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【連続テレビ小説】本日も晴天なり(49)

公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意 

祝言をすませた元子(原日出子)と正道(鹿賀丈史)。宗俊(津川雅彦)は結婚の報告に2人と洋三(上條恒彦)とで松江の大原家へ向かう。武家の旧家で、祖母の波津(原泉)、父の泰光(森塚敏)、母の邦世(磯村みどり)に迎えられ別室で待たされる一行。妹の陽子(田中美佐)が茶を出すが、そのまま2時間も待たされる。宗俊の我慢が限界に達し、廊下に飛び出ると、大叔父の政久(下條正巳)の迷惑そうな声が聞こえてきて…。

今日からオープニングが女性声のスキャット?なしになってしまった。当時、あまり好評ではなかったらしいというのはどこかで見かけて途中から歌なしに変わるというのは知ってたけど、年明けからとかキリのいいところかと思ったら、ここだったか! 毎日聞いてたせいかちょっと物足りなく感じるな。

 

汽笛の音

大写しになったSLの映像。

ja.wikipedia.org

白黒の昔の映像じゃない。C57135。

 

慌ただしく仮祝言を済ませた元子と正道。ただし、大原家の了解がまだとあっては順序は逆です。そこで八方手を尽くし入手困難をきわめた汽車の切符を算段すると何はともあれ報告にまかり出るべく新婚旅行ならぬ結婚事後承諾旅行へと旅立ちました。

 

桂木家茶の間

絹子「もうそろそろ着く頃じゃないかしら」

トシ江「でも、近頃の列車は当てになんないから」

巳代子「でも、いいなあ。私なんか女学校出てから遠足もなければ修学旅行もなかったのよ。松江、宍道湖出雲大社。あ~あ、ついていきたかったなあ」

絹子「何のんきなこと言ってんのよ。何しろあちらは士族の出でいらっしゃるから、あんたみたいにお行儀の悪いのが行ったら、まとまる話もまとまらなくなっちゃうわよ」

巳代子「まさか」

トシ江「だから洋三さんについていっていただいたんじゃないの」

 

巳代子「大丈夫よ。いくらお姉ちゃんだって、お婿さんの家でそんなにお行儀悪くするわけないもの」

トシ江「元子よりもお父さん。とにかく肩肘(かたしじ)の張ったのが嫌いな人(しと)だから」

巳代子「それは言えるわね」

絹子「でもね『案ずるより生むがやすし』っていうじゃない。ねっ、お義姉(ねえ)さん。おめでたい話なんだから」

トシ江「うん、まあね」

 

…と、一家の期待を背負って松江に到着した宗俊一行。早速に大原家の門をくぐりました。

 

大原家前

立派な門構えの家。

宗俊「やっぱり松江だ。いいうちが残ってらぁ。いや~、このこけの具合なんて何とも言えねえな」

元子「お父さん」

宗俊「ああ、分かってるよ」

洋三「いいですね、口上はすべて私がやりますから」

宗俊「ああ、分かってらぁ」

正道「それでは。ただいま」

 

玄関

邦世「まあ。おいでなさいませ。もうそろそろお着きになられえ頃でないかと、お待ちしちょうますた。遠い所、ようござっしゃいますたねえ」

宗俊「えっ、え~、ご丁寧なご挨拶痛み入ります。こうして突然、大勢で押しかけて参(めえ)りやしたが、これが元子というケチな娘でございまして」

洋三「(せきばらい)義兄(にい)さん」

宗俊「今、義兄さんと言いましたのが、これが、あっしの妹の亭主にあたりまして」

洋三「花山洋三と申します。本日は突然お邪魔をいたしまして」

 

邦世「初(はず)めてお目にかかあます。正道の母親でございます」

宗俊「へえ」

正道「母さん、上がっていただきましょう。ね」

邦世「ああ、そげだね。さあ、どうぞ上がってごしなさいませ」

宗俊「へえ。それでは失礼さしていただきます」

 

正道「あっ、電報は?」

邦世「ああ、ゆうべ着いたっけね」

正道「それじゃ父さんも?」

邦世「どぎゃん急用かとお昼までで役所の方も退(ひ)けてきて待っちゃられるで」

 

