TBS 1973年5月29日
あらすじ
「二上」を訪れた専務と課長に、北(藤岡弘)は会社を辞めると伝える。会社のやり方では二上家を不幸にすると悟ったからである。しかし、北が大東観光の社員だと知った彩子(淡島千景)と桂(松坂慶子)は…。
2024.2.21 BS松竹東急録画。
*
北晴彦:藤岡弘…トラベルチェーン開発課の社員。
*
*
中西良男:仲雅美…鶴吉の息子。
*
大須賀伸(しん):荒谷公之…織庄の一人息子。
*
山下幸子:望月真理子…自殺未遂後、「二上」で働きだす。
静子:相生千恵子…仲居。
*
大庭:土紀養児…トラベルチェーンの専務。
竹子:大橋澄子…仲居。
*
吉野:玉川伊佐男…トラベルチェーン開発課の課長。
*
あらすじにある”大東観光”は一度も劇中では出てこず、トラベルチェーンとだけ言っていた。
秩父の山から爆発音がして、お昼だと気付く多美。
前も病室にいた幸子が聞いている描写があった。
石灰石の採掘のための爆発音みたいですね。
渓谷の間担当の幸子は彩子とともに外出中。食事の支度ができたが、部屋には誰もいない。旅館の周りを歩いていた課長を見つけた多美は「お食事の支度ができました」と声をかけた。専務はお風呂。課長はいいところだと褒め、多美の顔を見て秩父は美人が多いともいう。美人率は確かに高い。
課長「人手はあるのかね? おねえさんみたいな人」
多美「いえ、足りなくて困ってます」
課長「メイドさんは何人?」
多美「メイドさんっていうんですか、どうですか。家族と他に3人です」
課長は財布から1000円札?を出し、多美の前に出すが、多美が旅館の人間と知るとお札を引っ込める。さらに幸子のことを最近入ったんじゃない?と聞きだそうとした。
元・日産自動車会長のカルロス・ゴーンにどことなく似ている玉川伊佐男さんが日産一社提供の木下恵介アワーに出ているのが面白い。
彩子は森の中を歩きながら、幸子の話を聞いていた。「で、どっちだったの? その人。あなたとそのセーキさんって人を引き裂いたほう? それとも協力者?」
幸子「最初は理解してくれてたんですけど、あとでは…」
彩子「日和見ってわけね。でもね、さっちゃん。あんた、あの思い橋の上で生まれ変わったんじゃなかった? そうでしょ? だったら今更、誰が現れてきてもなんにも恐れることないじゃないの」
幸子「ええ」
彩子は幸子にどうして別れなきゃならなかったのかもう一度教えてと言い、ベンチに座る。「あなた、最初、愛し合ってた人が突然、よその女と結婚したんだって言ったわね? そんな不実な男なら、むしろ結婚しなくてよかったじゃないの。一緒になったって、いつかはきっと裏切られるわよ。そんな男のこと、どうしていつまでも思い切れないの? その男の人の知り合いが来たからって、どうしてそんなに慌てなきゃならないの?」
彩子の肩にすがって泣きだす幸子。
結構運転の荒い北。二上に戻り、出迎えた多美に計画がうまくいきそうだと話す。多美はそっと北を階段脇に連れ出し、かなり年配の男性2人が渓谷の間に来たことを伝えた。階段を下りてきた竹子は内密にと言われたことを北に教えた多美にハラハラ。
せせらぎの間に戻った部屋をウロウロ。「よ~し、機先を制するか」
その前に…と多美に内線をかけた。「僕に勇気を与えてください。ゆうべの返事を聞きたいんです。僕と一緒に苦労してみないかと言ったこと、つまり…僕と結婚してください」
多美「あの…急にお電話で言われても、私…」
北「いや、はっきりした返事じゃなくていいんです。多美さん、まだノーっていう結論は出てませんね?」
多美「ええ、それはまだ」
北「それでいいんです。ありがとう。僕はなんとしても君をさらっていきたい」
多美「困ります。そんな…」
北「じゃ」受話器を置く。
考えてみたら 北多美(きた たみ)って語呂悪いね。
ジャガイモの皮むきをしている鶴吉と良男。多美が無言でポーっとした様子で厨房を横切る。
庭に出た多美。「『さらっていきたい』だって」
森の中
彩子「そんなバカな話ってありますか。どんな生まれ方しようとあなたに関係ないじゃないの。そうですよ、親の責任よ。結婚すんのは、あなたたちじゃないの。今更時代遅れよ、そんなの。そうよ、そうですよ」
幸子「私もホントに知らなかったんです。それを、それを…隠してたんだろ。ごまかそうと思ってたんだろうって」←…の部分も何か言ってる?
