TBS 1969年7月29日
あらすじ
鶴 亀次郎は裸一貫からたたき上げ、一代で築いた建設会社の社長である。ワンマンで頑固一徹な亀次郎は子どもたちに"おやじ太鼓"とあだ名を付けられている。この"おやじ太鼓"、朝は5時に起き、夜は8時になるともう寝てしまうが、起きている間は鳴り通し。そんな亀次郎をさらりとかわす7人の子どもたちに比べて、損な役回りはお手伝いさんたち。ひと言多いばっかりに、毎日カミナリを落とされる。
2023.9.25 BS松竹東急録画。12話からカラー。DVDは第1部の39話まで収録。
鶴家
亀次郎:進藤英太郎…大亀建設株式会社を一代で立ち上げた。62歳。
妻・愛子:風見章子…良妻賢母。57歳。
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長男・武男:園井啓介…亀次郎の会社で働いている。31歳。
妻・待子:春川ますみ…正子の紹介で結婚。
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次男・洋二:西川宏…ピアノや歌が得意。空襲で足を悪くした。29歳。
長女・秋子:香山美子…出版社勤務。27歳。
三男・三郎:津坂匡章(現・秋野太作)…二浪して今は大学4年生。
次女・幸子:高梨木聖…大学4年生。
四男・敬四郎:あおい輝彦…浪人中。
三女・かおる:沢田雅美…高校2年生。
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正子:小夜福子…亀次郎の兄嫁。高円寺の伯母さん。59歳。
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お敏:菅井きん…お手伝いさん。愛子の4つ下。53歳。
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神尾光:竹脇無我…秋子の恋人。TBS局員→俳優。25歳。
西川:山口崇…幸子の恋人。
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BARドルダー…洋二がピアノを弾いている店。
金子:加藤恒喜…マスター。
芙佐枝:岩倉高子…ウェイトレス。
スズメの鳴き声
広間に布団を敷き、正子が寝ていて、けたたましい銅鑼の音に正子は反応するも、そのまま寝ている。
朝、亀次郎の出勤。「おばちゃんも三郎もいいかげんに起こしなさい」
愛子「はい、もう少ししたら起こします」
亀次郎「大体、おばちゃんはともかく三郎がいけませんよ。年寄りにあんなに飲ますっていう法がありますか」
~っていう法がありますかって言いまわし、すっかり橋田壽賀子語としておなじみだけど、別に橋田さん独自の言葉じゃなくて、普通の言葉だったんだろうね。ただもう年月が経って使う人が橋田さんだったというだけで。
亀次郎は愛子に三郎に小遣いをやりすぎるからこういうことになると責め、武男が待ってるとお敏が知らせに来ても、いったん履いた靴を脱いでまで三郎を起こそうとする。愛子は三郎も洋二を心配していて、おばちゃんを寝かしてから、バーの終わるのは遅いから帰りが一番困ると洋二をアパートへ送ったと話した。
三郎、飲んでなかったっけ? でも、わざわざ送っていたとはねえ。
玄関にいた敬四郎も前の晩も夜中の2時に帰ってきた、かおるもあれじゃ三郎兄さんも眠いと擁護する。なぜ今まで黙っていたのか聞く亀次郎。愛子は何を怒りだすか分からないから言っていいんだか悪いんだか分からなかったと答えた。
亀次郎「バカなこと言いなさい。わしがむちゃくちゃに怒りますか」
武男が玄関まで戻ってきて「何してたんですか」と聞くと、「いろいろとすることがあるんですよ!」と怒鳴った。
愛子「靴を脱いだり履いたりおかしな人ですよ」
亀次郎「おかしいのはお前ですよ。30年も連れ添ってきて、今頃、言っていいことも悪いこともありますか!」靴ベラを玄関に投げつけ出ていった。
敬四郎「やれやれ、お母さんも心(しん)が疲れますね」
愛子「そうよ」
かおる「典型的な日本の奥さんよ。それじゃダメよ」
敬四郎「そうですよ。従順が最高の美徳じゃないんですからね」
亀次郎が戻ってきた。「おい、愛子! 三郎が起きてきたらオムレツの大きいのを作ってやんなさい。栄養をとらさなきゃダメですよ」
敬四郎「オムレツだってさ」
かおる「それも大きいのですって」
敬四郎「わけが分かんないよ」
愛子「だからお母さんも従順になっちゃうのよ」
愛子は今日も洋装。かおるの紺のシャツは前に何回か見た紺のワンピースに似てるけど、今日はベージュのスカートと合わせていた。
