徒然好きなもの

ドラマの感想など

【ネタバレ】ちょっといい姉妹 #5

TBS 1981年12月3日

 

あらすじ

日曜日。今日は華子(山岡久乃)が結婚式に出席するというので、三子(京塚昌子)が着付けを手伝っている。和服姿の華子は見違うほど綺麗で、三子も悠子(大空眞弓)も、悪い男に引っ掛からなければいいがと、恋多くして未婚の華子がちょっと心配になった。 幸代(浜美枝)が悠子を訪ねてきた。中学時代からの友人同士の2人は、久しぶりの再会に興奮気味で、昔に戻ったようなはしゃぎぶりだ。

そこへ、風邪をひいて苦しそうな孝司(山村聰)が休ませてくれと立ち寄った。孝司と幸代は同じ勤め先の上司と部下、偶然ここで会って、幸代が孝司を家まで送って行った。かいがいしく看病する幸代に、順司(川崎麻世)はムッとした表情で、口も利かずに出て行った。幸代は、ふと気になった。 孝司の具合を知らせに再びやって来た幸代の話しぶりに、悠子は孝司に対する幸代のほのかな愛を感じ取った。

孝司の風邪がきっかけで、華子は急に心配になった。そばにいてあげられる人が必要だと。そこである夜、華子は悠子を伴って、再婚を勧めようと孝司の家に向かった…。

ちょっといいもの

ちょっといいもの

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2024.4.25 BS11録画。

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作・田井洋子

*

京(かなどめ)三子:京塚昌子…京家の三女。歯科医。45歳。

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京華子:山岡久乃…京家の二女。歯科医。47歳。

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京悠子:大空眞弓…京家の四女。離婚してパリから帰国。33歳。

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津村順司:川崎麻世…津村孝司の息子。

細川桃:倉田まり子…技工士学校に通う受付。

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古谷健:河合宏…歯科技工士。

清田好子:丘祐子…歯科衛生士。

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川北修三:小倉一郎…「ふれあい」店長。

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川北有紀:東てる美…修三の妻。

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村瀬雅夫高岡健二…非常勤の歯科医。

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鈴木しづ:大鹿次代…津村家の家政婦。

舟山一正:松田洋治…悠子の息子。小学6年生。

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折原幸代:浜美枝…悠子の親友。

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津村孝司:山村聰…京家の長女(故人)の夫。53歳。

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プロデューサー:石井ふく子

 

本日休診の札が下がる京歯科医院。華子が友達の娘の結婚式に出席するため、三子が着付け料3000円を取って着付けをした。一正は順司の家へ出かけるため、華子と一緒に家を出た。

 

三子は“寝て曜日”で再び就寝。懐かしい響き。

 

順司と一正はフルートの練習。孝司は調べ物をしてるから外でやってくれないかと言うが、外は寒いと順司に言われて、孝司が外に出た。

 

「ふれあい」で12000円分のお使い物を買った幸代は悠子の友達で京家に遊びにきた。2階の部屋に行こうと悠子は言うが、懐かしいからここでと言う幸代。寝ていた三子は驚く。幸代は理系の大学を卒業し、8年前から孝司の美容研究所で働いている。

 

12年前、大学を卒業した悠子はあっさり結婚。それからのことをあれこれ話した。幸代は両親を亡くして天涯孤独。三子はパジャマの上に綿入れを着て仲間に加わる。

 

風邪気味の孝司が京家に立ち寄った。部下である幸代が送ることにし、順司と一正は孝司が風邪気味のなのに外へ行ったことをしづに知らされ、一正は帰ることにした。

 

幸代は孝司を送り、入れ違いに一正が帰ってきた。食事を終えた三子はまた就寝。だから、着替えなかったのね。

 

家に帰った孝司。しづも順司も孝司を捜しに行っていて不在。幸代が背中をさすっていると順司が帰宅。順司はムッとして出て行った。さすった手を引っ込めるからおかしいんだよ。

 

三子と悠子は華子が誰かに見初められたらどうしようと話し合っていたが、帰ってきた華子は帯がきつくて食べられなかったと言い、友達の娘が友達が21歳の時と同じ顔をしていて、自分の若い頃を思い出して嘆く。

 

また京家に戻ってきた幸代は孝司とゆっくり話せたことが嬉しかったと悠子に言った。悠子は幸代が孝司のことが好きなんだろうと指摘。これから孝司の家にも京家にも遊びに行きたいと言う幸代。順司の態度も気になるが、悠子が順司はヤキモチをやいてるだけだから、後で聞いてみると言う。

 

布団に寝ている孝司に娘なら看病したのに、あとをおもらいになったら?と言うしづ。しづさんいるからいいじゃんねえ!?

 

幸代は、ちょっといいきょうだいねと悠子に言って帰った。

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この映画は「むねかたきょうだい」だけど、このドラマも「ちょっといいきょうだい」と読むのかな? 

 

翌日、孝司は全快とはいかないが会社に出かけた。順司は休講なので在宅。

 

華子と三子は今まで義兄さんのことを気にしなさすぎたと話した。孝司は華子たちの姉の3つ上で53歳。53かあ!

 

悠子は津村家に電話をし、孝司が出社したと知り、会社にいる幸代に電話。孝司は医務室に行った後、幸代の部署に来て話をした。

 

昼休み、桃と好子はお弁当。古谷と村瀬は外へ。悠子はクリーニングされた白衣を渡し、ロッカーの白衣を着てみた。

 

華子と三子が京家でお昼。華子は孝司の再婚推進派。三子は、長女であるフミコお姉様のために反対。悠子が幸代を勧めたいと思っていたことを華子が話すと、三子は自分のこともちゃんとできないくせにと悠子批判まで始めた。それを聞いていた悠子。

 

華子は悠子に一緒に孝司に会いに行こうと誘う。

 

津村家

縁談のことで…と話し始めると、孝司は華子にたくさんの弟妹がいて婚期を逃した43歳眼科医を勧めてきた。頭痛がすると孝司の縁談の話をしないまま家を出ていく華子だった。(つづく)

 

この時代の浜美枝さん見覚えあるなあ。

 

みんな結婚結婚結婚だねえ〜。そんな時代なんだろうけどもそればっかりで。

【ネタバレ】わが子は他人 #2

TBS 1974年4月10日

 

