公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意
幸之助(牧伸二)は、東京駅まで送ろうとしていた桂木家を断り、小芳(左時枝)とふたりで去って行った。宗俊(津川雅彦)は、口惜しさと寂しさで何も言えない。放送局に行くと、ほどなく警戒警報が鳴り、東部軍管区情報が放送される。本多(山本紀彦)が司令部当番の時は、必ず空襲が来る、と元子(原日出子)が冗談めかして言うと、なんと焼夷弾が落下!元子たち女子放送員は、火のついた放送局で命がけの消火活動を続けるが…。
茶の間
巳代子「それじゃあ、誰も送っていかないの?」
宗俊「ああ」
巳代子「どうしてよ」
宗俊「どうしてもだよ」
巳代子「あんまりじゃないの。隣組も集めず、見送りもしないなんて」
宗俊「うるせえな。俺に文句言ったってしょうがねえだろ」
巳代子「だって!」
トシ江「巳代子」
巳代子「それじゃあ、あんまりさみしすぎるもの」
元子「そういうことじゃないの」
巳代子「何がよ」
元子「軍の機密なんですって」
巳代子「機密?」
元子「人(しと)が集まって万歳万歳ってやると軍の行動が敵に知れるから」
巳代子「知れるって誰が敵に知らせるのよ」
元子「そんなこと分かるわけないでしょ」
巳代子「変よ、そんなの」
彦造「ねえ、そんな変なことってありますかい。人が集まっちゃいけねえってんなら配給もんで行列作るのもいけねえはずだし、兵器造んのに工場へ集まることだっていけねえはずだ」
トシ江「彦さん」
彦造「悪いことしに行くんじゃねえんでしょ? わしら、お国のために命捨てに行くんでしょ。だったら思いのさま、声張り上げて送ってやりてえじゃねえですか」
元子「でもね、彦さん」
宗俊「いいから言わしてやれ。いわばな、言いたいこと言うのも送り祝いなんだ」
トシ江「まさか南方に持ってかれるんじゃないでしょうね」
宗俊「バカ野郎。東京湾はな、アメ公の潜水艦でウヨウヨしてるんだ。船で岸一歩でも離れてみろ。そのまま魚雷でおだぶつよ」
トシ江「まさか」
巳代子「本当なの? ねえ、お姉ちゃん」
元子「いくら何でもそれほどひどいことにはなってないわよ。それこそデマの張本人でとっ捕まるわ」
トシ江「なら、いいんだけどね…」
宗俊「はあ…何しろあいつかなづちだからなあ」
幸之助「おい、大将いるかい!」
宗俊「秀美堂だ」
吉宗前に並んで立つ幸之助と小芳。小芳は下を向いたまま。幸之助は坊主ヅラ。さすがに多分この出番1回のために坊主頭にできなかったんだろうな。
幸之助「そんじゃ、まあ行ってくらぁ」
元子「行ってくるって、おじさん、その格好で?」←紺のスーツ姿。
幸之助「そうだよ。じゃあ、達者でな」
トシ江「ねえ、ちょっと待ってくださいよ。まだ時間があるでしょう。こっそり私たち東京駅まで見送ろうって、今、早ごはんしてたとこなのにね」
幸之助「いや、どこまで送ってもらったって同じこった。それにもし見つかったら、いちゃもんつけられるのはお前さんたちだもん」
友男「だからこのままで行くって聞かねえんだよ」
幸之助「いいじゃねえかよ。考えてみたらさ、この年になるまで、こいつと肩並べて電車乗ったことねえんだよ。だから、こいつとさ、ブラッとその辺まで」
友男「じゃあ、達者でな」
幸之助「へいへい、じゃ、あばよ」
路地に出る。
友男「後のことは気にすんなよ」
幸之助「いや本当、頼むよ」
トシ江「本当に気を付けてくださいよ」
元子「お父さん」
宗俊「うるせえ」奥へ。
元子「お父さん…」涙をこらえるような後ろ姿を見てしまう。
放送会館の廊下
恭子「おはよう、ガンコ」
元子「あっ、おはよう」
恭子「どうかしたの?」
元子「ううん、別に。どうかしたの?」
最近スーツが多かった恭子が着物+もんぺ姿。
恭子「うん、私もやっとお仲間入り」
元子「え?」
