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【連続テレビ小説】本日も晴天なり(33)

公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意 

アメリカ軍が撒いたビラを読んだ宗俊(津川雅彦)は特攻警察になぐられ、それを拾った洋三(上條恒彦)は連行された。8月14日。日本にとっても放送協会にとっても、一番長い日が始まる。元子(原日出子)は宮中へ録音に行く職員とすれ違う。立花(渥美国泰)は16期生を集め、いよいよ明日終戦詔勅があると告げる。そして反乱軍に放送局が占拠され、徹底抗戦せよという原稿を読めと強制されたら、君たちはどうする?と問う。

8月13日早朝

 

集合した16期生は、そのまま泊まり込みの体制にありました。

 

宿直室で寝ていたが、空襲警報で目覚め、避難準備をする。

元子「一体どういうつもりなの! 戦争が終わるっていってるのに、いつまで空襲する気なの!」

恭子「いいから早く!」

のぼる「悦子、行くわよ!」←ガラまたはガラ子じゃないのか。

悦子「はい、了解!」

 

B29の映像

 

8月13日の朝、襲いかかった艦載機は実に五百数十機でした。

 

放送員室

和代「五百数十機…!」

悦子「やられたのは?」

元子「京橋、品川、大森、蒲田辺りで駅がやられているから横浜方面へは不通ですってよ」

恭子「私はどうせ帰らないからいいけれど」

のぼる「それにしてもまたまた大がかりになってきてどういうつもりなのかしら」

恭子「最後の脅しに決まってるわ」

 

この推測、当たらずとも遠からずと申しましょうか。

 

川西「国体護持という条件つきの受諾だからね」

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喜美代「それではいけないんですか?」

川西「敵さんにしてみりゃ無条件降伏が条件だからね。日本がわざと時間稼ぎをしているんだと、ゆうべのフランシスコ放送は決めつけていたよ」

恭子「時間稼ぎだなんて」

川西「まあ、国体護持というその一点で閣議が紛糾しているのは事実だな」

元子「そんなことしてるうちに死んでいく人(しと)が増えるなんて、私とってもたまりません」

 

川西「うん…しかし、それよりね、日本がどっちをとるのか、もっと早く回答しないことには」

元子「早くしないことにはどうなるんですか」

川西「この交渉は決裂だ」

元子「ということは…」

のぼる「壊滅以外、道はないんですね」

 

川西「しかし、死ぬことはない。これからの人間を死なせることはない。戦争を始めた者は、これをきっぱりと終わらせる責任があるんだ。これ以上、犠牲者を出さないためには、どんな負け方だっていいじゃないか。潰れるメンツも立てるメンツも、もう、そんなものは、どだいありゃしないんだから。ね」

 

まさにそのとおりです。そして、この夕方、再び来襲した敵機が落としたものは爆弾ではなく、無数のビラでした。

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あぐり自身は山梨に疎開しているのですが、気管支喘息で即日帰郷になった淳之介は東京に残っていて、8月12日にビラがまかれたエピソードも出てきます。あら、でも日付がちょっと違うね。

 

ドラマでは写真入りのビラですが、実際は文章だけ?

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写真の人は、この前話題に出てきたザカライアス大佐かな?

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日本の皆様(ミナサマ)私共(ワタシドモ)は本日(ホンジツ)皆様(ミナサマ)に爆彈(バクダン)を投下(トオカ)するために來(キ)たのではありません。お國(クニ)の政府(セイフ)が申込(モウシコ)んだ降伏條件(コウフクジョウケン)をアメリカ合衆國(ガッシュウコク)、英帝國(エイテイコク)、中華民國(チュウカミンコク)並(ナラビ)にソビエト聯邦(レンポウ)を代表(ダイヒョウ)して、アメリカ政府(セイフ)が送(オク)りました回答(カイトウ)を皆様(ミナサマ)にお知(シ)ら

 

ドラマ上、分かりやすく全てにふりがながついていたり、文字も大きめだけど、実際はもっと細かい字でびっしり書かれています。

 

