1954年 日本
あらすじ
平安時代の末、母とともに旅をしていた幼い安寿と厨子王は、人買いにだまされ、母と離ればなれになってしまう。2人は丹後の大地主・山椒大夫の荘園で過酷な労働に苦しめられ、ついに逃げ出す決意をするが…。民話をもとにした森鷗外の小説を巨匠・溝口健二監督が映画化。名コンビのカメラマン・宮川一夫とともに繊細で美しい光と影のモノクロ映像で描き、ベネチア映画祭銀獅子賞を受賞、世界中の映画作家に影響を与えた傑作。
2025.1.15 NHK BSP4K録画
「おやじ太鼓」で沢田雅美さん演じる末っ子のかおるが父・亀次郎を「まるで山椒大夫みたいだわ」と例えていて、進藤英太郎さんが山椒大夫役をやっていたと知り、見たいと思っていました。
宮島正弘撮影監督とマーティン・スコセッシ監督監修の下、
フィルム・ファウンデーションが
シネリックとオーディオメカニクスにおいて共同で復元を行いました。
大映株式會社製作
製作:永田雅一
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森鴎外作
山椒大夫より
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企画:辻久一
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脚本:八尋不二
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音楽:早坂文雄
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玉木:田中絹代…字幕緑
厨子王:花柳喜章…字幕黄色
安寿:香川京子…字幕水色
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仁王:菅井一郎(第一協団)
吉次:見明凡太郎
小萩:小園蓉子(松竹)
姥竹:浪花千栄子
巫女:毛利菊江
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平正氏(まさうじ):清水將夫(民芸)
曇猛律師:香川良介
太郎:河野秋武
内蔵介工藤:小柴幹治
左太夫:荒木忍
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少女時代の安寿:榎並啓子…字幕水色
中君:大美輝子
波路:橘公子
汐乃:金剛麗子
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平正末:南部彰三
遊女宿の親方:東良之助
判官代則村:大邦一公
金平:伊達三郎
奴:石原須磨男
木戸の番人:天野一郎
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宮崎三郎:大國八郎
金丸:藤川準
牢役人:菊野昌世志
佐渡の男:芝田聰二
仲買人:清水明
番人:中西五郎
船着場の男:沖時男
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百姓:石倉英治
百姓:志賀明
百姓:大崎四郎
萱野:相馬幸子
遊女:小柳圭子
遊女:前田和子
船着場の女:小松みどり
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監督:溝口健二
これは
人がまだ人としての
目ざめを持たない
平安朝の末期を背景に
生まれた物語である
それから数百年
庶民の間に語り伝えられ
今日もなお人の世の
嘆きの限りをこめた
説話として知られている
歩いて帰ってきた?厨子王と玉木。
屋敷には村人たちが旦那様のもとへ陳情に来ていた。なだめる金丸。屋敷内では百姓など叩き斬ってしまえと言う者もいたが、正氏が止めた。この人は「ありがとう」の2代目院長だ! 息子が厨子王ね。で、少年時代の厨子王が加藤雅彦さんが津川雅彦さん? 後ろ姿ばっかりで顔がよく見えない。
人は慈悲の心を失うては人ではない。
己を責めても人に情けをかけよ。
次に場面が切り替わると如意輪観音を首に提げ、歩いている少年時代の厨子王が映る。あっ、これが津川雅彦さんだな。美少年。
また幼年時代の厨子王に戻った。妹の安壽を頼むぞ、と正氏は屋敷を出て行った。…回想シーンか。農民たちに親切で左遷されてしまったってことか。
玉木、厨子王、安壽、召し使いの姥竹は正氏のもとへ行こうと旅をしていたが、最近、旅人に扮した盗賊がおり、宿を借りられず、やむなく野宿することにした。木の枝を集め、たき火をしながら食事をとる。姥竹が暖かい食べ物と夜のしとね(布団)を求めて、再び近所へ歩いて行った。遠くでは狼の遠吠えが聞こえる。
巫女が通りかかり、そっと泊めてくれることになった。姥竹も戻り、一緒に巫女の宿へ向かった。岩代のお里に6年いたと巫女に語る玉木。巫女は先に親不知という難所があるので舟で行ったらよいと勧めた。
巫女の勧めで船着場に行った玉木たち。厨子王と安壽も巫女にお礼を言う。船頭は玉木と姥竹を先に舟に乗せ、舟を出した。異変を察した玉木は舟を戻すよう頼むが、聞き入れてもらえず、姥竹は海に落ちた。
厨子王と安壽を売ろうとした男だったが、なかなかうまくいかず、山椒大夫のところへ行けと言われ、舟を出した。
山椒大夫のもとへ連れて行かれた厨子王と安壽だったが、山椒大夫はひ弱な子供たちにがっかり。だが、もったいないから仕事を仕込めと命じた。厨子王も安壽も名前を言わず、厨子王と安壽は引き離された。
波路は安壽を任され、どこから売られて来たのか分からないけどかわいそうにと哀れんだ。
厨子王は鎌を持ち、背中にたくさんの木の枝を背負って帰ってきたが、屋敷に戻ると倒れてしまった。安壽が助けに来ると、波路が男たちに連れられて帰ってきた。浪路は安壽を見て子供が恋しくなり、ちょっと外へ出ただけで逃げたわけではないと言うが、山椒大夫に額に焼きごてをあてられた。ギェー!