恭子「とうとうやられちゃったのよ、私のうち」
元子「いつ?」
恭子「おととい、明け番でうちに帰り着いた途端」
元子「け…けがは?」
恭子「おかげさまでこのとおり」
宿直室
悦子「何だ、それで今日はやけにパリッとした格好してたのね」
恭子「だって着てたのは、二目と見られないようになっちゃったし、昨日は疎開させてあった荷物を取りに行ったりしたでしょう。それだってどうせいつかは焼けるんだし。だったらしまっておくより、どんどんと気に入ったものを着た方がお利口よ」
のぼる「ブルースもやっと悟りが開けたってわけね」
恭子「痩せ我慢じゃないけど、うちが焼けたら何となく度胸が据わったという感じ」
元子「こうなると焼けてない方が肩身が狭くなるな」
のぼる「バカ言わないの。焼けて得することなんか何にもないのよ」
恭子「ううん、おとといまでは私だってガンコとおんなじ心境だったもの。でも『憎まれ者世に憚る』っていうでしょう。ガンコぐらいは最後までしぶとく頑張ってよね」
元子「で、全焼?」
恭子「もち!」
元子「じゃあ…」
恭子「あっ、新居案内をしないといけないわね。地下へ潜って防空ごうに転居しました。よって住所変更はありません」
元子「防空ごう…」
恭子「まあ、梅雨になるまでには、どこかを探さなければしかたがないけど、当座は辛抱する構え。今や焼け跡の方が安全だっていう説もあるでしょ?」
悦子「そのかわり、昼間は艦載機に気を付けてよ。隠れる所がないからもうしつこく追いかけてくるんだから」
のぼる「それもニタニタ笑ってるアメリカ兵の顔が見えたっていう投書があったわね」
元子「こうなるといっそ早いとこ上陸してきてほしいわ」
恭子「ガンコ」
元子「うちの河内山がそう言うのよ。もう逃げ回るのはたくさんだって」
のぼる「だからって慌てることないわよ。薩摩焼酎から電話があったけど、沖縄は相当ひどいそうよ」
悦子「薩摩焼酎、鹿児島だものね。覚悟してるんだろうな」
元子「きしめんから電話があったけど、名古屋放送局はめちゃめちゃなんですって」
恭子「浜松の局もでしょう? となると東京の放送局だけが安全だということは、あのうわさ本当なのかしら」
元子「たとえ本当でも絶対アメリカになんか使わせない。そうなったら私がこの手で火ぃつけてやるわ」
のぼる「いいわよ、その時は爆弾三勇士、一緒に飛び込んであげるから」
悦子「あら、四勇士よ」
のぼる「あっ、そうか」
笑い声
警戒警報
恭子「あ~あ、今日はベッドで手足を伸ばして寝られると思ったのに」ラジオのスイッチを入れる。
ラジオ「東部軍管区情報。敵らしき数目標、南方洋上より駿河湾に向かって北上しつつあり。なお、後続数目標あり。警戒を要す」
悦子「やだ、あれ、本多先生の声じゃない?」
元子「本多先生が司令部当番の時は必ずボカボカと来るんだから」
のぼる「急ごう!」
空襲警報
防空頭巾をかぶった元子たちは廊下を走る。
川西「ああ、駿河湾と房総半島の両方からたっぷりおいでなさるらしい。非常事態でも起きたら呼びに行くから君たちは地下で待ってなさい」
一同「はい」
空襲警報が鳴り続ける。
地下室
煎餅?をかじる元子たち。
悦子「召集されたって、どうせまた一晩中、もぐらみたいにここに潜ってなきゃならないんだもの」
元子「だけど、3月10日の時は泊まりだった浅岡嬢も覚悟したっていうわ」
のぼる「もう熱くてドアが開けられなかったって言ってたわね」
恭子「そういえば、あの時も司令部の放送当番、本多先生じゃなかった?」
元子「そうよ、本多先生だったわ」
悦子「すると、今夜辺りも…」
のぼる「もう、すぐ悪乗りするんだから。ガラの悪い癖よ」
悦子「は~い」
「焼夷弾落下! 焼夷弾落下! 全員直ちに消火活動にかかれ! 焼夷弾落下! 焼夷弾落下! 管制本部炎上中! 管制本部炎上中!」←川西かな?
