公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意
恭子(松本友里)は西川(北京一)に、東京のほうが合ってるかもしれないなどとアドバイスし、純子(山口智子)には、宝塚を辞めようと思っている、と打ち明ける。雄太(唐沢寿明)の進路の話に昭(西川弘志)が、雄太が家に来た時父は、「雄太の思うとおりさせてやれ」と言ったのだから、思い通りにさせてやったらいい、と言う。純子が事のしだいを雜賀(桂枝雀)に説明すると、雜賀は正太夫(笑福亭鶴瓶)の言づけを思い出し…。
雄太が大学に行かないと言いだしてから純子の一家には何かしらぎくしゃくした空気が流れているのであります。
恭子が実家に帰ってくると、西川がパントマイムの稽古をしていた。
西川「何や、恭子ちゃん見てたんかいな」
恭子「もっと見せて」
西川「面白がってくれるのは恭子ちゃんぐらいのもんや。この間もな、これと同じやつやってんけども何の反応もなしや」
恭子「あ、食べる? ぬくぬくやで」焼き芋を手渡す。
西川「おおきに」
恭子「この間、正太夫さんの気持ちをパントマイムでお姉ちゃんに伝えたやろ」
西川「あれな」
恭子「私も見てたんや。涙が出そうやった」
西川「あれは正太夫君の気持ちというよりも自分の気持ちや。誰かに伝えたいと思う僕の気持ちや。ただ相手がおらんというだけで」
恭子ちゃん、ドギマギ!?
恭子「西川さんの芸は東京の芸かも分からんね」
西川「東京の?」
恭子「そうや。こっちの人には洗練されすぎてると思うわ。ほら、みんなもっと泥臭いもんが好きなんと違う? スマートやもん、西川さんのパントマイム」
西川「東京か」
恭子「ううん。ほんまは東京よりもニューヨークとかそういう所が似合うような気ぃするけど」
西川「おおきに。今日はこっちに泊まるんか?」
恭子「そうや。今日はレッスン終わったらまるまる暇やし。ほなまた」
西川「おおきに」恭子を見送り、またパントマイムの稽古をする。
小野家。ラジオを消した恭子は改まって純子に話しかけた。
恭子「お姉ちゃん。私な…宝塚やめようかと思てんのや」
純子「何で?」
恭子「まあ夢破れたいうとこかな」
純子「それで? 宝塚やめてどないすんの?」
恭子「ジャズをやろうかと思てる。場合によっては東京に出てもええと思てんねや」
純子「東京へ?」
恭子「まだ決めたわけやないけど。お姉ちゃん、どない思う?」
純子「どない思う言われても…。あんまり急な話やさかい。そやなあ…。すまんけど、お姉ちゃんには何も言われへんわ。それがええかどうか結局は恭子が自分で決めることやから」
恭子「そやな。自分のことやもんね」
純子「お姉ちゃんには分からへん。堪忍な」
恭子「ううん。お姉ちゃんに相談しただけで気が済むねん。やっぱり…やめよう思う。やめる」
隣の部屋に行った恭子は一人涙を流した。何も言われへんと正直に言う純ちゃんがいい。
翌日の午前中、速水秀平がやって来ました。
秀平は「ザ・ワールド」から舞妓さんの写真が欲しいと言われて京都へ。純子は雄太の大学に行かないことを秀平にも言い、秀平からも応戦してもらうことにした。
秀平「まだそんなこと言ってんのか。どうしてなんだ? 僕なんかハイスクールしか出てないから大学なんて憧れたけどなあ」
雄太「僕はええんや」
昭「もうえやないか。雄太も困るだけや」
昭は秀平が言っても無駄だとし、去年の春から雄太が就職することは知っていた。昭は雄太が自分の好きなようにするのがいいと思うとあきたちに言った。
昭「みんな、雄太が初めてうちに来た日の夜のこと覚えてるやろ?」
ここから回想。わぁ~、子役の雄太、かわいい。
純子「雄太君、どうぞ」
