TBS 1968年7月2日
あらすじ
お敏が危篤の母の元へ行ってしまったため、台所に立つ子どもたち。そんな中、お敏の母・イネが鶴家にやって来た。危篤と言われていたはずのイネだが、実は夫に愛想が尽きて家出していたらしい。何とも風変わりなイネだが、なぜか亀次郎とは意気投合して盛り上がる。
2023.8.15 BS松竹東急録画。12話からカラー。
鶴家
亀次郎:進藤英太郎…大亀建設株式会社を一代で立ち上げた。2月5日で61歳。
妻・愛子:風見章子…5月で56歳。
長男・武男:園井啓介…亀次郎の会社で働いている。3月3日で30歳。独身。
次男・洋二:西川宏…ピアノや歌が得意。空襲で足を悪くした。28歳。
長女・秋子:香山美子…出版社勤務。26歳。
次女・幸子:高梨木聖…女子大生。1月の成人式に出席。
四男・敬四郎:あおい輝彦…浪人中。
三女・かおる:沢田雅美…4月から高校生。
*
お手伝いさん
お敏:菅井きん…愛子の4つ下。6月で52歳。
初子が結婚退職、お敏が母危篤で家を空け、食べ終わった敬四郎や三郎は自ら食器を台所まで運び自分で皿を洗う。自分の皿を洗い終わった敬四郎に浪人だろと皿洗いを押し付けようとする三郎。断られると今度は幸子に花嫁修業だと押し付けようとする。
幸子「ずれてるわね。このごろは60パーセントの男性が台所を手伝うのよ。もう少し現代を知らなきゃダメだわ」
昭和の男が家事全然しないなんて言ってられないね。やる人はやる。
茶の間
洋二や武男も食べ終わり、愛子はかおるに兄さんたちの分も片付けるように言う。
かおる「あら、末っ子が長男と次男の分までやんの?」
洋二「いいですよ、自分でやるから」
武男「いや、いいよ、お前は」
洋二「いいですよ、ついでだから」
愛子「いいですよ、お母さんがやるから」
武男「まあ、お母さんはじっとしててください」
愛子「じゃ、このお盆に載せていきなさい」
亀次郎「ああ、これも下げてくれ」
武男「はい」←字幕は武男と出てたけど、亀次郎は近くにいた洋二に食器を渡している。
武男「あっ、いいですよ。僕が持っていきますよ」
かおる「よく働くわね、みんな」
亀次郎「かおる、お前がいちばんいけませんよ」
かおる「あら、どうしてかしら」
愛子「どうしてじゃありませんよ。女の子がいつまで食べてるんですか」
かおる「だってゆっくりかんで食べた方がいいんでしょ?」
愛子「ゆっくりにも程度がありますよ。あんた1杯目のご飯まだ食べてるんじゃないの」
かおる「私、1杯って決めてんですもん」
武男「美容食はまだ早すぎますよ」
愛子「なんですか、育ち盛りに」
亀次郎「お米のありがたさを知らないんだ。食べたくても食べられない人が世の中にはいっぱいいるんだ」
話しているうちにお盆に載せた食器を運んだのは洋二。
かおる「ごちそうさま。ああ、おいしかった」
これから大掃除をすると言う亀次郎。一服してからというかおるに掃除が終わってからだと言う。
かおる「まるで山椒大夫みたいだわ」
愛子「口の減らない子だったらありゃしない」
武男「だけどうまいこと言いますね」
亀次郎「なんだ山椒大夫って」
愛子「人買いですよ、安寿と厨子王の」
亀次郎「人買い?」
愛子「山賊みたいなもんですよ」
亀次郎「バカ者! なんだ、お前たちは。そういうことだから子供たちがあがりつくんだ。何がうまいことだ。親を山賊にして」
1954年の映画で進藤英太郎さんが山椒大夫役をやったことに引っ掛けてるのかな。
さあさあ楽しい日曜日の朝ですからねと敬四郎とかおる、三郎は聖者の行進を歌いだす。あおい輝彦さんはともかくも秋野太作さんも結構うまい。
「兄弟」ではこんな一緒に歌を歌ったりするような兄弟じゃなかったんだよね。
台所から広間へ歌いながら歩く。
台所で皿洗いする幸子と皿を拭いている洋二。武男に魔法瓶は?と聞かれ、洋二が渡す。
武男「敬四郎のやつ、すぐ忘れちゃうんだから」
