TBS 1968年3月26日
あらすじ
箱根へ保養に来た亀次郎たち。まだ寒い季節だというのに、亀次郎の提案で遊覧船に乗ることになる。一方、スキー旅行から帰ってきた敬四郎が、お土産にビックリ箱を持ってくる。まんまと引っ掛かった末っ子のかおるは、怒って敬四郎にガブリとかみついた。
2023.7.26 BS松竹東急録画。11話までモノクロ。
鶴家
亀次郎:進藤英太郎…大亀建設株式会社を一代で立ち上げた。2月5日で61歳。
妻・愛子:風見章子…5月で56歳。
長男・武男:園井啓介…亀次郎の会社で働いている。3月3日で30歳。独身。
次男・洋二:西川宏…ピアノや歌が得意。空襲で足を悪くした。28歳。
長女・秋子:香山美子…出版社勤務。26歳。
次女・幸子:高梨木聖…女子大生。1月の成人式に出席。
四男・敬四郎:あおい輝彦…浪人中。
三女・かおる:沢田雅美…4月から高校生。
*
お手伝いさん
初子:新田勝江…亀次郎と同じ誕生日2/5で30歳。
お敏:菅井きん…愛子の4つ下。6月で52歳。
箱根までのドライブ。前回の最後は三郎が運転席、洋二が助手席にいたけど、今回は洋二が運転している。後部座席の幸子と愛子はそのまま。
三郎「やっぱりお母さんはいいところあるね、おやじさんと違って」
愛子「お父さんだっていいとこありますよ」
三郎「ほんのちょっぴりね」
わりと亀次郎には辛辣なことも言う愛子さんはいざとなるとかばうとこがいいね。
洋二たちはホテルの玄関まで送ったら帰るという。愛子はお風呂ぐらい入っていけばいいというが、お説教されるからすぐ帰った方がいいと三郎と幸子。
三郎「僕たちは勝手にどこかで食べますよ。お金くださいね」←二言目にはこれ。
遊覧船に乗る亀次郎たち。
亀次郎「ああ、いい景色だ。やっぱり箱根は天下の名勝だ。どうだ、三郎。たまにはこういう遊びもいいだろう」
三郎は少し寒いというが、亀次郎は気の持ちようだと上着を脱ぐ。
亀次郎「風邪なんかひくか。ばばあじゃあるまいし」
愛子「誰のことですか? ばばあって」
亀次郎「風呂から上がったら鏡を見てみな。涙で鏡が曇っちゃうから」
おいしい空気を吸うんだと深呼吸する亀次郎。空気よりおいしいものが食べたいという三郎に「卑しいことを言うな!」と怒鳴りつける。愛子や子供たちにも深呼吸を強要する。
旅館にやってきた亀次郎と愛子。豪華な和室。仲居さんは水木涼子さん。「男はつらいよ」のタコ社長の奥さん役らしいです。仲居は亀次郎からあとから彼女が来ると聞かされていた。年の離れた若い奥さんだと驚く。5歳差だというが、実年齢は22歳差! そりゃ若く見えますって。
愛子はせっかく子供たちが箱根まで来たのだから、お風呂へ入って夕ご飯くらいごちそうしてやればいいのにというが、亀次郎は贅沢だと言い、旅館の夕飯は目の玉が飛び出すほど高いと話す。
亀次郎は昔のことを思い出していた。武男4~5歳、洋二2~3歳のころ(昭和18年頃か?)、亀次郎は栃木県の飯場から帰り、久しぶりにお金が入ったから子供たちを連れて箱根へ遊びに来たことがあり、ひどい安宿に泊まったことがある。
レストラン
三郎は脂身ばかりのカツに文句を言い、洋二もチキンライスも鶏の皮ばかりだと言う。小田原まで我慢すればよかったという幸子。
突然、洋二がどうして亀次郎が遊覧船に乗ったかが分かった。洋二は愛子から話を聞いたことがあり、幼い頃の武男と洋二が芦ノ湖のそばで遊覧船に乗りたいとわんわん泣いた。お金がもったいなくて使えず、乗れなかった。
三郎「お父さんとお母さんの昔話っていつも金のない話ばっかりだね。ヘヘッ」
洋二「いつもなかったんだよ」
幸子「かわいそうね」
幸子はチキンライスが急においしくなったと言い、三郎もカツを食べ始める。コメディっぽかったり、急にしんみりしたりのバランスがいい。
旅館
また亀次郎にマッサージさせられている愛子。「もう寝たらどうですか、しゃべってないで」。面倒になると、寝たらどうですかと言うの、面白い。亀次郎は愛子としゃべっているのが楽しい。
愛子「なんのことはない、按摩しに来たようなもんですよ」
亀次郎「そう言うけど愛子、わしは浮気したこともないし、女按摩だって呼んだことないんだぞ」
愛子「呼んでくださいよ、ケチケチしないで」
亀次郎「ケチで言ってるんじゃないよ、お前に操を立ててるんだよ」
愛子「あんまりありがたくありませんよ。疲れるのは私ですからね」
亀次郎「そこが言うに言えないいいところさ
♪妻は夫をいたわりつ
夫は妻を慕いつつ」
愛子「怒鳴ってばっかりいるくせに」←と言いつつ嬉しそう。
電話が鳴る。愛子が出ると、武男からだった。
愛子「お母さんにさんざん揉ませて、今、寝かかってるのよ。寝つきが悪いのよ」
亀次郎「赤ん坊じゃないよ、わしは」
愛子「(武男に)赤ん坊じゃないって怒ってるわよ。(亀次郎に)武男さんが笑ってますよ」
亀次郎「あのバカが。ボサボサしてんな」
愛子が武男と話し込むと、電話料がもったいないと怒りだす。電話を切った愛子が三郎たちが遊覧船が楽しかったと言っていた、武男も昔のことを思い出したと聞き、亀次郎はニコニコ。「ヘヘッ、なかなかいいところがあるじゃないか」
愛子「なんですか、さっきはバカだのボサボサしてるのって」
亀次郎「言葉のはずみだよ」
愛子「いくらはずみだって自分の息子をバカだなんて言わないでくださいよ」
ボサボサとは、ぼんやりしてるの意味かな?
