徒然好きなもの

ドラマの感想など

【ネタバレ】東京五人男

1945年 日本

 

あらすじ

しゃべくり漫才で一世を風靡したエンタツアチャコら当時のお笑いの名手たちが出演した人情コメディー。戦時中田舎の軍需工場で働いていた横山(横山エンタツ)ら5人は、終戦を機に東京へ帰ることに。昔の職場へ戻った彼らは、被災して荒んだ人々の心を和ませようと努力するが…。賄賂が横行する戦後社会へのコミカルな風刺が痛快。

2022.11.14 日本映画専門チャンネル録画。公開が1945年12月27日。今、再放送で見ている「本日も晴天なり」が描いている時代と同じ時代。

 

ぎゅうぎゅうの汽車。徴用が解除になって大荷物を抱えて帰る人々がケンカになっている。石田という男がその中でバイオリンを弾きながら歌う。

 

♪ハハ のんきだね

交通道徳 守っていては

汽車や電車に乗られない

乗るにゃ喧嘩ごし 命がけ

地獄行き特急の火の車

へへ のんきだねェ

ノンキ節

ノンキ節

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「のんき節」の替え歌。

 

関西弁でしゃべってる2人がエンタツアチャコ

peachredrum.hateblo.jp

↑この映画に出てたのが花菱アチャコさん。メガネじゃない方でコワモテのヤクザの親分。

 

東京の焼け野原。男性の写真が数人分並び、合同葬儀? もっと親切にすればよかったと話す女性たち。

 

男たちが帰ってきて女性たちは男たちに抱きつく。お経をあげていたお坊さんは布施を5年分欲しいと待っていた。男たちは缶詰や石鹸など大荷物を抱えて帰ってきたが、みんな社長のものだと言う。男たちは社長の家に荷物を運ぶが、何も分けてもらえなかった。

 

社長は飛鳥時代の珍品だという底の抜けた壺だけ渡して帰らせた。社長の家の前には立派な犬小屋と立派な犬。くすねないでそのまま社長宅へ持っていくなんて真面目。あるところにはあるんだねえ。

 

人があふれる路面電車。眠っている間に靴が盗まれるなど混乱。

 

配給所? 女性が並ぶ。6世帯15人分5日分など大根などを切って渡す。部屋には芋が山のように積んであるが、区役所の許可が出ないと出せないと言う。腐りかけてるのにと女性は言う。

 

品物がもらいたいなら隣組長の判をもらって、町会の判をもらって、町会で申し込み申請書をもらって区役所へ行って、区役所で申し込み書をもらって、書き込んだら世帯主の判を押す。町会、組長、区役所の判をもらって警察へ行って証明書をもらう。お医者へ行って診断書をもらって、それを揃えて出せば渡す。今、孫のためにミルクが欲しいと言う老婆は耳が遠いからもう一度説明して欲しいと所長にお願いする。

 

配給所に並んでいる間に空き巣に入られたり、産気づいたり、寒空の下、何時間も並ぶより、一括して個別に配給してはどうかと所長に提案するが、指示なり命令がないとできないという。この所長に提案してるのがさっきバイオリンで歌ってた石田。

 

ミルクが欲しいと所長に何度もお願いする先ほどの老婆。石田はミルクを渡して自分で手続きをすると言う。区役所の窓口は会議中の札が出ていた。

 

♪へへ のんきだね

会議 会議と会議がはやる

会議は会議のためにする

次の会議はいつやろと

今日も会議をしています

へへ のんきだね

 

石田は自転車に乗りながら歌う。道端で水を飲んでいた石田は松葉杖をついた傷痍軍人らしき男に自転車を盗まれた。

 

配給所に戻ると、坊やが熱を出したと所長の妻がきた。しかし、所長に手続きしてないと~とグダグダ。妻は夕食抜きと怒って帰った。変に生真面目だね。

 

妻の形見の銘仙の着物を持ってきた古川だが、寝巻きにもならないと断られた。農家は物にあふれ、おじいさんは腕時計を複数腕につけていた。疎開児童のためと話すと別の親切な農家からは持ちきれないほど野菜をもらった。方言から茨城あたり?

 

国民酒場に人が並んでいる。2時間前から500人も並んでいる。砂糖、タバコなどと交換? 酒場の店主は客に肉が欲しいと要求。

 

小さな長屋に住んでいたエンタツアチャコは地主から立ち退きを要求され、上野の山に行けと言われる。長屋と隣にはキャバレーの看板が立ち、家で酒を飲み始めた男たちがいたが、それぞれの妻が箒で叩いて追い出した。

 

路面電車が走る周りは何もないんだなあ。日比谷とかだよ。エンタツアチャコ路面電車の車掌?

 

♪へへ のんきだね

お芋の配給をすると言ったら

こんなに御婦人が集まりました

婦人参政権の投票の時も

こんなに並んでくれりゃよい

へへ のんきだね

 

お米の代わりにお芋を食えと

仰るお役人は何を食う

お役所仕事はひまを食う

だから連合国から小言食う

へへ のんきだね

 

お芋の配給で忙しいのに

のんき節を唄う様な馬鹿がある

あるかと思えばその又馬鹿唄を

うすぼんやり聞いてる …がある

へへ のんきだね

 

…は別にまずいこと言ったわけじゃなく、言わなかった感じ。芋の入った俵を運びながら石田が歌う。

 

♪お芋 それ忙しお芋の配給

それ忙しい

お芋 それ忙しいお芋の配給

あ〜 早く

それ忙しい

 

今度は並んでる女性たちの歌。

 

国民酒場

券みたいなのを持って行く? お釣りのないようにといってたからお金? 酒場で飲んでるのは男性だけ。

 