昭「雄太は自分一人、布団引きずって廊下に寝たんや。その時、お父ちゃん言うてはった。構わん、雄太の好きなようにさしてやれって」
陽一郎「よし、じゃあそないせい」
あき「あなた…」
陽一郎「ええんや。好きなようにさしてやってくれ」
陽一郎さんも少年昭も懐かしい。
あき「それは確かにそうやけど…」
昭「雄太が自分のこと自分で決めんのや。それのどこがいかんのや。そら家のもんに負担かけたないっていう気持ちもあるかもしれん。そやからいうて無理やり大学行かしたら雄太がつらいだけや」
秀平「お母さん。実は僕もそう思います。お役に立てなくて申し訳ないんですが」
コラコラ、秀平…(^-^;
あき「去年の春から就職を決めてたというのはほんまか?」
雄太「ほんまや」
あき「うそや」
昭「うそやない。そやから去年の夏の予選で9回裏のピンチにど真ん中のストライク放ったんや。就職したらもう野球はでけへん。あれが雄太の最後の一球やったんや」
純子「そやったの…」
秀平「なるほど。それでど真ん中の直球か」
雄太「堪忍な、お母ちゃん。僕かて考えて考えて決めたんや。わがままかもしれんけど思いどおりにさしてほしいのや」
純子「お母ちゃん」
わらべ出版に行き、久助に雄太のことを話し、しかたないので雄太の好きにさせると純子は言った。就職するのもいいと久助も応じた。
久助「僕な、あれおととしやったかいな。森本薫という人の『女の一生』という芝居を見たんや」
節子「私、それ見ました。ものすごうよかったですね、あれは」
久助「あ…ちょっと黙っててくれる?」
節子「はい」
久助「いや、そいでな、その中で主人公の布引けいというのがこんなこと言うんや。『誰が選んだのでもない。私が選んだ道ですもの』…ちゅうことをな。僕はあれ聞いて感動したな。僕かてそうや。子供向けの本が出しとうて、まあ高木君とこうしてわらべ出版というものをこしらえたんや。けどな正直言うて金はない。つらいねん。けど、それこそ誰が選んだのでもない、僕が選んだ道や。なあ、節ちゃんもそない思ってくれてんのやろ?」
節子「いいえ。私はお金のためにここに入れてもろたんです」
久助「あら~、はっきり言いましたな。アハハハ」
節子「でも今は違いますよ。今は先生と一緒に頑張るのが私の道やと思てます。どうですか? ええこというでしょう?」
久助「泣かせまっせ。ハハハハ。まあまあそういうこっちゃ」
純子「昭も似たようなこと言うてました」
久助「そうか、アハハハ」
久助は正太夫から伝言を預かっていた。「純子ちゃんへ 2時から5時までいずみ公園で毎日待ってます。正太夫」。久助がその伝言を聞いたのは3日前。
純子はいずみ公園へ行った。
正太夫「♪いのち 短かし 恋せよおとめ 朱き唇」
ブランコに座っていた正太夫に声をかけた純子。
正太夫「こんなはよう来てくれるとは思てなかった。1週間ぐらい待たされるやろと思てあった」
純子「ほんまに毎日来てはったん?」
正太夫「当たり前や」
純子「何でまた…」
正太夫「この半年間ず~っと考えてあったんや。やっぱり…これだけは言うとかな僕はあかんようになる思てな。あんな純ちゃん。これからず~っとええ友達でいてくれるか?」
純子「決まっとるやないの」
正太夫「それでええのや。おおきに」
純子「正太夫さん。たったそれだけを言うために3日もこんな寒いとこで待ってはったん?」
正太夫「そうや。けど…僕にとっては楽しい時間やった。いろんなこと思い出してあった」
純子「ごめんなさい。正太夫さん…ほんまにごめん」
正太夫「何、言いやんな。幸せになってや。幸せに…」
純子は泣き笑いの笑顔でうなずいた。
正太夫のこと丁寧に描くね~。運動会で胸を触ったりセクハラっぽい嫌な思い出しか思い出せない。