公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意
元子(原日出子)が松江での生活を始めると、波津(原泉)や陽子(田中美佐子)たちは、泰光(森塚敏)の看病のために休んでいた自分の仕事を再開し、元子の忙しい日々は続く。そんな時に東京から己代子(小柳英理子)が無事出産したといううれしい知らせが届く。生まれたのが女の子で、宗俊(津川雅彦)は喜び自分で電報を手配するほど。松江の役所に勤め始めた正道(鹿賀丈史)は、元子をねぎらって、己代子の出産祝を託す。
元子が部屋に文机を並べている。
波津「元子さん、お医者さんのお帰りだで」
元子「は~い! よいしょ…。あっ…」割烹着を脱いで、医者に頭を下げる。玄関に置かれた医者の靴を履きやすいように置く。
医者「ああ…」
元子「ありがとうございました」
医者「ああ、ほんなら大事にしな」
邦世「はい」
元子が医者のかばんを持って玄関を出て門扉の外へ。大原の表札の脇に「書道教室」の看板がかかってる。
元子「どうもありがとうございました」
医者「いえいえ」
元子「お薬は何時ごろ頂戴に上がったらよろしいでしょうか?」
医者「そげですな。あと1時間もしてから来てごしなったら作っておきますけん」
元子「はい。よろしくお願いいたします」
医者「ああ」
医者…入江正徳さんさん。いろいろ出てる方です。
行男「こんにちは!」
元子「あっ、こんにちは」
子供たち「こんにちは」
行男…早川勝也さん。書道教室で1人だけ名前が出ていた茶色いセーターの男の子。仮面ライダーシリーズなどに出演していた子役。
台所
元子「あっ、お義母(かあ)様、おかゆでしたら、私がお仕度を」
邦世「だども、あんたも忙しいけんねえ」
元子「いいえ。お習字の生徒さんがお帰りになるまでにお買い物に行って、お薬を頂いてくるだけですから。お義母様こそお義父(とう)様についていていただかないと」
邦世「ああ、そげかいね。ほんならお願いしましょうか」
元子「はい。お水加減は今朝ぐらいでよろしいですか?」
邦世「ああ。あっ、そんなら夜は、のっぺ汁にするつもりで野菜も切っといてもらえますかいね」
元子「はい、承知いたしました」
邦世「ほんなら」
お米を研ぐ元子の手つきが手慣れてるね~。
大原家では元子が主婦業専任となると、波津が休んでいた書道教室を復活させ、陽子はお琴の先生の代稽古を引き受け、邦世は夫の看病をしながら、せっせと仕立物に精を出す毎日になっておりました。
子供たちの習字を見て回る波津。大介は、ああ見えてまだ3歳(という設定)だからなあ。文字ではなく筆で落書きしている。顔に墨は定番。
泰光の部屋
邦世は泰光の傍らで仕立物をしている。
泰光「どうもな…」
邦世「はあ? 何かおっしゃったですかいね」
泰光「気ままを言うようで元子さんにも本当にすまんとは思っちょうだども」
邦世「はい」
泰光「かゆの加減だけはお前のもんでなては、やっぱし、しっくりとはいかんもんだのう」
邦世「でも、おばあ様が何でもやらせて教えろと言っちょられえし、元子さんも覚えようとして一生懸命、加勢してごしなあですけんねえ」
廊下を歩いてきた元子が会話を聞いてしまう。
泰光「だけん、気ままだと思っちょうがや。病人の情けない愚痴だ。愚痴だわや」
邦世「はい…。30年、お仕えしちょう私と、まだひとつきふたつきの元子さんと比べては、あの人がかわいそうだでね」
松江の街を買い物して歩いている元子。
泰光夫婦の会話は決して元子の陰口ではありませんでした。けれども、いかに骨身を惜しまず、明るく頑張っても風土と長い年月をかけて培われたものには、やはりかなわないのだと、元子は夫婦の年輪というものをしみじみと感じずにはいられませんでした。
こういう繊細な感じ、やはり女性脚本家だな~。「ゲゲゲの女房」でも実家暮らしで家事や店の手伝いをしている布美枝と兄嫁は仲悪くないんだけど、家電も充実してきて微妙に布美枝の居場所がなくなるような感じの描き方がうまかった。
家に帰ってきた元子。
行男「さようなら」
元子「さようなら。気ぃ付けてね」
男の子「さようなら」
元子「さようなら」
書道教室
波津「ほんにまあ、近頃の子供ときたら行儀の悪い。親は一体どぎゃんしつけをしちょうだかいねえ」
元子「申し訳ございません」
波津「いんや、お習字に来る子供だわな」
元子「はい」
波津「もちろん大介も、こなあふうになったらいけんが『こんにちは、さいなら』の挨拶もできんような子がおおと松平の殿様がおおなさったら、さぞ、お嘆きなさあことだわ」
元子「はい」
波津「松江は昔から神様の国といって行儀のいい国だが、戦争に負けてしまったら行儀なんかどこへ行ってしまっただかいねえ」
元子「はい」慌ててぞうきんを絞り床を拭く。ござか何か敷いてる?