あらすじ

一郎(春田和秀)の血液型がB型だと聞いた大吉(松山省二)は、O型の自分とA型の紀子(音無美紀子)からB型が生まれるはずがないと思った。保健所へ確認に行った紀子が受付の男に笑われたと聞いた大吉は…。

2024.4.25 BS松竹東急録画。

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福山大吉:松山省二…太陽カッター社長。字幕黄色。

福山紀子:音無美紀子…大吉の妻。字幕緑。

*

和泉和子:林美智子…元の妻。

*

福山隆:喜久川清…大吉の弟。浪人生。

田口:桐原新…隆の友人。

*

西城:佐々木功…保健所の血液型担当職員。

受付:三田村賢二…保健所の職員。

*

福山一郎:春田和秀…大吉、紀子の息子。小学1年生。

和泉晃:吉田友紀…元、和子の息子。小学1年生。

ナレーター:矢島正明

*

福山ゆき:小夜福子…大吉の母。

*

和泉元(げん):杉浦直樹…中学校教師。

 

今回も監督は木下恵介さん。2話連続でちょっと珍しいと思う。

 

人生には時折、思いがけないことが起こるものです。それにしても子供の血液型が違っていたのですから、これは親にとっては大変なことです。今日は、その子供が小学校へ上がって初めて登校した日だったのです。

 

バスを降りた紀子。つっかけで出かけた!?

 

憮然とした表情のまま家に帰った紀子はゆきに声をかけられ、しゃべり出す。

紀子「ホントに失礼しちゃうんですよ、お義母(かあ)さん」

ゆき「どうしたの?」

紀子「どうしたもこうしたもないんですよ」と、コップの水を一気飲み。

 

保健所に行ってきたが、人の話を聞こうともしない態度に投書でもしてやろうかしらと怒りを見せる。「まあ、座りなさいよ」と落ち着かせるゆき。

 

茶の間

紀子は受付の人にお父さんがOで私がAで子供がBの血液型じゃ、どうしたって、ここの検査が間違ってるんじゃないですかと聞いたものの、そんなもん間違えるはずがないと言われたとゆきに言う。ゆきもあの本持ってきゃよかったねと同調する。紀子は受付からニヤッと笑ってお父さんかお母さんかそちらが間違ってらっしゃるんじゃないんですかと言われた。変なヒゲを生やしちゃって、顎までチョロチョロ生えてると見た目批判をする。

 

なんて言ってやったの?とゆきに聞かれると、言ってやろうと思ったが、紀子はあんまり悔しくて声も出なかったと答えた。

 

ゆき「そういうときにはポンポン言ってやらなきゃ。私だったら絶対黙っていないね。私なんて言いたいことを言って生きてきたんだからね。お父さんが死んだあと、あの子たちを抱えて誰も助けてくれなかったでしょう。だから、どうしても人には負けちゃいられなかったのよ。おとなしくしてたらキリがないものね。バカにされて」

隆も茶の間に入ってきて、保健所に行ったか聞いた。

 

電話の着信音が鳴る。紀子が出て、大吉かと思ったが、仕事の電話だった。

 

ゆきが隆に事情を話したあと、「お前もしっかりしとくれよ」

隆「なんだよ、急に」

ゆき「急にじゃないよ。言いたくたって我慢してることがこういうときに出るんだよ」

隆「とんだとばっちりだな。何か飲む物(もん)ないかな?」台所へ。

ゆき「まあ、タバコもお酒ものまないのが取り柄だけどね」←いや、隆、未成年だよ!

 

紀子は電話を終え、事務所の机にまだ掛けていた。

 

後ろのカレンダーを見てふと気づく。50年前の4月も曜日が一緒! 2024年は、うるう年で3月1日から1974年と完全一致。

 

紀子はこのままじゃ大吉に怒られるから、もう一度行ったほうがいいか、ゆきに聞く。「ねえ、お義母さん、すいませんけど一緒に行ってくださいよ。隆さんに留守番してもらって」

ゆき「私がかい?」

紀子「うん。やっぱり年寄りじゃなきゃダメなんです。お義母さんだったら、にらみも利くでしょう? それにお義母さん、ポンポン言うことにも慣れてるし。ねっ? お願いします」

ゆき「それじゃまるで女のヤクザじゃないか、私は」

紀子「いいえ、いや、あの…亀の甲より年の功ですよ」

ゆき「そうかしら」

 

姑に年寄りだの年の功と言っても怒られない関係。

 

また電話が鳴る。大吉からの電話で、紀子から事情を聞き、電話ボックスの中で怒っているのが音声オフでも伝わる。紀子は受付の人の特徴を話していると、電話は切れてしまい、大吉がどなり込むんじゃないかと心配する紀子に、ゆきはすぐ行くように言う。

 

バイクを飛ばして保健所へ向かう大吉。工事用ヘルメットでバイクに乗っていいの?

 

保健所

大吉「おい、さっきここに子供の血液型のことで品のいい奥さんが来ただろ?」

受付「さあ、品がいいかどうか…」

大吉「何? それで君はなんと言ったんだ?」

受付「ええ。当たり前の普通のことを言ったんですよ」

大吉「そうか。俺は、あの奥さんの亭主だけどさ、君は奥さんにふざけたことを言ったんじゃないのか?」

受付「いいえ、別に」

大吉「ウソつけ!」

 

受付は、ふざけたことなど言っていない、むしろ奥さんのほうが保健所の検査が間違っていると変なことを言った。保健所は責任を持って仕事をしている。冗談じゃないと言うので、大吉は受付の扉の中へ入って行くが、紀子が止めた。

 

大吉「誰が冗談でOだのAだのBだのなんて言いに来るか!」

紀子「あなた!」

西城「やめなさい。さっきからお話は聞いていました。私が血液型の担当です」

 

佐々木功さん、いい声だ~。

 

血液型検査室④の前の廊下で大吉と紀子が待っていると、西城が出てきた。西城から改めて福山一郎はB型だと言われる。大吉はもう一度検査をしてほしいと言う。

 

西城「そんなことは簡単ですよ。もう一度お子さんをお連れになれば」

大吉「あっ、ありがとうございます」

西城「だけど、おかしいな。思い違いじゃないんでしょうね。お二人の血液型、間違いないんですね?」

大吉「ええ、お前だってA型間違いじゃないよな?」

紀子「ええ。私は6年前だけど、その子のお産のときに産院で」

大吉「私は去年日赤で献血をして」

 

