公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意
昭和20年3月10日未明の東京を約130機のB29が襲い、未曾有の大空襲となった。朝から加津子(新井みよ子)たちが磯野家に集まり、皆で東京のウメたちを案ずる。だが、損害を伏せ、国民の戦意喪失を警戒した発表では、東京の様子は掴めなかった。そんな中、妊娠中のトミ子(村田みゆき)とマリ子(熊谷真実)が買い出しを終えると、ニワトリ泥棒(佐藤輝昭)に鉢合わす。はる(藤田弓子)は広い心で許そうとするが…。
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西部日本新聞のアップから
B29約百三十機、昨曉
帝都市街を盲爆
約五十機に損害 十五機を撃墜す
單機各所から低空侵入
何となく読めた所だけ書いてみました。
新聞を見ているマリ子とマチ子。
マリ子「B29が130機も…」
マチ子「大変よ…。東京がひどくやられたみたい…」
布団から起きてはるに髪の手入れをされているヨウ子。ドライシャンプー?
ヨウ子「いっぺんに130機もB29が来たら一体どういうことになるんでしょう?」
はる「そうね…確かに大変なことには違いないけれど…」
マリ子「大丈夫だったら。日暮里のおばあちゃまにもしものことがあったら、お天道様は西から昇ります」
ヨウ子「そうよね…きっとそうだわ。ねっ、お母様?」
そこにお隣の一家が訪ねてきた。
軍平「今日の新聞じゃだいぶ東京はえろうやられたようばい」
はる「そのようですね」
加津子「奥さん、ゆうべのラジオお聞きになりました?」
マリ子「ええ、小磯さんのですね」
加津子「何か総理大臣がわざわざ演説ばするとは様子のおかしかと思わんですか?」
マリ子「それでうちでもみんなで心配してたんですよ」
加津子「さっきからこの新聞、隅から隅までみんなで読みましたばってんどこがどげんふうにやられとるとかよう分からんとですもんね」
一平「事もあろうに宮城(きゅうじょう)ば汚し奉ったとです」
軍平「恐れ多い限りばい」
マチ子「いずれにしても都心部がやられたことは間違いないと思うんですけれど、ここに気になることが書いてあるんですよ」
マリ子「どこよ?」
新聞のアップ再び。
汚れた顏に輝く闘魂
嚴肅・一致敢闘の罹災地
マチ子「『焦土となった江東の一角に』とあるでしょう?」
ヨウ子「江東っていったら…!」
マリ子「隅田川を挟んでるわ! それに日暮里よりはずっと東寄りになるじゃないの!」
マチ子「でも宮城がやられて隅田川の向こうもやられたとなればよっぽど空襲の範囲が広かったか、あるいは飛び火ということだって考えられるし」
加津子「それにほら『何しろ風がひどかった。あっという間に火の手が四方を包み、逃げきれなかった人も多い。私はもう夢中で某公園に逃れたところ、自分の家はすっかり炎と包まれていた』。この公園というとは上野公園のことじゃなかでしょうか?」
一平「そうたい。きっとそうたい。100家族以上もそげん逃げたっちゅう、それだけふとか公園は上野公園に決まっとるばい」
マリ子「だったら安心ですわ。上野公園だったら根岸を通り、鶯谷から線路を越えればすぐに公園でしょう。それに途中には谷中の墓地もあるし、あそこは途方もなく広いんですもの。あそこまで逃げれば焼けるものは何もないんです」
こんな感じ?
加津子「ばってん、母はもう年ですし火に追われながら無事にそこまで…」
マリ子「大造おじ様がついていらっしゃるじゃありませんか。あのおじ様だったらおぶってでも走り抜けています」
加津子「ほんなこつ、そうならよかですばってん…」
軍平「うん、いや、大丈夫たい! 見てんしゃい! 一人で心配ばしとらんとこうして様子ば聞けば逃げた道順ってっちゃ分かるというもんじゃなかか」
加津子「はい」
一平「そうたい。まあいずれ無事の知らせが来る。まあ来んとは無事の証拠たい」
はる「おじいちゃまのおっしゃるとおりですわ。どうぞあんまりご心配なさいませんように」
加津子「ほんなこつありがとうございました」
はる「『火事と喧嘩は江戸の華』と教えてくだすったのも酒田さんですわ。ジャンと半鐘が鳴ってからの飛び出し方の早いこと。桜木町の近くで家事がありました時などもお出入りの大工さんと一緒になってそれはもう大活躍でしたのよ」
マリ子「本当、そうでしたわね。風の具合を見て逃げ時を教えるからとおっしゃってくださって、あの時はさっそうとしたものでしたよ」
加津子「そうでしたか」
マリ子「ええ。何たって江戸っ子なんですもの。B29だって歯が立つわけが…! あれ? おばあちゃま、入れ歯だったっけ?」
ヨウ子「嫌だわ、マー姉ちゃんったら」
こういう笑いを入れてくるのがいいなと思う。お隣の人たちはそろそろお暇するといい、マチ子は新聞社に出社したら新聞には載っていない情報を聞いてくると言った。加津子はマチ子の手を取ってお願いした。
敵に損害を知られないためと国民の戦意喪失を警戒した軍部の発表では、この九州から東京の様子を推測することはまさに至難の業でした。
