徒然好きなもの

ドラマの感想など

【ネタバレ】木下恵介アワー「おやじ太鼓」 #36

TBS  1968年9月17日

 

あらすじ

敬老の日、亀次郎は武男に街灯の蛍光灯を取り替えさせていた。しかし、運悪く武男がはしごから足を踏み外し、亀次郎の上に落ちてしまう。たちまち大騒ぎになる鶴家。亀次郎は痛い腰を抑えて子どもたちやお敏をどなり散らす。そんな中、鶴家に懐かしい人物が訪ねてくる。

2023.8.30 BS松竹東急録画。12話からカラー。

peachredrum.hateblo.jp

鶴家

亀次郎:進藤英太郎…大亀建設株式会社を一代で立ち上げた。2月5日で61歳。

妻・愛子:風見章子…5月で56歳。

長男・武男:園井啓介…亀次郎の会社で働いている。3月3日で30歳。独身。

次男・洋二:西川宏…ピアノや歌が得意。空襲で足を悪くした。28歳。

長女・秋子:香山美子…出版社勤務。26歳。

三男・三郎:津坂匡章(現・秋野太作)…二浪して大学生。

次女・幸子:高梨木聖…女子大生。1月の成人式に出席。

四男・敬四郎:あおい輝彦…浪人中。

三女・かおる:沢田雅美…4月から高校生。

*

お手伝いさん

お敏:菅井きん…愛子の4つ下。6月で52歳。

イネ:岸輝子…お敏の母。結婚3回目。

 

手ぬぐいをかぶって掃除をするお敏。今日は敬老の日ということで早起きしてきた武男と洋二。放送日は1968年9月17日(火)だけど、今回の話は敬老の日なので1968年9月15日(日)のお話。早起きは気持ちがいいという武男だったが、お敏は早起きぐらい嫌いなものはないと言う。年寄りというほどではないけど、眠りが浅くて早く起きるということがないんだね。ある意味羨ましい。

 

武男がイネの様子を聞く。イネはふてくされ寝している。

お敏「ガックリは私のほうですよ。あんな気まぐれなばあさんに寄りかかられちゃ私の未来だって夢はありませんよ」

武男「まあ、夢か幻か知らないけど大事にするんだね」茶の間へ。

洋二「おばあちゃんもかわいそうだな」

お敏「幻ってなんですか?」

洋二「幻?」

お敏「今、武男さんがおっしゃってたじゃありませんか」

洋二「ああ、幻は起きてるときに見るんだよ。夢は寝てるときに見るだろ」

お敏「ええ。じゃあ、どっちのほうが得なんでしょう?」

洋二「まあ、好き好きだね」茶の間へ。

お敏「私なんか割合好きなほうなんだけど」

一人広間に残されたお敏はなぜかうっとり目を開けたり閉じたり。そういえば、前は頻繁に話の中に出てきたマッサージ椅子が最近出てこないね。

 

茶の間に集う愛子、武男、洋二。大豪邸の茶の間としては小ぢんまりしたところに集まるよね。

愛子「敬老の日だから早起きしてくれるのは嬉しいけど、お父さんはまだ若いつもりでいますからね」

武男「そこがいいとこのような悪いとこですね」

愛子「悪いことはないでしょ、別に」

武男「いや、つまり体に無理をしちゃうんですよ」

洋二「長生きしてもらったほうがいいものね」

 

愛子「お父さんは無理を無理と思わないとこが張りなんですよ。頑張りで生きてきた人ですからね」

武男「全く疲れを知らないんだから」

愛子「知らないことはないんですよ。やっぱり年ですよ」

 

お敏に起きてる人だけごはんにするという愛子。こういう時間帯がバラバラだと作る人もいつ食べるんだか難しいね。

 

亀次郎は庭でホースで水撒き。それにしても広い庭。人工芝なのかやけに濃い緑の芝。まだひまわりも咲いている。

peachredrum.hateblo.jp

敬四郎とお敏が庭で追いかけっこしてたことがあったんだけど、この回はまだ白黒だったからね。そのあとは庭が映ったことあったっけ?

