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【連続テレビ小説】マー姉ちゃん (107)

公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意 

闇屋の山田(小松政夫)は、マリ子(熊谷真実)とマチ子(田中裕子)にアメリカ受けする日本風の画を描いて欲しいと頼む。マリ子は絵具と紙は調達するので20円以下では描かないと断言。困る山田に、アメリカから融通してもらう栄養価の高い食料を画料としても良いと交渉。ヨウ子(早川里美)のため、せっせと画を描く二人。はる(藤田弓子)も療養所でせっせと食料を配り歩く。そこへ、同業者の夏川(早崎文司)もきて…。

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マリ子やマチ子に用があるという怪しげな男の話を聞くというマチ子。家に上げることに。

山田「(一平に)いや~、おいしゃん、すいましぇんやったね~。身内とは知らんやったもんやけんね。どうもすいまっしぇん」

 

千代もマリ子、マチ子も玄関に座り、これ以上、上がらせる気はなかった。

山田「ああ~…あ~、グッドアフタヌーン

千代「んな挨拶みたいなもんはいらんけん、はよ用件ば言いんしゃい!」

山田「はい、そんなら用件ば言わしてもらいまっしょう。実はですね、お二人にピクチャー…アイム ソーリー。絵ば描いてもらいたいと思って来ました」

マリ子「絵をですか?」

 

山田「はい、どげんでっしょうか?」

マリ子「するとあなた画廊の方?」

山田「いやいや、そぎゃんとじゃなかとです」

マチ子「するとあなたどういう方?」

山田「あ~、その何と言いますか…」

 

千代「こっちで判断するけん。はっきり言いんしゃい、はっきり!」

山田「せやけん、はっきり言いますとですね、私はヤミ屋です。あの~…イングリッシュ…アイム ソーリー。英語で言うとブローカー」

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ブローカーと言えば川村。

 

一平「やっぱりそげんたちの男やったか」

山田「そげん…そげなこと…」

マリ子「でもそのヤミ屋さんがどうして私たちに絵を依頼なさるの?」

山田「そやけん、何と言いますか、その…」

マチ子「でもやっぱり何か変よ、この話。マー姉ちゃん

山田「いや、そげなとじゃなかって言いよりまっしょうが」

 

マチ子「だって毎日のように物の値段が上がって、お米だってお金だけじゃ買えない世の中なのに私たちの絵が欲しいだなんて奇特な人がいるとは私、信じられないわ」

山田「それがおらっしゃるとです」

マリ子「へえ~。でも私と妹では随分、作風も全く違いますよ。その方は一体どういう絵をお求めですの?」

山田「どげな絵っちゅうてですね、ただもうおなごの絵でありさえすりゃ、それでよかとですよ」

マチ子「どげな絵でもよかってことはなかでっしょうが」

 

山田「なら、もう一つはっきり言いましょうか。その絵ば欲しがっとるとはアメリカです」

千代「アメリカ?」

山田「はい。あの、何と言いますかこの…舞妓しゃんであるとかですね、その浮世絵風であるとかですね、何せきれいなべべば着た女の絵であったらですね、もう何でもよかってこげなふうに言いふらすとですよ」

マチ子「冗談じゃないわ。私たち、そんな絵を描く絵描きではありません」

 

マリ子「あ~…お待ちなさいよ、マチ子」

マチ子「だって…」

マリ子「それで画料、いくらぐらい頂けますの?」

山田「あ~…」

千代「お嬢様!」

 

マリ子「つまり私たちの絵を1枚いくらで買っていただけますの?」

山田「5円じゃどげんでしょうか?」

マリ子「5円?」

マチ子「話にならないわ。お引き取り願いましょう、マー姉ちゃん

山田「ちょ…ちょっと待ってください。そんならですね、1枚7円ならどげんでしょうか? あげなんて、あんた、ちょろちょろって描いたら、一日5枚や10枚、軽かでっしょうが。悪い商売じゃなかですばい、これ」

 

マリ子「でも絵の具はどうするんですか? ちょろちょろっと描くにしても絵の具が必要でしょう?」

山田「それはまあそうですたいね…」

マリ子「当世、どこに行っても、そんなものは手に入らないんだし、それをあなたの方で手配してくださるんだったら、また話は別ですけれど」

山田「そげなこと言われたっちゃですね、私はアメちゃんの物資横流し専門ですけんね」

 