「澪つくし」の舞台は千葉県銚子市。東京大空襲の日、銚子にも爆弾が落とされ、死者47名、負傷者163名を出したというのを、このドラマを見て初めて知りました。
「あぐり」の場合は3月10日の空襲ではなく、5月25日の山の手の大規模な爆撃で被害に遭う。その前に建物疎開で店は取り壊されているんだけど。
そういえば、「澪つくし」も「あぐり」も東京大空襲の敵機は約330機とある。新聞の130機は嘘かあ~。
マリ子とマチ子は台所仕事をしながら話をする。
マチ子「でも何か変よ。130機がいっぺんにというのもただ事じゃないけど、『避難の時を誤るな』とわざわざ書いてあるのが変じゃない?」
マリ子「マチ子もそう思った?」
マチ子「だって、昨日まではどこそこの誰が最後まで踏みとどまって見事焼夷弾を消し止め、町を延焼から守ったなんていう記事ばっかりじゃないの」
マリ子「うん」
マチ子「それが『風上に逃げろ』とか『煙が包まれた時には身を低くしろ』『川へ逃げるのもいいが水面には火がはうから布団をかぶって入った方がいい』だなんて、まるで逃げ方を教えてるみたいでしょう」
マリ子「私もそう思った。家族なら家が焼かれたって手を取り合って逃げるはずでしょう。それが『お年寄りや子供の焼死体までが無残に転がっていた』だなんて…」
マチ子「そうでしょう。ちりぢりになっても普通なら火が収まり次第捜しに来るはずよ」
マリ子「つまり、置いて逃げた人まで逃げきれなかったほど空襲が今までとは違った格段のものだったってわけよね?」
マチ子「うん」
はる「そういえばいつか日暮里のおばあちゃまから伺うたことがあるわ」
マリ子「お母様…」
はる「川に火が走るということよ。全く信じられないことだけどね。おばあちゃまは確かにその目で見たとおっしゃっていたわ。ええ、それは関東大震災の時ですって。あの時も下町はあっという間に焼けて逃げ場を失って、それはもう地獄でしたって…。なんと恐ろしいことでしょうね。戦争だといっても一般民衆に火を使うことは国際法で違反になっているってウラマドのおば様たちも言ってらしたわ」peachredrum.hateblo.jp
あぐりは結婚して岡山で夫婦生活を送るはずが、エイスケが東京に行ってしまい、その上、関東大震災でエイスケが被災したかも!?という展開。
マチ子は少し早いけど、新聞社に行くといって出かけた。
とはいえ、マチ子の情報収集は思ったよりも難しいものでした。
暗くなって帰ってきたマチ子はすれ違った早田と会釈。すれ違った早田は「牛尾さん! 明かりがもれておりますばいい! 牛尾さん!」と外から大声で注意した。昔の朝ドラだと国防婦人会ではなく、おしんの竜三や早田みたいな召集されないであろう中年男性が近所の取り締まりをしてる感じだね。
翌日。はるが洗濯物を取り込んでいるとマリ子とトミ子が大きな荷物を抱えて帰ってきた。このあたりずーっとピンボケみたいな画像に見えた。
マリ子「さすが、トミ子さんと行くと違います。お米、何斗担いできたと思う? 1斗よ、1斗」
はる「まあまあそれはそれはありがとう、トミ子さん」
トミ子「いいえ。それは物々交換に持っていったメリンスの長じゅばんがよかったからです」
はる「まあ。さあ、とにかく重い荷物を下ろしてくださいね」
ヨウ子も布団から起きて、トミ子に挨拶する。
トミ子「あっ、ヨウ子ちゃん、どうね? あんばいは」
ヨウ子「はい、おかげさまで」
トミ子「ねえ~。もうちっと入院させてくれとったらもっと早うようなるとにね」
ヨウ子「でも毎日お散歩続けていますし」
トミ子「そうですってね」
はるはトミ子たちにお茶を入れ、すぐに帰るから縁側でいいというトミ子に座布団をお当てになってと座布団を持って来た。
マリ子「そうよ、トミ子さん、おめでたなんですって」
はる「まあ、何か月ですの?」
トミ子「ええ、ちょうど四月(よつき)です」
はる「それはそれは。あ~、そんなお体なのにこんな重い荷物を背負ってはいけませんよ。お体に障ります」
トミ子「そげんぜいたく言うとる時じゃなかし」
はる「でもまあ、じゃあお座布団お当てになってね。冷えるのが一番体によくないんですよ」
トミ子「はい、そんなら」
ヨウ子「今度は男の子かしら? 女の子かしら?」
トミ子「4人目やけん、どっちでんよかよ」
マリ子「まあ悠々としたものね」
トミ子「ばって、お父ちゃんが勝手にもう名前ば考えとるけん。どれもこれも妙な名前でそれを聞かされるだけで毎晩うんざりです」
はる「まあ。それこそぜいたくというもんですよ」
トミ子「おば様、4人目だから女の子ならよし子はどうかなんて…」
はる「いいじゃありませんか。きっと器量よしのお嬢さんが生まれますよ」
そこに加津子の「誰か~! 誰か~!」という声が響いた。「ニワトリ泥棒た~い!」
ほっかむりをした男がニワトリを抱えてウロウロ。トミ子が手を広げて止める。方向転換したところを加津子がほうきで叩き、トミ子やマリ子もほうきで応戦。
はる「トミ子さん、いけません、そんなお体で! マリ子!」
トミ子のほうきをマリ子が持ち、トミ子は今度は火はたきを持ってみんなで叩く。ニワトリさんが心配だよ~!
