公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意
古着屋の次に元子(原日出子)が始めたのは、何でも仕入れて売る、古道具屋のような商売だった。正道(鹿賀丈史)も新しい出版事業を始め、仕事仲間を家に呼んでくるほどに。仕事にあぶれている宗俊(津川雅彦)は、なんと元子に紺屋の仕事の注文をもらう。着物の帯芯を染めて欲しいという。元子は染めた帯芯でカバンを作り、それが口コミで大人気となる。イニシャル入りのバッグを作ると、生産が間に合わないくらい売れに売れ…。
月曜からの歌なしオープニング。私は少々物足りなく思うけど、母は、あまり好きではなかったと言っていたから当時も賛否あって”否”が多かった結果なのだろうか。でもふとした時に口ずさんじゃう。
古着屋に代わるべく元子が考え出した商売は、さしずめ生活必需品交換業に近いものでした。
リヤカーを引く彦造と元子。
彦造「はあ~、やれやれ」
元子「はあ、彦さん、ご苦労さまでした」
彦造「そんじゃあとりあえず裏の方へ運んどきますからね」
元子「ええ、お願いしますね」
吉宗
元子「ただいま」
トシ江「あっ、お帰り。ねえ、元子、あの、こちら様、この帯をお買い上げになるからね、帯芯でかばんが作れないかって」
元子「あっ、いいですよ。けど、どんなかばんがご入り用ですか? あの、今、ちょうど1つ革のかばんを仕入れてきたところなんですけど」
男性客1「えっ、革のかばん?」
元子「ええ。まあ、多少使ってはありますけどしっかりした品物です」
男性客1「おっ、それをちょっと見せてくれませんか」
元子「そうですか。じゃあ、ちょっとお待ちくださいね」
男性客1「はいはい。いやぁ、革のかばんなんかなかなか手に入らんと思ったもんですから」
ルパシカ姿の客も来店。
トシ江「ええ、まあ時々思わぬ品物が入荷するもんですから」
男性客1「うん、じゃあ時々のぞいてみようかね」
トシ江「あ~、もう是非そうなすってくださいな。ご注文さえ頂ければお取り寄せしますよ、探しまして」
男性客1「そんじゃあ、そうしましょうかね」
トシ江「あ~、はいはい、はい」
階段下
元子「あった、あった」
宗俊「おう、今度はどんながらくただ?」
元子「上等な羽子板に刺しゅうの半襟、名古屋帯が5本に本が20冊、それから伊万里のお皿もありますよ」
宗俊「まるで古道具屋だな、おい。え」
彦造「そりゃあね、旦那、ぼろもうけしようってんなら、何つったって食い物が一番だ。けどお嬢は先行きを考えて地道な商売を探してえとこう言いなさるんだから」
宗俊「先行きったってお前、あいつにはれっきとした亭主がいるじゃねえか」
彦造「ご亭主がついてたって実家のおやじさんがあぶれてんじゃねえんでしょうかね」
宗俊「実家のおやじって…俺のことじゃねえか」←出た、2日連続ノリツッコミ!
彦造「まあ、そういうことで」
宗俊「この野郎、とぼけやがって! チッ」
吉宗
男性客1「いやぁ、ありがとうありがとう」革のかばんをなでる。
元子「いいえ、こちらこそどうもありがとうございました」
トシ江「ありがとう存じました」
男性客1「助かったよ」
トシ江「またお近いうちにどうぞ」
男性客2「ねえ君、ちょっとちょっと」
元子「はい」
男性客2「あの本を取ってくれないか」
トシ江「えっ?」
男性客2「山の上から4冊目」
トシ江「これですか、はい、どうぞ」
男性客2「やっぱりそうだった! この装丁に見覚えがあると思って、もしやと思ったんだがな、やっぱりそうだった。ねえ、これ、全8巻なんだけど、ほかないの?」
トシ江「さあ、私がとりあえずここに置いたもんですから」
男性客2「ねえ探してよ。これ1冊じゃ罪だぜ」
トシ江「はい」
元子「あの…。『小山内薫全集』」
男性客2「しかもこれは初版本でね、ごらん。装丁は有島生馬画伯の絹張りで、いやぁ、こんな珍本をこんな店で見つけるとは思わなかったな」
有島武郎の弟…へえ~。
元子「あの、それ、売り物じゃないんです」
男性客2「えっ?」