宗俊「ああ、そうですかい。それではお目にかかる前にあっしら着替えさせていただきたいんですが、どっか廊下の隅でも拝借させていただくわけには?」

邦世「はあ?」

元子「だから駅で着替えようって言ったのに」

宗俊「バカ野郎、おめえ、俺たちはともかくとしてよ、おめえが裸になるところ、どこにあったよ?」

洋三「義兄さん! いや…こんなむさ苦しい格好では何ですから」

 

邦世「あ…そげでございますか。ほんならこっつへ来てごしなさいませ」

正道「さあ、どうぞどうぞ」

邦世「どうぞ」

宗俊「それじゃあ、真っ平ごめんなすって」

 

わ~! 私の大好きな「ゲゲゲの女房」のヒロイン・布美枝も鳥取県安来市出身なので言葉が懐かしい。

 

邦世…磯村みどりさん。時代劇多めな感じ。

 

和室

波津「ほんならお客さんは縁談のことでおいでたかや」

正道「はい」

波津「そうはおかしでないかや。順序が逆さまでないかや。泰光」

泰光「はい」

波津「ゆんべの電報には何と書いてああましたか」

 

正道「はい。『桂木氏と25日3時に着く。委細面談 正道』と打ちました」

泰光「そげなことでは何のことだか分からあせんだらが」

正道「はい…といって、所詮、電報では語り切れる話ではないのと、かつ、事は早急に両家の合意が必要でありますし、最近の交通事情を考えますと切符が取れたのを幸い桂木家の方々に一緒に来ていただいた方が早道ではないかと考えたものでありますから」

泰光「たとえ、交通事情が悪うてもこうがまとまあ話なら大原本家とも相談し、しかるべき人を立てて、お嬢さんを頂きたいとこっつから伺うのが礼儀というもんでないかや」

正道「はい、自分もそう思ったのでありますが、これにはいろいろ事情がありまして」

 

波津「まあ、いいわや。正道も桂木さんなら中学時代からいろいろ世話になったうちだったしね」

泰光「はい。あつらの息子さんがこれの後輩だということで私が東京の役所からこっちへ引き揚げる際、一度だけ挨拶に伺ったことがああますけん」

波津「それに正道からの手紙だと千葉の部隊におった時も、わざわざ面会に来てごしなはったげなし」

邦世「それに復員してくう時も熱を出し大層世話してござれました」

正道「それは全くそろって気持ちのいい人たちであります」

 

波津「そうだけん、一度はお礼に上京せなならんと思うちょっただけんね。そうだけん、今度はそのお礼ということで、ゆっくりと滞在していただいて出雲大社などご案内してお土産でも持って帰っていただいたら、そうで失礼にならずに済むというもんでああませんか」

正道「いえ、あの…しかしですね」

泰光「いんや、おばあさんの言われえことに間違いはないけん。お礼と嫁取りの話は別にすべきだわや」

正道「いや、しかし」

 

泰光「正道、お前はこの大原家の長男じゃぞ」

正道「はい」

泰光「だったら今回は一応、席を設けて、そうとなく本家の大伯父にもそのお嬢さんを見てもらって、しかる後に改めてこっちから」

正道「それでは間に合わないんです」

泰光「間に合わん?」

 

正道「はい。話が後先になってまことに申し訳ありませんが、私と元子さんは東京で既に仮祝言を」

波津「仮祝言!?」

泰光「そら一体どぎゃんことだ!」

正道「いや、ですから電報では、とても話が通じるようなことではないので急きょ、こうやって帰ってきたわけなんです」

波津「そぎゃんこと!」

泰光「猫の子犬の子もらうとは訳が違あぞ、訳が! 正道!」

 

泰光…森塚敏さん。台東区出身なら江戸っ子役もできそう。

波津…原泉さん。犬神家では松子の実母で金をたかりに来る母役。

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客間

晴れ着に着替えて待っている元子。宗俊も紋付き袴で洋三はスーツ。

洋三「さすが松江ですねえ。簡素な造りながら気品がある」

宗俊「まあ、そういうのもあるんだろうがよ、遅いね、お父っつぁんたちは」

洋三「そりゃまあ、支度もあるでしょうし」

宗俊「支度?」

洋三「そうですよ。我々だってこうやって着替えて礼を尽くしてるんですから、ましてや、そういうことにうるさい土地柄ともなれば」

宗俊「まあ、そういやぁそうかもしれねえけどな。どうした?」

元子「別に…」

 