茶の間

洋三「『日本の皆様、私共は本日皆様に爆弾を投下するために来たのではありません』」

宗俊「ふざけんじゃねえや! 今までさんざん爆弾を落としてきやがって、何が『本日皆様』だ」

絹子「シッ!」

宗俊「何が『シッ』だ!」

洋三「『お國の政府が申込んだ降伏條件を…』」

友男「降伏条件!?」

洋三「『アメリカ合衆國、英帝國、中華民國、並(ならび)にソビエト聯邦(れんぽう)を代表して、アメリカ政府が送りました回答を皆様にお知らせするためにこのビラを投下します。戦争を直ちにやめるか否かはかかって、お國の政府にあります』」両面印刷されてたんだね~。

トシ江「それ、どういうこと?」

洋三「『皆様は次の2通の公式通告をお読みになれば、どうすれば戦争をやめることができるかがお分かりになります。ポツダム宣言受諾打診の電報…』」

 

友男「ええい、もういいよ。聞きたくねえや」

小芳「どうしてだい?」

友男「バカ野郎、本当にまあ。こんなのはな、敵の謀略に決まってるんだよ。戦争をやめるってことは、ともかくもよ、降参なんか冗談じゃねえや、本当にもう」

洋三「しかしですよ…」

宗俊「いや、これは友ちゃんの言ってることがまっとうだ。デマだよ、デマ。え。俺たちの戦意を骨抜きにしようってぇ魂胆だ。そんなもん、捨てちまえ、捨てちまえ」←ともちゃん呼び、かわいい。

 

絹子「だけどね、兄さん…」

宗俊「だけどもヘチマもあるかってんだ、バカ野郎…」

 

土足で男たちが家に入ってくる。

特高1「貴様ら! おとなしくその場に立て!」

特高2「何だ、何だ、何だ、てめえたちゃ!」

東島「いいけん、おとなしく立った方がよかて」

 

宗俊「ふざけんじゃねえ! これは俺んちだ! 立とうが座ろうが俺の勝手じゃねえか! てやんでぇ、てめえ、土足で…」

特高1「この非国民が!」宗俊をビンタ。

トシ江が悲鳴を上げる。

宗俊「てめえ、やりやがったな! 何が非(し)国民だ!」

特高1「このビラが証拠だ、このビラが! ビラを拾ったやつは直ちに届け出ろと隣組から知らせが回ったはずなのに貴様は届け出ないどころかこうして謀議をはかっとる、謀議を」

友男「それは勘違いだよ、このビラはな…」

 

洋三「私が拾ったんです。私がそこで拾ったんで、まず用足しを済ましてから届け出ようと思っていたんです」

特高1「よ~し、そんなら来てもらおうか」

洋三「えっ?」

絹子「あなた! あなた…あっ!」特高に突き飛ばされて倒れた。

 

宗俊「この野郎! 俺の妹に何てことしやがんだ! この野郎、てめえ! 俺の妹だぞ、てめえ! 暴力を振るうたぁ…」

巳代子「お父さん!」

友男「河内山!」

絹子「あなた!」トシ江や小芳が押さえる。

小芳「やめときな。特高だよ」

トシ江「特高?」

小芳「あの人に逆らったら、かえって面倒なことになるから」

 

特高に連れ出される洋三。「絹子、心配するなよ! 大丈夫だから!」

 

えらいことになってきましたが、この降伏交渉暴露のビラは降伏の条件で閣議を重ねていた政府にとっても問題の一つとなり、政府は御前会議で天皇の最終決定を仰ぐことになりました。

 

特高役は二見忠男さんと小田島隆さん。ざっと見たけど、知らない人だった。二見さんは悪役で有名だったらしいけど、作品を見たことがなかった。

 

さあ、それから日本にとっても放送協会にとっても一番長い一日が始まります。

 

8月14日正午

 

放送協会会長室の電話が鳴る。

秘書「はい、放送協会会長室でございます」

情報局部長「情報局第一部長です。会長はご在室ですか」

秘書「はい、少々お待ちくださいませ。会長」

大橋「うん?」

秘書「情報局からです」

大橋「代わりました、大橋です」

情報局部長「実は、陛下のご放送についてご相談申し上げたい」

大橋「陛下の」

情報局部長「そうです。技術的問題もあると思うので、至急、こちらにおいでいただきたい」

大橋「はい、承知しました」

受話器を置く。時計は12時過ぎ。

 