西城「はあ…じゃあ、妙なことを伺いますが、お二人とも双子じゃありませんね?」

大吉「ええ。紀子、お前、双子じゃないよな?」

紀子「当たり前よ。何よ、今頃そんな…」

西城「いや、双子の場合は血液型を2つ持っている場合があるんです。まあ、まれにですが」

大吉「あっ、そうですか」

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双子というか本来双子だったはずが子宮の中で融合して生まれた場合に2セットのDNAを持っていることがある。こういうことが50年前からもう分かってたんだね。

 

西城「それじゃ、いつにしますか? もう一度お子さんを調べてみましょう」

大吉は、こういうことは早いほうがいいと、あしたの午後に決めた。

 

佐々木功さんは歌手デビューして俳優と並行してやってて、結局はどっちかに専念する人が多いように思うけど、どっちもやり続けた人という感じ。佐々木功さんは歌手成分が高く、小坂一也さんは俳優成分が高いって感じ。佐々木功さんも「記念樹」に出てるんだよな~。見たいな~。

 

茶店

隆「俺が気がついたからよかったんだよな。あのまま知らんでいてみろよ。事だぜ。危険がいっぱいの時代だろ? 爆弾がどこで爆発するか分からないしさ、車はもちろんだよ。とにかくいつもおびえながら生きてるのが現代だからな。一郎がケガでもしてみろよ。イチコロだぜ。B型なんか輸血されてさ。やっぱり兄貴なんて、いつも威張ってるばっかりで無知だよ。俺に言われてから急に慌てだしたんだからな。なっちゃないよ」

田口「コーヒー、もう1杯飲むかい?」

隆「コーヒーよりアイスクリームのほうがいいよ。ちょっと高いけど、それぐらいいいだろ?」

田口「ああ、俺もアイスクリームにするよ」

隆がアイスクリームを2つ注文。

 

隆が続きを話そうとしたが、気だるげな田口はもう分かったよと言う。

隆「頼りないな、お前と話してると。こっちが一生懸命話してるときにコーヒーなんて言うなよ。話の腰、折られちゃうとがっかりするよ。まあ、アイスクリームはいいけど」

田口「だけど、そうすると一郎ちゃんは誰の子供なんだ?」

隆「そうそう。それだよ、問題は。お前、無口なくせに言うときは辛辣なこと言うじゃないか。ええ? そうだろう? 誰の子ってつまり…うちの義姉(ねえ)さんが産んだってことは確かなんだから、そうすると親父はうちの兄貴じゃないってことになるだろ」

 

ドロドロ系ドラマなら隆がB型なんだから真っ先に疑われちゃうよ!

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田口役の桐原新さんは前回も名前はあったけど絶対出てなかったよな。隆と話していると無口な田口も正司と話すと目がキラキラな清になるよ! 

 

太陽カッターに大吉が戻ると、事務所でゆきが繕い物をしていた。

大吉「いいのに。そんなの店でやらなくて」

ゆき「やりたかないけど電話番してたんだよ」

 

隆は田口から電話があって出かけてしまった。大吉はバイク、紀子はバスなので帰りはバラバラ。

 

ゆき「それでどうだったの? 保健所」

大吉「あした、もう一度検査してくれるって」

ゆき「そう。そりゃよかったね。やっぱり男が行かなきゃダメだね」←これ、今でもあるんだよな~。

 

受付は生意気なヒゲの若いヤツだったが、検査してくれる先生のほうがちゃんとしていたと話す大吉。あした検査してみないことには分からない、それより腹が減ったと言った。

 

ゆきは繕い物を抱えて茶の間へ。大吉も茶の間へ行くと縁側におもちゃがたくさん並んでいるのが見えた。

 

ゆき「たまには風を通してやらなきゃね。おもちゃだって物置へ入れっぱなしじゃかわいそうだもの」

大吉「あのちっちゃい犬なんかさ、一郎がしょっちゅう抱いて寝ていたもんね」

ゆき「随分捨ててしまったり、近所の子供にもあげたりもしたけど、これだけ置いといてよかったよ。あの子がもうちょっと大きくなって大学へ行くようになったら、どんな顔するだろうね。このおもちゃを見てさ」

大吉「ちょうど隆ぐらいの年か」

 

ゆき「隆のときは、おもちゃなんか買ってやれなかったよ。大変な時代だったもの」

 

大吉「やっぱりあれかな? 子供のころ、おもちゃと遊ばないと頭が鈍くなるのかな? 隆なんかどうもそうじゃないの? 学校だって小学校のときから、あんまりできたほうじゃないしさ。そのくせ大学へだけは行きたがるんだから困っちゃうよ」

ゆき「隆ばかりじゃないだろ。一種の流行だよ」

大吉「変な世の中になったもんだよ。大学へなんか行かなくたってさ、うちの仕事を手伝ってもらいたい親は、ごまんといるだろうしな」

ゆき「だから、親も涙が出るし、子供も涙が出る時代だよ。隆だって、あれでまるっきりダメな人間じゃないんだからね」

大吉「そりゃまあ人間はいいけどさ、バカみたいに」

ゆき「頭が鈍くたって気持ちがいいほうがいいよ」

 

大吉「でも、それじゃあさ…」

ゆき「どっちが大事かっていえば、そうだよ。一郎だってそうだからね。頭ばっかり良くってさ、一流大学を出て一流の会社へ入っちゃってさ、それで親を捨てられちゃかなわないよ。たまにはこういうおもちゃを見て思い出してくれなきゃね」

 

ここで疑問。隆は一流大学を落ちたのか、どこの大学にも引っ掛からなかったのか。大吉の話だと子供のころからあまり成績のいいほうではなかった…が、大吉は大学に行ってないから、よく分かってないだけなのか。これから分かるかな!?

