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【連続テレビ小説】本日も晴天なり(38)

公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意 

9月8日、マッカーサーは8000人を引き連れ東京に進駐してきた。さっそく彦造(森三平太)がアメリカ兵を見物に行き、ケンカして帰ってくる。いきなり『野郎』と呼ばれたというのだが、洋三(上條恒彦)は、それは『ハロー』というあいさつだとたしなめる。元子(原日出子)たちの放送局も接収され、放送内容のチェックをされるようになる。内地に出征していた局員が帰ってくると、元子は兄の正大の帰りが待ち遠しく…。

9月2日 戦艦ミズーリ号の艦上で重光・梅津両全権が降伏文書に調印。放送協会に対しては、アメリカ本土向けおよび占領軍向け放送の施設提供と政府に対しては放送を含む一切の施設を現状のまま保全し運営せよとの占領軍命令が下りました。

今日もナレーションのバックにアメリカ国家が流れる。

 

放送会館

表にはMPが立っている。

kotobank.jp

階段を机を運びながら降りる沢野と川西。書類を運ぶ元子たちと鉢合わせ。

川西「いや~、接収はいいけれども腹が減って目が回るね」

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元子「頑張ってください。これが終わったら私たちも手伝いますから」

川西「何言ってんだ。腹減らしは君たちだっておんなじじゃないか」

恭子「でも、若さがあります」

笑い声

 

元子「あら、技術さんもお引っ越しですか」

芦田「ああ。いや、表に放り出されないだけでも助かったようなもんだけど。あんたたちも大変だね」

元子「でも、うちの部屋は資材課の一部が移ってきただけですから」

芦田「ふ~ん」

 

本多「火ばたき、砂袋、鳶口、防火用水、全て表へ出して処分すべしだってさ」

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芦田「あ~」

元子「え~」

 

沢野「こうなったらやけくそです。もう何だってやりますよ」

川西「おや。いつも冷静な君がやけくそとはお珍しい」

沢野「どうやら僕のうちも接収されそうなんです」

のぼる「せっかく焼け残ったのにですか?」

沢野「水洗便所と洋間の応接間があるというだけのことでですよ」

芦田「あ~、しかたがないさ。負けたんだから」

沢野「ええ」

川西「おおっ…」

 

沢野さんと芦田さんは金八の職員室仲間。一緒のシーンがあってうれしい。沢野と洋三叔父さんたちは一緒のシーンなさそうだしね~。カンカンも沢野ももしかしたら「マー姉ちゃん」の結城も小山内さんの描く森田順平さんが演じるキャラは、いずれもお金持ち!?

 

9月8日にはマッカーサーと第1騎兵師団の将兵8,000人が東京に進駐。いよいよ身構えて待つ江戸っ子とアメリカ兵、ご対面の幕は切って落とされました。

 

アレンジの違う陽気なアメリカ国家と資料映像。銃を担いだアメリカ兵がその辺をブラブラ歩いてるってすごいねえ。

 

吉宗

トシ江が窓を拭いているのは、十字に貼ったテープをはがしてたんだ。

洋三「あっ、彦さん、お帰り」

トシ江「お帰りなさい」

洋三「あれ? 彦さん、アメリカ兵見に行ってきたんじゃなかったのかい」

彦造「ああ、行ってきましたよ。行ってはきましたがね」

トシ江「まさかけんかしてきたんじゃないだろうね」

彦造「冗談じゃありませんや。こっちは負けたんだから何言われたって諦めるけど、なにもあんた日本人捕まえて野郎呼ばわりはねえでしょう」

 

宗俊「おう、ぶっ飛ばせぶっ飛ばせ。おめえ江戸っ子だろ」

トシ江「変にけしかけないでくださいよ」

彦造「こっちだってね『ならぬ堪忍するが堪忍』って、ようやっとのことで堪忍袋のひもギュッと結んで帰(けえ)ってきたところでさぁ、もう」

 

洋三「いや、だけども何もしてないのに突然『野郎』かい?」

彦造「ええ。水天宮さんとこのこっちの電信柱んところへ私が立って見ていたら、いきなりあんた手ぇ上げて『野郎』ってんですよ」

洋三「ほんで?」

彦造「ヘッ、くそ面白くもねえ。ペッて唾吐いて引き揚げましたよ」

宗俊「よ~し、よくやった」

 

