TBS 1969年4月29日
あらすじ
鶴 亀次郎は裸一貫からたたき上げ、一代で築いた建設会社の社長である。ワンマンで頑固一徹な亀次郎は子どもたちに"おやじ太鼓"とあだ名を付けられている。この"おやじ太鼓"、朝は5時に起き、夜は8時になるともう寝てしまうが、起きている間は鳴り通し。そんな亀次郎をさらりとかわす7人の子どもたちに比べて、損な役回りはお手伝いさんたち。ひと言多いばっかりに、毎日カミナリを落とされる。
2023.9.6 BS松竹東急録画。12話からカラー。DVDは第1部の39話まで収録。
鶴家
亀次郎:進藤英太郎…大亀建設株式会社を一代で立ち上げた。62歳。
妻・愛子:風見章子…5月で57歳。
次男・洋二:西川宏…ピアノや歌が得意。空襲で足を悪くした。29歳。
長女・秋子:香山美子…出版社勤務。27歳。
三男・三郎:津坂匡章(現・秋野太作)…二浪して今は大学4年生。
次女・幸子:高梨木聖…大学4年生。
四男・敬四郎:あおい輝彦…浪人中。
三女・かおる:沢田雅美…高校2年生。
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長男・武男:園井啓介…亀次郎の会社で働いている。31歳。
妻・待子:春川ますみ…正子の紹介で結婚。
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お敏:菅井きん…お手伝いさん。愛子の4つ下。6月で53歳。
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水原トシ:西尾三枝子…洋二の恋人。
神尾光:竹脇無我…秋子の恋人。TBS局員。25歳。
西川:山口崇…幸子の恋人。高校の英語教師。
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渡辺:松本典子…タイの旅行ガイド
今回のオープニングは前回とはまた違って前のバージョンに戻ったのか、また違うのかよく分からない。前回は男声コーラスが足されてたけど、今回は女声コーラスがいる?
今日もまたバンコック編。
ガイドの渡辺がタクシーを降りた。「コップンマー」←字幕でこう書いてた。
武男の泊まっているホテルの部屋のベルが鳴る。ベッドに横になっている武男が「はい」と返事をするが、ベッドの傍らの待子は寝ている。
武男「待子さん、ちょっと起きてちょうだい。待子さん!」
待子が目を覚まし、武男に寝てなきゃいけませんわと言うが、誰か来てるんだよと言われて、腰をクネクネしながらドアへ。一緒に見ていた母も春川ますみさんといえばセクシー系なイメージだそう。
待子は渡辺を部屋に招き入れた。武男はガウンを着て登場。武男は熱にうなされて「待子さん、待子さん」と言っていたらしい。橋田ドラマだとそれを聞いた母親が息子なんてつまんない、結婚したら嫁が大事と怒る展開。
せっかく新婚旅行に来て大病してしまって、運が悪かったと渡辺と話していた武男。今朝になって熱が下がったなどと雑談していたが、待子はうつむき泣き出してしまう。うれし涙だと思う武男。
度々、武男と待子が仲よくしてると、渡辺が暑い暑いとスッと冷めた態度になるのが面白い。
渡辺は買ってきた果物を置いて帰ろうとしたが、待子はうれし涙ではないと否定。「あたくしと結婚したことが運が悪いだなんて」と泣き出し、渡辺と武男で旅行に来て病気になったことだと必死になだめる。
待子「待子さんなんて水くさいこと言わないでください」
武男「じゃあ、なんて言うの?」
渡辺「さあさあ、私はそろそろ失礼いたします。では、お大事に」
待子が渡辺を呼び止めると「まだ当てつけるんですか?」とあきれた表情。待子は困ったことになったと言い、武男が寝てる間に電話が来てお義父様がバンコックに来ると報告。武男は驚く。亀次郎はコレラの注射を打ちに行った。渡辺から早く電話したほうが言われ、武男が電話をかけた。
鶴家
お敏と愛子で部屋に着物を干してる?
電話が鳴り、お敏が出る。料金は鶴家払いの国際電話。
お敏「もったいない。また1万円以上だわ」←そんなにするんだ?
武男からの電話で今朝から熱が下がったと聞いた愛子は、はしかは途中で熱が引っ込んじゃいけないのよ、あんたの年ではしかが出ると重いんですからねなどと言う。武男は熱が出るだけ出たから心配ないと答えるが、そうなの?