彩子「今日来てんのもその一人なの?」
幸子「ええ」
ぼかされ過ぎてるのか事情が見えない。
彩子「あの人、何する人?」
幸子「確かトラベルチェーンって会社の…」
彩子「トラベルチェーン…あの買収で有名な」
幸子「開発課の課長さんです」
彩子「開発課? じゃ、北さんもそうなのかしら。こりゃ大変だわ」二上に戻る。
男2人が北と知り合い→北もトラベルチェーンの社員と思い至ったのかな。別に同僚と言ってたわけじゃないけどね。
旅館内をキョロキョロしていた課長と専務が北と鉢合わせ。
課長「北君、どこを遊び歩いてたんだ? この大変なときに」
北「何が大変なときですか。あれほど言っておいたのに、どうしてやって来たりしたんですか? これで僕の計画もおじゃんですよ」
我々の身分は誰にも知らせんよと言っていた課長だが、知り合いである幸子から漏れてる可能性に気付いた。
北「おじさん、僕の下見には一切口出しをしないって約束じゃなかったんですか?」
専務「それにも限度があるよ」
課長は2人に部屋に入るように言う。
彩子は厨房にいた鶴吉を帳場へ呼び出した。「取締役会議よ。多美さん、どこ行った?」
多美は裏庭。彩子は北が大変な食わせ者(もん)だったらしい、うち、狙われちゃったとまくし立てるが、鶴吉にはわけが分からない。
渓谷の間
遊び歩いていたと言われたことに反論する北。今まで秩父の織物工場に行っていた。34か所の札所の巡礼コース、織物工場の見学コース、荒川村ハイキングコース、奥秩父の探索コース、ディスカバー秩父の民族とお祭りコースなど観光客を誘致するために計画している。それでこそホテルを建てても客が来るし、旅館の人たちも喜んで我々チェーンの傘下に加わってくると北が熱弁。
ドラマで知った地名がたくさん出てきて面白い。
北は今までかなり会社に貢献してきたつもりだと自負している。だからいつもわがままを許してると言う専務に、北は会社を辞めたいと言い出し、慌てて止める課長。北は今、頑張っているのは会社のためじゃなくここの人たちのためだと言う。
帳場
彩子が鶴吉に事情を話すと、鶴吉も怒りだした。二上を人手に渡すようなことになったら、あの世でお父さんに合わせる顔がないと言う彩子。桂にも知らせるように言う鶴吉。彩子は織庄に電話をかけ、桂に事情を話した。
電話お願いしますと他の事務員に話して席を外した桂と伸。この間、北が織庄に顔を出したときに桂を呼んだ事務員さんだね。
渓谷の間
専務のコップにビールを注ぐ課長。北の退職を止める専務と課長。
北「辞表はもう送りました」
課長「辞表の問題じゃないよ。まかり間違えば、これは会社に対する背任行為だからね。告訴することだってできるんだよ。会社の金を使って遊興三昧をやったんだからね」
遊興三昧と言われてムッとする北だったが、課長から長い間、旅館に泊まりこんで女中全員に着物を買ったことを指摘された。どうしてこんなバカなことを考えたりしたのか聞かれたが、北はそれは言えませんと答えなかった。
課長「まさかここの美人どもに骨抜きにされたんじゃないだろうね?」
北「自分のやってることに疑問を持ったからですよ。持ちかける話はチェーン傘下だとか共同経営とかって言うけど結局のところは実験を奪っちゃうことになるんですからね」
課長「それでここの連中の収入が増えれば、なんにも言うことはないじゃないか。世の中、全てギブ アンド テイクだよ。金を貸してホテルを建てさせる。建ったホテルの売り上げは歩合で分け合う。どこがいけないんだい?」
北「確かに合法的ですよ。どこへ訴え出ても負けるでしょう。しかし、借りた金が返済できなかったらどうなります? うちの直営のうち、何軒かは、その口じゃありませんか。もうその手には乗りませんよ」
課長「しかし、その場合だって、うちは社員としてちゃんと使ってるよ」
北「あくどいやり方をカバーするためにね」
課長「なんてこと言うんだ、君は」
専務「吉野君、もういいよ。いくら言ったって水掛け論だ」
北「おじさん!」
吉野「北君! 君も大庭専務の勇気と決断は、よく知ってるだろ。つまらん意地を張らんことだ。君が意地を通すことは結局、この家のためにもならんと思うよ」
専務は大庭、課長は吉野ね。親戚関係?らしいけど大庭と北、吉野とセーキは苗字が違うんだね。字幕も”課長”になったり”吉野”になったり。
条件を出そうと吉野に耳打ちする大庭。直接言えばいいのに。北が会社に残れば、二上の買収は諦める。しかし、今後は社員として会社の命令に忠実になる。男同士の約束で、このことは誰にも漏らさぬよう念を押す大庭。「約束を破ったら僕のほうも容赦しないからね。いいな?」
課長はどうしてこんなオンボロ旅館に肩を入れる気になったのか不思議がる。グイッとビールを飲む北。お前も飲むんかい!