 

愛子が庭にいる亀次郎を呼びに来て、武男さんと洋二だけが起きてると言うとみんな起こしなさいと言う。

亀次郎「なんだ、敬老の日だというのに若い者が寝ていて」

水撒きは誰かにやらせますからと言う愛子にいいことを思いついたから武男を呼びなさいという亀次郎。

 

愛子「呼びますけど、せっかくのご飯が冷めちゃいますよ」

亀次郎「ったく…どうして女って、ああ、食うことばっかり言ってるんだ。まるで他に考えることがないみたいに」←なんてこと言うんだ。

 

茶の間

食事の準備をするお敏。この家はちゃんと武男や洋二も手伝うよね。じっと座ってる人がいなくて皿を各自配ったりする。武男はお父さんは宿屋の番頭になったって、ホテルの社長ぐらいにはなったんじゃないのかなと言う。

お敏「そうですとも。まあ、今の世の中にしては珍しい社長さんですよ」

 

愛子から亀次郎が武男を呼んでるというので「今日は敬老の日ですからね、いたわってあげましょうかね」と茶の間を出て行く武男。

お敏「ハッハー、ああ、おかしい」

洋二「何がおかしいの?」

お敏「だってそうですよ。いたわってあげようなんて、いたわられる人はもうちょっと違う顔してますよ」

愛子「違った顔ってどんな顔よ?」

お敏「あらやだ、奥様だってそう思ってらっしゃるのに」

愛子「お父さんは元気なような顔してるけど、あれで疲れてるんですよ。会社のことやうちのことや」

洋二「日曜は必ず午前と午後と昼寝だものね」

お敏「その昼寝がまたいけないんですよ。起きたあとの張り切りようったら、とてもそばにいられたもんじゃありませんよ」

 

あんたそんなことよりとイネのことを聞く愛子。ヒョロヒョロ起きてこられたら邪魔だというお敏に「ゆんべだってろくにご飯食べなかったでしょ」と言う愛子。ゆんべという響きが面白いなと思ったけど、鶴家はみんなゆんべと言うので慣れた。1週間も寝込んでいて、あれで食べたら穀潰しだと答えるお敏。「失恋の痛手が聞いてあきれますよ。あの年で」と台所へ。

 

愛子「どっちもどっちっていうのかしら」

洋二「だけどおばあちゃんかわいそうですよね」

愛子「だけど六さんが連れ戻しに来たってことがそんなにショックだったのかしら」

洋二「よっぽど思い詰めていたんですね」

愛子「だからめったに人を好きになっちゃダメよ。つらい思いをするのは自分なんだから」

洋二「うちはみんなつらい思いをしそうですね」

それもこれもお父さんよと愛子は言うが、それぞれが選んだ人だからねえ。

 

かおるが茶の間に来た。かおるの部屋の前の天井の蛍光灯を武男が外して持っていったため、ガタガタうるさくて起きてしまったのだと言う。

 

亀次郎と武男は梯子と蛍光灯を持って道を歩き、道行く人が振り返る。そして電柱に梯子を立てかけ、武男が街灯の蛍光灯を勝手に外し、自宅から持ってきた蛍光灯と取り換える。武男は梯子を下りようとして転落し、亀次郎が下敷きになってしまった。

 

亀次郎「ああ、痛い! 痛い痛い!」

武男「お父さん、大丈夫ですか?」

亀次郎「バカ! もっと気をつけて下りなさい」

武男「すいません、つい滑っちゃって」

通りかかった寿司屋が「大丈夫ですか?」と声をかけ、「とにかくお宅へ知らせてきますよ」と自転車で走り去っていった。

 

今回のお寿司屋さんは鈴木洽六さんという方だと思いますが、まず「洽」が難しい。音読みだと「コウ、ギョウ」、訓読みだと「あまね(し)、うるお(う)、うるお(す)」。コウロクさんなのかな。で、検索するとある会社の代表取締役の方が出てくるんだけど、なんか似てるような気がする。年齢的にも同姓同名の人じゃないような気がする。