マリ子「ということはどういう品をお扱いですの?」

マチ子「本当にいいかげんにしたら? マー姉ちゃん

マリ子「いいのよ、伺うだけ伺っておいた方が」

山田「そうですたい、一応、説明しましょうかね。つまりですね、何と言いますか、PXの品物ばですね、アメちゃんからうまいこと言うてですね、買うてですよ、それば横流ししよるとこういう商売ですばってんがさ、やっぱし向こうさんの欲しがるもんもね与えてやったら強かとやりやすかとこういうわけですたい」

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PX…進駐軍専用の売店

 

マリ子「それがつまり舞妓さん風の絵だとおっしゃるわけね」

山田「えらい! ねえちゃん、さすがやね。話の早か! ほんなごて!」

一平、咳払いして山田をにらむ。

マリ子「いいでしょう。お引き受けいたします」

山田「ほんなごと!?」

マチ子もお千代ねえやも驚く。

 

マリ子「いいの。ただし、こちらにも条件があるんですから」

山田「条件?」

マリ子「うん。紙と絵の具は私の方で一切用意いたします。ですから1枚20円以下では描くわけにはまいりません」

山田「そげな殺生です…」

マリ子「これだって相当のダンピングなのよ」

山田「ダンピング…」

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ダンピング…投げ捨て、投げ売り

 

マリ子「私だって菊池寛先生の挿絵を描いていた挿絵画家なんですし、妹だって一流誌に描いていた漫画家なんですしね」

山田「それは知っとりますばってん…」

マリ子「いいんですよ。描いてもらいたいのはあなたの方で私の方で描かせてくださいとお願いしたわけじゃないんですから」

山田「うわ~、言わっしゃる、ほんなごて…」

マリ子「だったらもう少し頭をお使いあそばせよ」

 

山田「いや、頭って言われったっちゃ私はあんた、ヤミ屋なもんやけん…」

マリ子「つまりね、ウイスキーやチョコレート、バターなんかを有利に回してもらうんでしょう? 私たちの絵で」

山田「それはまあそうですたい」

マリ子「だったらお金でなくて品物で画料を頂いてもいいと申し上げてるの」

 

山田「品物で?」

マリ子「ええ。つまりね栄養価の高いものがいいわね、うん」

山田「う~ん…」

マリ子「さあ、よ~くお考えになってちょうだい。水彩画でも何でもこちらには一流品のものが手に入る入手先があります。ですからアメリカさんが本国にお持ち帰りになっても決して恥じないようないい絵を描いてあげます。ですから、足元を見られるようなご商売はおやめなさい!」

じ~っと自分の足元を見る山田。「あ痛~…どげんなっとっちゃろうか…」

 

という具合にこの試合、まずジャブの応酬から始まりましたが…

 

山田が帰った後、茶の間にいるマリ子たち。一平はマリ子の対応に驚く。

マチ子「でも考えたわね、現物画料とは」

マリ子「で、どうするの? マチ子は」

マチ子「もちろん描くわよ。ヨウ子ちゃんのためでしょ?」

マリ子「当たり前じゃないの。でなかったらどうしてあんな変な男を相手にしますか」

一平「なるほど、なるほど、なるほど。バターでん、チーズでんは、あれは本当にヨウ子ちゃんに食べさせたらヨウ子ちゃんの体に栄養がこうグ~ッと行き渡るけんね」

 

一流の絵の具とやらはどこにあるのかと聞く一平。マチ子も口から出まかせだと思っていたが、「信じよ、さらば与えられん」とどや顔のマリ子。押入れの中に大きな行李があり、疎開する時に手に入るだけの紙と絵の具を買い込んで荷物と一緒に送っていた。

 

一平「はあ~…マリ子さんという人は…」

マリ子「いいえ。決してこんなふうに役に立つとは思っていませんでした。でもいつかきっと絵が描ける世の中がやって来る。私はそう信じていましたし…。いいえ、信じたかったのかもしれませんね」

マチ子「マー姉ちゃん…」

マリ子「とにかく絵の注文が来たのよ。描こうじゃないの、思いっ切り! ねっ、マチ子!」

マチ子「うん!」

 

かくて芸は身を助け、かつ病気の妹を助けようとしておりました。

 

芸術家で自分の描きたいものしか描けないタイプの人もいる中、マリ子もマチ子も依頼があるものを描けるっていいなあ…マリ子は交渉上手だし。夢中で絵を描く二人。

 

今津療養所。

はる「結構です。大いに結構です」

千代「それでは…」

はる「ヤミ屋さんの片棒を担ぐというたらそれは卑劣な行為かもしれません。でもそのためにこの療養所のご病人の皆さんに少しでも栄養が行き渡るのなら、マリ子たちは天職だと思うて、その絵をどんどん描きまくればいいんです」

千代「ちょっと待ってつかあっせ、奥様!」

はる「何がです?」

 