 

紀子、帰宅。「あら、どうしたんですか? こんなおもちゃ持ち出して」

大吉「風通しだって」

ゆき「急に思いついたからね。かわいくてかわいくて。あのころの一郎は」

 

大吉「ああ、そうだ。お前、ご飯の支度しろよ」

紀子「あっ、そうそう。お義母さん、私がやりますよ」

 

⚟ゆき「いいから座ってなさい」

⚟紀子「だって簡単ですもの」

⚟ゆき「じゃ、これ持ってってちょうだい」

⚟紀子「はい」

 

茶の間に戻って来た紀子は犬のぬいぐるみを手にする大吉に「やっぱりそういう物は残しとくほうがいいわね」と言う。

大吉「今もそう言って話、してたんだ」

紀子「ホントに幸せな子よね。一人っ子だから甘えたい放題。それにおばあちゃんだってすごいんだもの」

ゆき「何がすごいのよ?」

紀子「いえね、おもちゃだってね、あんまりたくさんやるといけないんですってよ。移り気で気まぐれな子供になっちゃうんですって」

ゆき「そうならなかったじゃないの。一郎は」

紀子「これからよ。これからがホントの反抗期なんだから」

 

ゆき「甘やかしたのは、あんたたちですよ」

紀子「まあ、あんなこと言ってる」

ゆき「だってそうじゃないの」

大吉「まあ、そんなことはいいからさ」

 

ゆきは、たまに2人で出たんだから外で何か食べてくればいいのにと言うが、紀子は2人だけでおいしい物を食べちゃ申し訳ないと言う。

ゆき「誰に申し訳ないの?」

紀子「うちにはおしゅうとさんが頑張ってますからね~」台所へ。

ゆき「あんなこと言ってる」

 

大吉「いや、まったくイヤなことが起きちゃったもんだよ」

ゆき「ホントにね。これがよそのうちだったら大変だよ。うちなんてホントにうまくいってるほうなんだから」

 

男性の脚本家は嫁姑があっさりしてていいよね。まあ、そこに時間を割くドラマじゃないけど。

 

一郎、帰宅。大吉は一郎におもちゃを見せる。「ねえ、おばあちゃん。こんな物しまっておくより新しいうんといいおもちゃを買ってよ」

ゆき「どんなおもちゃを?」

一郎「どんなって、すごいおもちゃがいっぱいあるんだから。(両手を広げて)これぐらいの列車だってあるんだよ」

ゆき「そんな大きかったら本物じゃないか」

一郎「本物じゃないったら~」

大吉「こら、一郎」

 

「ねえ、買ってよ」とゆきに甘える一郎。

大吉も紀子もあきれつつニコニコ。

 

茶の間

一郎の持ち物に名前を書く大吉と紀子。

大吉「うまくないなあ、字は」

紀子「お父さんらしい字よ。力があって頼もしいわ」

 

大吉って子煩悩だね~。名前書きしてくれるお父さんとかなかなかいないと思う。

 

大吉「大体、あれだよ。名前なんてひらがなじゃ様にならないな」

紀子「さあ、いいから。ほら、たくさんあるのよ」

 

時計は10時になったところ。

 

せんべいをつまみながらの作業。

 

10時34分。

 

大吉「(鉛筆を見ながら)こんな物にまで書くんだからな」

紀子「もう少し頑張ってちょうだい」

大吉「ああ」

 

名前書きをする大吉の姿をじっと見つめる紀子。

大吉「今更、俺の顔を見つめたって始まらないだろ?」

 

紀子「あした、また、保健所に行ってBだって言われたらどうするの?」

大吉「どうもこうもないじゃないか。日赤が間違ってるか、お前の行った産院が間違ってるんだ」

紀子「そんなこと絶対にないわ。日赤だって間違えるはずないし」

大吉「だから、あした行く保健所が間違ってるに決まってるじゃないか。(冗談っぽく)それともお前が浮気でもしたのか? ええ?」

紀子「バカなお父さん」

大吉「俺がバカだったら、なおさらそういうことがあるんじゃないか。まったく変な話だよ。バカバカしい」

 

泣きだす紀子。「だって、それしかないじゃないの。もしあしたBだったら…」

大吉「バカ。バカなこと言うんじゃないよ。お前のほうが俺よりよっぽどバカじゃねえか」

 

寝ていたゆきが体を起こす。隣には一郎が寝ている。

 

大吉は茶の間から出て、一郎のお気に入りだった犬のぬいぐるみを持ってきた。「今日に限って、おばあちゃんがどうしてこんな物を虫干しにしたか、お前には分かるか? おばあちゃんにとって一郎の血液型なんかどうでもいいことなんだ。ただ、かわいくてしかたがないんだ。それは俺だってお前だって同じはずだ。そのことをはっきり思い出さそうとしたんだぞ、おばあちゃんは」

 

紀子「私だって…今更どうしようもないじゃありませんか。AだってBだって、あなたの子供に間違いないんだもの」

大吉「そうさ。どんなことがあったって、一郎は俺たち夫婦の子供だよ。(犬のぬいぐるみに向かって)そんなことはお前のほうが人間よりか分かってるかもしれないな。お前は一郎と一番の仲良しだったもんな。お母さん、バカだな」犬の鳴きまねしながらぬいぐるみを紀子に近づける。

紀子も取り返して「ワン!」

 

会話を聞いていたゆきは、一郎の布団をかけ直し、横になる。余計な口出しをしない姑の鑑だね!

 

保健所

飽きて遊んでいる一郎。大吉は紀子に一郎を連れて先に帰るように言うが、紀子は今日こそ3人でお食事して帰りましょうと言う。ゆきの許可済み。何を食べようか話していると、西城が出てきてB型だと言われる。モノクロ…というか青白みたいな画面になる。

 

和泉家

ピアノの音が聴こえる。小学校教師の葬式から元が帰ってきて和子が出迎えた。

和子「あなたも高校の先生になるといいわね」←どういうこと??