会長役の川部修詩さんは私が見たことあるドラマだと「岸辺のアルバム」4話や「ザ・商社」の共立銀行の白井頭取役だったそうだけど、よく分からない。情報局部長の声は 武田国久さんという声優だそうです。

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↑意外とこのドラマと「本日は晴天なり」に共通してる人いるなあ。長谷川のおじいちゃん(芳信)や本多先生とかも出てるし。

 

放送会館の廊下

元子「芦田さん」

芦田「ああ、叔父さんがどうかしたって六根さん心配してたけど」

元子「はい、それで今、うちへ帰ってきたところなんです」

芦田「ああ」

 

元子「どうなさったんですか?」

芦田「え? いや~、なになに。桂木さん」

元子「はい」

芦田「あんた、白いきれいなハンカチ持ってないだろうか」

元子「白いハンカチですか?」

芦田「うん。まことにすまんがあったら貸してほしいんだ」

 

元子「はい、ちょうど男物を1枚だけ何かのために持っていますけれど」

芦田「あ~、よかった。いや、実は宮中に上がるんでね」

元子「宮中へ?」

芦田「うん、録音班として行ってくる」

元子「それはどうも、ご苦労さまでございます。どうぞ」

芦田「いや~、ありがとう。じゃあ、お借りします」

元子「はい」

 

芦田さんも金八ファミリー。桜中学の職員室によくいた事務員さん。

 

放送員室

時計は午後2時33分ごろ。

 

のぼる「どうだった? ガンコ」

元子「相手が特高なのよ」

喜美代「特高…!」

元子「心配は心配だけど私がいてもどうしようもないし、こっちも気になるから帰ってきたんだけれど」

恭子「それでいいの?」

 

元子「例のビラを持ってたのが逮捕の理由なのよ。どっちみち戦争は終わるんだし、それまでなるべくひどい目に遭わされないでほしいと祈るだけ」

のぼる「そうよ、あんないいおじ様が非国民であるはずがないわよ」

和代「喜美代も大変だったのよ」

元子「どうかしたの?」

喜美代「うん」

 

恭子「ゆうべ、機銃掃射でおいごさんがやられたんですって」

元子「えっ…」

喜美代「まだ5つなのよ…。叔母が狂ったように泣いていたけれど」

悦子「戦争の終わりがもうそこまで来てるのにアメリカもひどすぎる。だって今…今殺される人は浮かばれないじゃない」

恭子「だけど、それが戦争っていうものじゃないの」

のぼる「そうなんでしょうね」

 

立花、本多が部屋に入って来た。

立花「16期生、集まってくれ」

のぼる「はい」

立花「日本は、いよいよ負けだ。明日、そのご詔勅が下る。恐らく、その時、反乱が起きるだろう。この前の陸相布告の時の例を見ても無条件降伏に反対な一部軍人たちは必ずや国民に徹底抗戦を訴えるだろう。そのためにラジオを利用することは確実だと見ている。つまり、放送局は彼らによって占拠される可能性が十分にあるということだ。私情を交えて言えばそういう情勢の中で君たち女子放送員は全員自宅待機ということにしてやりたい」

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恭子「いいえ、この際、女子も男子もありません。これは仕事です。私は最後まで自分の任務を離れる気はございません」

元子「どういう事態が起こるか分からない、それは私も感じております。だからこそ私たちはいつもどおり仕事についていなければいけないんじゃないでしょうか」

のぼる「私は一人です。どうせ死ぬんならマイクを握って…ずっとそう思ってまいりました」

 

立花「ありがとう。しかしだ、その時、君たちはどうするかよく考えておいてほしい」

喜美代「どうするかとおっしゃいますと?」

立花「反乱軍がもしピストルを突きつけて、この原稿を読めと言った時のことだ」

元子「この原稿とはあくまで戦うということですね」

立花「そうだ」

元子「私、死んでも読みません」

恭子「私もです。私たちは室長の指示のない原稿は一切拒否するつもりです」

口々に「私もです!」×3

 

