公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意
弟の順平(斎藤建夫)が、たった一人で突然松江にやってきた。野球をやりたいのに頭ごなしに否定する宗俊(津川雅彦)に腹が立って、プイと出てきたという。元子(原日出子)はあきれるが、正道(鹿賀丈史)が親身に話を聞いてやると、気持ちが収まってあっさりと東京へ帰る。その夜、正道の友人の橋本(鈴木正幸)が大原家を訪れる。橋本は土木建設をしていて、その現場監督としての仕事をしに、正道に東京に出てこいと誘う。
たった一人で、しかも突然。順平は一体、何しにやって来たのでしょうか。
大原家客間
ごはんを食べている順平。「別に理由なんかねえよ」
元子「子供じゃあるまいし、理由にもならないこと言わないで」
順平「じゃあ、顔見に来た」
元子「冗談じゃないわよ。少しは私の立場も考えてちょうだいよ。私はね、ここのお嫁さんなんだから」
順平「だったら帰ればいいんだろ、帰れば」
元子「順平!」
部屋に入って来た正道。「電報打ってきたからね、もう大丈夫だよ。ゆっくりしていきなさいね」
順平「どうもすいませんでした」
正道「それで、どうした? プイッて出てきたのか? それとも…」
順平「プイです」
元子「もう」
正道「ハハ…いいじゃないか。まあ、男の子にはね、こういう時期があるんだよ。ただプイッと出てくるかこないかの違いだけだ。なあ、順平君」
順平「うん。俺さ、誰に似たのか頭悪いでしょう」
元子「ばかばかしい」
順平「でもやっぱり大学行った方がいいかな?」
正道「何だ、行きたくないのか?」
順平「そういうわけでもないんだけど成績がね」
元子「だったら勉強したらいいじゃないの。高校2年生でしょう。これからいくらだって間に合うわよ」
この回で3月から秋まで季節は飛んだので、今は昭和31年の秋。高校2年の順平は、初回登場時より3歳くらい若返ってる。
順平「姉ちゃんや死んだ兄貴とは出来が違うんだよ」
元子「自分で決めることないの!」
正道「まあまあ。それで、何が得意なの?」
順平「野球」
元子「野球!?」
順平「ああ、これでもキャッチャーで4番なんだぜ。できればプロ野球入りたいんだけど」
正道「はあ~」
初回、昭和22年に小学6年生だった昭や雄太が昭和28年に高校3年生に。野球がはやってたというかスポーツといえば野球だった感じかな。
元子「あきれた」
正道「いや、あきれることはないよ」
元子「だって…」
正道「いいじゃないか。プロになりたきゃなれるように頑張れよ」
順平「うん」
正道「人にはね、向き不向きっていうものが誰にでもあるんだよ。まあ、そのかわり自分で向いてると思っててもやってみなきゃ本当に向いてるかどうかも分からないし、ただそこで向いてると思ったら突き進めばいいし、違うと思ったら、また違う道を探せばいいんだよ。まあ、いい大人になってね、ウロウロすると女房子供も迷わせるし、今なら若さの特権だよ。自分でこれって思うことをやってごらん」
順平「そういうふうに言ってもらえればな。俺だってさ、むくれたくてむくれてるわけじゃないんだけどさ、とにかくうちのおやじが分からんちんでよ、自分だってさんざん昔遊んだくせによ、てめえが野球分かんないもんだから、紺屋のせがれがすりこ木で球ひっぱたいて、どこが面白(おもしれ)えんだって、こう抜かすんだぜ」
正道「ハッ…すりこ木で球ひっぱたくか。ハハハハ…」
順平「ねえ、大原さんは、もう東京来ないの?」
正道「えっ…どうしてだい?」
順平「おやじが言ってたもん。だからって、その分、俺に当たられてもかなわないしね」
