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【連続テレビ小説】芋たこなんきん(140)「お兄ちゃん」

公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意 

時は流れ、平成9年。診療所をたたんだ健次郎(國村隼)と町子(藤山直美)は、夫婦の時間を楽しんでいた。しかし、町子の忙しさは変わることなく、執筆に加え講演や取材と精力的に動き回る日々だった。そんなとき、昭一(火野正平)が平真佐美(なるみ)を連れて徳永家を訪れる。この女性と昨年からいっしょに暮らしているという。そして真佐美を連れて奄美に帰ることを打ち明ける。健次郎にも奄美に帰ることを勧めるのだが…。

健次郎の手術から数年がたち、診療所を畳んだ健次郎と町子は夫婦の時間を楽しむことが増えました。

 

家の前の路地を歩いてきた町子、健次郎、純子。

 

玄関

町子「ただいま!」

健次郎「ただいま」

 

由利子「お帰り。どうやった? 奄美

町子「楽しかったね、健次郎さん」

健次郎「ああ、ほんま」

純子「私、あんなきれいな所がまだ日本に残ってるなんて知りませんでした」

 

町子「お留守番ありがとう。お土産買うてきたからね。何か変わったことなかった?」

由利子「和代おばちゃんはお部屋でお昼寝してはります。あ、出版社の方から何本か電話あって『またお電話下さい』て」

町子「はい」

 

茶の間

町子「あ~、楽しかったわ~」

純子「海の色がね、また、青というより緑なの。そんでもって島の人が優しいのよ~」

町子「けど、健次郎さん、ものすごう便利になってましたよね」

健次郎「ああ」

町子「ほれ、前は空港から島の一番南の古仁屋の港まで、これ、ものすごい時間かかってましたもんね」

健次郎「島の真ん中に縦貫道路出来たからな」

町子「ああ。もう、そのどんだけ夕日がきれいかったか~」

由利子「ええなあ。私も来年辺り行きたいな」

町子「行きましょ、みんなで。行こ行こ。行こ。みんなで行こ」

 

健次郎「今度は夏の一番暑い時、行こか。ええで」

純子「でも、あの、真っ黒になりません?」

健次郎「それがええねや」

純子「え~!」

 

電話が鳴る。

純子「あ、もしもし? 花岡でございます。北野さん? あの、ただいま戻りました。先生、新明出版さんから校正のご相談です」

町子「代わりましょ」

純子「よろしいですか」

町子「はい、はい」

純子「はい」

町子「もしもし? あ、どうも、はい。ええ。おかげさんでありがとうございます」

 

健次郎「帰る早々、仕事かいな」

 

町子の忙しさは変わることなく…原稿の執筆に加え、地方の講演会や取材と、ますます精力的に動き回る日々でした。

そして、翌日。

 

応接間

バーカモカの看板を見ている北野。

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再登場するとは思わなかったな~。

 

以前、純子の危機を救った編集者の北野は、今、町子の担当になっていました。

 

茶の間

健次郎「何?」

北野「何回見ても笑ってしまいますね、あれ」

町子「行きつけのバーから頂いたんですよ。けどまあ、そっくりでしょ?」

健次郎「アホ。ほんまもんの方が男前です」

一同の笑い声

ホントにあるんだ!

 

北野「で、ケンムンには会えました?」

町子「会えなかったんですよ。残念なことに」

純子「ほんとにいるんですか? ケンムン

健次郎「何を言うてんねんな。僕はケンムンに助けられた男やで」

純子「あれ、お兄様だったんでしょ?」

peachredrum.hateblo.jp

健次郎「あの時はそやったけど、ケンムンはほんまにいてます」

純子「え~!」

 

北野「じゃあ、今年の阿波踊りケンムンになりますか?」

町子「ねえ、それそれ、あの、ほれ阿波踊りの準備。お稽古せなあかんの、お稽古。『カモカ連、集合!』よ。ねっ」

健次郎「そやな」

町子「何が『そやな』よ。初めね、自分の名前の連なんかね、絶対作らんといてくれて言うてはったんですよ」

健次郎「そやったか?」

町子「お稽古しよ。阿波踊りの稽古、稽古。稽古せなあかん。(立ち上がって)♪チャンカ、チャンカ、チャンカ、チャンカ、チャンカ、チャンカ。あっ、純子さん、日程の調整…スケジュールの調整、お願いしますね」