今度は足のマッサージを要求。うつ伏せで脚バタバタさせてるのがかわいく見えてくる。
愛子「早く寝てくださいよ」
亀次郎「今、寝かかってますよ」
こんなわがままな親からどうしてあんなに素直な子供たちが生まれたのかしらと不思議がる愛子に、教育がいいからだという亀次郎。愛子は悪い子はいないんだから、敬四郎が帰ってきても怒鳴っちゃ嫌ですよと言う。寝かかってるのにうるさいと怒る亀次郎の足の裏をマッサージしていた愛子は足の裏をくすぐる。いたずら心を見せる愛子にあきれ気味の亀次郎。
今のところ秋子さんは出てないけど、いわしせんべいのCMで秋子さんきた!
家の掃除をしている初子は台所でのんびり新聞を読んでいるお敏にもうすぐ奥様が帰ってくるから早く片付けないと、と話しかけた。お敏はお茶でも飲みなさいよと誘う。
お敏「いい気持ちね。朝ごはんのあとで動かないで、そのまんまなんにもしないで新聞見るの」
初子「読めるの? 眼鏡かけなくて」
お敏「見出しだけ読めば分かるわよ。写真だって出てるし」
初子「汚職、全学連、ベトナム戦争でしょ、変わったこともないわね」
お敏「平和よね、自分さえ死ななきゃ」←すごいセリフだ。
初子「だけど旦那様がいないとどうしてこうのんびりしちゃうのかしら」
お敏「だから金持ちは罪が深いっていうのよ。どっかで誰かが苦しまなきゃ成り立たないんでしょ? つまり私たちは搾取されてるのよ」
初子「縁の下の力持ちよね」
お敏「古いわね、あんた。そんなカビの生えてるようなこと言うからダメなのよ。ほら、新聞見てごらんなさい。『解放戦線 攻撃』」
初子「あら、激戦じゃないの」
お敏「これがベトコンの大将でしょう」
初子「何言ってんの、ジョンソンよ」
お敏「あら、ジョンソンってこの人」
新聞記事のジョンソンの顔写真が大写しになる。
インターホンのブザーが鳴り、愛子の帰宅を知らせた。愛子を出迎え、初子は武男と秋子は会社、他は寝ていると言った。敬四郎が今朝早く帰ってきたと聞いた愛子の顔が輝く。
茶の間のこたつの上には敬四郎からのお土産が乗っている。お敏は敬四郎は元気に帰ってきたと報告した。お土産の箱の一つ、アーモンドの缶のふたが固く、お敏が開けるとびっくり箱(缶)だった。愛子もお敏もびっくり。
↑こんな感じ。
愛子「あの子ったらごまかしてんのよ。大威張りで帰ってきて…ちょっと起こしてくるわ」←少し涙声になってる!?