正道「うん…多分、行くことになると思うけどね」
順平「本当に?」
正道「ああ。ただね、君みたいにプイッて行くわけにはいかないんだよ」
順平「チェッ」
正道「ハハハハハ…。ほら、お代わりだろ」
順平「ああ」
元子「はいはい」
夜、吉宗
電報を見ているトシ江。「本当にあの子ったら、もう」
宗俊「チッ、だから心配するなっつったろう。俺はお前、元子のとこだと初めから分かってたんだい」
トシ江「うそばっかり」
宗俊「何がうそだ。息子がお前、家出したからってお前、いちいち親が慌てていられるかい。寝るぞ寝るぞ、俺は寝る」
トシ江「私だって、そう思ってましたけどさ」
言いたいことを言ってしまって、すっきりした順平。あっさりと東京へ帰ります。
大原家玄関
順平「そんじゃ」
元子「気ぃ付けて」
邦世「東京の皆さんによろしく言うてごしなはいね」
元子「まっすぐ帰るのよ」
順平「分かってるよ。じゃあ、どうも」
正道「行ってきます」
元子「行ってらっしゃい」
正道「大介、行くよ」
玄関を出て
順平「ねえねえ、姉ちゃんに小遣いもらっちゃった。へそくりかな」
正道「あ~、多分な。ハハハ…」
さて、千客万来の最後の客、橋本が訪れたのは、その夜のことでした。
波津の部屋
大介と道子を膝に乗せた波津がいる。
波津「おお~、いいおもちゃだのう」
大介「東京のだもの」
波津「ほう~。東京には、いろんなおもちゃがああだのう」
大介「うん」
波津「ああ、大介は東京へ行きたいかや」
大介「はい」
波津「なしてだや」
大介「東京のおにいちゃんが遊びにおいでって言ったもの」
波津「ああ、遊びにか」
大介「うん。ひいばあは何のお土産がいい?」
波津「あ~、そうだのう…ように考えちょくけんのう」
大介「だったら一緒に行けばいいんだよ。みんな一緒に」
波津「ふ~ん。お父さんやお母さんがそぎゃんこと言っちょったかや」
大介「ううん」
波津「ああ…うんうん」
何とな~く、孫に探りを入れるおばあちゃんあるある。
廊下に客間の話し声が聞こえる。元子はお酒を運んできた。
橋本「いや、そこまで考えてるんであれば、大原、お前は、まず東京へ出てこい」
大原「うん。最後の決断は…」
大原家客間
橋本にお酒を注ぐ正道。「橋本に会うことで決まるって考えてたんだ。お前の顔色、話、しゃべり方、それはお前が今、抱えてる情勢そのままのはずだからな」
橋本「おいおい、それじゃ、俺は試されてるっていうわけか。ハハハハ…」
正道「いや、二度と旗を巻いて、この松江には帰ってこれんからな」
橋本「といって、石橋はたたいてるばかりじゃ何の役にも立たんぞ」
正道「そのとおりだ」
橋本「よ~し、まあ、そんなら俺の顔を縦からでも横からでもよ~く見てくれ。今、この顔には、お前の力を借りたいと素直にそう書いてあるはずだ」
正道「うん」
元子「失礼します」
橋本「やあやあ、奥さん、どうもすっかりお手数をかけまして、申し訳ありません」
元子「いいえ、とんでもございません。手料理ばかりですので、お口に合いますかどうか」
橋本「いやぁ、感激しました。しばらく山に入ってたもんですから」
元子「山?」
橋本「ええ、多摩川のずっと上流にある小河内(おごうち)ダムで仕事をしてたんですよ」
元子「はあ」
www.waterworks.metro.tokyo.lg.jp
19年余りの歳月をかけて昭和32年11月26日完成。
橋本「いやぁ、まあ、実に壮大な仕事です。まあ、ここ数年、東京の人口は爆発的に増加してますからね、まず水を確保しなければならないと。まあ、そのためのダムなんだが、同じ仕事をしてるんでも東京都民の水がめ造りの一端を担ってるんだという自負は、そりゃ大きいですよ」