玄関でお敏と待子が「いってらっしゃいまし」と亀次郎と武男の乗る車を見送った。待子を門の前に立たすなと前は言ってて、今日はだいぶ待たせたんじゃないかな。
鶴家のプレジデントは 品川3 そ17-64
待子「なんて優しいお義父様かしら。三郎さんの朝ごはんにはトマトのよく冷えたのをつけなさいなんて、そんな細かいところまで気がつくんですものね」
お敏「それがよかったり悪かったりなんですよ。気がつくのなんのって、あの大ざっぱな顔とは似ても似つかないんですよ」
待子「まあ、お敏さんったら」
お敏「ほんとに人は見かけによらないもんですよ」
広間から起き出した正子はガラガラ声で台所へ。「お敏さん、いないの?」
茶の間にいた愛子が「おばちゃん、起きたんですか」と声をかけた。フラフラの正子が愛子と台所へ入って行く。
茶の間
敬四郎「二日酔いだよ」
かおる「どんなふうになんの? 二日酔いって」
台所
正子「ああ…頭が痛い。切なくってやりきれないわ」
茶の間
敬四郎「そうそう。切なくてやるせないんだよ」
かおる「あら、ちょっといいわね」
敬四郎「何がいいんだよ?」
かおる「だって、しゃれてるじゃないの。やるせないなんて」
敬四郎「そんな甘いムードじゃないんですよ。すぐお前は初恋みたいな顔しちゃって」
敬四郎とかおるは台所へ。穴があったら入りたいと落ち込んでいる正子。気がめいって死にたくなっちゃうのよと頭を抱える。お風呂に入ってさっぱりしたらいいという愛子。
台所へ戻ってきたお敏も心配する。愛子はお風呂へお湯をくみ込むよう、お敏に頼むが、お敏は二日酔いなら頭から水をかぶった方がいいとか塩をなめるといい、うちのおふくろなんてよくペロペロなめてましたよとアドバイス。
敬四郎「そりゃ馬じゃないの?」
お敏「馬だって人間だって効くんですよ」
正子「冗談じゃないわよ」
かおる「おばちゃんを馬並みにしたら悪いわよ」
愛子「早く支度してらっしゃいったら」
そういや、想像間取り図ではお風呂も洗面所もなかった。大体水回りは近いところにあるから、台所やトイレの近くかとも思うんだけど、表玄関に近いところに風呂場ってのも変だし…お敏は台所を出て右手に歩いていった。茶の間のほうにそんなスペースがあるのかな?
正子は敬四郎にアイスクリームを買ってくるよう頼む。正子は胃が熱い、アイスクリームと牛乳の冷たいのが一番いいと言う。二日酔いに興味津々のかおるはなおも正子に症状を聞く。切なくて、やるせなくてモヤモヤしたら、初恋みたい。それとも失恋かしら?と言うが、正子はそんな昔懐かしい気分じゃないとため息をつく。
茶の間
浴衣に着替えた正子はさっぱりとした表情でアイスクリームを食べている。敬四郎たちはうちはみんな甘すぎるものが嫌いだと言い合う。正子に今朝の出来事を話し、亀次郎は甘いところもあると愛子は言う。
正子「そういえばゆうべだってあんまり怒鳴らなかったわね。私、もっと絡んでやるつもりだったけど。拍子抜けしちゃったわ」
愛子「おばちゃんのほうが怒鳴ってたもの」
あれからお風呂に入って、縁側の椅子に掛けた亀次郎は「おばちゃんもあれでやっぱり親戚だからな」と言っていた。わざわざ洋二の働いてるお店に行ってくれた正子をありがたいと思っていて怒鳴れなかった。正子はお小遣いをもっとあげたらいいというが、洋二が受け取らない。バカ正直だとかおるが言うと、愛子がバカは余計だとすかさずツッコむ。
かおる「だって要領が悪すぎるじゃないの」
愛子「要領のいい人間なんて、お母さん嫌いですよ」
敬四郎「そうさ」
愛子「そういえばあれね、利口すぎる人間ばっかり多くなっちゃってバカ正直なんて人はいなくなっちゃったわね」
敬四郎「希少価値ですよね」
愛子「そこが洋二のいいとこですよ。お父さんだってそれがよく分かってるんですよ。今どき好きな人の苦労を自分もしてみようなんて若い人はいなくなっちゃってますよ」
かおる「つまり純情ね」
正子「真心ですよ」
敬四郎「誠実なんだな。愛する人のために」
かおる「それがどうもよく分かんないわ」
敬四郎「分からないんだよ、お前には」
愛子「それが分からないようじゃ困るんですよ」
正子「まだ子供なのよ」
かおる「とんだ子供ね」
敬四郎「お前なんて人間の真心を下痢して下しちゃったんじゃないのか」
かおる「まあ、汚い」
正子がアイスクリーム2つ、牛乳、水を飲んで大丈夫なのかと愛子が聞くと、「それがちょっと怪しいのよ」とトイレに駆け込んだ。
幸子起床。亀次郎と武男は会社に行ったんだから、平日なんだよね。前回からの続きで翌朝とすると、日曜日の夜から月曜の朝なのか、別におばちゃんなら平日→平日でもおかしくないのか。子供たちが家にいるのは7月下旬で夏休みだからかな?