亀次郎は昨日から準備をしていて、今日は敬四郎とコレラの注射を打ちに行った。敬四郎が少し英語が喋れるため一緒に行く。武男はもう大丈夫だし、今のうちならやめたほうがいいんじゃないですかと言うものの、コレラの注射を打ちに行ったし、大きなトランクも買い込んだ、会社のほうだって留守のことも大変だったと愛子が言う。
武男はいつまでもバンコックにいない、これからカンボジアへも行くと言うが、お父さんが行くまでそこにいなきゃダメですよと愛子からダメ出しされる。無駄足だと武男が言うものの病気のふりをして寝てればいいと言う愛子。
敬四郎が亀次郎のまねをして「ただいま」とインターホンに言う。愛子はもう一度電話をかける、やめれるようなら止めますからねと電話をいったん切った。
左腕を押さえながら亀次郎が帰宅。敬四郎は何ともなかったものの、コレラの注射が効いたらしく、お敏が背広を脱がせようとしただけでも痛がる。
愛子「そんなに痛いんですか?」
亀次郎「痛いのなんのって。わしのほうだけやけに注射液が多かったんだ」
敬四郎「やっぱり体がでっかいからですね。ほら、総身になんとかが回りかねって言うじゃないですか」
愛子「バカね、総身に知恵が回りかねんのとは違いますよ」
長身好きには聞き捨てならぬ失礼なことわざだな~。
「あっ、そうですね」と笑顔になった敬四郎に「バカ者!」と怒鳴りつける亀次郎。寒気がして熱が出てきてると左腕をさする。
バンコック
ホテルを出た渡辺を追いかけてきた待子は今日の夕ごはんにお寿司を買ってきていただけませんか?とお願いする。待子は好き嫌いが激しく、毎日、卵とハンバーグを食べていた。待子はこの間、連れていっていただいたおそばおいしかったわと褒める。
ベッドで横になっていた武男は、おやじが飛んできて僕がピンピンしてたら怒鳴るよと困っていた。待子は、あたくしがそばについてるから大丈夫と励ます。
武男「君はまだ知らないんだよ。うちのおやじの怒鳴り声を」
待子「あたくしには分かります。きっと優しいお義父様ですわ」
武男「優しいなんてもんじゃないんだよ」
待子「いいえ。親というものは厳しいように見えても優しいんです。あたくしのお父さんもそうでしたわ」
武男「君のお父さん、もっと生きていればよかったのにね」待子の手を握る。
待子「そう思うから、あたくし、あなたのお父様が懐かしいんです」
いびきをかいて寝ている亀次郎。おでこにはタオルが乗っている。
愛子「お父さんが寝てるから片づきゃしない」と着物の入った入れ物を運ぶ。
お敏「それにしても大きないびきですね」
愛子「いつだってそうですよ」
お敏「いいえ、今日のは普通じゃありませんよ」
愛子「そうかしらね」
⚟いびき
お敏「ほら、中気で倒れた人がよくああいういびきをかきますでしょ」
愛子「中気?」
⚟亀次郎「こら、お敏!」
「私の耳のせいです」とごまかし、忙しいと去っていくお敏。亀次郎はふすまを開けなさいと愛子に言い、愛子は「そんな大きな声を出すと注射した所が腫れますよ」と注意した。
もう腫れてると亀次郎は言い、大げさだと愛子に言われると、布団から体を起こし「大騒ぎか大騒ぎでないか、一遍お前も注射をしてみるといいんだ。こっちの腕には天然痘、こっちの腕にはコレラ。ギューッと深く刺しやがって。ああ、おい、あの体温計を持ってきなさい」とまくしたてる。
そんなに起き上がれるなら熱はないと愛子に言われると、急に布団に寝て「いや、起きれませんよ」、頭が痛い、寒気がする、タオルをかえてくれと病人ぶる。
愛子「ほんとに大げさなんだから」
亀次郎「大げさ、大げさって大体、お前はもうちょっと人の身になってみなさい」
愛子「なってますよ。だから30年も我慢できたんじゃありませんか」
亀次郎「うそ言いなさい。お前ときたら大事な息子がビルマで死にそうだってのに」
愛子「ビルマじゃありませんよ。タイですよ」
亀次郎「タイでもイワシでもいいですよ。大事な息子が死にそうだってのに」
愛子「死にゃしませんよ。はしかじゃありませんか」
亀次郎「はしかは年を取ってから出ると重いんですよ」また起き上がる。
亀次郎に体温計を渡す。懐かしい水銀式体温計。
愛子「寝ているときは大いびきで起きたら起きたで大声だから」
亀次郎「わしが静かになったらおしまいじゃないか。誰のおかげでこのうちはもってると思ってるんですか」
愛子「そりゃ、お父さんのおかげですよ」
亀次郎「いうことだけは知ってるんだから。そりゃお前のおかげだってあるさ。だけどだね、わしは武男が病気だと言えば、この痛いコレラの注射を打ってまでビルマへ飛んでいくんじゃないか」
愛子「タイですよ。間違えてビルマへ飛んでいかないでくださいよ」
亀次郎「タイだってイワシだっていいですよ」
お敏「奥様、今晩のお夕食は何にいたしますか?