洋三「いや、それは彦さんの勘違いじゃないかな」

彦造「勘違い? そりゃ何です?」

洋三「いや、だから、それは『野郎』じゃなくてね、『ハロー』じゃないかな」

トシ江「何ですか? そのハローっていうのは」

洋三「う~ん、まあ何て言ったらいいかな、挨拶みたいなもんですね」

彦造「挨拶?」

洋三「うん。だから我々が『ちょっとちょっと』とか『やあ』とか『もしもし』とか、あの類いのもんでね、だから先生が生徒に『ハロー』って言うと、生徒も『ハロー』って言うんですよ」

宗俊「そんじゃあれかい。おまわりが『おいこら』っていうのも『ハロー』って言うのかい」

洋三「まあそうでしょうね」

宗俊「まさか」

洋三「いや、そのかわり岡場所のねえさんが客引く時も『ハロー』なんて、ハハ…」

彦造「それはまた随分なれなれしいじゃねえですか」

洋三「まあ、それが平等ってもんじゃないのかな」

 

彦造「そんじゃ何ですか? 向こうの言葉にゃ『旦那』とか『野郎』ってのはねえんですか?」

洋三「ああ、まあ、そういうのが民主主義ってもんでしょうな」

トシ江「あの…」

宗俊「ふ~ん」

 

トシ江「ジープって一体何ですか?」

宗俊「え?」

トシ江「いえ、元子が言ってたんですけどね、厚木にアメリカの飛行機(しこうき)が降りてくるのを見に行った人(しと)が胴体がパカッと開いてジープが走ってきて見て驚いたって。まあ私、ちょっぴりそれが何だかっていうのは悔しかったから聞かなかったんだけど…。軍用犬と一緒にトラやライオンみたいなものをこう連れてきたのかしら?」

洋三「うん、そりゃ義姉(ねえ)さん、自動車じゃないですかね」

宗俊「自動車?」

洋三「ええ。私もこないだ初めて見たんですがね、戦場用の山でもどこでも走っちゃうという、その小型自動車

 

宗俊「ちょちょちょ…ちょいと待ちなよ。自動車を…何で飛行機の腹ん中から出てくんだ?」

洋三「そりゃ運んできたからでしょうね」

宗俊「自動車を?」

洋三「うん。いや、とにかく物量が違うんですよね。やかんだのお寺の釣り鐘だのをこう潰して鉄砲作ってた国とは訳が違うんですよ」

宗俊「ちぃとばかし気に入んねえな」

 

洋三「え? しかしですよ…」

宗俊「おめえさんがだよ。え? どうしてそんなこと自慢するんだ、おめえ。おめえだって火鉢(しばち)で鉄砲作ってた国の人間じゃねえか、え!」

洋三「自慢なんかしてませんよ。だからこそですよ、二度と勝ち目のない戦に、やれ神風が吹くだの神州不滅だのって、そんな神がかりでもって目隠しされないようにありたいと僕はそう思ってるだけですよ」

 

トシ江「そうだわよねえ。本当、こないだのチョコレートのおいしかったこと」

宗俊「意地汚(きたね)えこと言うんじゃねえ!」

トシ江「何言ってんですよ、占領軍が来たらズカズカッと踏み込んできて食い物出せって言ったのは隣組でしょう。私もう慌てて青いトマトや小さななすもいじゃって、もうとんだことしちゃったわよ。ねえ、アメリカさんは子供たちを集めて何か物をくれるっていうそうじゃありませんか」

宗俊「おい、まさか順平にまで物もらいのまねさしてんじゃねえだろうな」

トシ江「ええ、正大(まさしろ)が帰ってくるまでは敵ですからね。それだけはしたら承知しないよって言ってあります」

 

生まれてこのかた甘い物など口に入れたことのなかった子供たちは、たちまちアメリカ兵と仲よしになり鬼畜米英の彼らが親切なのに不思議がったものです。

 

子供たちとアメリカ兵のふれあいの写真。

 

9月10日には占領軍の「言論および新聞の自由に関する覚書」が発令。ラジオは当分、ニュースと娯楽的性質のものを扱い、事前検閲を受けることとされ事実上、放送内容まで厳しくチェックされるようになりました。