幸子「敬四郎見てると私、変な気がしてくるわ」
洋二「気はいいんだよ。あれだって現代の青年だよ」
幸子「まるでのんきなんだもの。自分のこと以外に考えたことがあんのかしら」
洋二「なにも深刻な顔をしている必要はないさ」
幸子「顔はどうだっていいけど、深刻に考えなきゃならない問題だってあるんじゃないのかしら」
洋二「問題だらけだよ。だけどせっかちに答えを出そうとするのは危険だよ」
幸子「だけど踏み切らなきゃ何もできないんじゃないのかしら」
洋二「できないから三郎だって敬四郎だって迷ってるんだよ。だが、迷うってことだって無知ばっかりじゃないからな。むしろ迷うことの方が人間的だよ」
敬四郎よりも三郎だよ。何かといえば女だからどうのと言ったり、かおるへの末っ子いじりも結構ひどい。
かおるが洋二を呼びに来た。「ピアノ弾いてよ。エキサイトしないのよ」
洋二「幸子、おいでよ。無意味な時間も必要だよ」
かおる「うん、まるっきりそうよ」
手元は映ってないけど、洋二が幸子の腕をつかんで引っ張ってる。嫌でもやるべきことは終わらせたいよ。
インターホンが鳴り、かおるが出た。
茶の間にいるのは亀次郎、愛子、武男。秋子は取材旅行に行ってるらしい。香山美子さん忙しかったんだろうねえ。前回も出てなかったもんね。
武男「国鉄の赤字路線のルポですからね。不便な田舎ばっかり回ってるんでしょう」
亀次郎「あれにそんな大した仕事ができるのか?」
愛子「秋子は乗り物や宿屋の世話をするだけですよ」
かおるが「お母さん!」と乗り込んできた。変な人が来たと言い、こんな不思議な話はない、クイズ番組だわ、当ててごらんなさいよと言う。亀次郎の「バカ! そんなことを考えてる暇があるか」と言う声にあっさりお敏さんのお母さんだとバラすかおる。水色のカバンをぶら下げて裏門のところにいる。
かおる「危篤なもんですか。きれいにお化粧してるわよ」
今度は愛子が裏門に向かう。
茶の間に残った亀次郎と武男
亀次郎「お化粧をしてるってまだそんな若いのか?」
武男「若いったってお敏さんのお母さんですよ」
亀次郎「じゃあ、ばあさんじゃないか」
武男「このごろは若い者ばっかりじゃありませんからね」
広間
洋二のピアノ演奏で「僕の秘密」を歌う敬四郎。三郎と幸子がソファに座って聴いている。
かおる「ストップ、ストップ! 大事件よ、真昼の幽霊よ。私、もうゾーっとしちゃったわ」
裏玄関の門のところにお敏さんのお母さんが立っていたが、愛子が見に行ったら消えていた。
洋二「あれ? 誰か来たよ」
かおる「お化けが来ちゃった」
愛子がお敏のお母さん・イネを連れてきた。イネは岸輝子さん。カメオのおばあちゃま・東山千栄子さんらと劇団俳優座を創立。
愛子「じゃあ、お敏さんと入れ違いになっちゃったんですか」
イネ「ほんとに今度の亭主はズボラなウドの大木でしてつくづく愛想がつきるんでございますよ。3日前にとうとう犬も食わない夫婦ゲンカをおっ始めちゃいまして、とにかくぞろっぺいな横着もんでございますよ。私は3日前から川向こうのおツネさんのうちに隠れていたんですよ」
愛子「それでご主人が困って電報を打ったんでしょうか」
イネ「あいつ確かに私の居場所を突き止めたんですよ。それでお敏を呼んで私に帰ってもらおうとたくらんだんですよ。どっこいそうはうどん屋のかつぶしで出し抜いてやりましたよ。おおかた今頃は遠乗りの馬で泡吹いてますでしょ」
愛子「慌てているのはお敏さんのほうじゃないんですか」
イネ「あの子は親の因果が子に報いたんでございますよ。聞くも哀れな物語でございます」
愛子はかおるにお茶を入れるように言い、なんで私ばっかりと不満を漏らすかおるに三郎や敬四郎がからかう。幸子、敬四郎、三郎、洋二がイネにあいさつ。愛子はそれぞれの部屋を掃除するように言うが、幸子にはイネに何か有りもので朝ご飯を作るよう命じた。やっぱりこういうのは女の子にやらせるんだな~。