幸子はゆうべは面白かったわ、私も(洋二の働く店に)行ってみようかしらと乗り気。敬四郎もみんなで行ってみようと言う。
かおる「そりゃ、いい案だわ。私も彼を誘おうかしら。彼もそういうとこ好きよ。それにね、お母さん、彼もちょっとギターやるでしょ。歌だってなかなかうまいのよ。だから洋二兄さんのピアノも一度聴きたいんですって。ねえ、すてきじゃない?」
愛子、幸子、敬四郎からあんたはまだ未成年者だと散々責められるかおる。それ言うなら敬四郎だって19歳だって言ってたよ。
三郎、起床。敬四郎がオムレツのお兄さんと言い、幸子は意味が分からない。どうせオムレツを作るなら秋子も起こしていらっしゃいという愛子。秋子は出版社だから亀次郎たちより朝は遅いとか?? それとも休み?
かおるは東南アジア行こうと思ったら蓼科に変わっちゃうしと不満をこぼす。そもそも最初はヨーロッパって言ってなかった?
起きてきた三郎は茶の間に入ってきて、亀次郎がオムレツで栄養をとらせなさいと言ったことを愛子に確認した。
BARドルダー
今日も洋二はスーツでピアノを弾いている。ピアニストでもない役でピアノを弾く役ってなかなか珍しい。その店にいるのは幸子と西川先生。
西川が笑う。
幸子「何がおかしいんですか?」
西川「おかしいんじゃないんだよ。今日の君はいつもの君と違うような気がするんだよ」
幸子「どうして?」
西川「あの田園調布のでっかいうちのお嬢さんよりは身近だもんね」
幸子「うちの中を知らないからだわ。てんで見かけ倒しですわ」
西川「フランスパンに香りのいいスープ。そんなイメージかな」
幸子「とんでもない。毎朝、おみおつけが薄いとか辛いとか言って揉めてるんです。第一うちのお父さんは昔、土方をしてたんです。それを今更気取ってみたって板につくもんですか。根っからの庶民階級よ」
「土方」も本来ならピーが入る言葉なのかな。ただ、このドラマでこの言葉を消したらなんだか分からなくなるもんね。まあ、他の言葉も消してほしくなかったけど。
西川「だけどどっか違うね。君を見ていたって洋二さんを見ていたって。とにかく生活のためじゃなく、あれだけピアノが弾けるんだからね」
幸子「今は生活のためです」
西川「それだって結局はわがままで弾けることだからね」
幸子「わがままというよりも兄は真剣なんです」
西川「君はどうかな? わがままなのか真剣なのか」
幸子「それは私のほうが聞きたいことです」
西川「そんなおっかない顔しないでよ」
幸子「おっかない顔は父に似たんです」
西川「じゃあ、洋二さんはお母さんに似てんのかな」
幸子「そんなことはどうだっていいんです。それよりも…」
西川「あっ、終わっちゃった」
洋二「幸子、今度は何を弾こうか?」
西川「洋二さん、ここへ来てちょっと飲みませんか?」
洋二「いえ、僕はダメなんですよ。それよりも幸子、お前の気分に合ったものを弾いてやるよ」
幸子「気分なんてあるのかしら」
西川「またそんな顔する。どうもお宅の血統はムキになりすぎるようですね」
幸子「当たり前です。ムキにならなかったら先生とこんな所に来ません」
西川「ほら、また言う。先生はよそうよ」
幸子「くだらない先生が多すぎますからね、当節は」
西川「いつもこれで揉めるんですよ」
洋二「せっかく来てくれたのにわざわざ僕の前で揉めるなよ」
なんだかめんどくさそうな性格の西川先生。かおるが憧れていたころの第1部の情報によると28歳で洋二と同じ歳。今回の山口崇さんを見て、唐突に「古畑任三郎」で石黒賢さんが犯人の回の対立する大学教授役を思い出した。ちょっとダークな感じ。
金子「かまいませんよ。揉めたって。今日は他にお客さんはないし」
芙佐枝「あんたは黙ってりゃいいのよ。この人ったらね、今度、恋人に捨てられる役をやるのよ。だからそこでうっかり揉めてると、みんな芝居の参考にされちゃうわよ」
金子「そんな人が悪かないったら」
芙佐枝「それだけが取り柄ですからね」
金子「この体たらく、お客の来ない舞台を見てるようでしょ?」
この店の人は三郎の劇団仲間の先輩とかなのかな~?