山椒大夫の息子の太郎が厨子王と安壽をこっそり小屋に呼び、話を聞こうとした。厨子王が父を”お父様”と呼ぶのを聞いて百姓の子ではないと察し、餅を与えた。
山椒大夫は来客が来るので、太郎を吉次に捜させた。
人は慈悲の心を持たねばならぬ。
己を責めても人には情けをかけよ。
太郎は厨子王の父の言葉を聞き、佐渡は子供の足では遠いと悔しがる。名乗らずともよいが名前がなくては困ると厨子王を陸奥若、安壽をしのぶと名付けた。
内蔵介工藤という身分の高い者が訪れ、山椒大夫はペコペコし、土産を渡し、太郎を紹介した。女たちはキレイに化粧し、工藤に舞を見せた。
太郎は厨子王たちの小屋に戻り、寝ている厨子王たちに「達者で暮らすんだぞ」と声をかけ、屋敷から出て行った。
板木が鳴って目を覚ました厨子王と安壽。おっ、もう大人の役者になった。
仁王が逃げ出し、男たちに捕まっていた。50年もいて、70歳になった男でもう死ぬんだというが、大人になった陸奥若は山椒大夫に命じられるまま、焼きごてをあてた。ひえー!
悪いヤツだね、と女性たちに噂される陸奥若。安壽は落ち込むが、気にすることないと励ます女性もいた。安壽は小萩という新参者に仕事を教え始めた。小萩が佐渡から来た16歳だと聞いた安壽は玉木という女性を知らないかと聞いた。10年前に35、6歳。佐渡は広い島だから知らないと答えた小萩。
波路は体調が悪いが、休むことができない。浪路を気遣う安壽に仕事に戻るように言う。
小萩は仕事をしながら
♪厨子王 恋しや つらやのう
安壽 恋しや つらやのう
と歌い出した。中君(なかぎみ)という遊女が歌ったはやり歌だと言うが、安壽は母と確信する。
中君は有金を渡して船に乗ろうとしたが連れ戻され、経営者?から逃げ出さないように足の筋を切られた。わー! 遊女仲間に連れられ、海の見えるところから新潟を見に行く玉木は「厨子王~、安壽~!」と杖をついて叫んだ。
安壽は厨子王の前で小萩の歌を歌うが、厨子王は奴婢の身じゃ何もできないと怒り出す。安壽は盗賊のようなマネをして恥ずかしくないの?と責めた。すっかりやさぐれた厨子王に安壽は泣き出す。
波路はもうダメだ、山へ捨ててこいと命じられた陸奥若。安壽はきょうだい同然だから息を引き取るまで小屋にいさせてほしいと頼んだが、厨子王は太夫の命令だと波路を背負って山を歩いた。
山の門番が門を開き、厨子王が入っていき、波路をおろした。辺りは白骨死体がゴロゴロしていて、安壽は草屋根でも作ってやりたいと木の枝を折り、厨子王は何も言わずに手伝い始めた。安壽は直江の浦で野宿したのを思い出さない?と話しかけた。遠くに聞こえる母の声!
