って、ちょっと干してね、で、あと、ぬかみそに漬け込んじゃってちょうだい」

福代「はい」

トシ江「あっ、ぬかみそね、漬ける時はね、ぬかのこう、底に手ぇ入れて、よ~く、こう、かき回すことよ」

福代「はい」

トシ江「そいじゃ、ここが済んだら型の見本を見せますからね、柄の名前、覚えてしまいましょうか」

福代「はい、よろしくお願いします」

トシ江「はいはい。そいじゃ、これ、ちょいとやってよ」

福代「はい」

 

トシ江の方もどうやら本気で福代をこの家の嫁にしようと、あれこれ考え込んでいるようです。

 

巳代子「こんにちは」

トシ江「あらあら、巳代子じゃないの。ねえ、あんた」

巳代子「うん?」

トシ江「あんた、吉原つなぎって知ってる?」

巳代子「吉原つなぎ? え~っと…ああ、これでしょ? (手でわっかを作る)知ってますよ、それぐらい」

トシ江「ほらね、紺屋の娘が『え~っと』って言わなきゃ思い出せないんだから、ねえ、福代さん、何事もその気がないと何にも覚えられないのよ」

福代「はい」

巳代子「何よ、人を試験台にして」

トシ江「ところで今日は何なの?」

巳代子「うん、付け下げ着ていかなきゃならないところがあるのよ。としたら帯はやっぱり袋帯でしょ。名古屋なら何てことはないんだけど、あれはお太鼓が二重だから一人じゃ、こう、なかなか格好がつかないのよ。お願いします」

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トシ江「本当にもう、紺屋の娘が…。洋服ばっかり着てるからよ」

巳代子「昔っから紺屋の白ばかまと申します」

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トシ江「いい年して、もう…。ねえ、福代さん、こういうのは見習っちゃいけませんよ」

福代「はい! あっ、どうもすいません…」

巳代子「あっ、いいのよ、本当のことなんだから」

トシ江「そうだ、練習しなくちゃ締められないんだから、ねえ、福代さんに帯1本、作っといた方がいいわね」

福代「私でしたら、ほんな…」

巳代子「駄目。何事も言った時にパッて作ってもらわないと近頃ね、都合の悪いものに限って都合よく物忘れ激しいんだから」

トシ江「あぁあぁ、何とでもおっしゃいな。それじゃ、福代さん、お茶のね、支度でもしましょうよ」

福代「はい」

 

と、まずは順調な毎日が過ぎていき…。

 

正道のけがも明日の検査いかんでは全快のお墨付きが出るところまでやってきました。

 

大原家前には梅の花が咲いている。

ダイニングでアイロンがけをしてるのは…

道子「お父さん、上手」

正道「うん、お父さん、何だってできるんだよ」

道子「すごい」←手放しでほめるのも大事なのでしょう。

正道「はい、霧吹いて」

道子「はい」

↑形はこんな感じで、道子が口で吹きつけていました。↑こちらは陶芸の絵付けにつかう霧吹きらしいです。

 

正道「はい、よしよし」

道子「ねえ、明日、お医者さんがいいって言ったら、会社へお出かけするの?」

正道「うん、そうだよ」

道子「よかったわね」

正道「道子がな、こうやってちゃんとお手伝いしてくれたからだよ」

道子「うん」

正道「うん」

 

元子「ただいま」

道子「お帰りなさい」

正道「お~、お帰り」

元子「あら、アイロンかけだったら今夜私がするって言ったのに」

正道「ああ、ついでだ、ついで」

元子「私のブラウスも大介のシャツも…」

正道「なあ、元子、このテーブルでアイロンかけするのは、ちょっと高すぎるんじゃないか」

元子「でも近頃、アイロンかけずに済む品物が出回ってきましたから」

正道「まあ、それはそれとして、一度、このテーブルと椅子、考え直さないかんな」

元子「大丈夫ですよ、そんなこと」

正道「そのうち、ちゃんとしてやるからな、まあ楽しみに待ってなさい、ハハハ」

元子「ええ。大介は?」

道子「お勉強」

 

元子「大介! 大介! ケーキ買ってきたから下りてらっしゃい」

 

⚟大介「は~い」

 