隣の家へ
最初のほうで秋子と幸子の家だと言ってたけど、普通に三郎と敬四郎の部屋もあるのね。愛子は敬四郎の部屋をノックせずに入り、敬四郎の無邪気な寝顔を見た。愛子が部屋を出ると目を開ける敬四郎。愛子は三郎の部屋をノックして起こす。
愛子「遅くまでテレビ見てるからですよ。体が腐っちゃいますよ」
敬四郎にまだ暗いうちに起こされて眠そうな三郎。
愛子「お父さんが言ってましたよ。これからは自分の部屋ぐらい自分で掃除しなさいって」
三郎「脅かさないでくださいよ」
愛子「脅かしてるんじゃありませんよ。秋子だって幸子だってちゃんと自分の部屋をお掃除してますよ」
三郎「女は当たり前ですよ、それくらい」
愛子「女も男もありませんよ。だから男女同権じゃないの」
おおー! これが50年以上昔のドラマなんだ! これより10年も新しい橋田ドラマでは長男には一言も家のことをやれと言わない母、兄嫁に部屋の掃除や洗濯までさせる娘たちが出てくるんだよな。
敬四郎を心配する三郎。敬四郎が三郎の部屋に入ってきて、お母さん、すいませんと頭を下げた。
愛子「バカね、あんなお土産でびっくりさせて」
敬四郎「じゃ、うまくかかっちゃったの?」
愛子「かかったどこじゃありませんよ」と敬四郎の左頬をつねると、敬四郎は目がウルウルしてる。←つねったから痛かったとかそういうことじゃなくてね。
茶の間
こたつを並べてお昼
愛子、洋二、三郎、幸子、敬四郎がいる。三郎は遊覧船の深呼吸を再現して笑わせる。かおるはゆんべは箱根に置いてかれてプリプリ怒っていたと洋二が言う。幸子はかおるの友達に敬四郎のファンが多いと話す。愛子は帰ってきたらお土産を一つやりなさいというが、三郎はあれやればいいんだよとほくそ笑む。幸子も敬四郎も乗り気。
かおるは校庭で友達に敬四郎は一流大学の哲学科を狙ったのだから落ちても仕方ないと力説している。
生徒A「そうね、裏口入学ならわけないけどね」←おぉっ! 鷲尾真知子さん!
生徒B「ねえねえ、私たちで慰めてあげない?」←こちらは木内みどりさん!
セーラー服の女子中学生3人ともメジャーになるってそうそうないよね。
武男も一浪、三郎も敬四郎も二浪なのは大学に入れない学力というよりは一流どころを目指してるからなのね。幸子は頭良さそうだし、その幸子と同じ大学に三郎も入ってるんだからねえ。
かおるはがっかりもしてないのに慰めることないと言い、友達はあんないいお兄様があるんだもんとうらやましがる。ニコニコのかおるは兄さんはいいにおいがすると自慢する。そばに行くととてもいいにおいがする、つまりセクシーね。
しかし、一転家に帰ったかおるは敬四郎と追いかけっこ。かおるがびっくり缶を開けたところはカットして怒りを敬四郎にぶつけてるところからスタートしている。クッションでたたいたり、腕をかんだり。さすがに愛子が止める。
かおる「もう敬四郎なんてね、セクシーじゃありませんよ!」と走り去る。
敬四郎「なんてこと言うんだ、あいつ」
愛子「なんのこと? セクシーって」
敬四郎「あいつの欲しがってるネグリジェですよ」
愛子「まあ、あきれた、あの子ったら」
敬四郎は夕方までには帰ってくると出かけようとしていた。吉田は入学、杉本も不合格、その3人で集まる。杉本というのはこの間一緒にスキーしてた人だよね。
早く帰るようくぎを刺す愛子。
亀次郎「バカ者! つべこべ言うな! 大体、お前が甘すぎるんです。自分の試験の発表を自分で見に行く勇気もないくせに、そんなだらしのないやつにろくな友達があるか!」
帰ってきた亀次郎の雷が落ち、茶の間からかおる、幸子、三郎は逃げ、お敏や初子も台所で小さくなっている。
亀次郎は広縁でまだ怒り中。愛子はこたつでリンゴか梨をむいて洋二が食べている。ほかの兄弟がさっさと逃げたのに洋二がそのまま部屋にいるのもなんだか面白い。ほかの兄弟ならとばっちりがいくことはあっても洋二のところにはいかないからかな。帰ってきたらぶん殴ってやると怒りの収まらない亀次郎に人にさんざん揉ませておいてと愛子も怒る。亀次郎は筋を違えた、一日中背中が痛かったと抗議する。
愛子「憎らしい、よくそんなことが言えますね」
亀次郎「憎らしいのは敬四郎だ。あいつの頭、ゴツン!」と勢い余ってテーブルをたたいてしまう。
愛子は洋二に茶だんすの上の敬四郎のお土産を取るように言う。
洋二「あのアーモンドの缶ですか?」
愛子「そうよ。これでも食べたら機嫌が直るでしょう。憎らしいことばっかり言ってるんだから」缶を受け取った愛子は亀次郎のところまで持っていく。
愛子「お父さんの好きなものですよ。とってもおいしいんですよ。洋二、お茶を入れ替えてきてちょうだい」
洋二「はい」土瓶を持って部屋を出て、三郎たちと合流。「お母さん、なかなかやるだろう?」
三郎「すてきだよ、お母さんは」
幸子「やっぱりいいわ」
かおる「どんな声出すかしら?」
愛子は亀次郎に傷ついたのは親より本人だからガミガミ言ったらかわいそうと言う。こういう時だけは利口な親になってくださいよと頼む。30年間よくもこんな女房に我慢してきたもんだと言う亀次郎。
愛子「そんなこと言ってるとバチが当たりますよ」
亀次郎「ヘッ、この亀次郎さんに矢でも鉄砲でも当たってたまるか」と言いながら缶を開けて「うわっ!」と驚いたところでつづく。顔は映らないが子供たちの笑い声が聞こえる。
ドラマってこういうのでいいんだよ。来るぞ来るぞとびっくり缶を開ける亀次郎が見たいんだよ。
いよいよ明日から総天然色!