西川「深刻なお芝居よりはいいですよ」
幸子「よくそんなことが言えますね。私はお芝居じゃなく深刻です」
西川「もうよそうよ。そんな顔するのは」
幸子にリクエストを聞いてたのに、一向にリクエストする気配がないので曲を弾き始める洋二。
西川「君は少し同情がなさすぎるよ。よく分かってるくせに」
そこに三郎来店。神尾も一緒に入ってきた。幸子は立ち上がってあいさつ。洋二もピアノを弾きながらあいさつ。
三郎「そうだ、幸子、紹介しなさいよ」
幸子「ええ」
西川「僕、西川です」
幸子「すぐ上の兄です」
三郎「困った兄貴ですよ。どうぞよろしく」
西川「やあ、こちらこそ」
幸子「こちらは神尾さん」
神尾「どうも」
西川「ああ、秋子姉さんの。やあ、どうぞよろしく」
神尾「秋子姉さんのなんだと思いますか?」
西川「は?」
三郎「婚約者ですよ。れっきとした」
神尾「そうじゃないんだったら。勘違いしないでくださいよ、それは昔の話。今は失恋しかかってるんですからね」
三郎「そんなことないったら」
神尾も神尾でめんどくせー奴だな。マスターに水割り2つ注文。三郎に飲みすぎかなと言われたが、「冗談じゃないよ、まだこれからだ」と息巻き、幸子に一緒にそこで飲みましょうかと誘う。どうぞどうぞと西川が席をよけ、神尾が隣に座る。「聞くところによると、あなた方のほうもスムーズにいってないそうじゃありませんか」
西川「まあ、多少は」
幸子「多少なもんですか」
神尾「おや、重大な危機らしいな」
西川「とにかく深刻なんですよ」
神尾「そうそう。僕のほうも深刻なんですよ。じゃあ、気が合っちゃったから握手しましょう」
イケメンが意気投合してるぅ~。しかし、秋子×神尾も幸子×西川も何がそんなにうまくいってないんだかよく分からない。
三郎「こりゃうるさいことになりそうだな」
神尾「なるさ、今夜は。大体、君んとこの女性はなっちゃいないよ」
幸子「あら、どうしてなっちゃないんですか?」
三郎「まあ、揉めないで揉めないで」
神尾「揉めたっていいさ」
芙佐枝「仲よく揉めてくださいね」
神尾「やだね、僕は」
三郎「うるさいな、神尾さんは」
神尾「ああ、うるさいよ、僕は」
西川「相当参ってるんですね」
神尾「そう、男の純情を傷つけられたんですからね」
三郎「まあまあ、神尾さん。愛は移ろいやすいって言うじゃありませんか」
神尾「君とは違うよ」
幸子「そうよ。三郎兄さんみたいにいいかげんじゃないわよ」
三郎「こら、八つ当たりするな。西川先生がいいかげんだって泣いてたのはお前じゃないか」
カウンターでは金子と芙佐枝が会話を聞いている。金子はニヤニヤ。
幸子「泣くもんですか、私が」
西川「泣きたいのは僕ですよ。僕はちっともいい加減じゃないんですよ」
神尾「しかし、純情でもなさそうですからね、僕のように」
西川「それにはいろいろわけがあるんですよ」
幸子「そのわけが問題なんです」
三郎「そうムキになるなったら」
西川「そうなんですよ。僕もしょっちゅうそういってるんですよ」
洋二はピアノを弾き続ける。みんな聴いちゃいねえ。
幸子「それじゃまるでごまかしじゃありませんか」
神尾「ごまかしはいけないさ。少なくとも僕はムキになって愛してるんだからね」
西川「愛してますよ、僕だって」
幸子「だったらどうして…」
三郎「分かった、分かった」
幸子「何が分かったのよ」
神尾「そうだよ。何が君に分かったんだよ」
三郎「まあまあ、飲みましょう。今宵を楽しく」
西川「マスター、僕にも水割り」
金子「はい」
幸子「私にもシングルでちょうだい」
もっとイケメンを映さんかい! その場にいるのに蚊帳の外の洋二。
茶の間から出てきた亀次郎が愛子を呼ぶ。台所は無人で電気がつきっぱなし。広間から笑い声が聞こえる。
ソファに愛子、秋子、かおる、敬四郎、武男、待子が座っている。お敏は隣のテーブルセットの椅子に座る。亀次郎が来ると、待子が席を立ち、お敏の隣に移動する。秋子姉さんが3話連続で出てるの超レア!