元子「本当にすみません。でもこれ私の本なんです」
男性客2「君、そんな殺生な」
トシ江「ねえ、元子。お客様がせっかく欲しがってらっしゃるのに」
元子「私だって欲しいわよ。これだけの本、読まないうちに売っちゃうなんて、そんな」
男性客2「だって商売なんだろ?」
元子「でもうちはもともと古着が専門で」
トシ江「元子」
男性客2「ねえ、そんな意地悪言わないで売ってくれよ、このとおりだから」
元子「でも…」
トシ江「いいかげんにしなさいよ。子供じゃあるまいし。そんなみっともないまねやめてちょうだい」
男性客2「20円出すから、頼む」
元子「20円!?」
男性客2「じゃあ、25円!」
トシ江「まあ、そうですか。まあまあ、そりゃあもうありがとう存じました」
茶の間
女性陣が帯をほどいている。
トシ江「本当にバカなんだから、この子は」
元子「だって…」
巳代子「しかたないわよ。お姉ちゃんの本好きはお兄ちゃん譲りなんだから」
キン「それにしてもねえ、あんなおんぼろな本が25円だなんて、私ゃもう少しでね、焚きつけにしちまうとこでしたよ」
トシ江「冗談じゃないわ」
元子「でもそうなのよねえ。客が欲しがるものをいちいち欲しがってたら商売なんかなりゃしないのよね。私もどうかしてたわ」
トシ江「商いにはまだまだ年季が入ってないってことよ」
巳代子「でもお姉ちゃんだっていつまでもこうして商売してるわけじゃないんでしょう」
元子「うん。正道さんの仕事が軌道に乗ったら私もそっちを手伝わしてもらおうかなって思ってんの。まあ、だけど、その前にあの河内山をどうするかよね」
キン「帯をこんなにほどいちまってうまくいきますかねえ」
元子「いかせますとも」
宗俊「うん? 何やってんだい」
元子「あっ、ちょうどよかった。この帯芯を5本染めてくださいって注文なのよ」
宗俊「帯芯、染める? そんな仕事聞いたことねえな」
元子「だけど仕事なのよ。まあ、お父さんが面倒くさいっていうんだったら、彦さんに頼むけど」
宗俊「バカ野郎! おめえ、染めの仕事を何も彦さんがやるこたぁねえじゃねえか」
元子「だったらよろしくお願いしますね」
宗俊「誰に頼まれたんだ?」
元子「私」
宗俊「何だと!?」
正道「ただいま」
トシ江「ほらほら、旦那様のお帰りだよ」
元子「は~い! お帰りなさ~い!」
吉宗の扉を開ける。
元子「お帰りなさい」
正道「ただいま。あっ、お客さんをお連れしたよ。あの~、家内です」
元子「家内!?」
藤井「はい、お話はいつも伺ってます。藤井でございます」
元子「あ…。どうもいつも正道…あっ、いえ、うちの主人がいろいろとお世話になっております」
藤井「こちらこそ」
正道「あの、食事、まだなんだけども」
元子「あっ、はい」
トシ江「こっちはいいからご案内して」
元子「はい! そいじゃ、どうぞ」
正道「さあさあ、さあ、どうぞ」
元子「どうぞ」
宗俊「ヘッ、一丁前に客連れてきやがったぜ」
トシ江「あんたは駄目ですよ。正道さんのお客様なんだから」
宗俊「分かってるよ!」
大原家
藤井「いやぁ、羨ましいなあ。奥さんは美人だし、酒は舶来だし。とにもかくにも一軒家だなんて僕らにとっては夢のまた夢、天国ですよ、大原さん」
正道「ハハハハ…」
藤井「奥さん、大事にしないといけませんね」
正道「ああ、ハハハハ…」
藤井「ねえ、奥さん」
元子「あっ…」
正道「こちらの藤井さんにはね紙のことなんかでいろいろお世話になってるんだよ」
元子「そうだったんですか。今後ともよろしくお願いいたします」
藤井「いえいえ、お願いするのはこちらの方ですよ。何せ大原さんは元軍人さんだけに作戦が早い。え~、これをこうしてこういう具合に、そしていついつかまではこうなると、というあんばいできちょうめんなのは天下一品ですよ。おかげで私たちは兵隊ですよ。『はい』と返事したら、もう駆け足ですから」
元子「まあ」
藤井「いえいえ、会社にはこういうきぜんとなさった指揮官がいませんとね、今どき印刷屋の方へも押しはきかないし、おかげで僕らも走り回っただけ働きは入るし、本当にいい方と知り合いになれたと思っております」