純子「はい、分かりました」

町子「♪チャンカ、チャンカ、チャンカ、チャンカ。チャンカ、チャンカ、チャンカ、チャンカ、チャンカ、チャンカ、チャンカ、チャンカ」

阿波踊り

阿波踊り

  • 四派花形・若手寄席お囃子衆
  • ホリデー
  • ¥153
  • provided courtesy of iTunes

音源あったー!

 

町子に続き、純子、健次郎、北野、北野と同行していた編集者・松本も立ち上がって踊り出す。北野の踊りがかなりぎこちなく面白い。

 

町子「♪エラヤッチャ、エラヤッチャ」

北野「先生!」

町子「はい」

北野「明日の締め切り、お忘れなきようお願いしますよ」

町子「明日、締め切りですね。♪エライコッチャ、エライコッチャ、ヨイヨイヨイ。はい、純子さん。♪エライコッチャ、締め切り、ヨイヨイ、ヨイヨイ」

阿波踊り

阿波踊り

  • お鯉
  • 演歌
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

bungakukan.osaka-shoin.ac.jp

h-kishi.sakura.ne.jp

モカ連も本当にあったんだな~。活動的だ~。

 

仕事部屋

町子「アイタッ! あ~、痛い、痛い! あ~、調子に乗って踊んのやなかった。アイタッ。アイタ…」腰を押さえるが、部屋にかかっている”カモカ連”柄の浴衣を見上げて笑顔になる。「はあ…」

 

たこ芳

純子「ほんとにきれいなとこだったわよ、奄美大島

北野「僕も行きたいなあ! 潜ったらきれいだろうなあ!」

純子「来年辺り、編集の方誘って、みんなで奄美ツアーといきますか」

北野「おっ、いいですね」

純子「夜はね、砂浜でお酒飲んで歌って踊るの。地元の人がね、お三味線弾いてくれるの。で、火を囲んで星を見ながら…。あ~、すてきだなあ! もうね、流れ星がいっぱい降ってきて…ロマンチックなの。う~ん…。どうかした?」

北野「え? あ、いえ…」

 

玄関

町子「ほな、お願いします」封筒を差し出す。

北野「ありがとうございます。あれからずっとですか?」

町子「とんでもないですよ。一旦寝ましてね、朝早う起きまして、で、一生懸命仕上げました」

北野「お疲れさまです。どうぞまたお休みください」

町子「そうさしてもらいます」

 

純子「おはようございます!」

町子「あ、おはようさんです!」

純子「あっ、あら!」

北野「おはようございます。今、頂きました」

純子「あっ、そうですか。じゃ、あの、お茶でも…」

北野「いえ。すぐ持ち帰ります」

純子「そうですね」

北野「じゃ、失礼します」

純子「お疲れさまでした」

北野を見送る純子を笑顔で見る町子。

 

茶の間

町子「ああ…。よいしょ」

健次郎「一息つけるんか?」

町子「3日後にエッセーの締め切り」

和代「まあ、その年になって、まだ落ち着かれへんのやね」

町子「ねえ、お母ちゃん、私ね、声をかけてもろてるうちはどんなことがあっても書き続けよと思てるの」

健次郎「ふ~ん」急な武者震い。「ああ…」

 

町子「どうしたん?」

健次郎「ゾクッと来た」

和代「風邪ですか?」

健次郎「あ、いやいや、あの…」

町子「ちょっと待って、健次郎さん。ねえ、ひょっとして例の?」

健次郎「兄貴か…。どっか近くまで来とんのかな?」

 

純子「先生!」

町子・健次郎「ほら、来た!」

純子「え? いや、あの…『月刊太陽』さんが午後に伺いますって」

町子「あ、そう。ありがとう」

 

昭一「ごめんください!」

 