愛子「もう寝ちゃったかと思いましたよ」
亀次郎「そう簡単に寝られるか」
愛子「寝つきが悪いんですね、このごろ」
亀次郎「昔からですよ。お前みたいにグースカ寝られるか」
お敏「やっぱり苦労が多いんですね」
亀次郎「そうさ。この頭数を見たって分かるだろ」
武男「お父さん、ちょっと肩を揉みましょうか」
待子が「いえ、あたくしが揉みますわ」と席を立ち、武男も「そうだ、君のほうがうまいよ」とやらせようとしたが、亀次郎は「いけませんよ」と武男に揉ませた。
敬四郎「やっぱりおなかの子供に障るよね」
かおる「あのマッサージの椅子みたいな子供が生まれたら困っちゃうわね。ブルンブルン震えちゃってさ」←なにか病気の表現だろうか?
敬四郎「そうそう。ゴーゴー踊ってるみたいなのね」
秋子「それじゃ、初めからフーテンじゃないの」
武男「嫌なこと言うなよ」
お敏「嫌なことがほんとになったら大変ですよ」
かおる「でもちょっと楽しみだわ」
愛子「楽しみよりも心配ですよ。初めてのお産は」
かおる「でも初めから耳の聞こえない赤ん坊もあるんですってね」
お敏「そりゃありますよ。どっかの国では頭の2つある赤ん坊が生まれたんですよ。いつだったか週刊誌に出てましたからね」
はっきり明言されてないけど時代的に公害病であったり、ベトナム戦争の枯葉剤のことを言ってるのかなあ? 妊婦の前ではデリケート過ぎる話。
亀次郎「お敏、いいかげんにしなさい。おまえはすぐ調子に乗って」
お敏「はい、ついうっかり…」と横を向く。
亀次郎「くだらない週刊誌を読みすぎますよ。あんなもの一切読むな」
お敏「はい、なるべく」
亀次郎「なるべくじゃありませんよ」
秋子「でも、うちの社だって週刊誌を出してるんですよ」
武男「あれだってひどいよ。結婚と離婚とうわさ話ばっかりだからな」
秋子「それが売れるんだからしかたがないのよ」
亀次郎「人のことよりは自分のことですよ。自分さえしっかりしていれば人のことなんてどうだっていいんです」
敬四郎「まして、お金を出してあんなもの買うんだからな」
待子「よっぽど退屈してるんじゃないんですか。今の人は」
武男「そうそう。自分の人生がないんだよ。満足できる生活が」
愛子「それでいてレジャー、レジャーで遊びたい人ばっかりですからね」
お敏「ということになると私なんかどうなんでしょう」
敬四郎はお敏さんはのんき、かおるはしっかりしてる、さらに敬四郎はしっかりじゃなくガッチリだと重ねる。お敏は諦めてる、満足してないと話す。
武男「だけど結構楽しんでるよ」
お敏「楽しいなんてもんじゃありませんよ。一体、どなたの肩を揉んでるんですか?」
待子「まあ、お敏さんったら、アハハッ」
秋子「フフフッ、いやにはっきり言うわね」
愛子「そりゃお敏さんだって言いたくもなるんですよ。ねっ、お父さん」
亀次郎「聞こえませんよ、今は。せっかくうつらうつらいい気持ちで揉んでもらってるのに」
愛子「都合の悪いことは聞こえないんだから」
亀次郎「そうじゃありませんよ。聞こえてたって聞こえないふりをしてるんですよ」
待子「まあ、お義父様ったら」
待子は笑いだし、秋子は笑う人と怒ってばかりいる人とちょうどバランスが取れると言うが、敬四郎もかおるもお敏も愛子もバランスの取れないことが多いと反論。
亀次郎は一家団らんは何よりの宝と機嫌がいい。
そこに三郎が帰宅。酔っ払った神尾と幸子を連れてきた。といっても、三郎は声だけだし、神尾も幸子も姿なし。
秋子「なんてだらしがないのかしら。だから軽薄だっていうのよ」