泥棒「イテテテテ! すんません! つい出来心で!」ニワトリを放つ。泥棒は座り込み、襟首を加津子が持っている。
加津子「何ちゅうことするとですか! こんニワトリは病人さんの卵を取るために飼うとるとたい!」
泥棒「う…うちにも病人がおるもんやけん…」
はる「まあお気の毒に」
泥棒「はい。やけん、すまんことを…」
はる「そうですか。病人を抱えている身となればひと事ではございまっしぇん。でも他人のものに手をつけるのは罪悪ですよ」
泥棒「はい…」
はる「それが分かったらどうぞうちへいらっしゃいましな」
泥棒「へっ!?」
加津子「奥さん!?」
はる「はい、ちょうどマリ子が買い出しから帰ったとこでございますので。あのご病人さんはやっぱり胸ですか? それとも…」
ドン引きの泥棒。
はる「どうなさったんですか? 今のかけっこでお足でも…」
泥棒「ひいっ! ひい~…ひゃ~!」
はるに触れられそうになると恐れをなして逃げていった。
はる「まあ、おかしな泥棒さん」
夜の磯野家。
マチ子「おかしいのはお母様の方じゃなかったの?」
はる「あら、どうして?」
マチ子「ほら、そうやって不思議がるところが泥棒さんには理解できなかったんでしょう」
マリ子「でもニワトリさんも捕まったし、誰もおけががなくて本当によかったこと」
はる「そうですとも。それよりマチ子、あなたの方はどうだったの? 東京の空襲から今日でもう3日目ですよ」
マチ子「ええ。私も歯がゆいったらないんだけど、やや様子が分かってきたこともありつるよ」
はる「まあ、思わせぶりなこと言ってないでさっさとおっしゃいよ」
マチ子「『待てば海路の日和あり』。慌てる何とかはもらいが少ないってね」
マリ子「こんな時まで悪い癖よ、マチ子は」
マチ子「そう言いたもうな。東京全滅とは全くのデマ」
はる「はあ…」
マチ子「(手帳を見ながら)日本橋が赤坂。荒川が大森。下谷が世田谷。京橋が目黒」
マリ子「何よ、それ?」
マチ子「焼け出された区に対して、焼けなかった区が罹災者を割り当てで受け入れることになったんですって」
はる「それでは下谷は?」
マチ子「ええ、世田谷区が受け入れ担当区になったわけ」
ヨウ子「じゃあ、新町のうちは大丈夫だったのね? 天海さんやウラマドのおば様たちは」
マチ子「多分、そうだと思う。ということはつまり…ねえ、マー姉ちゃん分かる?」
マリ子「ん~、もちろんよ、ねえ、ヨウ子! たとえ日暮里のおばあちゃまが焼け出されていらしたとしても、世田谷つまり天海さんのお母様のお宅か、それかウラマドのおば様たちのうちには受け入れられてるってことでしょ?」
マチ子「よくできました!」
はる「なんてすばらしいことでしょうね」
マチ子「だけど一つだけご注意申し上げておきます」
はる「はい」
マチ子「東京では郵便局もあちこちで焼けてしまった所があるんですって。だからそうはすんなり手紙も届きにくい状態になっているものですから手紙が来ないからといって、あまりやいのやいのと言わないでください。だってお隣のおば様を余計に心配させるだけでしょう」
はる「はい。まあ全く偉そうに。お母様にだってそれくらいのことは百も承知ですよ」
マチ子「フッ、恐れ入りました。でもね、一つだけ付け加えさせていただくともしものことがあっても亡くなられた方々はちゃんと身元確認の上、合同埋葬されているので縁者の方には区役所からしかるべき通知がない限り、便りのないのは…」
はる「無事の証拠ということね」
マチ子「はい! あれ?」
ほのぼのとした磯野家から一転して、東京の焼け野原の映像。
しかし、その区役所も全焼して戸籍簿を失い、身元確認もされないまま今日(こんにち)もなお行方の分からない被災者は数知れません。
ちょっとだけ時間余りでブルーバックで出演者紹介。遠く離れた場所では楽観的、でも現実は…。