 

亀次郎は痛い痛いを連発し、武男が励ます。

 

何度もインターホンを鳴らす人がいてお敏が慌てて外へ行った。お敏が茶の間の窓から「大変ですよ」、旦那様が梯子から落っこっちゃったと言う。つい向こうの十字路ということはあの街灯はもちろん鶴家のものじゃないよね? 洋二とかおるが亀次郎たちの元へ向かう。

 

別宅にもインターホンが何度も鳴り、三郎、敬四郎、幸子も目を覚ます。

 

武男と洋二に抱えられて亀次郎が帰ってきた。

愛子「どうしてはしごなんかに登ったんですか?」

武男「登ったのは僕なんですよ」

愛子「じゃあ、お父さんが落っこちることないじゃないの」

亀次郎「落っこちてきたんだよ、武男が」

愛子「武男さん、大丈夫だったの?」

武男「お父さんが受けてくれたんですよ」

愛子「そりゃよかった」

亀次郎「いいことがあるか。親を下敷きにしといて」

愛子「親はどっちみち下敷きですよ」

武男「さあ、お父さんしっかり」

 

お敏とかおるは梯子を運ぶ。社長さんにしたら少し動きすぎだとお敏が言い、あの角のうちの子も同じクラスで明日学校行くのが恥ずかしいというかおる。梯子を運ぶ2人を通行人がじろじろ見ている。

お敏「恥も外聞もないんだから旦那様は。自分さえ気が済めば、それでいいんですからね」

 

裏玄関から入ってきた幸子は、茶の間にいる亀次郎の「医者よりもごはんですよ、早くしなさい」という声を聞いた。

愛子「知りませんよ。あとで骨にヒビが入ってたって。大体骨がもろくなってるんですからね」

亀次郎「もろくなるか、この亀次郎さんが」

愛子「ほんとに強情なんだから」

 

茶の間から出てきた愛子に見つかった幸子は手伝いなさいと言われ、事情を聞く。武男が梯子から滑り落ちて、打ったのはお父さんだと聞き、インターホンを鳴らしてきた敬四郎に武男兄さんが梯子から滑り落ちたから早くいらっしゃいと呼び掛けた。三郎も敬四郎もパジャマ姿のまま本宅へ。

 

茶の間

武男を心配する三郎と敬四郎だったが、ケガしたのが亀次郎と知り、「でも、お父さんでよかったですね」とつい言ってしまう。

亀次郎「バカ者! どうしてお父さんならいいんだ」

シュンとなる敬四郎に軽井沢へも北海道へも連れてってやったじゃないかと怒る。頭を下げる敬四郎。

洋二「言っていいことと悪いことがあるよ」

亀次郎「いや、それがめちゃくちゃなんだ。うちの子供たちは」

武男「特に敬四郎ですよ」三郎もそうだと指摘する。

 

着替えに席を立った三郎と敬四郎。去り際に「お父さんなら頑丈だもん。滑ったって転んだってケガなんかしないよね」と敬四郎が言う。

亀次郎「そりゃそうさ。体の鍛え方が違うよ」

 

幸子と愛子が朝食を運んできた。愛子はごはんが済んだらお医者さんへ行くように言うが、亀次郎は拒否。

愛子「だってもろくなってるんですよ、骨が」

亀次郎「骨、骨、言うな。お前ときたら二言目には骨だのもろくなったの、どだい気を悪くするようなことしか言わないんだ」

愛子「だって登別でも滑って転んだじゃありませんか」

peachredrum.hateblo.jp

亀次郎「それはお前がヨタヨタ歩いてたからだ」

愛子「知りませんよ。二度あることは三度あるっていいますからね」

亀次郎「三度目はお前の番ですよ」

愛子「フン、憎らしい」

 