 

元「おい、晃。さっぱりピアノうまくならないねえ」

和子「そう。もうピアノより勉強ですからね。これから中学へ上がる勉強よ」

元「何を言ってるんだ。昨日、小学校へ上がったばかりじゃないか」

和子「だから、今からそのつもりでいなきゃ、ろくな中学へ入れないんですよ。お隣なんか2年生でもう塾へ行ってるんですからね」

元「かわいそうに」

和子「かわいそうでも、そうしなきゃいい中学へ入れないんです。お父さんの中学なんか、てんでダメでしょ? 高校行くのには」

 

やっぱり杉浦直樹さんはスーツが似合う。そしてでかい。

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「たんとんとん」の新次郎さんも悪ガキたちを指導する先生みたいなものだった。

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和子役の林美智子さんは「おんなは一生懸命」では桃の継母。

 

ついに最悪の結果が出てしまったのです。今、この3人がつなぎ合っている手と手の温かみは一体なんなのでしょうか。肉親に対する愛情でしょうか。それとも、かよわい人間が互いに頼りにし合っている日常の約束でしょうか。それとも、ただ単に習慣なのでしょうか。

 

商店街を歩いている3人の姿が再びモノクロというか青白になる。(つづく)

 

今まで登場した人でイヤな人っていないから見やすい。橋田ドラマだと嫁の言動をすごくイヤなふうにとったりして、それで話がこじれたりしてた。紀子さんが橋田ドラマの嫁みたいに自分で何でもやるって頑張りすぎるタイプじゃないのがまたいい。

 

「おやじ太鼓」19話。竹脇無我さん、秋野太作さん、あおい輝彦さんの3ショット。「3人家族」「兄弟」であおい輝彦さんはどちらの弟役もやっていたから不思議な感じだったな。ガラの悪い竹脇無我さんもたまにはいいもんだ!?

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数回ぶりの山田太一脚本。

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松山省二さんの兄・英太郎さんは「大岡越前」にレギュラー出演しており、加藤剛さんや竹脇無我さんと親交が深かったそう。松山省二さんも第5部のみ出演していた。

【ネタバレ】わが子は他人 #1

TBS 1974年4月3日

 

あらすじ

会社を経営する福山大吉(松山省二)は、妻・紀子(音無美紀子)と長男・一郎(春田和秀)、母・ゆき(小夜福子)と弟・隆(喜久川清)の5人で暮らしていた。一郎の入学式の朝、一郎の名札に書かれた血液型を見た隆はある疑問を抱く。

2024.4.24 BS松竹東急録画。

 

事前に調べていて主題歌情報が出てこないと思ったら、男声コーラスだけの曲だった。

 

制作:木下恵介

*

脚本:田向正健

*

プロデューサー:飯島敏宏

        小梶正治

*

音楽:木下忠司

*

福山大吉:松山省二…太陽カッター社長。字幕黄色。

福山紀子:音無美紀子…大吉の妻。字幕緑。

*

和泉和子:林美智子…元の妻。

*

福山隆:喜久川清…大吉の弟。

隆の友人:桐原新

*

京子:猪俣光世…一郎の同級生・克美の母。

鍋谷孝喜…太陽カッターの従業員。

田尻丈人…太陽カッターの従業員。

*

福山一郎:春田和秀…大吉、紀子の息子。

和泉晃:吉田友紀…元、和子の息子。

ナレーター:矢島正明

*

福山ゆき:小夜福子…大吉の母。

*

和泉元(げん):杉浦直樹…中学校教師。

*

監督:木下恵介

 

いきなり隆のドアップ独白から始まる。「ホントはさ、もうちょっとマシにいくかと思ったんだけど、なぜかダメだったんだよな。(鼻をすすりながら)浪人か。でもな…東大にストレートで入れるヤツなんて、そうザラにはいないんだからしかたがないってことだよ。いや、磯村のヤツは特別なんだよ。あいつは勉強以外になんにも知りやしねえんだから。単純なんだよ、あいつの人生は。あの…お茶でも飲みませんか? ねえ、お茶でもつきあわない? 君が好きだ。アイ・ラブ・ユー」鏡に向かってキス。

 

誰かが部屋のドアを開ける。

隆「何してんだよ、そんなとこで、おい、一郎! 一郎ちゃん、戻っておいでよ。いい物やるよ、叔父ちゃんが」階段を下りていく。

 

京子「お宅様じゃ一体お子さんにどんな教育なすってらっしゃるんざますか?」

紀子「はあ…」

京子「ホントにもう冗談じゃございませんわよ。いっつもいつも乱暴ばっかりされて。あしたの入学式に行くのはお宅のお子さんだけじゃございませんのよ。それをまあ、どうでしょう。ご覧あそばせ、これ。克美ちゃん! あんたがビクビクすることないでしょ。こっち来て、さあ、見せておあげなさい。さあ、ほら」

紀子「あら…」

 

鼻の頭に絆創膏を貼られた男の子。絆創膏に血がにじむ。京子は克美がなんにもしないのに一郎がいきなり飛びついて鼻の頭に嚙みついたとどなり込んでいた。紀子はしゃがみ込んで、克美に謝り、ホントになんにもしないのに噛みついたのか克美に聞く。

 

京子「あら、奥様。それじゃ私の言ってることウソだっておっしゃるんざますか?」

紀子「いいえ、そうじゃないんです。でも、うちの一郎だって、まさか…」

京子「どういうことでしょう。それじゃまるでこの子が悪いみたいじゃございませんの」

紀子「いえ、そうじゃないんです。いや、とにかくうちの一郎、呼びますから。一郎! 一郎ちゃん!」隆を見つけて、一郎を呼ぶように言う。「すみません。今、一郎が来たら謝らせますからね」

京子「当然ですわ」

 

最初は立ってる京子としゃがんでる紀子だったのが、立ち上がったら紀子さん、背が高いね。音無美紀子さんは164cmだそうです。

 

紀子「それであの…お医者様にはいらしたんですか?」

京子「もちろんですわ。噛みつかれたとき、どんなバイ菌入ったか分かりませんからねえ」

紀子「じゃ、とにかく、そのお医者様のお代だけでも、わたくしのほうでとりあえず…」

京子「あたくしはお金をもらいに来たんじゃございませんのよ」

紀子「いいえ、そんなつもりで…」

京子「この際、はっきり言わせていただきますわ。そりゃまあ、お宅様はご商売柄、お子さん荒っぽくお育てになってらっしゃるんざんしょうけど。あのガタガタガタッ。あれでございましょう? それはそれで結構でございますから外へは出さないでいただきたいんです。飛びついたり噛みついたり、あれじゃまるで飢えた狼ですわ」

 

作業着にヘルメット姿の大吉が帰ってきた。「よう」

紀子「あっ、あなた…」

大吉「ああ、こりゃどうも、いらっしゃい」ヘルメットを取ってあいさつ。

京子「今度何かございましたら、区議会の問題にいたしますからね。(克美の手を強く引く)いらっしゃい。子連れ狼にはかなわないわよ、ほれ」帰っていった。

 