元子「いえ、とんでもございません」
正道「ハハハ…」
藤井「頂きます。あ~…それにしても向こうの酒は違いますねえ。僕らいつもカストリ専門ですからうまいの何のって」
元子「そうですか。頂きもんなんですけど。もしよかったら、もう1本ありますから、ねえ、正道さん」
正道「あ…よろしかったら1本持ってってくださいよ」
藤井「いやぁ、そんな、あんた、こんな上等なものをもったいないですよ」
正道「いやいや…いやもう計画は僕ですけども仕事の方はいつもお世話になってるんですし、これはね、月謝です、月謝」
藤井「そうですか。申し訳ありませんね、奥さん」
元子「いいえ、とんでもございません。じゃあ、あの、お包みしておきますから」
藤井「あ~、すいません」
正道「さあ、やってください」
改めて他人に「奥さん」などと初めて呼ばれた元子さん。ついうれしくなって内助の功を発揮したのでしょうが、この藤井という男、信用してもいいのでしょうか。
藤井「あ~」と酒を飲んで喉を押さえる。
藤井役の赤塚真人さんは「純ちゃんの応援歌」では大原役として登場。満州からの引き揚げで純子の父の消息を知ってると家に上がり込み、ごはんをたらふく食べていた。結果的に誤情報だったし、今回も怪しげな役割なのか!?
いずれにせよ、仕事があるということはいいことです。
藍染をしている宗俊と彦造。
元子「おはよう。あ~、やってますね」
宗俊「ヘッ、こんな半ちくな仕事よ、俺一人でたくさんなのに、このじじいまでが乗り出しやがって」
元子「半ちくで申し訳ありません。けど、そのうちちゃんとした仕事ができそうよ」
宗俊「何だい、そりゃあ」
元子「ゆうべのお客さんね、紙のブローカーなんだけど生地の方もなんとかなるって言ってたわ」
彦造「本当ですかい」
元子「ごらんなさい。だんだんよくなる法華の太鼓よ。フフフ…」
”法華の太鼓”という単独の言葉じゃなくだんだんよくなると合わせて使う言葉なのね。
桂木家台所
元子「すいません、お母さん、お米、貸してもらえないかしら」
トシ江「あら、朝ごはん、こっちで一緒に炊いたのに」
元子「うん、でもまだゆうべのお客さんが」
トシ江「泊めたのかい?」
元子「話が弾んだし、夜も遅くなったし」
トシ江「はなっからそういうのってあんまり感心しないね」
元子「どうしてぇ? 大事な取り引き相手なのよ」
トシ江「商売は商売、おつきあいはおつきあい。そこんとこはお前がちゃんとけじめつけておかなくちゃ駄目じゃないか」
宗俊「ぐだぐだ言わずに気持ちよく貸してやれよ、お前。米の1升もよこせっつってるんじゃあるめえ」
元子「3合。3合あればいいんだけど」
トシ江「はいはい。じゃあ、おキンさん、ちょいとお米…」
キン「へい」
元子「すいません」
キン「じゃあ3合ですね、へい」
裏から入ると作業場→台所となってるんだね。
藤井「おはようございます」
彦造「へい」
藤井「ゆうべはすっかりお世話になってしまいました。はあ、これが藍染めってもんですか。はあ、なるほどねえ」指につけて自らの手拭いで拭う。
宗俊「生地が手に入(へえ)るのかい?」
藤井「はい。大原さんにはいろいろお世話になっておりますので大原さんの話とあれば一肌でも二肌でも脱ぎますよ」
宗俊「紺屋はこっちなんだ。生地が入んなら、こっちへじかに話持ってきな」
藤井「あ…はい。それは大変失礼いたしました」
彦造「ただし、生地の吟味はあっしがするからね」
藤井「はい、その節はどうぞよろしくお願いします」
元子「よかったわね、お父さん」
宗俊「それを言うんならな、品物の面(つら)見てからだ」
藤井「あ~、そりゃそのとおりで」
正道「おはようございます! 今日も元気に頑張りましょう!」←なぜかハイテンション。
吉宗のウインドウに帯芯で作ったかばんが置かれている。
みんな生きていくために知恵を絞る時代でした。宗俊が染めた帯芯はこのとおりジーンズ風ショルダーバッグに化けました。