緊張しているんです、元子さんは。

 

「ごめんください」

 

宗俊「へいへい」

陽子「おいでなさいませ。妹の陽子でございます」

宗俊「ええ、あんたさんが妹さんですかい。えぇ、大原さんからね、お話は伺っておりますですよ」

陽子「恐れ入ります」一人一人にお茶を出す。「どうぞ」

洋三「恐れ入ります」

宗俊「ヘッヘッ…恐れ入りごっこだい」

元子「お父さん」

洋三「義兄さん」

宗俊「大丈夫(でえじょうぶ)だよ。え~、皆さんまだお仕度には時間がかかりますですか」

陽子「はあ、もうしばらく待っちょってごしなさいませ」

宗俊「へえ、そんじゃひとつ、よろしくお願いいたします」

陽子「はい」

 

陽子…田中美佐さん。島根出身。この頃までこの芸名で「おしん」の頃にはもう田中美佐子になってたね。かわいい。

 

障子が閉まるのを見届けると足を崩す宗俊。「ああ~」

洋三「義兄さん、いいかげんにしてくださいよ」

宗俊「大丈夫だよ。このあんばいじゃあ、まだだいぶんお仕度に時間がかかりそうだ。なに、廊下に足音が聞こえたら、お前、座り直せばいいんだ。おう、洋三さん、おめえも楽にしな、楽に。え」

 

ところがこのまま待たされること実に2時間。

 

外はすっかり暗くなっている。

宗俊「冗談じゃねえやな、え。しばらくお待ちください、もうしばらくです。一体ここの亭主はいつになったら挨拶に顔を見せる気なんだ。え?」

洋三「少々、変ですねえ」

宗俊「少々どころかこちとらな、失礼があっちゃなんねえと、わざわざこんななりまでして控(しか)えてるんだ、え。何をもったいぶってんだか知らねえ、俺ぁ、もう我慢ならねえ」

元子「お父さん」

 

宗俊「慌てるなや。そりゃ堪忍袋の方も限界だがな、さっきから空っ茶ばかり飲まされてよ、おめえ、行くところまで行かねえと座ったまんま粗相しちまうぜ」

洋三「困ったですねえ、本当に」

宗俊「てやんでぇ、俺はな、あいにくおめえみたいに辛抱強くねえんだい」

洋三「いや、実は僕もなんですよ」

宗俊「何だ、それならお前ちょいと拝借しようじゃないか。ものには遠慮していいことと悪いことがある」

洋三「いや、しかしですよ」

宗俊「しかしもへったくれもあるかい」

 

元子「じゃ、ちょっと待って。私がお手洗いどこか聞いてくるから」

宗俊「てめえの用は、てめえで足さあ」

洋三「義兄さん、それは…ああっ」足がしびれて倒れる。

宗俊「何だい、だらしがねえ。だからしゃっちょこばるこたぁねえっつってるんだい」

 

廊下に出た宗俊。「え~、まことに申し訳ありませんが、おちょうずはどちらの方で」

元子「ちょっ…お父さん!」

正道「あっ…どうもまことに申し訳ありません」

宗俊「一体いつまで待たしたら気が済むんだ、え?」

元子「そんな大きな声出さないでよ」

宗俊「大きな声は俺の地声だ」

 

正道「あ…今、あの本家の大伯父の方へ使いを出したりしていたもんでありますから」

宗俊「本家?」

正道「それで今、親戚のおもだった者がようやく集まりましたんで」

宗俊「そうかい。まあ、それならいいがあんまりなしのつぶてだとな、こっちのへそもあっちに向きそうなんでな」

 

正道「じゃあ今、ご案内いたします。どうぞ」

宗俊「ああ、それじゃ」

元子「お父さん」

宗俊「はばかりだよ、はばかり」

 

元子「叔父さん…」

洋三「うん、ハハ…。大丈夫だよ、お手洗いだもの」足をさすっている。

元子「けど、こんなに時間がかかるなんて、きっと何か不都合があったんだわ」

洋三「もっちゃん…」

 