元子「はい」

道子「モンパリへ寄ったの?」

元子「ううん、編集者の前のロンっていうお店の」

道子「何だ。あそこよりモンパリの方がおいしいのに」

元子「え~?」

正道「こら、ぜいたく言うんじゃない。お母さんが一生懸命書き物して、それで買ってきてくれたんだぞ」

道子「は~い」

 

誕生日でも何でもない日でもしょっちゅうケーキを食べてそうな昭和30年代の子供って確かにぜいたくかも。それよりずっと後の生まれでも子供の頃は誕生日以外はなかなか。

 

大介「ねえ、明日、病院でOKが出てもお母さんは仕事を続けるの?」

正道「うん、そうだよ」

大介「ふ~ん」

元子「どうして?」

大介「別に」

 

正道「だからな、大介には今までどおり、表の掃除とお風呂の掃除はやってもらう。半年間、みんなでやってこられたんだから続けようじゃないか。な。ただ、都合の悪い時とか試験の時は、その時、余裕のある者が代わると。これが以後、大原家の原則だ。どうしたんだ? 返事は」

大介「は~い」

正道「うん」

 

不満げな表情の大介。また正道ではなく、元子に不満をぶつけるんだろ。大介が元子の父親であるかのような保護者面して怒るのが嫌なんだよ。

 

元子「じゃ、お母さんね、お茶いれますからね。さあ皆さん、コーヒー? それとも紅茶?」

正道「ん、コーヒーだな」

元子「大介は?」

大介「紅茶」

道子「紅茶」

元子「紅茶、はい」

 

吉宗前

小さな子供を追いかける母親。「待ちなさい」

クレジットなしのキャストって時々いるよね。八星プロ劇団ひまわりの人かな。

 

松葉づえなしの正道と元子が歩いてくる。正道の右側に元子が立ってるから、痛めたのはやはり右足なんだよね。

正道「ごめんください」

元子「元子です」

 

⚟福代「はい!」

 

桂木家茶の間

宗俊「おいおい…足をちゃんとお前、崩してくんなよ。な。もう、いいからいいから…」

トシ江「正道さん、さあ、楽に楽にして…」

宗俊「堅苦しい格好はお前、いけねえやな」

トシ江「大丈夫ですか?」

 

足を崩した正道。「ええ、おかげさまで。これで再手術まで無理しなければ大丈夫だって言われました」

トシ江「せっかく治ったのに、また切るなんてねえ」

宗俊「まあ、そりゃ、しかたねえやな。お前、足ん中にはな、今でも金の棒が入(へえ)ってんだからよ、まあ、それを取り出すまではな、完全に治ったとは言えねえんだ。まあ、しかし、よかった。な、おめでとう」

トシ江「おめでとう」

正道「どうもありがとうございます。本当にご心配をおかけしました」

トシ江「本当にみんな頑張ったもんね」

 

元子「どうもありがとう、お父さん、お母さん」

宗俊「え~、よかった、よかった。で、あの~、お勤めの方は?」

正道「ええ、まあ、しばらくは現場は無理ですので来週から事務所の方へ出ることにしました」

宗俊「あ~、そうかい。おい、でも無理はいけねえよ」

正道「はい」

 

トシ江「正道さんも来てくれたんで、おめでたいことなんだけど、ちょいと相談したいことがあるんだけどね」

元子「ええ」

トシ江「ほら、あんた」

宗俊「あ? おめえが言いだしたんだから、おめえが話せばいいだろうよ」

トシ江「また、そんなこと…」

 

元子「順平のこと?」

トシ江「そうなのよ。洋三さんもね、そろそろきちっとした方がいいんじゃないかって言ってくれてるし、まあ彦さんも順平の本気には太鼓判を押すから自分の目の黒いうちに祝言挙げてくれないかって、こう言うしね」

正道「それで、お義父(とう)さん、もちろん賛成なんでしょうね」

宗俊「ああ、まあな。まあ、トシ江があの子をこのみつきばかり見ていて、それでまあ気に入ったんだからよ、俺が何つったってな、母さんたちゃ、お前、もう夫婦にするつもりなんだから」

トシ江「ハハ…でね、徳島の方にもね、連絡してみたんですよ。そしたら、あちらの親方も日(し)にちが決まれば、すぐにこっちへ来るから、あとは是非(ぜし)よろしくお願いしますって、こういうご挨拶だったの」