町子「どうぞ」お茶を出す。

真佐美「すいません」

町子「お兄さん、お元気やったんですか?」

昭一「はいな。そっちは?」

健次郎「いや、おかげさんでな」

 

昭一「うん…紹介しとかないかん。真佐美です」

真佐美「初めまして。平真佐美です」

健次郎「平さん?」

真佐美「はい」

昭一「ご両親がな、なぜかこの広い日本で奄美でな」

町子「え!?」

真佐美「龍郷町です」

健次郎「龍郷町?」

真佐美「はい」

健次郎「僕ら、笠利の生まれですよ」

おお~、近いね。平真佐美役のなるみさんも両親が鹿児島出身だそうです。

 

真佐美「はい。いつも昭一さんからお聞きしてます。弟さんは有名なカムハ? カメハ?」

昭一「カモカ…」

真佐美「『カモカのおっさんやで』って!」

昭一「おっちゃん。おっさんやのうて」

真佐美「いや、すいません。ごめんなさい」

健次郎「カムハでもカメハでも何でもええですよ」

 

昭一「3年前からつきあいだしてな、去年から一緒に住みだしてん」

町子「え? ということは?」

昭一「妻といいますか…」

真佐美「婚姻届は出してへんのですけど」

町子「ああ…」

 

健次郎「そういうことはちゃっちゃと教えといてくれな」

町子「はよ言うてくれはらへんと。おめでたいことやないですの」

昭一「いや、そやけどな、まあ、この年やろ。今更、結婚式とかそんなのなあ…」

町子「年なんか関係ありませんよ。ねっ、そしたらお祝いしましょ。ねえ。今晩、お祝いしましょ。私、腕によりをかけて鶏飯作りますわ」

昭一・真佐美「鶏飯!」

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夕方、茶の間

バーカモカの看板に明かりがついている。

町子の笑い声

真佐美「恥ずかしいわ!」

昭一「やっぱり故郷(くに)の料理はええね!」

健次郎「そやな」

町子「それ、一番の元気出ますよ~」

昭一「元気が出れば、また出るものが…」

真佐美「うん?」

 

昭一「♪私があなたに ほれたのは」

十九の春

十九の春

  • Yoshio Tabata
  • 謡曲
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

町子「出ましたね、十八番」

皆で歌う。「♪ちょうど 十九の春でした」

真佐美・昭一「♪今さら離縁と 言うならば

もとの十九に しておくれ」

真佐美「♪もとの十九に するならば」

昭一「あのね、おばあさんもお母さんも代々、島の民謡歌手」

健次郎「へえ~」

昭一「この子は違います」

 

真佐美「♪見てごらん」

昭一「あっ、どしたい!」

真佐美「♪枯木に花が 咲いたなら」

昭一「おっ、今日はええの!」

 

なるみさん、いい声。だけどこの歌詞、何なの?って前も思った。

 

夜、茶の間

テーブルに突っ伏して眠ってしまった真佐美。

コートをかける昭一。「おうおう、もうこんな時間か」

 

町子「あっ、お兄さん。私、奥にお布団敷いてきますわ」

昭一「あ、町子さん、ごめん」

町子「フフフ」廊下に出ていく。

 

コートを直した昭一が真佐美のほっぺに指をさす。「プク…」

 

応接間

昭一「すまんな」

健次郎「いやいや。仕事の方はええねやろ?」

昭一「有給休暇やで」

健次郎「へえ。ほな、順調やねんな」

昭一「うん。まあ、ちっちゃい会社やけどさ、貿易いうてもやな、扱ってる商品、ちっちゃいもんやから、そんな大もうけはないけども共同経営してるやつと割とうまいこといっててな、楽しやってるわ。けどな…そろそろ…いや、実はな今日お前にその話、しよ思て来たんや」

健次郎「何?」

 

昭一「またそろそろ奄美に帰ろかと思てんねん」

健次郎「へえ」

昭一「あいつの両親も向こうにおるしな。ほんでな、健」

健次郎「うん」

 