ざあます言葉のご婦人なんて、ドラマや漫画でしか見たことない。

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見た目が今まで見たことのない猪俣光世さんだったな~。声が特徴的だから分かったけど。金八でも高橋健の母で教育ママっぽい感じだったな。「マー姉ちゃん」のお琴さんはそうじゃないけど。

 

大吉「なんだ? ありゃ」

紀子「失礼しちゃうわ、ホントに」

大吉「どうしたんだよ?」

紀子「またケンカしたのよ、一郎が」事務所のソファに座る。

大吉「ハハハ…どなり込まれたのかよ?」

紀子「笑い事じゃないわよ。私の身にもなってよ。大体ね、あなたがいけないのよ。ケンカには負けるななんて教え込むから」

大吉「泣いて帰ってくるよかマシじゃないか」

紀子「だって相手の子にケガさせたのよ。鼻の先、噛みついちゃったのよ」

 

鼻と聞いて、変なとこ噛みつくヤツだなと笑う大吉。

紀子「とにかく今日は少し叱らなくちゃ。このまま学校に入ったら思いやられるわ」

大吉「子供のケンカだよ。くよくよしなさんな」

 

被害者親はキーキー騒ぎ、加害者親がデーンと構える風に描くと、被害者が大げさに騒いだみたいな感じでイヤだね~。鼻の頭嚙むなんてひどいと思う。

 

紀子が茶の間に移動。大吉もついてくる。家の構造的に「たんとんとん」みたいに事務所と家が一体化したような造り。

 

大吉が一郎がどこに行ったか聞く。仕事はまだ終わってないが、一郎の靴を買ってきたので見せたくなって帰ってきた。

 

紀子「まあ…まあ、いいことはいいけど高かったでしょう?」

大吉「ステキじゃないか、おい、なあ?」

 

一番高いのを買ったという大吉。紀子は値段を気にするが、一生に一度のことだからケチケチするなと値段を明かさない。帰ってきた一郎にそばに来るように言う大吉。

 

大吉「どうだよ? この靴」

一郎「わあ、すごいや!」

大吉「なあ? よし、履いてみろ」

 

紀子「一郎ちゃん。今度ね、ケンカしたらおうちに入れないわよ」

大吉「いいじゃないか。子供のケンカなんだから」←うわ~(ドン引き)

紀子「いいことがありますか。子連れ狼なんて言われたんですよ」

大吉「言いたいヤツには言わしとけよ」

 

一郎「向こうが悪いんだよ」

大吉「なっ?」

紀子「どっちが悪くたってね、鼻に噛みついちゃいけませんよ」

大吉「それより手がなきゃしょうがないだろう」

紀子「まあ、あきれた」

大吉「よし、立ってみな。歩いてみろ。どうだ? 具合は」

紀子「ダメよ。畳の上でそんな物履いちゃ。お葬式のときだけですよ」

大吉「お前ね、あした、入学式なんだぞ。縁起でもないこと言うんじゃないよ」

紀子「だから早く脱ぐんです」

 

松山省二さんといえば「若者たち」の末っ子。そういえば浪人生だった。

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一郎役の春田和秀さんは売れっ子の子役だったんですね。映画「砂の器」では元浦秀夫役。この映画も1974年公開なので撮影もかぶってたのかな。

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春田和秀さんの「砂の器」撮影時のインタビュー。

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大吉の母・ゆきがたくさんの荷物を抱えて帰ってきた。高円寺のおばちゃん!

 

ゆき「紀子さん、ちょっと頼むわ」

紀子「はい! あら、お義母(かあ)さん、こんなに買ってきたんですか?」

ゆき「あの…お赤飯は頼んできたけどね。ごちそうをうんと作ろうと思ってね」

紀子「そんなにしなくたっていいのに」茶の間にいる大吉に話しかける。「おばあちゃんったら、あしたのお祝いにって、うんと買ってくるんだもの。ホントに気前がいいんだから」

 

親子そろって気前がいいのかな。

 

大吉「おい、一郎。学校行ったら勉強しなくっちゃな」

一郎「うん」

大吉「よし」

 

ゆき「大ちゃんも帰ってたの?」

大吉「うん。仕事の途中でね」

一郎が買ってもらった靴をゆきに見せる。

 

大吉「ヘヘッ。ちょっと奮発しちゃったんだ」

ゆき「こりゃまあ、上等舶来じゃないの。ねえ、ちょっと履いてごらんよ」

一郎「ダメだよ。お母さんが怒るよ。葬式のときだって」

ゆき「かまわないよ。ちょっとぐらい」

一郎「へえ。おばあちゃんのほうが話が分かるね」

 

⚟紀子「一郎、履きたかったら、お店で履きなさいよ」

 

一郎「ほ~らね」

 

紀子「お義母さん、お金足りたんですか。あんなに買ってきちゃって」

ゆき「足りなかったから借りてきたんだよ」

紀子「まあ…ホントに親子そろって、お金のありがたみを知らないんだから。大変ですよ。あれだけのお料理こしらえるだけだって。しょうがないわねえ」

 

大吉「何をそんなに買ってきちゃったの?」

一郎「僕、見てこよう」

ゆき「あした、近所にもパーっと配ろうと思ってさ」

大吉「いいのに、近所は」

ゆき「だって、お祝いだからさ」

大吉「今どきはやらないよ、そんなの」

 

ゆき「気持ちだよ。親の気持ち、おばあちゃんの気持ち」

大吉「他人は関係ないのにな」

ゆき「だから内祝いだよ。これで隆が大学に入れていたら、もっと盛大にやっちゃうんだけどね」

 

高円寺のおばちゃんに比べると、下町のおばあちゃんって感じだね。

 

大吉の父が亡くなったのは、彼が12のときでした。それ以来、2人の子供を抱えて苦闘するは母は、ただがむしゃらに生きてきましたが、今は彼が一家の柱となり、従業員5人の有限会社・太陽カッターの社長です。母と十(とお)違いの弟と、そして妻と一人息子と、この5人の家庭の幸せが彼の肩にかかっています。気になることといえば、弟・隆が今年の大学受験に失敗したことだけと言ってもいいでしょう。しかし、実はこの一家にとって青天の霹靂ともいうべき、あまりにも残酷な運命がすぐ近くに待ち構えていたのです。

 

大吉の仕事風景。機械でアスファルトを切っている。「おやじ太鼓」以降、60年代はサラリーマン家庭の話が多かったように思うけど、70年代に入ってから自営業花盛りだったんだな~と思う。