元子「うちの部屋が危ない!」部屋を飛び出す。
桂木家2階ベランダ
宗俊「やつら、この辺り、見切りつけやがったな」
巳代子「ねえ、燃えてるの、お姉ちゃんの方じゃないの?」
宗俊「な~に、大(でえ)丈夫だ。アメ公はな、放送局を乗っ取ろうって魂胆だそうだ。だからあそこにいる限り安全なんだ」
巳代子「だけど、どんどんと来るわよ。ほら、あんなに」
宗俊「なめたまねしやがって! やい! 素通りするたぁどういう魂胆だ!」
巳代子「そんなこと言ったって、それじゃあって落とされたらどうするのよ」
宗俊「バカ野郎! どっちにしてもやつらはお前、東京に落としていくに間違いねえんだ」
トシ江「あんた! あんた!」
彦造「大変だ! 今燃えてるあれは管制本部だってぇ話ですぜ」
宗俊「管制本部だ?」
巳代子「管制本部といったら放送局の隣じゃないの!」
宗俊「放送局が管制本部の隣なんだい!」
トシ江「爆撃されんならどっちだっておんなじじゃないですか!」
宗俊「バカ野郎! まあいい、やつらの狙いはな、管制本部なんだ。しかしおめえ、そのとばっちり受けて元子たちがやられちまったら、こんな間尺に合わねえことはねえじゃねえか」部屋を飛び出す。
トシ江「ねえ、ちょいと…ちょいとどこ行くの!」
宗俊「決まってるじゃねえか。放送局へ行くんだ」
彦造「大将!」
宗俊「こら、放せ! ラジオが止まったら日本国ってのは止まるんだい!」
トシ江「そんなこと言ったって…」
巳代子「駄目よ! ああ、こっちにもやって来る! 早く!」
トシ江「巳代子!」
宗俊「早く!」
そのころ、元子たちは火のついた放送局でまさに獅子奮迅の働きをしていたのです。
燃えさかる炎
男「はい!」←本多先生?
女「はい!」
女「はい!」
女「はい!」
元子「はい!」
バケツリレーで水を運ぶ。
立花「窓枠だ! 窓枠が燃えだしたぞ!」
元子「はい!」
男「おい、おい!」
女「はい!」
男「おい、おい、おい!」
女「はい!」
暗がりだし誰が誰か分からん。
「はい! はい!」
「水、水!」
沢野「南側の部屋に焼夷弾落下! 応援頼みます!」
のぼる「私が行きます! ここは頼んだわよ!」
元子「はい!」
燃えさかる炎の映像。実際、スタジオ内も火を出してたんだからすごいわ。
この夜のB29、およそ300機。被害を受けた重要施設は宮城(きゅうじょう)、海軍省、運輸省、外務省、総理官邸ほか各官邸の多くと警察、郵便局、税務署等々、限りない中で放送局は必死の消火作業で危うく消失を免れることができました。娘たちは本当に頑張りました。
これが5月25日から26日にかけての空襲かな。
死んだように眠る元子たち。
宿直室前
宗俊「元子! お~い、元子! 22号室、これだな。元子! お~い、元子! 元子!」部屋に入っていく。
沢野「失礼ですが、ここは女性の部屋です」
宗俊「ああ? 娘なんだから女性に決まってんじゃねえか!」
沢野「ですから、お宅の娘さんだけでなく、ほかの女性も休んでるって…」
宗俊「そんなこと、お前、見りゃ分かってんじゃねえか」
沢野「でしたら、ご遠慮願います」
宗俊「うるせえ、このとうへんぼく!」
沢野「とうへんぼく? 無礼な」
宗俊「無礼もへったくれもあるもんか!」
元子「どうしたの? お父さん」