お敏「はい。それなら値段も手間も安いですわ。では、早速」
愛子「変な言い方」
亀次郎「変な皮肉を言うのはお前ですよ。とうとうビルマがイワシになっちゃって」
愛子が持ってきたお茶を飲んだ亀次郎は、武男にイワシの塩焼きを持ってってやろうと急に思いつく。イワシがはしかに効くわけでなく栄養があるから。
体温計を脇から出すが、亀次郎も愛子も老眼鏡なしでは見えない。愛子は老眼鏡を取り出して窓辺へ行って見てみる。
亀次郎「ヘッ、お前も年だよ」
愛子「苦労が目にきたんですよ。だからひどい目に遭うって言うんですよ」
亀次郎「ひどい目に遭って、こんな幸せでいられるか」
愛子は慌てたようにお父さん寝てなきゃダメですよと言う。熱が34度なかった。「低すぎるんですよ、低血圧ですよ」。愛子の老眼鏡を借りて体温計を見る亀次郎。
バンコック
プールサイドでお寿司を食べる武男と待子。武男は両親について語り、気に入っていただけるかしらという待子に「君は優しくってかわいい人ですよ」と笑顔を向ける。待子は好き嫌いが多いことを気にするが、武男はそんなこと欠点のうちに入らないと言う。贅沢なものしか食べないというわけじゃない。ただし、バンコックのお寿司は高い。
待子はお寿司が大好きで中でもマグロのトロが一番好き。僕とぴったり同じだよと喜ぶ武男。汗をかきながら生モノ食べて大丈夫かな?
暗い表情で歩いている洋二とトシ。服の色合いもどっちもグレー系で地味。
トシ「洋二さん、お別れしましょう。いつまでおつきあいしていてもあなたと私ではダメなんです」
洋二「何がダメなの?」
トシ「違いすぎるんです。境遇だって進む方向だって」
洋二「でも君を愛してるよ」
トシ「でもそれだけじゃダメなんです。あなただってよく分かってるじゃありませんか。私にはゲバ棒の仲間があります。あなたには幸せすぎるおうちがあるんですもの」
洋二「…」
トシさん、割と好きなんだけどなあ、顔が。幸子はもうこっちとは関係ない感じになっちゃったね。
喫茶店
TBSのテレビ局員だった神尾が俳優の仕事をすると聞き、驚く秋子。秋子はすんごく髪が長くなってる。
神尾「そうなんだよ。半年の連続もんなんだよ。それも主役なんだ。大変な役だから出演料もうんと出すって言うんだよ。困っちゃうよ、ハハハッ」
秋子「私、結婚の日取りを決めに来たのよ。今朝だっていつまでグズグズしてるんだって怒鳴られちゃった」
神尾「うん、それもあるけどさ、ドラマに出る話だって急だろ。急いで返事をしてくれなきゃ困るって言うんだよ。ハッ、全く困っちゃうよ、ハハハハッ」
秋子「ちっとも困ってる顔してないじゃないの。ニヤニヤしちゃってうれしそうな顔してるんだもん。それもあるけどもないもんだわ」
神尾「怒ることないじゃないか」
秋子「怒りますよ」
神尾、店の壁を見て「あの人と共演なんだよ」
この写真とは違いますが、栗原小巻さんの1ショットのモノクロ写真が映し出され、「3人家族」でよく流れていた♪た~り~らり~というBGM(これで分かるわけない(-_-;))が流れる。
20代半ばのテレビ局員が急に連続ドラマの主演って! タイミングの合わない2人だね。神尾は相変わらず調子乗り。ドラマの放送順に「おやじ太鼓」→「3人家族」→「おやじ太鼓2」ってやってたら面白かったのにねえ。だから次の再放送はぜひ、放送順の「兄弟」を!
当たりが薄暗くなっている大学?
