TBS 1973年6月5日
あらすじ
会社のやり方に賛同できず、しかも多美(上村香子)を好きになった北(藤岡弘)は、「二上」の人々と一緒に「二上」を発展させていきたいと考えていた。しかし、買収目的と思った彩子(淡島千景)らは…。
2024.2.22 BS松竹東急録画。
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北晴彦:藤岡弘…トラベルチェーン開発課の社員。
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中西良男:仲雅美…鶴吉の息子。
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大須賀伸(しん):荒谷公之…織庄の一人息子。
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山下幸子:望月真理子…自殺未遂後、「二上」で働きだす。
静子:相生千恵子…仲居。
師匠:水木涼子…多美のお茶の先生。
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せせらぎの間
桂から言われたことが頭に残る北。
桂<<私、北さんがそんな方とは知りませんでした。人の心を弄ぶって、そんなに面白いですか?>>
昔のドラマあるあるだけど、ちゃんと前回と今回撮り直していてセリフが微妙に違うパターン。
桂「あたくし、北さんがそんな方とは存じ上げませんでした。人の心を弄ぶっていうのは、そんなに面白いものなんですか?」
頭をかきむしって寝転ぶ北。
桂<<やっぱりうちを乗っ取りにいらしたのね? そのために姉ちゃんの気持ちまで>>
静子が「お床を延べさせていただきます」と入ってきて、「今夜は、いやに早いんだね」と言う北を無視し、テーブルを片づけ、布団を敷く。
北「多美さん、どうしてた?」
静子「存じません」
帳場に行き、彩子にすぐ北の言動を報告する静子。せせらぎの間からの内線に彩子が出たが、「さあ、存じません。いえ、どういたしまして」とさっさと切る。静子になんて言ってきたかと聞かれたが、「いこいの間もういいの?」と話をそらす。
帳場のこたつでくつろいでいる桂と伸。「多美さん知らない?」と彩子に聞かれて「お部屋じゃないかしら」と桂が答えると、彩子は帳場を出ていった。
伸「姉さんのことは君の責任だぞ」
桂「言われなくたって分かってるわよ」
伸「いや、なにも俺に怒ることないだろ」
伸のタバコを取り上げて口にくわえる桂。「火!」
伸「よせよせ。目、回すだけだよ」
桂「目、回したいの」
多美の部屋に彩子が入ってきた。「お風呂入らないの?」
多美「ええ」
この前もお風呂に入ってなかったな。
この時代のドラマ見てると、度々「今日はお風呂よすわ」みたいなのあるよね~。伸はまめにお風呂入りに来てるのに。
彩子「なんだか蒸すわね。雨にでもなるのかしら」窓を開ける。多美を見ると視線を外す。「ほかでもないんだけど、お父さんの法事ね。もうそろそろ準備に取りかからなきゃと思ってね」
多美「そうね。あと1か月ね」
彩子「お父さんの13回忌だし、お母さんの法事も一緒にして盛大にやらなくちゃね。お父さん、祭りごとの大好きな人だったから」
多美「でも、親戚中が集まってガヤガヤ騒ぐの、私、嫌い」
彩子「私も好きじゃないけれど、でも、そうも言ってられないでしょ。呼ばなきゃ呼ばないで、また何か言われるしね」
多美「この前の法事のときだって、まるでお母さんがお父さんを殺したようなこと言うんだもん」
彩子「あとから入ってくる者は、どうしてもそういうふうに言われるものよ」
多美「半分は妬みで言ってるんだと思うけど。でも、腹が立ってしかたがなかったわ」
彩子「多美さん。私もね、腹の立つことや悲しい思いをすることはたくさんあるのよ。でも、そこで負けちゃおしまい。イヤな思いをするときこそ笑っていなくちゃね。どんなことがあってもクシュンとなっちゃダメ。人に後ろ指をさされるようなことは何一つないんだから大きく胸を張ってなくちゃね」
目を潤ませて大きくうなずく多美。
彩子「いいわね?」
彩子の顔を見て笑顔でうなずく多美。
お父さんは数年前じゃなく、結構早くに亡くなったのね。多美が25歳で父が13回忌ってことは、多美が12歳くらいで亡くなったってことでしょう?