 

1974年に小学校に入学する一郎は1967~68年生まれ。大学に入学するはずだった隆は1955~56年生まれ。十違いということは一郎は1945~46年生まれの29歳。若いお父さんだね。一郎の父が亡くなったのは1957年。

 

そして、翌日は一郎の入学式でした。

 

一郎が2階に向かって叫ぶ。「お~い、早くしないと遅れるぞ!」

 

⚟紀子「はい! 今行きます」

 

紀子と一郎が階段を下りてきた。「さあさあさあ、鼻紙、ちゃんとポケットに入れたわね?」

一郎「うん」

紀子「手でこすっちゃだめよ」

 

一郎や紀子が出かける準備をしている。

大吉「おい、やっぱり馬子にも衣裳だな」

紀子「やあね。自分の子供がどうして馬子よ」

大吉「違うよ、お前のことだよ」

紀子「えっ…まあ、失礼ね」

 

紀子は風呂敷を探す。ゆきは自室の新しい風呂敷を持っていくように言う。

紀子「すいません。タンスの上置きですね」

 

一郎は自分で靴を履こうとするが、大吉が履かせる。「名前呼ばれたら、はっきり返事するんだぞ」

一郎「うん」

大吉「返事は『はい』。『はい』って言ってみな」

一郎「はい!」

大吉「そうだ。じゃ、お父さんの名前を聞かれたら、なんて言うんだ?」

一郎「福山大吉です」

大吉「よ~し、元気よくな」

 

玄関の下駄箱が昔、実家にあったのに似ていてびっくりした。

 

パジャマ姿の隆が起きてきた。「朝っぱらから大騒ぎだな」

大吉「なんだ、今頃起きてきて…(紀子に)おい、早くしないと遅れるぞ!」

 

紀子と一郎は入学式に出かけていった。

 

隆「一郎の胸にBって書いてあんの、なんなの?」

ゆき「血液型だってさ、交通事故が多いからだって。やだね、ホントに」

 

茶の間で新聞を広げる隆。大吉は自らお茶を注ぐ。

隆「大学もこの際、義務教育にならねえかな」

大吉「バカ。顔でも洗って、おばあちゃんのこと手伝え」

隆「そりゃそうと、兄さんの血液型はなんなの?」

大吉「O型だよ」

隆「そっか、やっぱりね」新聞を読むのをやめ、お茶を入れる。

大吉「何がやっぱりだ?」

 

隆「俺はB型だからさ。やっぱり違うわけだな、性格が」

大吉「違うから困ってんじゃないか。しっかりしろよ」

隆「一郎もB型だからね」

大吉「B型でもいろいろあるんだ」

隆「義姉(ねえ)さんは何型なの?」

大吉「A型だよ」

隆「A型か。なるほどね」

 

ゆきが隆に片づかないから早くご飯食べちゃわなきゃダメよと茶の間に来た。隆は顔を洗いに?に出て行った。

 

大吉「あいつ、本気で勉強する気でいるのかな? 来年もまた受けるって言ってるのに」

ゆき「あれで相当こたえてるからね。周りであんまりワイワイ言うのもね」

大吉「昨日だって一郎を捜しに行ったと思ったらさ、ほら、つい、そこの公園で田口っていう友達と2人でね、しょんぼり腰掛けてるんだからね」

ゆき「ああ、やっぱり入れなかった子と…」

大吉「みっともないったらありゃしないよ。通りかかった近所の奥さんがさ、わざわざ立ち止まって見てるんだもん。それも3人も」

ゆき「何が珍しくて見てるんだろう」

大吉「そりゃそうだよ。仲良く落ちた2人が一緒にいるんだもん」

 

和服の紀子と半ズボン姿の一郎が商店街を歩く。商店街のシャッターは降りてるから、早朝、エキストラたちと撮影したのかな。

 

一郎の胸の名札

 

1の2 B

福山一郎

 

嵐を呼んだのは、このBという文字からでした。

 

一郎より世代が下のせいか血液型入りの名札は見たことない。ついでに言うと、私は高校生になるまで血液型を知らなかった(調べてなかった)。

 

福山家

隆「母さん、いる? 母さん」本を持ってきてゆきに見せようとするが、料理をお重に詰めていて、おじいさんに届けるように言う。

 

隆「いいかい? 兄貴はO型だよ。義姉さんはA型だから…」

ゆき「いいじゃないか。AだってOだって」

隆「それがよくはないんだよ。大事件だよ」

ゆき「え~っと、ゴマの袋はと…」

隆「母さんったら!」

ゆきは赤飯の箱にのしをつけていた。

 

隆「O型とA型の両親からはO型かA型の子供しか生まれないんだよ。ということは一郎はB型だから、兄さんの子供じゃないってことになるんだよ」

ゆき「バカなこと言いなさい」

隆「だから、この本、見てみれば分かるんだよ」

ゆき「さあ、届けてちょうだい。パチンコ屋の裏の酒井さんだからね」

隆「赤飯なんか配っちゃって、あとで後悔するよ、きっと」

ゆき「イヤなこと言うね、お前は。何が書いてあるの? 一体」

隆は本を見せる。

 

太陽カッターの店の外にも従業員の歌声が聞こえる。

♪盆から先ゃ おらんど

盆が早よ来りゃ 早よ もどる

おどま かんじん かんじん

あん人たちゃ よか衆

よか衆 よか帯 よか着物(きもん)

おどんが内死(うち)ちゅて 誰(た)が泣(に)ゃて…

五木の子守唄

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壁に掛かったプレート

 

社長

福山大吉

社員

安田友二

上野進

立石圭介

岡田俊次

田村始

 

歌ってる人の隣にいる一郎の肩を組む反対側の人は「信濃路」のケン坊!?

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奥にはゆき、大吉、紀子、隆がテーブルを囲む。

ゆき「としちゃんもなかなか歌えるんだね」

 

歌ってるのは岡田俊次という社員か。田尻丈人という名前を調べると、1989年から同姓同名の演出やプロデューサーが出てくるんだけど、同じ人なんだろうか?