亀次郎「何を言うか。自分の冷たいのは棚に上げて、もうちょっとお母さんに似るとよかったんだ」
武男「どうして三郎は酔っ払いばっかり連れてくるんだろう。バカだよ、あいつは」
亀次郎「バカじゃありませんよ。それが三郎のいいとこですよ」
武男「はっ、確かに」
亀次郎「少しはお前も見習いなさい」
武男「はっ」
亀次郎「自分の兄弟がピアノを弾いているバーだと思えばこそ、あれはせっせと毎晩慰めに行ってるんですよ」
なかなか見どころがあるとさらに褒める。武男はまだマッサージを続けていて「やっぱりお父さんの子供ですからね」と同調。昔から腕一本で生きてきた人は違いますよ、頭じゃないんだなと余計な一言。
酔っ払った神尾は別宅へ。亀次郎は一旦結婚すると決めた男なら何になろうと結婚するのが当たり前じゃないかと秋子を非難する。武男も隣へ行こうとすると、亀次郎から待子をあんまり酔っ払いのそばに近づけない方がいいと注意した。
酒の息がかかったらおなかの赤ん坊にいけないと亀次郎が言うと、愛子はそんなに用心しなくていいと笑う。
亀次郎「赤ん坊というものはですよ、胎児教育が大事なんですよ」
お敏がお隣でお寿司を取るんだそうですけど、こちらも少しいかがですかと聞きに来た。5人前→神尾、秋子、敬四郎、かおる、武男、待子…6人前じゃないの!? 愛子は私たちはいいと断るものの、亀次郎が1人前とって愛子と半分ずつだと言うが、愛子はいらないと断る。
亀次郎「まあ、そう言うなってば」
お敏「そうですよ、奥様。残ったってちゃんと食べる人はいますよ。では、もう1人前別ですね。ほんとにお寿司はおいしいんだから」とにっこり。
お敏が広間を出ていくと顔を見合わせて笑う亀次郎と愛子。「お敏さんったらなかなか抜け目がないんだから」
亀次郎「あれでなきゃこのうちにはいられないよ」
愛子「それもそうですけどね」茶の間へ行きましょうと片付けようとすると、亀次郎がコップを手に取り手伝おうとしている。
愛子「今日のお父さんはちょっといいとこがありますよ」
亀次郎「いいとこだらけですよ」
愛子「いつもこうだといいんですけどね」
亀次郎「そうはいきませんよ。いや、しかし、うちの女房はいいとこだらけだ」
コップを片付けながらニッコニコのおやじ。(つづく)
妻を素直に褒められる夫っていいね。
BARドルダーにいた面々
西川:山口崇 1936年11月生まれ
洋二:西川宏 1940年11月生まれ
三郎:秋野太作 1943年2月生まれ
神尾:竹脇無我 1944年2月生まれ
役年齢だと西川先生と洋二は同じ29歳で、神尾が25歳、三郎が24歳くらいだと思うけど、洋二や三郎がお坊ちゃんで、西川や神尾に比べると子供っぽく見える。山口崇さんは実年齢がこの4人の中ではちょっと年上なのもあるけど、それにしてもね。竹脇無我さんは若い頃からしっかりしてんのね。
山口崇さんと竹脇無我さん、どっちもかっこいいなあ~。「大岡越前」で長らく共演してたらしいけど、主演は加藤剛さんでイケメンばっかりだね。イケメンというかハンサム、二枚目というべきか。
調べたらCSの時代劇専門チャンネルで今週が第10部の終盤で来週から11部の再放送も始まる。10部が1988年、11部が1990年。山口崇さんは徳川吉宗役ということでシリーズ通して数回ずつの出演。とりあえず、10部の26,27話と11部の1,2話をチェックしてみようかな。
竹脇無我さん主演、山口崇さん、進藤英太郎さんもいる! 結構共演してるらしいし、木下恵介アワーにも両方よく出てるのに一緒に出てるのが「おやじ太鼓」だけという寂しさ。もっと共演作品を捜してみよう。