帳場
伸は身分がバレたのに1人だけ残った北を不思議に思う。買収するつもりなのかと言うと、桂は買収なんて一方的にできるもんじゃないでしょと言う。借金があるわけじゃないしと言う伸の言葉に着物のことを思い出した桂。ちょうど戻ってきた彩子は「桂ちゃんが心配しなくてもちゃんとうちで買いますよ。誰があんな人に出してもらうもんですか」とムッとしている。
伸「そう。それに限ります」
桂「伸ちゃん、何も分かってないのに口出しするんじゃないの」
彩子「桂ちゃん、思うようにならないからって八つ当たりするんじゃないの」
桂「フン」とお菓子を口に入れる。
「しかし、世の中にはひどいヤツがいたもんですね」という伸に「よく調べもしないのにどうしてひどいヤツだって分かるの?」とかばう桂。北に手首をつかまれたことを思い出して痛がる。心配する彩子と「どこ? どこ?」とべたべた触る伸。
彩子「あしたはなんとしても出てってもらうわ。あんな人、泊めとく義務、うちにはないんだもん。うんととっちめて泥を吐かせて放り出してやるんだ」
桂「お母さん、無理よ。あんな根性のある人、そう簡単に泥吐いたりするもんですか」
彩子「桂ちゃん、どっちの味方なの? 根性があるってのは、褒めるときに使うのよ」
桂「あらそう」
伸「そうだよ。お前さん、国語の時間、眠ってたな?」←癖になる”お前さん”
せせらぎの間
北の足の裏のアップ。寝転んでいた北は起き上がるが、うつ伏せになってタバコを吸おうとした…けど、マッチがないので内線をかけた。
帳場
秩父の地図や、電話番号の書かれた紙が貼ってある。
秩父警察署 (2)3225
秩父市××署 (2)2552
市立病院 (3)0611
中央公民館 (2)4900
××センター (2)1050
秩父保健所 (2)3824
商工会ギ所 (2)4411
××村役場 (2)3118
秩父市役所 (2)2211
××会館 (2)1847
公××× (2)××××
秩父保険 (2)×67×
秩父××× (2)234×
老人ホーム (2)867×
民俗××× (2)536×
一部、下4桁が合ってる電話番号もあった。
彩子「はい、帳場でございます。ビールですか。当方は10時過ぎのサービスは一切…8時半ですね。お持ちいたします。はい? マッチと…はい」
桂「せせらぎ?」
彩子「いい気なもんね。こっちがこんなにイライラしてんのに」
「何イライラしてんだい?」と話しかけた鶴吉。
彩子「ビールですって。ビールとマッチですって」
桂「お母さん。ヒステリー起こしちゃダメ」
鶴吉「そろそろ更年期だからな」←うるせっ!
厨房
冷蔵庫からビールを取りに来た彩子。良男は幸子が食事するのをそばで見つめていた。彩子は自らビールの用意をして運ぶ。
せせらぎの間
ビールを運んだ彩子は「あした黙ってお引き取り下さい」とピシャリ。
北「言い訳も聞かないで追っ払おうとおっしゃるんですか?」
彩子「言い訳なんか聞いてもしかたがありませんわ。どうしてもおっしゃりたければ天井にでも吹き込んどいてください」
北「そうはまいりません。あしたも泊めてもらいます」
彩子「居座るおつもり?」
北「聞いていただくまでは僕はここを動くわけにはいきません」
彩子「じゃあ、110番して警察に来てもらわなきゃなりませんね」
北「ええ、どうぞ。しかし、不法侵入ってわけにはいきませんよ。ここは旅館だし、僕はちゃんと金も払ってる。ここ当分、払うだけのお金も預けてあるから無銭飲食ってわけにいきませんからね。それにこれといって他の客に迷惑もかけていない。伝染病でもない。第一、いついつまで出ていくっていう契約も取り交わしてはいないんですよ。そうでしょう? こういう客を追い出そうってのは至難の業だと思うんですがね」
