TBS 1973年5月22日
あらすじ
北(藤岡弘)は、多美(上村香子)に結婚を申し込む。多美は北を好きだったが、憧れの人としてしか見ていなかったので驚いた。一方で北は、旅館組合と織物工場の提携を勧めていたが、ある日…。
2024.2.20 BS松竹東急録画。
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中西良男:仲雅美…鶴吉の息子。
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大須賀伸(しん):荒谷公之…織庄の一人息子。
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山下幸子:望月真理子…自殺未遂後、「二上」で働きだす。
専務:土紀養児…北の会社の上司。
竹子:大橋澄子…仲居。
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課長:玉川伊佐男…北の上司。
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大須賀:野々村潔…織庄の社長。
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ミルクセーキを北の滞在するせせらぎの間へ運んだ多美。「甘い物(もん)お嫌い?」と聞いときながら、あんまりおいしくないかもしれない、北さんにわざわざ作ったってわけじゃありません、残り物(もん)ですいませんといちいち言い訳めいたことを口にする。ちょっとめんどくさいね。
多美がストローを持参したが、ストローを使わずに一気に飲み干す北。「ああ~、おいしい」
多美「そんな無理しなくても結構です」と言いつつ笑顔になる。
ホントにおいしいよと褒めてるのに、お酒召し上がる方には甘すぎるかもしれない、桂のコーヒーみたいに眠れないなんてことだけはありませんからとまだ言うか。
コップをお盆に載せて部屋を出ようとした多美を北が呼び止めた。一人じゃ退屈でしょうねと言う多美に君にとっても二上旅館にとっても重要な話だと言う北。「多美さん。僕、いや…俺のこと嫌いかい? いや、違うんだ。そんなんじゃないんだ。君はともかくとして僕は多美さんのこと好きなんだ。いや、好きっていうのとは違うけど。つまり、もっとこう大きなもんなんだよ。いや、違うな。分かってくれないかな。いや、僕の言いたいのはね、つまり僕と一緒に苦労してみる気にならないかってことなんだ。もちろんこういうことは無理にとは言えないけど、結婚…そう、君と結婚したいんだよ。いや、君と一緒に苦労できたらと。どうだろう?」
多美「困ります」
北「困る?」
多美「急にそんなこと言われたって…」
北「もちろん。もちろんだとも。びっくりするのは当然だよ。しかしね、多美さん、一度は結婚するんだろ? ねえ?」
多美「そのつもりですけど」
北「その相手を僕にしちゃどうかって勧誘してるんだよ。勧誘…あっ、勧誘だなんて不謹慎だな。このミルクセーキで酔っ払っちゃったかな。思う言葉が出てこないですよ」
多美「北さん。きっと桂に乗せられてるんだわ。それでそんな…」
北「違う違う。それは絶対違うんだよ。あんな小娘なんぞに…いや、ホント、桂ちゃんなんぞにそそのかされるほど子供じゃありませんよ。僕自身の判断で…いや、違うなあ。やむにやまれず…そう。やむにやまれぬ気持ちなんですよ。どうですか? 全く考えられませんか?」
多美「そんなふうに言われたって…考えさせてください」
北「もちろん。もちろんだとも。よく考えてください」
おやすみなさいを言い合う二人。
多美が出ていった部屋に残された北。「とうとう言っちゃった」←ちょっとかわいい。
ロビー
ミルクセーキを飲み干した良男は幸子にも勧める。「そんなにまずいかい?」
幸子「違うの。ただ…名前だけ。私がここに来る原因になった人、高沢正紀(たかさわ まさき)っていうんです」
良男「それがどうしたの?」
幸子「正しい紀(き)って書くから、学校のとき、みんな、セーキ、セーキって呼んでたものですから」
良男「うん…正紀。セーキ、なるほどね」
幸子「ごめんなさい」
良男「やっぱりその人のこと忘れられないの?」
幸子「忘れてたんだけど…」
良男「イヤなこと思い出させちゃったかな」
幸子「ううん、いいの」
良男「しかし、物は考えようだぜ。さっちゃんを思い橋から立たせたようなヤツ、思い切って飲んでしまえばいいのさ。なっ? グッと飲み込んじゃえよ、一息に」
多美が通りかかると、良男がミルクセーキを持って立ち上がり「おいちいよ」。
ミルクセーキから高沢正紀につながるとはね。正紀は字幕ないと無理だ。正しい紀と言われても、日記の記とかいろいろあるもんね。
帳場
彩子「あっ、北さん何してた?」
多美「何ってミルクセーキ飲んでたわ」
お盆を持って足早に通り過ぎる多美の様子に違和感を覚える彩子、鶴吉、伸。
彩子「どうしたのかしら?」
鶴吉「女ってのはクルックル、クルックル変わるからね」
伸「そうらしいですね」
桂は部屋でスケッチブックに向かっていたもののため息をついて寝転ぶ。伸の似顔絵と”伸コーッ!”の文字。先生を先公と呼ぶような感じ?