ようやくイネが起きてきて、「お敏、お敏や~」と呼ぶ。

お敏「なんですか。そんなお化けみたいな声出して」

イネ「あたしゃ、もう長いことないよ。なんか食べさせておくれよ」

お敏「まあ、あきれた。長いことないなら食べなくたっていいでしょ」

イネ「そんな邪険なこと言って。私はほんとに化けて出ますよ」

 

茶の間で朝食をとっていた亀次郎たちもイネが起きたことに気付いた。

亀次郎「お敏はまた何を怒鳴ってんだ」

 

台所

イネ「もう生きてく根気もなくなっちゃったよ。おなかは減るし、魂は抜けちゃったし」

お敏「早く化け猫でもなんでもなっちゃったらいいでしょ。もうすぐお彼岸ですからね、お迎えは近いですよ」

イネ「なんの因果でこんな娘を頼ることになっちゃったのかねえ」

お敏「ハハハーだ! 笑わしちゃいけませんよ。何さ、六さん六さんってのろけといて何が今更娘もヘチマもありませんよ。化け猫が嫌ならカッパのお化けで色に溺れて成仏すりゃ本望でしょ!」

 

茶の間から身を乗り出して心配そうに聞いている亀次郎。幸子は笑っちゃってる。亀次郎はたまらず「お敏!」と声をかけた。

 

台所

お敏「はい、お彼岸が近いと、つい仏心が出ちゃいまして」

亀次郎「何が仏心だ、仮にもだよ」

お敏「はい! 早く成仏したほうが身のためだと思いまして」

亀次郎「何が成仏だ、仮にもだよ」

お敏「はい、色だの恋だのいい年をして」

イネ「いい年は大きなお世話ですよ」

亀次郎「そうですよ。仮にもお母さんをつかまえて成仏だのカッパのお化けだの、それでもお前は人間の皮をかぶった人間だといえるのか!」←人間の皮をかぶった人間?

イネ「はい、ですけど旦那様…」

亀次郎「旦那様じゃありませんよ! こうなったらわしもむかっぱらの亀次郎だ。親を粗末にしたら承知しませんよ!」

 

毎回お敏さんだけ怒鳴られる展開はつらい。イネは堂々「ちゃんと小学校出るまでは養ったじゃないか」と言っちゃうような母親でしかも男、男言ってるような人で…。

peachredrum.hateblo.jp

三郎と敬四郎が着替えて本宅へ。「さあさあ、おいしい朝ごはんは一家団らんでね」という三郎のセリフがなんとも寅さんっぽく感じた。津坂匡章(現・秋野太作)さんが「男はつらいよ」の映画の初期のころに出てたけど、この「おやじ太鼓」が終わった1968年10月から始まる「男はつらいよ」のテレビドラマ版にも出てたんだね。このドラマは当時高価なVTRで撮影されたため、初回と最終回しか残ってない。

 

裏玄関から入ってきた2人に亀次郎は「お前たちもよく聞いときなさい」と説教が始まる。

 

インターホンが鳴るが、「うるさい!」と言って出ない。

 

亀次郎「親は子供より年を取ってますよ」

 

またインターホンが鳴る。また無視。

 

亀次郎はまた台所に来てお敏に説教。「お前は大体いけませんよ。年寄りが多少間違ったことを言ってもだ…」

 

インターホンが鳴り、思い切り亀次郎に向かって「うるさい!」と怒鳴ってしまうお敏。敬四郎が出ると言って裏門へ。三郎もついて行こうとするが、亀次郎に2人も行くことはないと止められた。

 

もういいじゃありませんかと止める愛子に怒鳴るたんびに腰に響くと言う亀次郎。

 

敬四郎は珍しい人が来たと言う。三郎が見て、初ちゃん(新田勝江)だと言い、お敏は台所から飛び出していった。洋二も茶の間の窓から「初子さん、どうしてたの?」と声をかけた。茶の間に顔を出した初子(カメラには後姿)に武男や幸子が次々声をかけた。幸子にすっかり奥さんらしくなったと言われ、照れ笑い。ここで初子のアップ。おお、初ちゃん! 久しぶり。