 

放送会館

MPに止められた坊主頭の男性が、中へ入っていく。

 

放送員室のプレートの下に資材課と書かれた紙がぶら下がっている。

先ほど外で止められた男性が放送員室に入ってくる。

元子「失礼ですけど、どなたをお訪ねですか?」

村田「どなたって…村田だよ」

元子「村田さん?」

 

川西「村田君!」

村田「生きてたか、お前!」

川西「いや、君こそ無事だったのか! いつ帰ってきたんだ?」

村田「おとつい。帰ってくるなり、もういきなり死んだように眠ってさ、それからやっと目が覚めて出てきたんだ」

川西「ハハハハ…」

 

本多「やあ!」

村田「ただいま!」

本多「ご苦労さん、ご苦労さん! 無事でよかったよ」

村田「ありがとう」

 

川西「いや、しかし、君が兵隊じゃあ日本負けるの無理ないな」

村田「少し足引っ張ったかな」

笑い声

 

元子「あの、失礼ですけどどちらからお帰りになったんですか?」

村田「九州」

元子「そうですか…外地はまだなんですね」

 

本多「ああ、こちらは女子放送員…あっ、女子アナウンサー

元子「桂木元子です。よろしくお願いいたします」

村田「留守中、ありがとう」

元子「いえ…」

 

村田「いや、九州はもうひどいデマが飛んでさ終戦と同時にもう大混乱だった。みんなどうしてる?」

川西「ああ、内地にいた者はぼちぼち帰ってきてる」

本多「今、アメリカさんと同居だけど放送はしてるんだ。だからゆっくり休んで頑張ってくれよ」

村田「よろしくお願いします」

川西「いや、こちらこそ」

 

二世通訳「オー ノー ノー ノー! ヘイ ユー!」

川西「ん?」

通訳「(片言で)ここオフィス! ここキッチン違います! クッキング駄目!」

川西「は?」

通訳「魚焼く、芋を焼く、におい、皆、上に上がってきます。臭い、困る。ユー アンダースタンド?」

川西「ああ、分かりました、分かりました」

元子が鍋で豆を煮ていたが、ふたを閉めた。

 

村田…和田周さん。たくさん作品に出てるけど、「岸辺のアルバム」15話の近所の住人か~。分かるような分からんような?

peachredrum.hateblo.jp

コロナの割と初期あたりに亡くなってたんだね。この脚本家の人は名前知ってる。

 

二世通訳…川島一平さんは70年代の特撮に何作か出てたみたい。

 

モンパリ

恭子「私もおかしくなっちゃったんですけど、食べられる時に食べておこうっていう習慣になってしまったから。そういえば、その電熱器にはいつも何かがかかっているんですよね」

元子「うん、だけど、あちらさんだってそうなのよ」

絹子「え? アメリカさんも目刺し焼いたりするの?」

元子「ううん、コーヒー。用事があって3階まで行くとね4階の方からプ~ンといい匂いがしてくるのよ」

のぼる「あれは切ないわよね。4階は天国、その下は食べ物地獄。あの匂い嗅ぐと、つくづく向こうは戦勝国で、こっちは敗戦国なんだなって思っちゃう」

 

恭子「それに本来は歓迎すべきなんでしょうけれど兵隊に行った人たちが帰ってくると狭くなった部屋が余計狭くなって、だんだん私たちのいるところがなくなるみたい」

洋三「それももうちょっとの辛抱。だんだんよくなるよ」

元子「でもね…」

洋三「ジャスト モーメント。今、アメリカ直輸入のコーヒーいれるから」

元子「え?」

のぼる「アメリカ直輸入?」

洋三「うん。今までの取っとき虎の子のにひねた豆とはちょっと訳が違うんだよ。ひょっとしたらその4階のコーヒーよりずっとうまいかも分かんない」

 

恭子「えっ、どうしたんですか!?」

絹子「お土産にいただいたのよ」

のぼる「誰から?」

洋三「APの人、うん。この店に来たことのある人が東京へ行ったら是非モンパリに寄りなさいって言ったらしいんだよ」

元子「本当! アメリカにまでモンパリの名前が響(しび)いてるなんてすごいわね!」

絹子「別にそういうわけじゃないけどさ、日本に来るとなれば、やっぱり日本にいたことがある人にいろいろ聞いてきたんじゃないの。そしたらたまたま戦前にこのお店へ来たことがある人がいて紹介されたっていうことよ」