せせらぎの間
内線電話をかける北。「多美さん? さっきの話だけどね、どうも言葉が足りなかったような気がしたもんだから。つまり要するにだね、僕はなにもこの旅館に入り込もうなんていう魂胆じゃないからね。多美さんにお嫁に来てもらえればいいんだって…。えっ? いや、いいんです。その点、誤解されるといけないと思って」
多美「あっ、そうですか? 別にそんなこと思っておりません」
北「あっ…そんならいいんですが。それからもう一つ。これは当分、僕たち2人だけの秘密ってことにしてもらえないだろうか。いや、OKしてもらえれば言ってもらったっていいんだけど、どうも第三者ってヤツは誤解しやすいからね、どうだろう?」
多美「はい。わたくしもそのつもりです。いいえ」
多美の内線電話は帳場にあるから黙って座っている彩子たち。何でもないわとお風呂にも入らず部屋に行く多美。伸もそろそろ帰ろうとするが、桂が顔を出す。伸は彩子に先に話をしていた。桂はそのことかと胸をなでおろす。
彩子「私も悪い話じゃないと思うんだけど、できるかしら?」
桂「できるできないじゃないの。やるのよ、ねっ?」
伸「そうです。やるんです」
鶴吉「あっ、急に元気が出たな?」
彩子「うち一軒ならいいけれど、今の話だと旅館組合と織物組合と話し合わなきゃいけないんでしょ?」
桂「まず、うちと伸ちゃんとこで試験的にやってみるのよ。結果がよければ組合だって乗ってくるわ。まずは足元からよ」
織庄の旦那がなんて言うかと気にする鶴吉。そこを伸ちゃんがなんとかしてくれるという桂。当たって砕けろだとタバコを吸おうとした伸だったが、桂を気にしてやめた。
彩子「大須賀君、禁煙して頑張るの? 偉いわね」
伸「いえいえ、禁煙じゃなくて節煙ってとこです」
桂「偉いわね」
北が帳場へやって来た。彩子は別に反対してるわけじゃないと言い、桂は明日、織庄に3人で当たってみようと言う。
鶴吉はニヤニヤして「あんた、多美ちゃんに用があんじゃないの?」
北「いや、いいんです。もう」
良男が空のコップを運んできた。「さっちゃんがミルクセーキ飲んだんだよ。セーキを飲んだんだ」
彩子「なあに? あれ」
鶴吉「木の芽立ちでとうとう頭へきやがったかな?」
この言葉は、昔から「身体的精神的にバランスを崩しやすいので、病気に注意するべき時季」という意味でも、言い伝えられてきたのです。
知らない言葉だった。参照した↑では木(こ)の芽と書いてあるけど、ドラマでは木(き)の芽立(だ)ちと言ってました。
朝、スーツに着替えた北が車の鍵をもって玄関先をウロウロ。通りかかった多美に「桂ちゃんに車の用意ができたって言ってください」と言う。
厨房
まだご飯を食べていた桂。「ゆうべ、北さん何か言わなかった?」と多美に近づく。
多美「別に」
桂「ふ~ん、じゃ、今夜か」
多美「桂ちゃん。北さんに言っといてちょうだい。気安く多美さん、多美さんって言わないでくださいって」
桂「はあ…」
多美は桂が北を操ってるみたいなのが気に入らないのかな?
日産ローレルを洗車する北に「大変ですわね」と話しかける多美。北は織庄社長の人柄を聞く。よくは知らないけど人ざわりはいいほうだと答える多美。
桂が来ると、さっと助手席のドアを開ける北。紳士だね~。多美が「いってらっしゃいませ」と見送る。
車を走らせた北が、途中で車を止めてどこか見ている。桂は、まだ多美に話していないと思い、もうちょっと待ったほうがいいと言うが、北はもう話して、考えさせてもらうと言われたと言う。
桂「ふ~ん。あんちくしょう」
北「いってらっしゃいませ、か。いいな」
車は織庄の門をくぐる。門を入ってから玄関も大きい。ものすごく大きな盆栽もある。
桂「広いうちだから、いっぺんで出てきたことないんだから」
北「大したうちだな」
桂「織屋さんって儲かるときは、そりゃあ儲かるんだから」
大須賀「ハハハッ。それほどでもないさ」剪定ばさみをもって登場。
大須賀に北を紹介する桂。大須賀は息子から聞いてますと庭へ案内する。伸から話は聞いていた。
桂「なんだか私、自分のうちのことをお願いしてるようで申し上げにくいんですけど、これは一二上(いちふたがみ)のことではなく秩父の旅館全体の利益につながることだと思いますので」
大須賀「うん。なに、二上だけのことだって一向にかまわんよ。わしはなかなかグッドアイディアだと思うがね」
伸も出て来て案外簡単で拍子抜けしたと言う。うちとあんたんところでやってみようと言う大須賀。
手入れが行き届かないと言いつつ、庭を案内する大須賀。
北「あっ、いい茶室ですねえ」
大須賀「いや、あれは便所です」
北「トイレですか」
大須賀「うん」
「仮面ライダー」が始まったのは1971年4月。緑川博士は1話だけの登場?