 

元子「だったら言うことないじゃないの。私たちもね、何だかんだと忙しくて、あんまり親身になってやれなかったけど、このままじゃ、あんまりだなって思ってたのよ」

宗俊「何を言ってやんでぇ、え。おめえ、こちとらにな、めでてえことがありゃ、おめえの方も大変なんだからな、だからおめえ、切り出すのは病院からいいって言ってもらえる今日まで待ってたんじゃねえか」

正道「あ~、それはどうも申し訳ありませんでした。それじゃ、早速そういうことにしてやってください」

宗俊「おう。それじゃあな、まあ、そういう段取りでやるからよ、まあ、承知してくんな」

正道「はい」

 

元子「けど、本当によかったわね、お父さん」

宗俊「ん? 何がだい」

元子「順平がお父さんの後継いでくれるって言ってくれてさ」

宗俊「何言ってやんでぇ! 紺屋のお前、せがれが紺屋を継ぐの、何の不思議があるもんか」

 

戸が開く音

順平「義兄(にい)さん、病院どうだった?」

宗俊「おいおい、おいおい! 誰が干し場離れていいっつったい!」

順平「いや、ちょうど区切りがよかったからどうだったかなと思って」

宗俊「どうだったかなって、顔を見りゃおめえ、病院の首尾がよかったか悪かったかぐらい分かるだろ。それほど鈍い男がお前、吉宗の9代目なんか、とても無理だ無理だ」

元子「お父さん」

 

福代「どうもすいません。私がお義姉(ねえ)さんたちが見えたと余計なこと言うたもんですけん」

宗俊「この野郎、真面目に心配してやがる。下手なかばい立てするんじゃねえ、この野郎」

元子「ほらね、こういう人たちなんだから。福代さん、もう一度考え直してみる?」

トシ江「バカなこと言うんじゃないよ、お前は。さあさあ、どうぞどうぞ」

元子「順平のこと、よろしくお願いしますね」

福代「はい!」

宗俊「よ~い、いい返事だ」

 

というわけで、まずはめでたしめでたし。

 

大原家のダイニングで順平と福代の結婚写真を見ている元子、彦造、善吉。

彦造「これであっしも思い残すことは何もありませんや」

元子「バカ言っちゃ困るわよ。結婚したからってね、腕の方はまだまだなんだから。彦さんには長生きしてもらって順平をうんとしごいてもらわなくちゃ。ねえ、善さん」

善吉「へえ。まあね、若旦那の方は、あっしがついてますからね、え~、まあ、いつくたばってもらっても結構なんですがね、まあ、ぽっくりいかれると、やっぱり河内山の大将がね、がっかりしなさるでしょうからね、もうちいとはばかってもらってもいいんじゃないですか」

彦造「この野郎」

善吉「へへへへへ…。だからってよ、できるなら、この若旦那の後継ぎのご誕生を見てえだろうよ」

彦造「そりゃおめえ、見られるもんなら」

善吉「へへへへ…『這えば立て立てば歩めの親心』ってね、今度は小学校に上がるまでとか何とか言ってね、切りがねえんですぜ」

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元子「善さん」

善吉「ハハハ…ですから、いっそのこと、ず~っとはばかってもらえりゃいいんですよ」

彦造「おめえの口がうまくなった分、腕の方も上がってりゃ、俺ぁいつでもぽっくりいってやらあ」

善吉「あいてっ。これだからね。こんな口が悪いんじゃ、こりゃ120まで生きやすね」

笑い声

 

元子の笑顔で終わるほのぼのラスト。

 

つづく 

 

明日も

 このつづきを

  どうぞ……

 

昭和のレアキャラ、正道さん。しかし、昭和のホームドラマを見ているとそんなレアキャラはたまに出てくる。

peachredrum.hateblo.jp

「3人家族」のお父さんも優しいお父さんだった。戦時中は鬼伍長と言われ、部下を殴りまくっていたらしいが、息子は殴りません。それはそれでひどい?

peachredrum.hateblo.jp

岸辺のアルバム」の北川さんもひどい不倫男なんだけど、妻子につきあってスーパーで荷物持ちしたり、モスバーガーにも来たりする。山田太一さんの脚本のドラマは全体的に男性が優しい。