宗俊「元子! おい、よかったよかった。よくやったな。おかげでお前、ちゃんと放送局が残ってるじゃないか、え。あっ、これを食え。これ食えな。隣組の連中がな、作ってくれたんだ。握り飯だ。おっ、六根さん、おめえも食いな。あ…あんたたちもこっちへ来て食いな。ほら、ほ~ら握り飯だ。やってくれ」
のぼる「ありがとうございます」
宗俊「立花さんに聞いたんだけどよ、え、みんなよくやったんだってな。あんたもそんなとこで突っ立ってねえで遠慮なくやってくんな、え」
沢野「いえ、結構です」イケボだな~。
宗俊「随分、愛想がねえな、おい。あれでもアナウンサーか?」
むせながらも一生懸命お握りを食べるのぼる。元子も無言で食べている。
放送局は無事でした。けれど、29日には横浜を壊滅状態にした空襲があり、6月26日、無事だったこの放送局から沖縄玉砕のニュースが放送されました。
♪海行かば
沖縄の悲劇は本土決戦の防波堤として、県民、学徒までが総動員されて戦ったことでしょう。生きて虜囚の辱めを受けずの戦陣訓は少年少女にも徹底し、戦渦に巻き込まれた住民の犠牲者は実に10万人に上る凄惨なものでした。
爆撃や震える小さな子供の映像
つづく
ん? まだ28分だぞと思ったところで
ブルーバックにオープニングのインストバージョンとキャスト紹介。芳信いたー?
それでもまだ28分。
「本日も晴天なり」
主題歌
朝の前奏曲(プレリュード)
作詞 東海林 良
作曲 三枝 成章
歌 西尾 尚子
朝の沈黙(しじま)きらめく陽ざし
それは季節の調べ告げる
昨日捨てて何処へ行くの
風の中の私 あー
愛のときめき燃えるあこがれ旅の始まり
空のかなた あー心ざわめく冒険
私からあなたへありがとう
想い出の青春(とき)を
突然出てきた歌詞ありバージョン! 前半は人形町駅周辺で後半は原日出子さんのプロモーションビデオみたいな感じで最後に映るは水天宮。ドラマ本編と画質が違うのはフィルム撮影なのだろうと書いてる人がいて納得。スーパー戦隊だと2008年までフィルム撮影で撮影と声の収録が別でめちゃくちゃ古くさくみえてしまう、あれだね。この映像は声は必要ないからフィルム撮影なんだろう。
来週も
このつづきを
どうぞ……
「澪つくし」の「恋のあらすじ」だったり「マー姉ちゃん」の「手のひらは小さなシャベル」と違い、毎朝、聞いているオープニングに歌詞がついたものだったので覚えやすいっちゃ覚えやすい。すごい歌詞を詰め込んだ感はあるけど。
↑懐かしの「恋のあらすじ」。「手のひらは小さなシャベル」「朝の前奏曲」はiTunesにない。
「澪つくし」はオープニングに歌詞をつけたものもある。
西尾尚子で検索すると、子供向けの歌の作詞をしてる方が引っかかる。同じ人か分からないけど、作曲は三枝成章さん。
この2曲が作詞・西尾尚子/作曲・三枝成章
戦争を丁寧に描いているからこそ、例えば「エール」とか80年代に朝ドラになってたら…とかつい思っちゃう。「エール」が好きだった人には申し訳ないんだけど、戦時歌謡に興味があったから見る気満々だったんだけど、冒頭の原始人で挫折してしまって…ちゃんと戦争を知った人が描いた作品で見たかったなあって。
それ言うと「あぐり」だって面白くて好きだったけど、女性の脚本家だったら、どんなふうになってたかなとか思っちゃうけど。女性脚本家といってもいろいろだけどさー。
終戦まであと2か月か…。