帯芯 リメイクなどで検索すると、今でも作品はたくさん出てくるけど、このドラマに出てくるような四角いショルダーバッグではなく、トートバッグが多い。
キン「すいません、これは見本でございますから」
女学生1「せっかく聞いて来たんですもの。見本でもいいから売って」
キン「いいえ、見本というのは、そういうわけにはまいりませんので」
女学生1「だってイニシャルも一緒だし」
キン「いや、あのご注文なら承っておりますです、はい」
女学生2人連れが来店。「かばんありますか?」
キン「すいません、今、品切れなんでございます」
女学生3「学校でここに来れば売ってるって聞いたのに」
キン「へえ、皆さんそうおっしゃって見えますもんでね、何しろ作るのが間に合いませんで…」
女学生1「そんじゃ、いつ来ればいいんですか?」
キン「え~っと…少々お待ちくださいまし」
茶の間
薄暗い中ミシンをかける元子。トシ江やキンは手縫い。
宗俊「どこがいいのかね、このかばん、え」
キン「やっぱりハイカラなんじゃないんですか」
トシ江「少しでもみんなおしゃれしたい年頃だから」
巳代子「とにかく学校へ持ってったら、わっと囲まれて大変だったんだから」
元子「かばんにイニシャルを入れたらっていう正道さんのアイデアがよかったのよ」
正道「いや、それと宣伝ですよ。巳代子さんが最も欲しがる客層へ現物を見せて歩いたでしょ。あれが効いてるんですね」
巳代子「とすると、私は宣伝料をもらっていいわけだ」
順平「そんじゃ、俺もやる」
宗俊「バカ、ちんどん屋でもあるめえし。テッ」
元子「とにかくお父さんにはどんどんと帯芯を染めてもらわないとね」
宗俊「へいへい、分かりましたよ」
キン「それにしてもやっぱりお嬢はおつむがいいですねえ。ねえ、帯のまんまで売ったらこうはさばけなかったし、ねえ、旦那も仕事にも取りつかれなかったしね」
元子「全ては正道さんのアイデアです」
正道「いえ、行動力は元子さんですから」
宗俊「おい」
正道「はい?」
宗俊「『はい』じゃねえや、え。うちの宿六とか、かかあとかよ呼べねえもんかなあ。幼稚園のガキじゃあるまいし、え、夫婦のくせしやがって『正道さん』『元子さん』ジャラジャラ、ジャラジャラ虫ずが走るわ」
元子「だって」
トシ江「いいじゃありませんか。民主主義だもの」
宗俊「民主主義? へ~え、民主主義ってのは、そういうもんですかね、トシ江さん」
トシ江「ああ、そういうもんですよ、宗俊(むねとし)さん」
宗俊「ハッ」
トシ江「みんな仲よく幸せにって、ねえ、大原さん」
正道「あ…ハハハハハ…」
宗俊「ハハハハハハ…」順平と顔を見合わせて笑う。
少し違うのですが、一家に活気が出てきたことはいいことです。
今日は28分で終了。「朝の前奏曲(プレリュード)」はこれで2回目。
明日も
このつづきを
どうぞ……
しかしさ、ツイッターだと尺余りとか揶揄されがちだけど、文字数で言うと別にスカスカなわけじゃないんだよね。
大原正道さんのモデルの土門周平さんは東京出身。
某掲示板で河内山宗俊が出雲守邸に乗り込むエピソードがあると書いてあって、改めて自分が書いた感想を読み返すと書いてあった(^-^; 忘れてるなあ。そして、「マー姉ちゃん」にも河内山宗俊ネタがあって、脚本の小山内さんが好きなんでしょうね。
東京出身同士の方が不自然さはないけど、あまりにも東京過ぎるから朝ドラらしく地方色を一瞬出したのかな? 家庭環境から何からほぼ創作って感じだね。「はね駒」もわりとそうだった。
「マー姉ちゃん」や「あぐり」、「ゲゲゲの女房」はそれに比べると本人の著作が原案になってることもあり、かなり本人の実像に近い感じ。出身地はもちろんのこと、きょうだいが多いと省かれがちなのに、「ゲゲゲの女房」は姉2人、兄、弟妹のエピソードがそれぞれちゃんと描かれてるのがすごいなあと思った。
「マー姉ちゃん」みたいな女系家族よりは宗俊や正大、順平など男の家族がいた方が広がりもあって描きやすいんだろうな。調べると、妹がいるのは確認できたけど、あとはよく分からなかった。