茶の間にいる亀次郎、武男にイネのことを話す三郎。
武男「今度の亭主ってそんな何度も結婚したんですか?」
亀次郎「3度じゃないのか? いや確かお敏はそんなこと言ってたよ」
三郎「ちょっと変わってますね。うどん屋のかつぶしがどうとか馬の遠乗りは泡を吹くとか」
武男「お母さんとそんな話をしてるのか」
三郎「お敏さんのお母さんには見えませんよ。姉さんみたいですよ。眉毛もきれいに描いちゃって頬紅もつけてるんですよ」
武男「ちょっと高円寺のおばちゃんですね」
亀次郎「いや、3度も結婚すりゃ女もそうなるよ」
愛子が「お父さん、ちょっとご挨拶しませんか」と茶の間に来た。
亀次郎「なんだか気味悪いな、三郎の話だと」
愛子「そんなことありませんよ。ただちょっと風変わりなだけですよ」
お敏が帰ってくるまでうちで待ってなきゃならないんだから、一度はお父さんがお会いしなきゃ変だと愛子に言われ、会うことにした亀次郎。「じゃあ、どんなばあさんか見てきようか」
この〇〇してきようかの言い方、関東周辺の方言?らしいです。
最近でも使われてる言葉らしいし、同じような質問の回答には特定の年齢層の人がよく使ってたなんてのもありました。
三郎「近頃はおばあちゃんに縁がありますね」
亀次郎「2人ぐらいにしてもらいたいね」
広間ではかおるがイネに「いろんな男の人と3度も結婚したら面白いでしょ?」と聞いていた。面白いもんじゃないという答えにさらにどの人がハンサムだったの?などと聞く。
亀次郎が広間に入ってくると、イネは椅子から立ち上がって「これはこれは旦那様でございますか」と頭を下げた。亀次郎は「まあまあ、お掛けなさい」と貫禄を見せる。
イネ「突然ノコノコと亀みたいにまかり出まして」
亀次郎もかおるもギョギョッとした表情になる。
イネ「またお敏もご厄介になりまして、ありがとうの成田山でございます」
亀次郎「ああ、いやいや、まあお掛けなさい」
イネ「はい!」じゃ、失礼してと椅子の上に正座する。
座る方が楽だといい、かおるは「ああ、なるほどね」と納得。亀次郎にお父さんのお茶を持ってきなさいと言われ、台所へ。台所では幸子と愛子が朝食づくりをしていた。
かおる「イカすおばあちゃんね。私、話が合っちゃったわ」
愛子「じゃあ、かおるが多摩川園にでも連れてってあげんのね」
かつて田園調布にあった遊園地。昭和54(1979)年閉園。
かおる「でもそのうちお父さんが怒鳴りだすんじゃない? 亀のようにノコノコ出てきましたなんて言ってたわよ」
愛子「亀なんて言ったの?」
かおる「うん。お父さん、目、パチクリしてたわよ」
朝食をどこで食べてもらうか話す愛子と幸子。愛子は台所で食べてもらう方が自分でご飯もつけるしと言うが、かおるがイネが椅子の上に座ったという話を聞き、茶の間にしようという結論になった。
武男と三郎は茶の間の掃き掃除をしていた。適当な三郎と廊下の隅までやるんだよと言う武男。これから時間の約束がある。片桐さんと会うのだとピンとくる三郎。
愛子と幸子が茶の間で朝食の準備をする。またインターホンが鳴り、片桐さんじゃないのかな~と三郎が出ていく。武男はバカ!とほうきでたたく真似をする。
亀次郎「何がバカだ」
武男「いいえ、あの…三郎ですよ」
亀次郎「大体、うちの子供たちはバカを言いすぎますよ。なあ? 愛子」
愛子「あら、ご機嫌がいいんですね」
亀次郎「いやいや、母親というものはいいもんだよ。わしはついホロッとなったよ」
ここで亀次郎が茶の間に入ってくると同時に武男がそっと退室。
愛子「お父さんのついは珍しいですね」
幸子「お敏さんはついつい言うのが口癖ですもんね」
亀次郎「わしだってたまには言うさ。いや、あのくらいの年の母親を見るとわしもついお母ちゃんを思い出すよ」