千代「『何がです?』ってこのチーズやらバターやらをほかの病人さんたちにも?」

はる「当然のことではありませんか」

千代「ばってん…」

はる「いいえ。今は栄養どころか日本中がひもじい時代なんですよ。そういう時に自分たちの口だけをかわいがるような人間に私はマリ子たちを育てた覚えはありまっしぇんよ」

千代「けど…」

 

はる「この結構な品物を皆さんと分かち合ってこそマリ子たちの仕事も許されるのだしヨウ子の身にもつくと思います。そうですね? ヨウ子」

ヨウ子「はい」

千代「ヨウ子お嬢様…」

はる「いいですね? 必要となさっている方から分かち合うべきです」

千代「はい…」

はる「さあ、それでは早速向こうの病棟から分けてきてさしあげましょうね」

 

おかげで順調な回復を見せるヨウ子とは正反対に、はるの病気はまたまた再発の兆しを見せました。

 

磯野家には夏川という男が訪れた。金八先生の教頭先生でおなじみ早崎文司さん。でも眼鏡もないから一瞬分からなかった。

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澪つくし」でもアミノ酸を売りつけに来ていた。

 

夏川「磯野先生でございまんな?」

夏川と名乗り、手土産のコーラを持って来た。

夏川「まあ、アメちゃんのサイダーっちゅうとこでっしゃろうな。最初はね、ちいと薬臭か感じですばい。なかなかおつな味で」

マリ子「これはご丁寧にどうもありがとうございます」

マチ子「駄目よ、用件聞かないうちからそんなものを頂いちゃ」

マリ子「ああそっか。でも、アメリカのサイダーってどんなものかね」

 

夏川「いえいえ、大したもんじゃなかとですよ」

マチ子「あら、大したもんじゃないからお持ちになったんですか?」

夏川「やりにくいな…あんた、一体、誰なんね?」

マリ子「妹のマチ子です」

夏川「あら…。こちらの先生も絵をお描きになる?」

 

夏川もまた絵の依頼に来た。「絵ば描いてやんしゃい。チーズでん、バターでん、肉でん、ケチャップでん何でも持ってきますけん」

マリ子「お肉にケチャップですか?」

夏川「へえ! そんかわりね、あの…」

 

山田「夏川。きさん、何しよるとか? ここで」

夏川「何しよるとかって、わしは先生方に絵ば頼みに来たんよ」

山田「しゃあらしか! ここの先生の絵は俺の専売特許ばい!」

夏川「ふんっ! お前に先生ば独り占めされてたまるかい!」

山田「何こきよるか、きさん、この! きさんが安っぽい絵でごまかすけん、こげんなふうになるっちゃろうが! アメちゃんだって、お前、目は節穴じゃなかったっちゅうことばい」

 

夏川「ばってんこげんして手土産ば持ってのう!」

山田「手土産!? へえ~コーラか! コーラか、へえ~!」

山田は化粧品を持って来たと言うが、マリ子は食べ物のほうがうれしい。玄関先でケンカを始めたのでマチ子が締めだした。

 

かくて絵の値段は…というより絵の栄養価はつり上がっていく様子。

 

今津療養所。

はる「結構ですとも。大いにつり上げておやりなさい」

マリ子「お母様ったら」

はる「構いませんよ。向こうさんだってちゃんとしたご商売なんでしょう? 本当の商人というものは決して損はしないものなんですよ。ですから必要とあればギリギリの所までつり上げてくるはずです。ですから牛肉でもケチャップでもどんどんと頂いていらっしゃい。ここには必要としている方、本当に喜んでくださる方がたくさんいらっしゃるんですからね」

 

マリ子「はい。それであの…」

はる「何ですか?」

マリ子「たまには私たちも牛肉を頂いてもいいでしょう?」

はる「もちろんですよ。正当な報酬なのだし、あなたたちだってたまには栄養をつけなければ決して乗り切れる時代ではありまっしぇんからね」

マリ子喜ぶ。はるははしたないとたしなめるが、ヨウ子はマリ子にお礼を言う。

 

はる「ただし、相手がヤミ屋さんだからというて決していいかげんな絵はいけませんよ。ちゃんとしたものをお描きなさい」

マリ子「はい!」

 

昔からおいしいものには目のないマー姉ちゃん。明日からもっと頑張ること絶対に請け合いです。

 

今日はブルーバックの「ただ今の出演」でつづく。

 

外国の映画を観ていると分かち合い精神の人は大抵ずーっと貧乏なんだけど、分かち合いしながら金持ちになっていく磯野家はすごい。