立花「いや。その時は彼らの言うとおり読んだらいい」

元子「室長!」

立花「君たちは君たちの身を守りなさい。いいね。自分を大切にしなさい」

のぼる「でもその結果、ラジオを聴いた人たちは…」

立花「大丈夫。後で否定する方法はいくらでもある。それに放送員は、どんな事態になっても国民に真実を伝えなきゃならないんだ。しかし、室長として繰り返して言っとくよ。君たちは自分の身を守り、自分を大切にしなければならないんだ」

 

自分を大切にしなさいと言い切った室長の言葉に元子はまさに魂が震えるほどの感動を覚えていました。

 

一方、宮中において録音のセットが終わったのは午後3時半。ところが詔勅案の字句を巡って閣議は沸騰し、天皇がマイクロホンの前にお立ちになったのは実に深夜。折から警戒警報発令中の11時20分ごろでしたが、放送局ではこれに先立ち…。

 

今の今まで玉音放送が生放送だと思ってました(^-^;

 

放送室

川西「9時の放送の時間でございます。明日正午、重要な発表があります。昼間配電のない所にもこの時間は配電されることになっています。繰り返して申し上げます」

 

茶の間

ラジオから川西の声が流れる。「明日正午、重要な発表があります」

巳代子「重大発表だって」

トシ江「何のことだろうね、一体」

宗俊「何が重要ったって、おめえ、これ以上何が来たって驚くこたぁねえや」

 

絹子「もしかしたら…」

トシ江「え?」

絹子「まもなく戦争が終わるんじゃないかって…そんなことをもっちゃんが」

宗俊「何だと?」

絹子「ううん、はっきりしたことは分からないけど、くれぐれも今度の空襲なんかで死ぬなって」

宗俊「ちょっと待て、終わるってのはどういうこった?」

 

絹子「だから、あのビラは本当のことだってわけでしょ」

宗俊「そんじゃ、終わるんじゃなくて負けるってことじゃねえか」

絹子「そうなんでしょ」

宗俊「冗談じゃねえや! 俺たちにひと言の相談もなしに勝手に負けられてたまるかってんだい!」

トシ江「あんた」

宗俊「負けるってのはな、おめえ、日本人は一人(しとり)残らず殺されるってことだぞ。どうして戦って死なねえんだ。俺ぁ嫌だな。どうせ殺されんならむざむざ殺されんのは俺は絶対に嫌だ!」

 

悲しいことに戦争終結を目の前にしながら、この夜も多くの人たちが死にました。

 

屋上にいる元子。

恭子「B29は250機で燃えているのは熊谷ですって」

のぼる「多分、飛行場を狙ってるんだと思うけど」

恭子「大丈夫よ、きっとおキンさんも順平ちゃんも大丈夫よ」

元子「ここまで来て死んでほしくないわ。だってあの2人は戦争なんかしてないもの。ただ逃げ回ってつらい目に遭わされていただけなんですもの」

のぼる「ガンコ」

 

元子「もしものことがあったら私が殺したようなものよ」

恭子「バカなこと言わないで」

元子「だって父に反対して疎開させたのは、この私なのよ。それなのに順平やおキンさんが焼かれて人形町だけが残るようなことになったら、私、もう生きていけない」

のぼる「何言ってんの。自分を大切にしろって私たち、立花室長に言われたじゃない」

元子「だってほら、まだ29が…」

 

8月15日午前1時より関東北部および東北地方に空襲がありました。

 

つづく

shueisha.online

↑こちらのインタビューにアナウンス室長とのエピソードあり。

www2.nhk.or.jp

www2.nhk.or.jp

この朝ドラのモデルは、のちに作家やルポライターとなる近藤富枝さんなんだけど、アナウンサー時代のモデルはむしろ同期の武井照子さんなのかなあとインタビュー記事を見て思う。志望動機に村岡花子さんの名前を出していたり、年齢だったり。武井さんは戦後もNHKで働き続けたので、それよりドラマチックな近藤さんの方を選んだのかなあなんて。元子は、いろんな16期生の複合型なのかなと思います。

 

このドラマ、若いアナウンサーよりむしろベテランアナウンサーを演じなければならない俳優さんの方が大変そう。今ならこんなにおじさん率の高い朝ドラもないだろうなと思います。それがまた面白いんだけどね。