櫻丘駅前の人だかり。疎開児童たちが帰ってきた。古川の子供もいたが、式が終わるまではダメですと教師は冷たい。駅前での長い教師の挨拶。子供たちも待っている親たちも退屈そう。寝てしまった古川を一郎が起こした。

 

♪お殿様でも家来でも

お風呂に入るときゃみんな裸

裃(かみしも)ぬいで刀も捨てて

唄の一ツも浮かれ出る

ハァ 島で育てば

娘十六…

 

古川「おっと一郎は9つだったな?」

 

♪狭いお風呂も楽しい我が家 

お金持ちでも僕等でも

食べる胃袋みんな一ツ

一日三合ニコニコもので

唄の一ツも浮かれ出る

無事か達者か今頃は

 

古川「お父さんも随分心配したんだよ」

 

♪やせたけどよかったね

狭いお風呂も楽しい我が家

お役人でも僕等でも

夜の枕は皆一ツ

頭の中身はどっちがどっち

唄の一ツも浮かれ出る

ふざけちゃいけねえ 

 

古川「なあ、一郎」

 

♪おいら江戸ッ子だ べらんめえ

任しておきねえ

倅もいるぞ

狭いお風呂も楽しい我が家

私の青空

私の青空

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私の青空」の替え歌。

 

古川が一郎とお風呂で歌う。いい声。エンタツアチャコも長屋の屋根から楽しげに聞いている。エンタツアチャコは風呂に入ってる間に下駄を取られないようにあえて不揃いの下駄を履く。ドラム缶風呂に入りながら東京音頭浪花節をそれぞれ歌うが時々ハモる。

 

ボロボロのバラックで暮らす古川は一郎のために一升瓶にお湯を入れて湯たんぽを作る。まだ寒いと言うので火をつけるとバラックに火がついた。

 

日曜日。古川が子供が死にかかっていると病院に行くが、日曜日に死にかかるなんてどうかしてると看護師は冷たい。古川は、古川大将の息子だと言って医者を連れてきた。バラックの中は外より寒い。しかし、一升瓶を見かけた医師は態度が急変。古川は湯たんぽだと正直に言う。

 

簡易住宅建設株式会社の窓口に行った古川だが、窓口の男は高圧的。

 

国民酒場に検査員が来た。酒を闇で横流ししているという投書がきたと言うが、店主はデマだと答え、検査員に酒を出した。しかし、しゃっくりが止まらなくなる。

 

先に飲みに来ていた社長、所長もしゃっくりが止まらず、首が曲がった。悪い酒。

 

長屋のエンタツアチャコは食事で見栄を張り合う。ドリフのコントみたいにふたつの家を仕切る壁が回る。ふたりそれぞれ歌を歌う。こういう感じのネタするコンビなのかな?

 

古川家のバラックがグラグラ揺れる。船みたいに板を持ってこぐ古川と一郎。

 

社長の物資を入れていた防空壕に水が流れ込んだ。

 

長屋も雨漏りがひどい。外は暴風雨。エンタツアチャコは屋根に上って修復し、2組の夫婦は一つの部屋で休むことにした。

 

社長の家では防空壕の物資を運んでいた。“軍用”の札のかかってるものもある。エンタツアチャコも手伝う。砂糖を茶碗一杯くれないかと頼むも社長は拒絶。運んでる途中で砂糖がこぼれた。一貫目800円。

 

水の上がった防空壕に閉じ込められた社長と所長と酒場の店主が電話をかけてきた。防空壕に電話があるのがすごい。電話を受けた石田は国民に返せという。酒場の店員も上級な酒を飲ませるよう店主に約束させる。

 

家ごと流された古川は一郎と家ごとリヤカーで運んでいた。

 

櫻丘生活共同組合では砂糖や純毛を無料で配っていた。石田は組合長に立候補。政府に頼りすぎない、食糧増産を公約とした。社長が土地を無償で提供すると約束させた。みんなでデモ行進。

 

♪嵐は晴れたよ 雨雲逃げた

明るい太陽 ポカポカ照るよ

街には特配 隣りも笑顔

みんなで働きゃ 復興はすぐだ

 

ペチャンコに挫けた心と身体(からだ)

ドッコイショと起(おこ)して青空仰ぐ

 

明るい東京 楽しい東京

僕等の東京 みんなの東京

 

朝風キリリと 心もしゃんと

富士山白いよ 小鳥も飛ぶよ

街には槌(つち)音 隣りも笑顔

みんなで働きゃ 復興はすぐだ

 

アチャコ「来年はなんやできっと食い物に不自由はささんで」

エンタツ「立派な家をどんどん建ててやるぞ!」

 

♪明るい東京 楽しい東京

僕等の東京 みんなの東京

 

家は焼けても 芽を吹く風よ

力は湧く湧く 僕等は若い

街には歌声 隣りも笑顔

みんなで働きゃ 復興はすぐだ

 

あははと笑へば

おほほと笑ふ

心のわが家に 灯もつくよ

 

明るい東京 楽しい東京

僕等の東京 みんなの東京

 

焼け野原を行進しながら終わり。

 

ずるい奴が勝つ的な話じゃなく全体的に生真面目な人が多かったのがよかった。女性に対するひどい扱いもない。石田松男役の石田一松さんは戦後初の衆議院議員総選挙で当選し、芸能人代議士だった。映画の役そのものみたいな人だったんだな。しかし、1956年に53歳で死去。のんき節も石田一松さんの持ち歌の一つということかな。

 

古川六郎役の古川緑波さんは終戦直後と思えないほどのぽっちゃり。でもいい声。しかし、1961年に57歳で死去とは早い。

 

タイトルの5人男というのは古川(字幕が黄色)、エンタツアチャコ(字幕が水色、緑)、石田、酒場の店員?

 

最後にみんなで歌っていた歌も前向きで好きな映画でした。