 

初子は茶の間の窓から会話して、裏玄関に入ってきて、お敏との再会を喜ぶ。しかし、さっそく亀次郎に「こら、初子!」と怒鳴られる。

亀次郎「なんですか、今頃、ノコノコ亀みたいに顔出して」

愛子「亀は自分のことじゃありませんか」

亀次郎「つい口が滑ったんです」

 

怒り口調ながら「とにかく上がりなさい」という亀次郎。ちょっと動くたび腰が痛そう。

 

台所

食事していたイネの食器を次々トレーに乗せるお敏。「邪魔ですよ」と自分の部屋で食べるように追い出した。

 

お敏は初子のためにお茶を入れようとしたが、敬四郎がごはんにすると言いに来て、準備をする。敬四郎は初子に話しかけるわけでもないが顔を見てニコニコ。

 

初子「私だってまさかあんな急にお嫁に行くと思わなかったのよ」

お敏「それはこっちで言うことよ。何さ、兄さんが荷物を取りに来ただけで。おかげで私一人でひどい目に遭っちゃったわ」

初子「悪い悪いと思ってたのよ」

お敏「まあ、済んだことをとやかく言ってもしょうがないけどね。それでどうなの? 旦那様は」

peachredrum.hateblo.jp

まあほんとに突然だった。22話まで普通に出ていて、洋二の絵に感激したりして…なのに、23話で横須賀の兄のところへ行ってる、24話で結婚!だもんね。

 

初子は夫のことを聞かれると不満げで男の人は内面(うちづら)と外面(そとづら)があると言いだす。優しかったのは最初の1週間。お敏は「男なんてね、釣ってしまえばそれまでだと思ってんのよ。釣り上げてから餌をやるバカはないっていうからね」と身を乗り出す。

 

かおるが食器を運びながら台所にやってきて「お父さんのおみおつけまだなの?」とお敏に言う。話に身が入って忘れちゃったと言って立ち上がる。

 

かおるも初子の新婚生活に興味津々。初子がホヤホヤじゃないと言えば、アツアツなの?と聞き、お敏がカッカしてると答えた。かおるは燃えてると勘違いしたが、お敏が冷めかかってるとどこか楽しそうな笑顔。「話の身は入ってるけど、おみおつけの身はありませんからね」と茶の間へ。

 

茶の間

お敏が亀次郎におみおつけを渡すと、愛子が初子の様子を聞く。

お敏「それがあれなんですって。優しかったのは1週間ですって」

洋二「えっ、1週間?」

お敏「そうなんですよ」

武男「それはいったいどういうことさ」

お敏「まだよくは聞いてないんですけどね」

亀次郎「あんな慌てた行き方をするからだ。なんだ、後足で砂かけるみたいに」

身のないおみおつけに気付いた亀次郎の視線を避けてそっぽを向くお敏。

 

広間

初子「つまりなんていいますか、一事が万事とっても細かいんです」

亀次郎「細かいのは結構じゃないか。それぐらいにしなきゃお金はたまりませんよ」

初子「はあ、私もそうは思うんですけど、それがちょっと程度問題で」

武男「つまり具体的に言うとどういうことさ?」

初子「私も普通にケチな人なら聞いたことがありますけど、とにかくまああれっくらいケチな人は見たことも聞いたこともないんです」

武男「だからどういうふうにケチなんだよ?」

初子「それがもうお話にもなんにもならないんです」

 

この辺まどろっこしい会話が続く…。でも初ちゃんってお手伝いしてるときから割とこんな感じだった気がする。お敏もイライラしてハキハキ洗いざらい話してしまえばいいのよと言うが、愛子は自分のご主人のことだから言えることと言えないことがあるとかばう。

 

初子「私、とっても恥ずかしくって」

愛子「そうですよ」

亀次郎「だけどケチだっていうだけじゃ分からないよ」

愛子「分かったって分からなくたってとにかく見たことも聞いたこともないほどだって言ってるじゃありませんか」

 