帳場
彩子「深入りする前でよかった。これがもう少し深入りしてたらどうにもならないことになってたわ」
やることが憎いという鶴吉。彩子は一時、多美さんにどうかしらなんて思ってたけど引っ掛からなくてよかったと打ち明ける。
多美「私なんか…私、あんな人、嫌いよ」
俺の目もなまったな、向こうが巧妙すぎると鶴吉と彩子が話している中、もういいわねと席を立った多美。
彩子「多美さん、ホントになんでもなかったのかしら?」
裏庭で涙をポロポロ流して泣く多美。
帳場
内線が鳴り、渓谷の間の客が帰るという連絡が入った。
良男は庭で多美さんが泣いていたと報告。彩子はお客様が帰るので車を駅まで頼むわねと話をそらす。幸子も一緒に連れてって買い物してくるように言うと、良男は笑顔になる。
帰ってきた桂。
彩子は玄関に来た吉野と大庭に「トラベルチェーンの方でいらっしゃいますか?」と聞く。吉野はそうだと返事をし、昼食代は北と一緒に頼みます、北は当分残りますから、休ましてやってくださいと言った。
吉野と大庭は帰っていき、玄関に来た北に今までやってきたことは会社のためだったのかと責める彩子。違うと否定する北に「ここのうちを乗っ取りに来たんだろ?」と鶴吉も責める。あとで話すと玄関を出た北だったが、すっかり信頼を失ってしまった。
彩子「まあ、いけしゃあしゃあと」
鶴吉「くそ、あの野郎。とっちめてやらなくちゃいけねえ」
桂「フン」
バスに見送りに来た北。「じゃ頼んだよ」と言う吉野。バスが走り出し、バスに乗っていた幸子の後ろの席に移動し、「こんな所でお会いできようとは思わなかったよ。セーキのヤツ、ここにいるの知ってるの?」となれなれしく話しかけるが幸子は無視。
彩子も事情を知ってるなら、よりによって同じバスに乗る機会に買い物なんて頼まなきゃいいのに。
喫茶店
良男にさっきの男は誰かと聞かれた幸子は「昔、ちょっと紹介された人」とだけ答えた。良男は今まで幸子の母が姿を見せないことを聞く。しかし、伸が外からウインドウをノックして話はそのままになってしまった。伸は二上に直行するから便乗させてほしいと良男に頼んだ。
やっぱり伸と良男って立って並ぶと身長も同じくらいの甘顔イケメンで見分けがつかないほどじゃないけど、似たタイプに見えちゃうな。
良男も幸子も外に出てきたのに「あっ、俺、コーヒーちょっと飲んでくるわ」と店へ。マイペースだね。
せせらぎの間
桂が食事を運んできた。「ごめんください。お待たせしました。あたくし、北さんがそんな方とは存じ上げませんでした。人の心を弄ぶっていうのは、そんなに面白いものなんですか?」
北「違う。違うんだよ」
違うなら証明してほしい。乗っ取りのために姉ちゃんの気持ちまで、と責める桂に違うんだよと繰り返す北。グッと桂の肩をつかんだ北を振り払ったが、北は桂の手首をつかむ。力が入り、痛がる桂。「ん~! あなた、やってんのね?」
北「ああ、ほんの少しね」
姉さんのことはウソじゃない、いいかげんな気持ちじゃないと熱弁する北にトラベルチェーンは何をしようとしたのか、うちとしたらどうしたらいいのか正直に言ってくれれば、私だって信じられるかもしれないと北に言う桂だったが、北は何も言えなかった。(つづく)
キャストクレジットに名前はあったけど、静子いた? 時々あるよね。逆もまたしかり。今日の場合は静子はいなくて、織庄の事務員のセリフはあった。
正直、今のところ、今までの木下恵介アワーのドラマで一番興味は薄い。ホームドラマ路線じゃなく、お仕事ドラマ、サスペンス要素が強いのかな。
「あしたからの恋」はメインの和枝と直也のケンカップルは好きじゃなかったけど、修一とトシ子のカップルにハマったし、和枝の両親の会話も面白くて、結局は好きなドラマの1つになった。
「思い橋」は他に好きなコンビも出てきそうもないうえに、これから木下恵介アワー常連のあの人が出る!みたいな楽しみもない。主題歌は爽やかでいいけどね。