三郎「大手(おおて)くん! ちょっと待ってよったら。君が帰っちゃったら芝居はメチャメチャじゃないか」
大手「どうせ私は下手なんです。誰か他の人がやったらいいでしょ」
三郎「そうはいかないんだったら。あの役は君でなければダメなんだよ」
三郎はロミオ役。大手はジュリエットのばあや。どうしてジュリエットの役にしてくれなかったのと三郎を責める。
三郎「だけどだよ、シェイクスピアのロミオとジュリエットじゃないんだよ。ベトナムのロミオとジュリエットなんだよ」
三郎は君のほうがジュリエットよりきれいだと言い、あなたは私が好きなの? 嫌いなの?と強く迫られ、好きだよと言っちゃう三郎。やっぱり鶴家の男性陣は気の強い美人が好きなんだね~。
大手:田村寿子…wikiには1960年代~70年代くらいまでの作品しかなかった。
鶴家の門の前
見つめ合う幸子と西川。
幸子「どうしてあたくしに昔のこと話してしまったんですか」
西川「愛してるからね。君には秘密がないほうがいいと思ってね」
幸子「あたくし、お聞きしないほうがよかったんです」
西川「僕だって迷ったもんね」
幸子「あたくし苦しんだんです。今日久しぶりにお会いするまで、もうこのままお会いしないほうがいいと思って」
西川「手紙をもらったときうれしかったよ」
幸子「我慢できなかったんです。あたくしが知らない昔のことであたくしが苦しんでは損ですもの」
西川「ありがとう」
まだ幸子が先生と出会う前、かおるが先生と展覧会に行くと言っていて、秋に結婚するのやめたという話も幸子に言ってたね。幸子は「関係ないでしょ、あんたと」と言ってたけど。
幸子「先生、駅まで行きましょう。もう少し歩きたいんです」
西川「だっておなかがすいてるんじゃないの?」
幸子「おなかよりも胸の中が空っぽ。もう少し一緒にいないと」
西川「じゃあ、行こう」
茶の間
亀次郎は左腕がまだ痛いのか腕を吊っている。あとは愛子と敬四郎、かおるだけで他の子供たちを気にする。
敬四郎「困った兄さんや姉さんだね。こんなおいしいイワシが煮えてんのに」
亀次郎は愛子がもっときちんと帰ってくる習慣をつけなさいと注意する。まあ、みんな成人してるからなあ。
かおる「でも、あれじゃない? 青春って早くうちに帰ったらなんにもできないんじゃない? 外でゴタゴタやってんのがいいんじゃない?」
敬四郎「それはね、そのほうがまあね」
亀次郎「まあじゃありませんよ」
愛子「でもまあしかたがないんですよ」
亀次郎「お前までまあまあ言うな」お敏を呼びつけ、お吸い物を持ってくるように言う。
お敏「はい。まあまあ待ってください」
かおる「まあまあですって」
敬四郎「まあまあが多すぎるよね、このうちは」
愛子「黙って食べなさい」
亀次郎「大体、自分たちの兄さんが外国ではしかで寝てるってのに」
かおる「気にならないのかしら」
敬四郎「気になって遊んでたって楽しくはないもんね」
亀次郎「そうですよ。それが兄弟というもんですよ」
かおる「うまいこと言うわね。自分はくっついて遊びに行けるもんだから」
敬四郎「遊びじゃないよ」
亀次郎「遊びじゃありませんよ。武男兄さんにもしものことがあったらどうするんです、お前は」
愛子「大丈夫ですよ。武男はよくなるに決まってますよ」
亀次郎「決まってなんかいませんよ。大体お前は初めからのんきすぎますよ。少しは注射を打つ親の気持ちにもなってごらんなさい。もうこの茶碗を持つのだって、この腕の痛いこと。痛い、痛い、痛い…ああ…」
お吸い物もイワシのおだんご。お吸い物もイワシなのと不満げな敬四郎。
亀次郎「贅沢言うんじゃありませんよ。タイでイワシを食べたがってる兄さんの気持ちにもなってみなさい」
お敏「そうですとも。タイだってイワシだって丸めてしまえば栄養に変わりはないんですからね」
ぐちぐち言いだす亀次郎に「早くタイでもビルマでも行ってくださいよ」と愛子。
亀次郎「ビルマじゃありませんよ」
吊っていた布も外し、豪快にイワシを食べる亀次郎。(つづく)
明日は亀次郎と敬四郎のバンコック珍道中?