波津「あら、またやあましたか」
元子「案外これは大介かも分かりませんわ」
大介「俺じゃねえよ」
波津「『私じゃ、ああません』」
大介「は~い。俺ではありません」
元子「『俺』じゃなくて『私』」
大介「嫌だい、女みたいだ」
元子「じゃあ『僕』って言ってちょうだい」
大介「そんじゃあ、僕」
波津「あ~あ、これじゃあ、人様の子供さんの悪口は言えんのう」
陽子「お義姉(ねえ)様! お義姉様!」
波津「まあ、言うそばから陽子までがはしたない」
陽子「ただいま戻りました」
元子「お帰りなさい。ご苦労さまでした」
陽子「電報だわね、お義姉様」
元子「電報!?」
陽子「ごめんなさい。うちへ来た電報だと言っちょったけん、そこで受け取ってしまったわね。で、つい、心配だったけん」
波津「勝手に見たというわけか?」
陽子「はい。すいません。東京の巳代子お義姉様のとこで無事、お産がああましたって。はい」電報を差し出す。
元子「巳代子が…! 『巳代子、女子誕生、母子ともに健在 宗俊』」
波津「まあ、おなごの子が?」
元子「はい!」
波津「うんうん、うん」
陽子「大介君。東京で女の子が生まれたよ。巳代子おばちゃんの子だけん、大介君のいとこだわね」大介を膝に乗っけて話をする。
大介「うん」
元子「大介、もうお兄ちゃんなんだからね、お行儀よくしなくちゃ駄目よ」
大介「はい」
波津「お~、いい返事だわや」
元子「はい」
波津「元子さんも気張って今度は、おなごの子を産んでごしなはい」
元子「はい!」即答したものの恥ずかしそう。
波津に大笑いされる。波津の発言もまた今は駄目か。
巳代子の家(元・大原家)
トシ江「よかったねえ、おっぱいが出てさ」
巳代子「うん」
トシ江「ゴタゴタがあったから、おっぱい出ないんじゃないかと思って、母さん心配してたんだよ」
巳代子「ねえ、お姉ちゃんに知らせてくれた?」
トシ江「誰が知らせたと思う? お父さんだよ。お父さんがね、自分で電文考えて電報打ったんだよ。フフフフ…」
巳代子「よかった」
巳代子の娘は弘美と名付けられました。
授乳シーンまで! 赤ちゃんの本当の母親のおっぱいだと思うけど、すごいな。
桂木家茶の間
宗俊「さあ、はい、よかったよかった。まずはお手柄だ」
藤井「はい、おかげさまで」
宗俊「楽あれば苦あり、苦あれば楽ありだ。トシ江の念仏じゃねえがな、世の中、悪いことばかり転がってるわけじゃねえやな」
藤井「はい」
宗俊「まあ、しかし、おめえもおやじになったんだ。な。来年からひとつ、ふんどし締め直して頑張れ。でなきゃ離縁だぞ。弘美置いてって出てもらうぞ」
藤井「またまた…。大丈夫です。乾坤一擲頑張ります」
意外とこれまでの朝ドラにも出てきてない言葉だったな。
宗俊「うん。よし、お手を拝借。よ~っ!」
一本締め
宗俊「はい、おめでとう」
藤井「ありがとうございます」
宗俊「あ~、よかったよかった」
松江 大原家台所
正道「おっ、何かいい匂いがすると思ったら、今日、のっぺ汁か」
陽子「お兄さん、お台所へ顔を出したりすうと、また、おばあ様からお𠮟りをもらうことになあますよ」
元子「大介君もですよ」
大介「だって、腹、すいたもの」
元子「お願いだから、せめて『おなかがすいた』って言ってちょうだい」
大介「そんじゃ、おなか」
元子「はいはい。それじゃあね、これを今、おじい様のとこへお運びしたら、すぐにごはんにしますからね」
正道「よし、これはね、僕が持っていこう」
元子「あなた…」
正道「うん、今日はね、特別。だって、巳代ちゃんがお母さんになって藤井がおやじになったんだもんな」
陽子「そぎゃんことして、お義姉様がおばあ様に叱られたらどげすうかね」
正道「いや、そん時はね、僕がちゃんと叱られるから大丈夫だよ」
元子「はい、それじゃ安心してお願いします」