また同じような会話。

 

洋二「だけど初子さん、言いたくなきゃ言わなくてもいいけど、とにかくうちの人は君のことは気になるからね。よく働いてもらったんだし」

初子「はい、ありがとうございます。とにかくバチが当たったんです。あんな見たことも聞いたことも…」でお敏は背中をたたく。「あんた、何べん同じこと言うのよ」

 

亀次郎はお敏に水を持ってくるように言う。新婚の悩みを聞くせいなのかこの場には亀次郎、愛子、武男、洋二だけで下の子供たちはいない。

 

無理に話さなくてもいいという愛子に無理にでも話したいという初子。「はい、主人には悪いんですけど…」と口ごもってしまう。

 

そこに三郎たちが入ってきた。

三郎「さあさあ、もう陰気くさい話は済んだんでしょ? どうですか。これからにぎやかに敬老会をしたら」

敬四郎「ワヤワヤ、うちん中にいてもつまらんですよ」

幸子「みんなでどっかに行こうってことになったのよ」

かおる「老人の日だから、あの…感謝を込めて」

三郎「お父さん、どうですか? 機嫌よく」

亀次郎「バカ者! どこにそんな老人がいるんだ」

 

一同「は?」

愛子「いますよ、おばあちゃんが」

三郎「ああ、そうだ。おばあちゃんの失恋を慰めるんだ」

敬四郎「うん、そうそうちょうどいい年寄りだ」

幸子「罪がないもんね」

三郎「純情だよ」

かおる「憎らしくないだけでもいいわ」

しらじらしくおばあちゃんを呼びに行く敬四郎たち。

 

電話が鳴り、お敏が出た。秋子が今夜帰るという電話が秋子の会社からかかってきた。愛子が慌てて出ようとしてこけた。

亀次郎「ほら、3度目だ、ハハッ」

代わりに武男が出ることにした。

 

愛子「あなたがろくなこと言わなかったからですよ」

亀次郎「気が合うんだよ、わしとお前は」

初子「羨ましいですわ」お敏が持ってきた水の入ったコップをテーブルに置く。

亀次郎「お前だって見習いなさい。夫婦は常に共倒れの覚悟でなきゃいけませんよ」

初子「はい、私なんかこのお宅にいてすっかり贅沢になってたのかもしれません」

洋二「多少はね」

亀次郎「人間慣れるということは恐ろしいことだよ」

 

武男が受話器を置き、今夜の10時に到着すると報告。

 

三郎たちは歌いながらイネを連れてきた。イネの手には一升瓶。

♪若き日 はや夢と過ぎ

わが友 みな世を去りて

あの世に 楽しく眠り

かすかに 我を呼ぶ

オールド ブラック ジョー

われも行(ゆ)かん 

はや 老いたれば

かすかに 我を呼ぶ

オールド ブラック ジョー

何(など)てか 涙ぞ出(い)ずる

何(など)てか 心は痛む

わが友 はるかに去りて…

オールドブラックジョー

オールドブラックジョー

  • 山本 健二
  • クラシック
  • ¥153
  • provided courtesy of iTunes

kotobank.jp

ちょっと悲しい歌。

 

イネとコップ酒で乾杯して揺り椅子に揺られながら満足そうな亀次郎。(つづく)

 

初ちゃんのケチ話、ちゃんと聞きたかった。けど、こんなお屋敷に暮らしててアパート暮らしの人と結婚したら、好きなおやつも買えないし、贅沢もできなさそう。

 

「3人家族」「二人の世界」「おやじ太鼓」と続いているBS松竹東急の枠はその前は何だったんだろうと思ってたけど、1990年代の東海テレビ制作の昼ドラをやっていたみたいですね。「おやじ太鼓」のあともなんとか木下恵介アワーを続けてやってほしいんだけどなあ。またその昼ドラ枠に戻る可能性もあるのかな。BS11橋田壽賀子×石井ふく子ドラマの枠も次はどうなるか分からないね。