元子「それはそうでしょうねえ」
橋本「ああ」
元子「あの、そろそろおそばの支度にかかってもよろしいですか」
正道「ああ、そうしてくれ」
元子「はい」
橋本「あ~、いやいやこりゃどうもお手数をかけます」
元子「いいえ、どうぞごゆっくり」
橋本「はい。いや~、何しろこの多摩川の上流をせき止めてですな、造ったダムなんだ。で、もう高さが149メーター。長さがなんと534メーター」
橋本…鈴木正幸さんといえば桜中学シリーズの大森巡査! 今回、津軽弁の役ではなかったね。まじまじと顔を見て、ああいう眉毛が濃く目がパッチリした男性の顔って東北人顔だな~と感じる。が、私も東北人なのに、ああいう濃さは持ち合わせてない。東北人といえば色白みたいに言われるけど、濃い顔で酒飲みの赤黒いイメージがあるな。peachredrum.hateblo.jp
台所
そばを打つ邦世。
元子「そろそろよろしいようですわ」
邦世「だいぶ話が弾んじょうみたいですね」
元子「ダムの話をしてらっしゃいます」
邦世「ダムといったら山奥の谷川をせき止めて湖にしてしまういう、あれですか」
元子「ええ」
上京する時は家族一緒にと考えていた元子は波津たちにそういう山奥で生活させるのは、とても無理だと思いました。
客間
橋本「だからさ、お前に頼みたいのは現場監督だよ。無論、建築設計上の資格を持った責任者は別にいるが建築というのは、やはり人間が創っていくもんなんだよ。だからお前にはその人間の方を頼みたい」
正道「人間か」
橋本「ああ。実にいろんな人間が集まってきている上に結構荒っぽい。その荒っぽさを一つの力に結集してほしいんだよ。だから時には彼らの悩みに耳を貸し、相談相手になってやる必要もあるし、働いてる者同士のトラブル、これもうまく収めなくてはならない。そして何よりも大切なのは安全確保だ。事故だけは起こしたくない。そのためには説得力があって、しっかりと統率していくことのできる人物が絶対に必要なんだ。そして、それがお前でお前の人柄だ」
正道「ああ」酒をグイッと飲み、橋本にも注ぐ。「うん」
さて、橋本が一晩泊まって帰っていった夜のことです。
波津の部屋
元子「じゃあ、ダムじゃないんですか?」
正道「うん、ビルの建設だ」
邦世「ビル?」
正道「はい。私らがこちらに引っ込んでる間に東京の復興は目覚ましいようです。都心では新しいビルがどんどん建ちつつありますし、郊外では住宅の建設も活発になってきました。しかし、まだまだ焼け石に水の状態のようです」
波津「そげかね」
正道「それでですね、ご相談なんですが、父さんの一周忌が終わりましたら、私をもう一度東京へ出していただけませんでしょうか。あの戦争で焼け野原になった東京が新生日本にふさわしくよみがえりつつあるんです。僕としては、その復興に何としても参加したいんです。それでですね…」
波津「何で一周忌まで待つことがああだかね?」
正道・元子「は?」
波津「あんたがそぎゃんふうに考えちょうことなら何をためらうことがああますだかね」
正道「えっ、おばあさん…」
邦世「あんたがやりたいいう仕事なら私ら応援しますけんね。安心してまず東京へ行ってくることだわね。ねえ、元子さん」
元子「はい…。ありがとうございます。私はまたダムの仕事に誘われてるのかと思って、どうしようかと」
邦世「おや、何がですか?」
元子「そのような所では、おばあ様をお連れできないのではないかと」
波津「そうを取り越し苦労と言うもんですわね。ああ、こうなったら一日も早い方がいいだけんね。のう、正道」
正道「はい」
元子「あなた…」
正道はまず一人で東京へと向かいました。