正道「はい」
大介「そんじゃ、俺…」
元子「こら」
大介「あっ、僕も行く」
元子「もう、大介は…」
陽子「お兄さんって、よっぽど藤井さんって方を気に入っちょうみたいですね。あげんに喜んじょうですもん」
元子「それにね、電報をくれたのが父だからだと思うわ。正道さん、私のために喜んでくれているみたい」
陽子「あっ、そうか…」
元子「いいようですね」味見。
廊下を歩いていた元子は雪に気付く。窓を開けて見たものの、寒ぅ~となり、階段を上る。
正道たちの部屋
大介は寝ていて、正道は何か読んでいる。
正道「何か白いものが落ちてきたみたいだね」
元子「ええ」
正道「やっぱりこちらの寒さは違うだろう」
元子「でも、今日は寒さなんて感じない」
正道「うん。きっとお義父さんも僕らのこと許してくれたんじゃないかな」
元子「ええ」
正道「多分、藤井がね、こっちの事情を話してしまったんだろうけども、とにかく誤解が解ければいいな」
元子「何でも長続きがしないんですよ、お父さんって人(しと)は」
正道「結構じゃないか。これで一生、勘当が続いてごらん。それこそ僕なんか立つ瀬ないよ」
元子「大丈夫よ。何たって大介がかわいいんですもの。一生、あの子の顔を見ないで暮らすなんて我慢、河内山には絶対できませんよ」
正道「しかし、巳代ちゃんもいい時にお産してくれたな。あっ、こう言うの変かな?」
元子「いいえ。私たちのうちに入っていれば巳代子だって助かるし、それに何たってお母さんが一番安心なんだもの」
正道「そのことなんだけどね」封筒?を渡す。
元子「何ですか? これ」
正道「ん? 巳代ちゃんのお祝い」
元子「あなた…」
正道「さっき両親とも相談したんだけれども、まあ、物で送ってもよし、向こうで何か買ってくださいってお金で送ってもよし、元子にちょっと相談してみようと思ってね」
元子「そんな要りませんよ、こんなことは」
正道「いやいや、そういうわけにはいかないよ」
元子「でも…」
正道「まあ、巳代ちゃんも藤井もだろうけども、これ送って一番喜ぶのは河内山のお義父さんじゃないかな」
元子「それはそうですけど…」
正道「あっ、そうだ。今度、大介と一緒にお正月、写真撮って送ろうか」
元子「本当に?」
正道「うん。君のおかげで本当におやじもおふくろも助かってるし、慣れない土地で大変だなって思ってるんだよ」
元子「そんな」
正道「感謝してるよ、元子。君が都落ちは嫌だって言ったら、それまでだったしね」
元子「いいえ。住めば都っていいますもの。ここは私の都です」
正道「うん、ありがとう」
元子「気持ち悪いじゃありませんか。そんな、あんまり優しくしてくださると」
正道「ん? バカ、僕たちは夫婦だぞ」
元子「それじゃ遠慮なく、これは頂戴しておきます」
正道「うん」
元子「今、熱いお茶いれますね」
夫婦という言葉で元子はふと泰光たちの会話を思い出したのです。慣れない松江での初めての冬は確かにつらいものでしたが、この正道のいたわりがあってこそ元子には住めば都の松江暮らしだったのです。
つづく
朝の前奏曲(プレリュード) 通算7回目(1982年初)。
朝の沈黙(しじま)きらめく陽ざし
それは季節の調べ告げる
昨日捨てて何処へ行くの
風の中の私 あー
愛のときめき燃えるあこがれ旅の始まり
空のかなた あー心ざわめく冒険
私からあなたへありがとう
想い出の青春(とき)を
来週も
このつづきを
どうぞ……
正道っつぁんがいいよねえ~。そりゃ、あんなフォローしてくれる人がいるならどこへ住んでも住めば都。陽子も明るい人だしね。来週1週間やって再来週は1週間休止。来週のあらすじ読んじゃったけど、楽しみな展開、登場人物がいる。
休止がなければ今年あと3日分余計に見られたのに…とまだ言う。