彩子「それも計算済みですね」
北「一体僕が何をしたっていうんですか?」
彩子「だって、あなた…」
北「そうでしょう? 残念ながら僕は何もしてませんよ」
彩子「これからするつもりでしょ?」
北「何をです?」
彩子「つまりその…とにかくうちはあなたにいられちゃ困るんです」
北「そうですかねえ? 僕はむしろ助かるんだと思うんだけど」
彩子「バカにするのもいいかげんにしてくださいよ。うちを買収にいらしたことは、はっきりしてるんですからね」
北「ハァ…あなた方は誤解してるんですよ。決して買収計画などありません。ウソだと思うんでしたら本社でもどこへでも問い合わせしてみてください」
彩子「ご本尊がそうです、なんておっしゃるわけないでしょ」
北「それはそうかもしれませんがね。僕がここにいる限り、5年待っても10年待っても買収の話なんて決して起きませんよ」
彩子「ここにいる限りって?」
北「そうですよ」
彩子「なぜですの? 理由をおっしゃってください」
北「それは言えません」
タバコを口にくわえ、ライターで火をつけ吸い始めた北。
彩子「それ、ご覧なさい。とにかくうちとしては、あなたにいていただいては困るんです」
北「とにかく僕としては誤解が解けるまでは、ここを動くわけにはいきません」
桂がマッチを持ってきたが、北はタバコを吸っていた。「あとでライターあること思い出したんですよ」と言い訳したものの、彩子も桂も冷たい視線を向ける。
桂「じゃあ、買収計画のほうも今にお思い出しになるわね?」
違うんだったらと言うものの、信じてもらえず、頭をかきむしる北。
部屋を出て、これでやっと眠れると言う彩子。
北は一人、コップに注いだビールを一気飲みしていた。
帳場
彩子「お茶でも入れようか」
桂「コーヒーどう?」
彩子「とんでもない。やっと眠れそうな気分になったっていうのに」
彩子「私、少し言いすぎたかしら?」
桂「ん…そんなことないでしょ。でもあそこまで追い詰めることもなかったかもね」
彩子「この際、同情は禁物よ」
桂「そうね」
彩子「あれであしたは思い直して出ていくわよ」
桂「そうね」
多美が来て、帳場の電話が鳴りっ放しだったと言う。北さんをとっちめてきたという桂に「そう」と返事したものの、部屋に戻ってしまった。
桂「私たち、余計なことしたのかしら」
風呂上がりの伸から北も風呂に入ってきて、鼻歌かなんか歌って上機嫌だったと聞き、彩子も桂もムッ。よっちゃんに送ってもらったら?と伸を帰らそうとした。
翌朝、自分で布団を雑にたたみ、押し入れにしまう北。裏庭でゴミ焼き。
厨房
起きてきた彩子は鶴吉から変な男が裏で庭掃除をしてたと言われ、静子からも玄関誰が掃除したんですか?と聞かれた。
鶴吉「敵もさるもの引っかくものってね」
彩子はヤキモキ。多美にほっといていいの?と聞かれたものの、そばに行って何度も言っても知らんぷりしていて、向こうが無視するなら、こっちも無視するだけと答えた。帳場でホチキスを探していた彩子は多美の部屋にあると聞き、多美の部屋へ。
裏庭の多美の部屋の前で熊手を持った北が多美がいると思い、話しかけると窓を開けて出てきたのは彩子。「なんでございましょうか? 泥棒猫みたいなマネはしないでください」と窓を閉められた。
喫茶店
作業着を着たままコーヒーを飲んでいる伸と桂。
伸「俺は北さんはとってもそんな人だと思えないんだけどな」
桂「そう? そうなの。なんだか変な気持ち。いろんな証拠を突きつけられれば突きつけられるほど、そうかなって思っちゃうの」
伸「そうだろう? 人間の直観なんて案外当たってるもんだぜ」
桂「そうよね」
字幕は”直観”だけど伸が言ってるのは”直感”のほうじゃない?