線路から撮っている蒸気機関車の正面の映像。
3年ぶりの東京は目を見張るほどの変わりようでした。
白黒の東京のビル街の写真。マツザカヤの看板確認。スーツ姿の人々。
桂木家茶の間
宗俊「そうかい。それじゃあ、仕事は決まったってわけか」
正道「はい。松江の整理がつき次第、上京することになると思います」
順平「見ろ、俺が行ったのだって無駄にはなってねえじゃねえか」
宗俊「ケッ」
トシ江「何バカなこと言ってるんですか。あちらの皆さんにさんざんご迷惑をかけておきながら」
藤井「大ちゃんも大きくなったろうな。ねえ」
順平「びっくりしちゃったよ。それにもう一人、道子ちゃんもね」
巳代子「心配だわ。弘美より美人だったらどうしよう」
藤井「そんなことあるわけないでしょう。あっ…どうもすいません」
笑い声
藤井「それより僕たち引っ越し先を探さないと。これから忙しくなるですよ」
正道「あの、そのことなんだけどね」
順平「ここでいいじゃないかよ。どうせ2階は俺だけなんだし」
正道「うん、それがいいあんばいに見つかったんだ」
宗俊「え? 見つかった?」
正道「はあ。あまりここから遠くない所を友人に頼んどいたんですけど根岸に適当なうちが見つかりました」
宗俊「そりゃ、えらく早手回しじゃねえか」
藤井「いえいえ、何たって元将校さんですから行動を起こせば昔からやること早かったんですよ」
宗俊「しかし、そうなりゃあれだな、毎日、大介や道子の顔見たくてもそうはいかねえな」
トシ江「でも根岸なら、そう遠くはないんだし。ねえ」
正道「はい。まあ、今度は年寄りが一緒ですから友人もその点を考慮して探してくれたんだと思います」
宗俊「おう、それじゃあ、ご隠居さんもご決心なすったのかい」
正道「はい。逆に自分が気合いを入れられたくらいでした」
宗俊「あ~、そりゃまあ何よりだ。おい、酒だ酒だ」
トシ江「あっ、はいはい」
正道「あ~、ハハハ…」←正道だけが写ってたので弘美の顔見て笑ったのかな。
ところがです。
波津の部屋
波津「いんや、私ら行きませんで」
元子「どうしてですか?」
邦世「そういうことにおばあ様と決めてしまったですけんね」
元子「そんな…。手ごろなうちも見つかったからって、こうして電報も来ていますのに」
波津「そうは、それ。見つかってよかったじゃないですか」
元子「だけど一体どうしてなんですか? あれほど応援して、正道さんの東京行きを勧めてくださったじゃありませんか」
邦世「そうだけん、その時が来たら私らも東京へ行くこともああでしょうが」
元子「その時っていうのは、お義父(とう)さまの一周忌のことですか?」
波津「まあ、そうはどうだかねえ」
元子「おばあ様」
邦世「正道が決心したですけんねえ。私らに気ぃ遣うことは何(なあ)もああません。あんたはまず、正道のことを考えてやってごしなはい」
元子「そんなことおっしゃっても…」
邦世「いんや。いずれ世話にもなあでしょうが、それまではできいだけ自分たちで生きてくつもりですけんね」
波津「そうだけんね。あんたもまた一緒に暮らせえやに東京で頑張ってごしなさい」
元子「そんなあ…」
邦世「それに私はこの松江が大好きだわね。わがまま言って本当にすんませんだども」
物静かですが、言いだしたらてこでも動かせないしゅうとめであることは3年間の暮らしの中で嫌というほど分かっている元子でした。
つづく
明日も
このつづきを
どうぞ……
ヨウ子は下町の学習院こと根岸小学校に通っていたね。
正道たちが来るから当然、藤井たちが出て行くという認識になってるのがなんとなく怖い。最近、吉宗のシーンになっても彦さん、キンさん、善吉が出てこないのが寂しいねえ。