昭一「お前も一緒に行かへんか?」

健次郎「え?」

昭一「お前、病院辞めたし、子供たちも皆、独立したがな」

健次郎「う~ん…けど、町子は仕事しとるがな」

昭一「今日び小説家なんて日本中どこにおってもできる仕事やないか。書いてへん時は東北、九州て飛び回ってるやろ。何かあったら東京やろ。どっちにしても出てかなあかんがな」

健次郎「うん…まあ、そらそやねんけどな」

 

昭一「空気のええとこで老後はゆったりと暮らすっての何よりやないか」

健次郎「老後…」

昭一「お前、もう隠居の身やろ?」

健次郎「隠居やないで。毎日、忙ししてるて」

昭一「仕事してへんがな」

健次郎「仕事してなくても隠居やないよ」

昭一「そうかな…」

 

徳永家の門

真佐美「何、何? ほんなら今日は何買うてもらおうかな?」

昭一「うわ~」

 

翌日、昭一と真佐美は買い物に出かけていきました。

 

茶の間

町子「フフッ。けど、お兄さん、幸せそうやった。これでやっと落ち着かはるつもりなんかな~」

健次郎「うん…。あっ、兄貴な『奄美帰る』言うてんね」

町子「え?」

 

健次郎「『お前も隠居しとんのやったら一緒に帰れへんか? 老後は奄美でどや?』やて」

町子「隠居て健次郎さんがご隠居さん?」

健次郎「おう」

町子「嫌やわ~。お兄さん、結婚した途端、奄美でご隠居さんなるつもりなのかな」

健次郎「ハハッ、何を考えとんのやら分からへんわ」

 

町子「ねえ、ほれ、50歳前後の頃、ほれ、2人で老後はあれやこれやて、こう理想の話、したことありますやんか。覚えてるよね、健次郎さんは…」

健次郎「『近くに赤提灯はあってほしい』」

町子「『1軒だけやったら寂しいから、2~3軒は、あらまほしい』て言わはりました。その理想はかのうてるんですよ」

健次郎「『着るもんは要らん。凍えぬ程度のものをひっかければよい』と」

町子「私は『それ絶対嫌や』て言うたんです。『朝昼晩、洋服を着替える老後で、あらまほしい』。で、よう考えたら仕事してますでしょ。朝昼晩なんか着替える余裕ありませんもんね」

 

健次郎「『スポーツはゲートボールなんかどうです』て言うてたな」

町子「健次郎さんは『スポーツなんかせんでもよろしい。無私無欲でいれば運動なんかに打ち込まなくても自然の運気が合体して、おのずと健康が保たれますでしょう』とか難しいこと言うてましたよね」

健次郎「実際、運動なんかしてへんがな」

町子「けど、一回は健康損なわれたんですよ」

 

健次郎「う~ん。けど、あながち間違いやないで。見てみぃな、あんた、運動なんかしてないけれど健康やろ?」

町子「うん」

健次郎「…というか、あんた得意なスポーツなんてあるんか?」

町子「輪投げ」

健次郎「それ、スポーツか?」

町子、首を横に振る。「けどまあ、理想的な老後送ってるから、これでええのんと違いますか?」

 

健次郎「うん。今日、晩ごはん、どっか食べに行こか?」

町子「お兄さん来てるから?」

健次郎「うん」

町子「ほんまに食べに行く?」

健次郎「うん」

町子「うれしい! ほんと?」

健次郎「うん」

町子「何、食べてもいいの?」

健次郎「ええよ」

町子「ええの? いや~、うれしい!」

 

しかし、昭一の出現がまたもや町子たちを騒動に巻き込むことになるとは、まだ知らぬ二人でした。

 

ミニ予告

昭一「何でダイヤモンド言わへんかったんや?」

 

ドラマ内ではっきりと明言してなかったけど、あらすじにある平成9(1997)年とすると、町子は69歳。昭一も健次郎も純子もそれより年上の70代。元気だね~。

 

だからこそ、年の差恋愛がちょっと苦手なので、昭一×真佐美、北野×純子の組み合わせってどういう決着をつけようというんだろう。北野だってあのころ若手社員としても今は50代くらいじゃないの~? しかしまあ、ここ最近に比べると穏やかな始まりでした。