のぼる「それにしてもすごいわよね」

元子「うん。どんな人なの?」

洋三「結構面白い人だよ。彼の友達にはジャーナリストが多いから、だから、日本の新聞になんか出ない結構面白い話、聞けるんだ」

元子「へえ~」

 

のぼる「時々手伝ったらいけませんか?」

洋三「ああ、いいよ。でもちょっと様子見てからね」

のぼる「はい」

絹子「若い人っていいわね。何でも好奇心が強くて」

洋三「ああ」

 

占領軍は占領事務と並行して海外に残された日本人の帰還業務に着手すると同時に戦争犯罪人の逮捕に乗り出しました。

 

茶の間

元子「ただいま」

トシ江「お帰り」

巳代子「お帰りなさい」

 

トシ江「ごはん、まだなんだろう?」

元子「うん…。局を出る時にニュースが入ったの。東条さんが自決したって」

宗俊「ふ~ん」

巳代子「それだけなの? お父さん」

宗俊「ほかに何の言いようがあるんだい。陸軍大臣の阿南さんはな、とっくに腹ぁ切ってんだい。今更、俺がご愁傷さまっつったところで始まるめえ」

トシ江「あんた。そりゃあ放送局は騒ぎだったろ」

 

元子「今日、占領軍が戦争犯罪人として出頭を命じたんですって。そしたら心臓をピストルで…」

巳代子「嫌っ…」

宗俊「死んだのか?」

元子「どうやら命は取り留められそうだって」

宗俊「なんてこった。どうせ死ぬなら最後まで堂々とアメ公と何で戦って死なねえんだい」

元子「お父さん」

 

宗俊「あん時、死ななかったってことはだな、そのつもりだったんだろうが。今更自殺なんて冗談じゃねえや。今度の戦争はな、東条さんの号令で始まったようなもんだ。そしたら最後まで責任を取ってもらいたかったと、俺ぁ男としてそう思うぜ。正大たちによ、神宮の球場で出陣しろっつったのは東条さんじゃねえか、え?」

 

宗俊の言い分は当時の国民感情の一つではありました。

 

順平「ねえ、あんちゃんは大丈夫?」

トシ江「何言うんだろうね、この子は。あんちゃんが一体何悪いことしたっていうの?」

順平「だって戦争に行ったんだろ?」

巳代子「バカね、子供が口を挟むことじゃないの」

順平「だってまだあんちゃん帰ってこないじゃないか!」

 

宗俊「で、放送局じゃ、まだ満州のことは分からねえのかい、え?」

元子「六根も心配してるんだけど満州の情報は本当に何にも分からないのよ」

宗俊「全く何をモタモタしてやがんだ…」

トシ江「そんなこと放送局に言ってみたってしょうがないでしょう」

宗俊「チキショー! 負けるもんじゃねえな」

元子「バカなこと言わないで! 無事でいたら必ず帰ってくるんだから」

宗俊「分かってるよ! 分かってるけど、口に出して言いたくもなるもんじゃねえか! え! そうだろ! なあ、正大」

 

正大の写真に語りかけると、巳代子も順平も写真を見る。

 

元子の心の声「あんちゃん…みんな、こんなにあんちゃんのこと待ってんのよ。だからきっと帰ってきて。どんなことがあっても頑張って…!」

 

つづく

 

このドラマから数年後

宗俊も立花室長(渥美国泰さん)も東条英機を演じたのでした。「山河燃ゆ」は第二次世界大戦を扱った大河ドラマなのか。面白そう。どうも私は、せいぜい幕末以降くらいからの歴史ものにしか興味が湧かなくて、今まで完走したのも「新選組!」と「いだてん」だけなんです。

 

戦争は、盧溝橋事件、真珠湾攻撃東京大空襲、原爆、玉音放送あたりのポイントを押さえて、8月15日の次は昭和25年に飛んだりするのが定番というイメージで昭和20年9月の人々の暮らしというものが垣間見えて面白い。