直観…本質を見抜く。
直感…瞬間的に感じ取る。
この時、喫茶店で流れていたのは日産スカイラインのCMソング。
BUZZ「ケンとメリー〜愛と風のように〜」1972年11月25日発売
伸は男同士で何か明かしてくれるかもしれないと直接北さんに聞いてみると提案。それとなく多美のことも探ってみると言う。
二上の土産物売り場にいた多美に「3時にこの喫茶店で待っています」と喫茶店名の書かれたマッチを手渡す北。玄関を出ようとした北に「お帰りですか?」と彩子が声をかけると、荷物が部屋に置いてあって、ちょっと出かけるだけだと出ていった。
せせらぎの間
テーブルの上の便せんに「荷物 北」と書かれ、くしが置かれていた。
日産ローレルで出かけた北。
厨房
庭がだいぶきれいなったという鶴吉。良男はボイラーの点検もしてもらえばいいと言う。多美は一足先に食事を終えた。鶴吉は自分の料理がまずいみたいだと言うが、多美は否定する。良男は料理がまずいと言って鶴吉と険悪になる。
多美はお茶の教室に出かけていった。
鶴吉「やっぱり好きだったのかね? あの男のこと」
彩子「さあ? 顔は悪くなかったからね」
良男「男は顔じゃない。中身だってこと分かんねえのかな、女には。なっ? 親父」
鶴吉「俺の顔見て言うことはねえだろ!」口の中にご飯がいっぱい。
良男が言ってもあまり説得力ないよ。良男もカッコいいから。
織庄
鼻歌を歌っていた桂の前に北が現れた。伸が話があるから外へ行こうと誘うが、北は伸のお父さんに用事があると言う。伸は親父は市議会でいないと外へ連れ出す。
モンモランシーという名の喫茶店。フランスの名門貴族の家門または地名。
店員「あら、伸ちゃん、今日はよく来るわね」
伸「うるさいなあ。コーヒー2つ」
北「いや、俺は紅茶だ」
伸と北は席につく。北は自分のタバコにライターで火をつけ、伸もタバコを近づけるが、サッと消してしまう。
伸「桂君がね、一番心配してるのは姉さんのことなんですよ。何しろ彼女は女ですからね」
北「伸ちゃん、探り出すにしちゃ下手な聞き方だな。僕が彼女のうちをホントに買収に来たんだとしたら簡単にそうですなんて言うと思うかい?」
伸「そうですね」
北「しかし、残念ながらそうなんだよ。伸ちゃん、人の気持ちが変わるってこと知ってるかい?」
伸「そりゃまあ…人間ですからねえ。それで?」
北「ただ、そういうことさ。ただそれだけさ」
西武バスから降りた多美。うわー、知ってる西武バスの色あいで懐かしい。多美は日傘をさして古い街並みの中を歩き、ホントにお茶に行ってる!
師匠「多美さん、どうしたの? 今日は全然落ち着きがないじゃないの」
後ろ姿しか映らなかったけど、キャストクレジットからすると水木涼子さんだよね。
「あしたからの恋」の美子の母とか
「たんとんとん」ではヒッピーの浩三に話しかけられた中年女性とか。
別の喫茶店でコーヒー?を飲む北。時計は4時過ぎ。喫茶店で流れるのはザ・モップスの「たどりついたらいつも雨ふり」。
ザ・モップス「たどりついたらいつも雨ふり」1972年7月5日発売
それにしてもなんでザ・モップスの「たどりついたらいつも雨ふり」がiTunesにないんだ! 好きな曲なのに。
これはアレンジが違いすぎる。
駅前のロータリーから西武バスに乗り、帰宅の途につく多美。
北の腕時計は4時半過ぎ。それにしても右利きの北は右腕に腕時計つけるんだ? カメラ映りの問題かな? コーヒーを追加注文し、なおもも待つ。
バスに乗った多美はかばんから北に手渡されたマッチを見る。癖の強い字体で”AZUMI”と書かれている。北を思い出し、後ろ髪を引かれる思いの多美。
ひたすら喫茶店で待ち続ける北。(つづく)
鈴木ヒロミツさんは私からすると役者のイメージが強かったけど、亡くなったときか何かで曲を知って、よく聴いてた時期もあったから懐かしかった。
北が会社に残れば、二上の買収は諦める。しかし、今後は社員として会社の命令に忠実になる。男同士の約束で、このことは誰にも漏らさぬように、と言われたせいか、はっきりとしたことが言えない北さん。モヤモヤ回が続く?