マッサージ椅子に座っているイネとまだ話しているかおる。お敏の父がいちばん背が低く、だんだんスマートな人になった。イネによれば、ウドの大木、唐変木。それでも魅力があったから3度も結婚したんでしょ?と聞くかおる。
イネ「結局、女1人じゃ寂しいんですよ。私なんか生れ落ちるから寂しい思いばっかりしてきましたからね。私が5つのとき、男親が日露戦争で戦死して、それからあとは苦労しましたよ。私も私の母親もね」
日露戦争は明治37(1904)年~明治38(1905)年なので、イネさんは明治33(1900)年生まれくらいか。当時68歳という設定かな。お敏さん52歳じゃなかった? 関係ないけど、おしんは昭和天皇と同じ明治34(1901)年生まれらしいです。
イネの母親は結婚は一度だったが、好きな男は何人もあっただろうと話す。「女が生きていくってことは大変なんですよ」
かおる「はあ~、ロマンチックだな。女が生きていくってのは。ああ、もう私、どうしよう!」
武男が広間に来てイネにあいさつ。朝食の準備ができたと呼びに来た。
イネ「でもまあ、どうしてこちら様の男の方は皆さんご器量がよろしいんでしょう」
武男「いや、それほどでもありませんよ、なあ? かおる」
かおる「そうよ、なっちゃないわよ」
武男「こら、なってないことがあるか」
イネ「ほんとにほれぼれしますわ。私なんかたった一遍でもいいから、こんな殿御と添い遂げてみたかったですわ」
武男がイネを連れていく。残されたかおるは男兄弟の器量ばかり褒めるイネに「多摩川園なんて行くもんですか」とふてくされる。
武男役の園井啓介さんが当時人気あったのは何か分かるな。スラッと長身で鼻筋もスッとして。一番今っぽいイケメンは三郎なんだろうけどね。寅さんの舎弟役のときはもっと茶髪で今っぽっかった。
秋野太作さん、あおい輝彦さんが170cmで武男、洋二はそれより長身。進藤英太郎さんは173cmあったらしいです。明治生まれの男性とすると大きい方なんだろうね。
電話が鳴り、かおるが受ける。
茶の間では亀次郎、愛子、武男、イネがテーブルを囲む。武男は亀次郎に表の掃除を命じられた。かおるはお敏からの電報を受け、愛子に報告。「すいません 下痢 止まらぬ あす帰る 母 頼みます お敏」。構わずご飯を食べ続けるイネに亀次郎も目をぱちくり。
三郎がそっと裏玄関から入り、階段を上る。武男も茶の間から「さて、表の掃除か。だけど隣のジャリどもは何してんのかな」と出ていく。かおるも「誰が出てったのかしら?」と茶の間の外へ。かおるも「ちょっと見てきよ」って言ってる。
階段を下りてきた洋二。「だけど僕が行ったってしょうがないだろ」
三郎「だからお願い、頼みます」
洋二「自分の友達のことは自分でしなさいよ」と渋るものの、三郎は洋二の腕をつかんで裏玄関へ。「そこにいるのは誰だ?」と亀次郎に声をかけられたものの、三郎が「廊下の隅まで掃いてます」と言いながら外へ。
茶の間の後ろの窓が裏玄関から出た人が見える。走り去る三郎と洋二。
茶の間では亀次郎とイネと愛子が会話している。お敏がいなくて迷惑かけますというイネにたまには薬になっていいという愛子。
亀次郎「たまじゃありませんよ。うちの子供たちはよく『はいはい』って親の言うことを聞きますよ。まあ掃除なんかも割合よくやりましてな。今どきの若いもんにしては、まあ、上出来のほうでしょう」
イネ「まあまあ、それは何よりでございます」
亀次郎「やっぱり子供は親のしつけですな。まあ近頃の親なんてまるで子供におべっかを使ってるようなもんだ。あれじゃフーテン族もヒッピーもはびこるばっかりですわ」
イネ「ヒッピーですか?」
愛子「しゃれたことも知ってるんですね、お父さんも」
亀次郎「しゃれたことじゃありませんよ、ヒッピーぐらいなんですか。夏になりゃ新宿あたりウヨウヨしてますよ」
イネ「やっぱり夏場はおなかを壊しますからね。お敏も田舎で変なもの食べてヒッピーでしょう」