ちょっとだけ特撮好きだった時期がある者としては、特撮で共演したメンバーが普通のドラマで普通の人間を演じてるのを見るのが好き。
「あしたからの恋」は「仮面ライダー」の1年前の1970年4月放送スタート。
桂「私が言ったとおりでしょ? 社長はそんな話の分からない方じゃないわ」
伸「なあに。儲からない話だと乗らない男だけど儲かると踏んだんだろ」
桂「そうよ。絶対成功するわ」
伸「それに次の選挙んこともあるしさ」
桂「ああ、なるほど」
伸「まあ、これで二上とうちは兄弟みたいなもんだな」
桂「そういうことね。兄弟。フフフフッ」と手を差し出し、伸と握手。
大須賀がスーツに着替えて「ぼつぼつ出かけようか」と門を出てきたのに、大須賀の後に出てきた北に「お茶でもお一つどうぞ」って、伸!?
タクシー乗り場で手を挙げる課長。専務とともにタクシーに乗り込む。
掃除機をかける多美。
思い橋の上でタクシーを停め、タクシーから降りて橋から景色を眺める専務と課長。
多美は押し入れからYシャツを見つけにおいを嗅いで、洗濯物としてまとめる。ここ、せせらぎの間か。ふと、外を見て橋の上にいる男性たちを見かける。「あら、お客様かしら?」
二上にやって来た課長と専務を彩子が迎えた。
課長「夕方までちょっと休みたいんですが、部屋ありますか?」
彩子「はい。お二人様でございますね?」
専務「ああ、昼飯、何かうまい物を食べさせてもらいたいな」
彩子「かしこまりました。あっ、竹ちゃん渓谷の間にご案内して」
まじまじと旅館内を見ている課長に「何様かしら?」とつぶやく彩子。
厨房
彩子は鶴吉にお昼二人前を頼んだ。「口のおごってそうな紳士だからよろしくね」
竹子に渓谷の間に案内された専務と課長。
課長「これ、少ないけど」と心づけを渡す。
竹子「あの…頂かないことになっておりますので」
課長「まあ、そう言わずに取っときなさい」と手に握らせる。
竹子「申し訳ございません。ありがとうございました」
課長は北晴彦って人が泊まってると思うんだけどねと話しかける。竹子はあっさり、この並びのせせらぎの間だと答えた。あとで訪ねてみようと言う課長に朝から出かけていると答えた竹子。専務は仕事と称してゴルフにでも行っとるんじゃないのか?と怒る。北は専務の身内らしい。だからある程度自由が利くのかな。
幸子がお茶を運んできた。幸子に顔に見覚えのあった課長。「君、どっかで会ったと思うんだけど誰だっけ?」←いきなりすごい尋ね方だな。
幸子「いいえ。あたくしには覚えがございませんけれども」
課長「そうかな? どこかで見た顔だと思うんだが…」
幸子「どうぞ」とお茶を出す。
課長「あっ、そうだ。君、高沢正紀知ってるだろ?」
幸子「いいえ。そういう方は存じ上げません」
課長「セーキだよ。高沢正紀」
幸子は人違いだと言い、お風呂にはいつでも入れるようになっておりますからと部屋をそそくさと出た。
帳場
竹子は彩子に渓谷の間の客が北の知り合いであることを話していた。内線がかかり、彩子が出ると、課長が北には我々が来ていることは内密にしてもらいたいと言った。それなのに、戻ってきたら内緒で我々に知らせてくれないかって、なんだそりゃ。
竹子はひょっとすると刑事かもしれないと言うが、彩子はそんなら警察手帳見せるわよと答えた。
様子のおかしい幸子を気にする彩子。幸子は外に飛び出す。
北は外で大きく伸びをする。それにしてもメチャクチャ脚が長い。(つづく)
顔は今っぽいけどスタイルは昭和だな~と思うことがほとんどだけど、藤岡弘さん、「あしたからの恋」の尾崎奈々さん、「ほんとうに」の草刈正雄さんは今の時代の20代でもかなりスタイルのいいほうだと思う。あ、松坂慶子さんも腰の位置が高い。
「あしたからの恋」のトシ子と「思い橋」の多美はどちらもひかえめな女性という描写なんだろうけど、多美はあまりに思いが出なさ過ぎてるような気がする。桂があまりにも北になついてるから、伸のことホントに好きなの?とも思っちゃう。