 

大吉「ハハッ、あれが出りゃ本格的だな」

 

ビールはあと2~3本、酒があと2~3合だと大吉に伝える紀子。大吉は今のうちに行ってもらって来いと言う。

 

大吉「さあさあ、飲んでくれ、飲んでくれ。今日は特別だからな」ビール瓶を持って従業員たちのいる席に行く。それにしても29歳にして貫禄あるなあ。和服だし。

 

紀子「(ゆきに)あれだものね。足りるわけないわよね」

隆「僕がもらってきてやるよ」

紀子「いいの、いいの。もう、私、済んだから。ああ、おいしかった」片づける。

 

大吉「さあ、じゃあ、次は誰の番だ?」

従業員A「社長の番じゃないんですか?」←この人、ケン坊だね。

大吉「おい、よせよ。その社長っていうのは」

従業員A「じゃ、大将、ひとつお願いしますよ」

従業員B「お得意のソーラン節」←さっき歌ってた人。

従業員C「よっ!」

大吉「いやいや、まだまだ酒が足りんよ」

従業員B「じゃあ、どうぞどうぞ」

大吉「ああ…」隣に座る一郎にお酌してもらう。

 

隆は、ゆきに聞かなかったのか聞く。ゆきは聞かなくても分かってる。「どっかで誰かの血液型が間違ってるんですよ。調べるときにトンマの先生がいたんだろう」

隆「それならそれではっきりしとかなきゃダメじゃないか」

ゆき「いいですよ、そんなもの。今日みたいなおめでたい日に言わなくたって」

 

大吉が歌うと言って、従業員たちも盛り上げる。

 

ゆき「お前もあっち行って歌いなさい」

隆「とんでもない」

 

大吉がソーラン節を歌いだす。

♪ヤーレン ソーラン ソーラン

ソーラン ソーラン ソーラン

従業員たち「ハイハイ」

♪鰊来たかと かもめに問えば

私しゃ立つ鳥…

ソーラン節

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台所に立っているゆきに話しかける隆。「だけどね、母さん。このこといろんな意味で重大なことなんだからね」

ゆき「バカだね、お前は。重大なことだからうかつに聞けないんじゃないか。重大なことぐらい、お母さんいくら年を取ったって分かってますよ。あんないい気持ちで歌を歌ってるのに、そんなとんでもないことをやぶから棒に聞けますか」

隆「そりゃ、血液型を検査するときに間違ってたらいいんだけど…」

ゆき「大吉は去年、日赤に献血するときに調べたばっかりだからね。紀子は確か、お産のときに血液型を見たからね」

隆「一郎のB型は保健所で調べたんだろ?」

ゆき「だから、間違ってるとすれば保健所だよ、きっと。小学校一校がいっときに調べるからね」

隆「そうか…そうだよね。きっと」

 

従業員たちのおだてられ、また歌いだす大吉。

♪木曽のナー なかのりさん

木曽の御嶽さんは ナンジャラホイ

夏でも寒い ヨイヨイヨイ

木曽節

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いくら70年代とはいえ、「おやじ太鼓」でいうなら三郎や幸子と同世代くらいの大吉が民謡を歌えるのが渋い。従業員たちはもっと年下だろうしねえ。

 

さて、ここでもう一組の夫婦をご紹介しておきましょう。中学校教員・和泉元(いずみげん)とその妻・和子。子供はやはり今年から小学校へ上がった晃です。この夫婦の話は、もう少し先になりますが、とりあえずご記憶に留めておいてください。

 

杉浦直樹さん、林美智子さん、初代あばれはっちゃくの吉田友紀さん。

 

翌朝、従業員たちが現場へ出かけていく。

 

大吉は隆の部屋に入り、隆を起こして血液型の本のことを聞く。

 

紀子は台所で洗い物、ゆきは朝食を食べる一郎と茶の間にいた。一膳でやめた一郎に「たくさん食べないと利口な頭にならないんだよ」と言うゆき。一郎は今日のおみおつけまずいよと文句を言う。ゆきはそんなことない、ワカメが嫌いだという一郎にそんなこと言うとバチが当たるからと注意する。

 

紀子「だけど、本に書いてあるとすると変ですねえ」

ゆき「だから、保健所が間違えてんのよ。立派な研究所だって大事な汚染のことで大ウソついてんだからね。何をしてるか分かりゃしないよ」

紀子「ホントに信用できることっていったらないんですもの」

 

本を広げたまま、慌てて階段を下りてきた大吉は一郎もいる茶の間にやって来て、紀子に本を見せる。「O型とA型の夫婦からはな、B型の子は、お前…」

ゆき「ちょっと待ちなさいったら。さあ、一郎、学校行くんでしょ? 今日からうんと勉強していい子にならなきゃね」

 

紀子も一郎と一緒に出掛ける。一郎は、いい靴を履きたがるが、紀子はよそ行きにするように言う。一郎は急いで帰ってきて保健所にどなり込めって…自分では行かないの?

 

大吉「大体ね、お前が不注意なんだよ。一郎はOかAに決まってるんだからな。万が一、事故にでも遭ってB型の血でも輸血されてみろ」

ゆき「ちょっと待ちなさいったら。一郎が何事が起きたかと思うじゃない」

 

紀子と一郎が出かけていった。

 

大吉「新入生500人も検査するんだからな。どっかで間違えたんだ、きっと」

ゆき「そうそう。それに決まってるよ」

隆が起きてきた。ゆきや大吉から早く起きなさい、真剣になんなきゃダメだぞと口々に注意される。

 

隆「ああ、眠い眠い。この本のおかげでとんだ迷惑だよ。起こされちゃって」

ゆき「何言ってんの。とんだ目に遭ったのはこっちのほうだよ」

 

タバコを吸う大吉の横顔。(つづく)

 

木下恵介アワーの最終作。これまでの木下恵介アワーは火曜9時、こちらは水曜10時の放送。高円寺のおばちゃんがいるものの、またガラっとメンバーが変わった感じ。高円寺のおばちゃんは「おやじ太鼓」2期終了から4年半ほど、ちょっと老けたかな。おばあちゃんの役だしね。

 

そういえばキャストクレジットの桐原新さん、どこにいた? 大吉の話に出てきた田口かな? 「太陽の涙」でおなじみ篠田清だよ!

 

大吉はデリカシーがない、オラオラ系の若い父親って感じかな。嫁姑は険悪な感じもないので、そこまで暗くない感じ。まだ1話だからね。

 

おやじ太鼓18話。神尾の祖母初登場だけど、前半は母の日特集。

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神尾の家に行く三郎と敬四郎。

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