亀次郎「ハハハハ! いや、お敏のヒッピーはいいよ」
笑い事じゃないといさめる愛子だったが、変なものを食べて、ピーピー下痢してるとか言い、さらにご飯がまずくなると止める愛子に、田舎の人は肥やしの匂いに慣れてるなどと失礼なことを言う。
イネ「はあ、どうせ私なんか肥やしです。鼻つまみの」
亀次郎「いやいや、今、あんたはうまいこと言いましたよ。すべからく年寄りは肥やしにならなくちゃいかん。それがどうだ、今の日本は肥やしどころか臭い花の花盛りじゃないか。三流国もいいとこだ。あの汚いこと悪臭ぷんぷんだよ」
愛子「もういいですよ。臭いお話は」
イネは年寄りはそんなにいただけないと言いつつ、ご飯3杯を食べ、亀次郎を感心させた。一服してから多摩川園に行きましょうと愛子が言い、お敏の部屋で休むことになった。イネが持ってきたカバンが派手だと亀次郎が驚く。明るい水色のトランクでおツネさんの姪っ子の新婚旅行用のカバンだそう。
別宅の一室に集まる幸子、敬四郎、かおる、武男、洋二、三郎。武男と三郎はタバコを吸い、灰皿はマッチとタバコでいっぱい。
陽子「私のほうも困り抜いているんです。長くお邪魔するつもりはないんですから。どうか皆様のご厚意で目をつむっていただきたいと思うんです」
赤松「それに僕たちは2人ともアルバイトに出かけちゃうんだし、ただ寝るだけの部屋を提供してもらえばいいんだから」
この間、「アンティゴネー」を演じてた2人です。
洋二も赤松もタバコを吸い始め、沈黙が流れる。
武男「しかし、寝るだけと言ったって…」
洋二「君たちのほうが少し強引ですよ」
三郎「アパートを強引に追い出されたんだからしかたがないんだよ」
幸子「しかたがないっていったって、うちにはうちの事情があるわよ」
敬四郎「しかし、寝るだけだからいいんじゃないの?」
かおる「その寝るだけが気になるわ、私なんか」←分かるよ!
敬四郎「どうしてさ?」
幸子「嫌なこと言うのね、かおるは」
三郎「かおるはいけませんよ、早熟で」
洋二「そんなことはないよ。かおるは正直に言ってるんだよ」
武男「そりゃスウェーデンなんかでは学生結婚が普通になってるけどね」
陽子「私たちはその普通なことをしただけです」
赤松「夫婦ですからね、僕たちは神聖なんです。愛し合ってるんです」
武男は愛し合ってるで思い出したと出かけることを思い出した。片桐の弟を亀次郎が泣かせたため、片桐黄枝子をおわびに映画に連れていく。しかし、席を立てずにタバコを吸い始める。
お敏の部屋にイネを案内した亀次郎。お敏の部屋は隣だと言ってたのは別宅だったの? 子供たちが見当たらないことを不審に思う。イネは向こうの部屋で話し声がすると知らせた。「ちょっと見てきよう」。おっ、今日の回だけで3回。
亀次郎と武男が扉のところで鉢合わせ。
亀次郎「何をしてんだ、お前たちは!」
みんな一斉に立ち上がる。赤松は陽子を妻と紹介する。三郎が学生結婚だと言い、亀次郎はこんな若造がと驚く。
陽子「若いほど優生学上いいとされてるんです」
赤松「それに不潔な青春を送るより、ずっと生理的には清潔ですし…」
亀次郎「生意気なことを言うな、君たちは! わしがいくつで結婚したと思ってんだ。わしは30だし、この長男はまだ30にもなって結婚してないんだ!」
武男「ですから、お父さん…」
亀次郎「ですからじゃありませんよ。不潔な青春とはなんですか、不潔とは! さっさと帰んなさい。お前たちもさっさと掃除しなさい」
武男をはじめ、子供たちも「はい!」
亀次郎「ぶん殴るぞ、ほんとに!」
子供たちはいっせいに外へ。幸子だけは自室?
イネは何があったのか聞く。
亀次郎「これが有名な我が家の雷ですよ」と威厳を見せる。(つづく)
優生学上とか不潔な青春とか自分たちのことをよく言うために他を下げるな。亀次郎の雷にあっぱれだよ。イネさん、どことなくお敏さんと動きが似てるような。