元子の予想どおり、話は紛糾していました。

 

武幸「そうだけん、戦争中だったら出陣目前にして親戚の顔がそらわんでも慌ただしげに式を挙げやなことがああにはあったやね。だども、日本再建に全国民が忍び難きを忍んで力を合わさんといけん時に何でそぎゃん常識外れの仮祝言を挙げさしたんだかいね」

 

お手洗いから戻った宗俊は廊下で部屋の前を通りかかり、話を聞いてしまう。「常識外れだと!?」

 

泰光「だけん、どげしたらいいかと、こげして大伯父方に寄ってもらったんですわね」

政久「う~ん、まず一旦、東京へ帰ってもらうだわや」

忠之「いや、そぎゃんことしたら事が荒だつだないですか」

武幸「いや、向こうが勝手に来てしまったけん、しかたないだらがね」

忠之「いや、そぎゃんふうに言ってしまあと、そうまでだとも、そのあと一体、どげすうだね」

政久「改めて親族会議を開き、その娘が大原の嫁にふさわしとなったら、そうから東京にもらいに行ったらいいわや、え。当節は年頃の娘が余っちょうけん、な。より取り見取り、いい子を選んだらいいわや」

 

宗俊「より取り見取りだと!?」

 

武幸「そのとおりだわね。まあ、『郷に入っては郷に従え』の教えを守ってもらわんとわしらと大原一族の肝煎り役がつとまらんだらがね」

泰光「つまりは白紙に戻すということですかいね」

忠之「そぎゃんことしたら、はるばる東京からござっしゃった嫁さんに気の毒だらがね。だども、しきたりはしきたりだけんなあ」

武幸「そげだわね。何事も初めが肝心だけん。初めから嫁方のごり押しに押されえことは大原家の名にかかあことだけんね」

 

障子を勢いよく開けた宗俊。「てやんでぇ! 黙って聞いてりゃどいつもこいつもいい気になりやがって何がより取り見取りだ、何が嫁方のごり押しだ! 冗談じゃねえや! 押すも押さねえも俺たちはな、ごめんくださいとこのうちへ入(へえ)ったなり、今の今まで向こうの座敷で待たされっぱなしでいたんだ、え。こちとらな、気が短(みじけ)えんで通ってる江戸っ子だい。ふざけんじゃねえや、このとうへんぼくが!」

 

政久「この人は誰(だあ)ですかいね?」

 

宗俊「ケッ、問われて名乗るもおこがましいが、まあ、知らなきゃ言って聞かしてやらぁ。日本橋人形町だ、江戸染紺屋吉宗8代目、桂木宗俊(むねとし)。おめえさん方がな、今、ふさわしいかどうか小田原評定(しょうじょう)を開(しら)いてる桂木元子の父親だ。おう! どうしてくれるんでい!」廊下に座り込む。

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元子「お父さん!」

洋三「義兄さん、何てことしてくれるんですか!」

宗俊「慌てるんじゃねえ。俺はまだ何もしちゃあいねえや」

正道「いや…申し訳ありません。今、事情を説明しますので、ちょっ…ちょっと待ってください」

宗俊「さっきから待て待て、待て待てとな、俺ぁあさっての分まで待ってるんだい!」

元子「お父さん…」

 

政久、せきばらいをする。

元子「申し訳ありません。ただいまあちらに連れてまいりますので。さあ、お父さん」

宗俊「この野郎、慌てるんじゃねえ…」

 

宗俊、これではまるでまとまる話をぶち壊しに来たようなものです。

 

つづく 

 

明日も

 このつづきを

  どうぞ……

 

政久…下条正巳さん。「男はつらいよ」3代目おいちゃん。「マー姉ちゃん」にはおばちゃんの三崎千恵子さんも出てたし、どちらも映画でおなじみの人と思ってたけど、別に普通にドラマもいろいろ出てたね。下條アトムさんのお父さん。

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方言指導/武幸…青砥洋さん。

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忠之…井原幹雄さん。方言指導は青砥さんですが、井原さんも松江出身。

 

田中美佐子さん、かわいかったなー。「おしん」より前に朝ドラに出てるとは思わなかった。

 

しかし、大原さん、何も事情を話してなかったとは。