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【連続テレビ小説】純ちゃんの応援歌 (100)

公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意 

太夫笑福亭鶴瓶)が殴られて、小野家に担ぎ込まれる。昭(西川弘志)と、恭子(松本友里)がジャズを歌っているキャバレーに様子を見に行き、酔っ払いに絡まれたのだ。純子(山口智子)は、恭子に今の仕事をやめさせたほうがいいのか悩み、秀平(髙嶋政宏)は、自分がみじめだと思うならやめたほうがいい、と言う。純子が考え事をしながら食堂で仕事していると、組合長の村山(原哲男)が、恭子に見合いの話を持ってきて…。

昭と秀平が肩を貸して小野家に運び込まれた正太夫

秀平「誰とけんかしたんだ?」

昭「キタの恭子姉ちゃんが出てるキャバレーに行ったんや」

あき「えっ、キャバレー?」

昭「美山はるか出演っていう看板が出てたから正太夫さんがちょっとだけステージ見ていこうって言わはって」

 

太夫「いえ、あの違いますよ。あの、お酒は飲ましてませんで昭君に。ジュースだけです」

純子「それで?」

昭「もう恭子お姉ちゃん歌うてた。2曲ぐらい歌うたら、お客さんが『トンコ節』歌えって言うて、で、お姉ちゃん断ったんや」

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西條八十古賀政男

 

太夫「ただのね、酔っ払いの不良がイチャモンつけてるんですよ」

昭「ほいで、恭子姉ちゃんが『私はジャズ歌手やからジャズしかよう歌わん』て、ちょっと言い合いになったんや」

あき「で、どないしたんや?」

 

昭「僕、カッとなって『いらんことすな』って言うてけんかになってしもたんや」

秀平「君がけんかしたのか?」

昭「僕や」

太夫「僕がな仲裁に入ったんやけど相手が4~5人でかなうわけないさかい。ほんでやられてしもて」

純子「昭は何ともないの?」

昭「僕は大丈夫や」

 

真っ赤な口紅を付けた恭子が帰ってきた。

恭子「大丈夫? 私、心配でタクシーで帰ってきたんや」

太夫「大事ないて、もう。逆にえらい心配さして悪かったな」

恭子「ごめん。私がお客さんの言うとおりに歌うてたらよかったんやけど」

昭「あんなやつらの言うとおりに歌うことなんかないよ」

恭子「そやけど…」

 

大丈夫だという正太夫はあれからどうやった?と恭子に聞く。

恭子「うん、支配人がな、よう嫌がらせに来る連中や言うてはった」

太夫「ほんま」

あき「正太夫さん、おおきに」

太夫「いやもう、仲へ入ってな、やられてんねんから人に言われんわ、これ。恥ずかしいて」

 

純子「昭、あんた何で我慢せえへんかったん。様子見たら相手がどんな連中かいうことぐらい分かったやろに」

昭「恭子姉ちゃん、もうあんなとこで歌うのやめとき。何であんな思いまでして歌わなあかんのや」

恭子「昭は関係ないやろ。黙っといて。あんなん今夜が初めてやあらへん」

昭「何でや! ステージに出してもろたら嫌なことに文句も言われへんのか? 何かあってもヘラヘラ笑うてなあかんのか?」

 

純子「昭、あんたは横からいらんこと言わんかてええ。恭子かて一生懸命頑張ってんのやないの。ちょっとぐらいのことは我慢してやってんのや」

昭「お姉ちゃんかてお母ちゃんかて恭子姉ちゃんがどんなふうにして働いてるか一遍見てみたら分かるわ。恭子姉ちゃんの歌なんか誰も聴いてへんのや、みんな酒飲んで。お姉ちゃんはただの前座や。レコードかけてても同じなんや」

秀平「昭君! やめろよ」

 

昭「何でや。ほんまのこと言うてるだけや。みんな知らんから教えたってるだけや。それほっといたら家族やないで! それを察してやるのがほんまの家族や」

純子「昭。お姉ちゃんかてお母ちゃんかて恭子がつらい思いしてるやろということぐらいよう分かってる」

昭「分かってへん。分かってたらそんなことやめ言うはずや!」

 

純子「お姉ちゃんはそんなこと言いたない。大変でも何でも恭子が自分でやる言うてんのやから、それを周りがやめたらどうやなんて言えるわけないやないの」

あき「そうやな。お母ちゃんもそない思うで」

昭「そんなんきれい事や」

太夫「もう、やめてもう! そばで聞いてんのつらいなあ、もう。昭君も純子ちゃんもほんまやめて。つらい」

 

恭子「昭。よう覚えといて。あんたがお姉ちゃんのためにあいつらとけんかしたことは、お姉ちゃんうれしかった。おおきにてお礼を言わなあかんことかも分からへん。そやけどな、私かて惨めを承知で一生懸命歌うてたんや。ううん、あんなん当たり前や。下手なジャズ歌手にはあれが精いっぱいなんや。そう思うて、あんなん惨めなんやないって自分に言い聞かせてるんや。そやけどな、昭にそんなふうに言われると、お姉ちゃん、ほんまに惨めな気持ちになってしまうわ。昭の目にはお姉ちゃんのしてること、そんなに惨めやった?」

 

昭は席を立ち、2階へ行ってしまった。正太夫は力なく笑い「これがほんまのバッカじゃなかろうかいうやつやな」と和ませようとするが失敗。

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元ネタ?