厨子王、安壽…という声を聞いた厨子王はついに逃げる決心をしたが、安壽はお金を預け、1人で逃げるように言う。中山の国分寺まで行けば大丈夫。
安壽はついてきた番人にあとは兄さんに任せました、行きましょと促した。厨子王は波路を背負って山を走りだした。体調悪いのにきついぜ。
番人たちは厨子王が遅いことにざわざわ。ついに逃げたことがバレた。
安壽と一緒に山へ行った萱野は責められたらしゃべってしまうよ、私を縛って逃げろと言い、安壽は萱野にさようならと抱きついて縄で縛って門を出た。
安壽は歌を歌いながら水の中へ…
厨子王を捜し歩く男たちは国分寺に入るが、僧侶は故なくして狼藉を働くとただではすまんと一喝。男たちは別の場所を捜しに寺を出た。
僧侶は厨子王をかくまっていた…え、この人、太郎だったんだ!? 都に出たが、どうにもならなかったと語る。しかし、厨子王は波路を寺に預け、都に出て一番偉い関白に会いたいと話し、太郎は関白にお添え書きを書くと言う。
厨子王は僧侶の格好で屋敷に忍び込み、関白へ添え書きを持って直接申し出たが、無視され、家来たちに捕まった。その上、懐にしまった如意輪観音を盗品だと勘違いされ、取り上げられ、牢屋に入れられた。
牢屋から出され、お館へ行くことが許された厨子王。師實から父が去年の春、亡くなっていたことを知らされ、父のあとを継いではどうかと提案された。平正道となり、丹後守になった。へえ~、大出世!
正道は奴婢を解放すると言うが、山椒大夫は右大臣家の所領で国守と言えど許されないと師實が言う。えー、そうなのぉ?
正氏の墓参りに行った正道。墓は花がいっぱいで家来たちが供養していたのかと思っていたが、百姓たちにも読み書きを教え、慕われていたことが分かった。
丹後守として着任した正道。判官代、目代を残し、人の売り買い、荘園の奴婢の使用を禁ずるという掟を出そうとするが、判官代に反対される。山椒大夫ってすごい力を持ってんだなー! 奴婢が解放されたあとはおのおの好きに過ごす。
正道は判官代に山椒大夫のもとへ行き、しのぶという女を引き取ってほしいと命じた。山椒大夫の手下たちがしのぶという者はおらん!と断ったが、なぜしのぶを求めるのかわけが分からない。丹後守が出した掟が木札に書かれて設置されたが、山椒大夫の手下たちが片っ端から看板を引っこ抜いて壊したり、海へ投げたりした。
怒った正道は自ら馬に乗り山椒大夫の屋敷に行った。山椒大夫は丁寧に接し、正道が陸奥若と分かると、酒を出してもてなそうとする。正道は役所へ連行しようとするが、山椒大夫は抵抗するが、縄で縛った。
正道は奴婢たちに人身売買が禁止されたことなどを話し、故郷へ帰りたい者は帰り、ここで働きたい者は賃金をもらって働くように言う。萱野に安壽の行方を聞いた正道は安壽が亡くなっていたことを知り、ショックを受けた。
夜、屋敷で歌い踊る元・奴婢たち。
正道の屋敷から山椒大夫の屋敷が燃えているのが見えた。正道は役所を辞める書簡を部下に預け、佐渡へ渡ることにした。佐渡へ着き、中君という女を捜したいというと、中君は遊女で遊女館にいると教えられた。遊女に聞き、おめかしの最中だと言われ、家に入った。しかし、別人だった。
前の中君を知ってる遊女は二本松の岩鼻で身を投げたというが、男はおととしの津波に遭ったともいう。中君がいたという岬へ行った正道。
浜辺にいた男から村の9割が亡くなったと聞かされ、歌声につられ、フラフラ歩いていくと、白髪交じりの女性が座って歌を歌っていた。♪安壽恋し…と歌う玉木に抱きついた正道だったが、信じてもらえず、玉木は立ち上がり杖をついて歩き出した。
父の形見の観音像を渡して、ようやく信じてもらえた。ああ、玉木は目が見えなくなってしまったのか。ようやく、厨子王と気付いた玉木。安壽が亡くなったこと、身分を捨てたことを泣いて謝り、玉木は優しく厨子王を抱きしめた。(終)
元の「安寿姫と厨子王丸」は姉弟なのね。確かに安壽の行動は姉のほうが納得できる。
山椒大夫は完全なる悪役。進藤英太郎さん迫力あるなあ! この映画を先に見て「おやじ太鼓」を見たら面白かっただろうな。