 

純子は2階の洗濯物を取り込む。

秀平「僕は考えた方がいいと思うね」

純子「何で?」

秀平「何でもそうだと思うけど自分のことを惨めだと思いだしたらやめた方がいい。惨めだと思いながらやる仕事にろくなことないよ。僕だって食うや食わずの暮らしをしたこともあるし、戦争中は収容所に入ってたこともあるし、子供の頃、イエローモンキーと言われて石を投げられたこともある。だけど、自分のことを惨めだと思ったことは一度もなかったな。惨めだと思いだした瞬間から敗北が始まるんだ。そういう意味で言えば恭子ちゃんはもう負けてるよ」

純子「…」

秀平「ごめん。少し言い過ぎた」

純子「…」

純子は余計なことを言わない子。秀平は清原先生のことも純子一人の時に言ったりすんだよねえ。恭子に言ってもよかったんじゃないの?

 

畳に寝転ぶ昭。

雄太「けんかしたんやてな」

昭「聞いたんか」

雄太「お母ちゃんに聞いた」

昭「僕は恭子姉ちゃんが見てられへんかった、それだけや」

雄太「僕かて、同じことしたやろ思うわ」

今日の雄太の声はなぜかいつもより甲高く聞こえる。久々のせい?

 

昭「そやけど…」

雄太「何や?」

昭「うちは自分のことは自分でする主義や」

雄太「うん」

昭「みんな家族のすることに注文つけへんやろ」

雄太「そやな」

 

昭「このごろそういうの冷たいと思うようになってきたわ。雄太はそう思うことないか? それやったらバラバラや。例えば、僕が飢え死にしかけてるとするやろ。そしたら僕が食べ物欲しいと言わん限り誰も声かけてくれへんのや。僕が遠慮していらんと言うたら、そうか言うて食べ物引っ込めてしまうんや」

雄太「そんなことはないやろ」←そうだ、そうだ!

昭「いや、そうや。普通のうちやったら食べなあかん言うて無理やりにでも口に食べ物入れてくれる。まあ、お父ちゃんがそういう人やったからしゃあないのかもしれんけど」

 

雄太「そやろか。けど僕は好きやで」

昭「好きて?」

雄太「この家のやり方。嫌いやないわ。恭子姉ちゃんをかぼうてけんかするのは賛成やけど、今の仕事やめ言うのは大きなお世話やで」

昭「僕は見てられへんかっただけや」

雄太「僕自身のことで言うならな、見てられへんからいうて手ぇ出されたり、口出されたりしたら腹が立つ。プライドが傷つくわ」

 

昭「お前は僕より強いのかもしれんな」

雄太「何でや」

昭「そない思うわ」

 

1階

恭子は縁側でぼんやりした様子で歌を歌う。あきがお茶を入れた。

 

翌日、純ちゃん食堂でぼんやりする純子に組合長が恭子に見合いする気ないやろか?と言ってきた。

村山「恭子ちゃん、今、いくつやねん」

純子「21です」

村山「それやったら早いことあれへんがな」

 

相手は瑞宝時の根際(ねき)の薬局の息子でおととし京都の大学を卒業して三立通商というところに勤めている。ねきというのは方言で近所みたいな意味だとツイッターで知りました。ドラマを見ているときは地名か何かと思ってた。お見合い写真もなかなかの美男子!?

 

相手が少し年上でもいいと言うと、「私37や」と立候補するもも。

村山「ももさんが?」

ぬひ「あかんに決まってるやろ。何考えてんの、あんた」

もも「やっぱりな。ああ、うちにも来んかなあ、見合いの話」

ぬひ「来いひん、来いひん」

 

村山は純子にお見合い写真を預かり、夜、恭子やあきに見せた。

恭子「何か知らん、ええタイミングやね」

純子「ええタイミングて?」

恭子「私な、もう歌うのやめよかしらと思うてたとこなんや。昭に言われたからやないんやで。自分でもそう思うてたとこなんや。この辺りで結婚するのもええかもしれんて」

 

あき「そやな。そら恭子が結婚してくれたら、お母ちゃんは安心やわ。やっぱり女いうもんは、ええ人に巡り合うて結婚するのが一番やと思てるもん。古いかもしれんけど」

恭子「ううん、ほんまや。お姉ちゃん見てたら、そない思うわ」

純子「何言うてんの、もう」

 

お見合いを一遍してみるという恭子。外で素振りをしている昭にも報告。

昭「結婚したらジャズはどないすんねん?」

恭子「やめるよ。やめてええ奥さんになるんや」

昭「そんな簡単にジャズ捨てられるんか?」

恭子「何言うてんの。昨日はやめてって言うたくせに」

やるせない表情の昭。それを見つめる純子。

 

朝ドラだと才能あふれる成功者がヒロインになることが多いから、「マー姉ちゃん」みたいに成功する話も大好きな反面、昭や恭子みたいな人が出てくるとそれはそれでホッとする。