TBS 1972年8月8日
あらすじ
アルバイト先の事務所に泥棒が入り、道夫(小倉一郎)は2万円を弁償しなくてはならなくなった。南(沢田雅美)は道夫のために、夏目(倍賞千恵子)に金を借りようとする。ところがその話を聞いた一郎(山口崇)は…。
2024.6.12 BS松竹東急録画。
松田夏目:倍賞千恵子…昼はOL、夜は占い師の28歳独身。字幕黄色。
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松田南:沢田雅美…夏目の妹。19歳。
新田道夫:小倉一郎…新田家の五男。20歳。
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新田研二:倉石功…新田家の次男。27歳。
新田麗子:木内みどり…精四郎の妻。
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新田精四郎:山本コウタロー…新田家の四男。
新田英三:鹿野浩四郎…新田家の三男。25歳。
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松田しげ:川上夏代…夏目、南の母。
佐山:中井啓輔…道夫の働くレストランのコックのチーフ。
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妙子:西条まり…夏目の同僚。
管理人:大久保敏男
守衛:松原直
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北見八郎:森次浩司…グラフィックデザイナー。
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新田サク:小夜福子…新田家の母。
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監督:中川晴之助
道夫が夜警のアルバイトをしている建物
守衛は守衛室の蚊帳の中で寝ていて、道夫はウトウトしていたが、物音とガラスが割れる音で目覚めて、慌てて各部屋の点検をする。解錠して、施錠して、また別の部屋。
建築設計のプレートが出ていた部屋に入ると、製図台が置かれた机が並ぶ中、窓ガラスが割られていた。守衛も起きてきて、盗られたものがないか探す。
守衛「アルバイトだからって仕事だからな。ちゃんと責任持ってくれなきゃ困るぞ」
道夫の働くレストラン
道夫はボーッと座っていたが、いきなり立ち上がって「早引けさしてください」とチーフに話しかけた。
佐山「どうしたんだ? 腹でも痛いのか?」
道夫「違います。いえ、あの…あっ、そうです。腹でも痛いんです」
とぼとぼ歩いていた道夫は赤い公衆電話を見る。それにしてもチーフ、優しすぎる。
新田厨房工事店
帰ってきた英三は冷蔵庫の瓶コーラを飲もうとしたが、精四郎に止められた。「あっ、ダメだよ、それ! 麗子に取ってあるんだから。麦茶かなんかにしてよ」
英三「チェッ、差つけやがって。この家はさ、弟の嫁のほうが権力あるんだから」
精四郎は公団のパンフレットを見ていた。2DKか3Kどちらがいいか迷っている。2DKだと子供が出来たときに困るし、3Kは高い。
英三「相模原って、こんな遠く住むの?」
精四郎「今はみんな遠くだよ。市内なんてありゃしないよ」
電車で1時間近くかかるのは結構遠いか。通勤も大変そう。
通えるのか心配する英三だが、精四郎は早起きすると言う。だが、家賃と麗子の反対に頭を痛めている。
麗子が電話に出た。道夫からの電話で泥棒、カメラ、2万円と断片的な言葉が聞こえる。一郎が帰ってきて電話を代わるが、道夫は電話を切ってしまった。
夏目の働くオフィス
妙子が電話に出て、南が応接室にいると告げられた夏目。南は今日から日光へ慰安旅行に行く。バスが東京駅から出るので、お姉さんの顔が見たくなって会社に寄ったと言い、彦根の母の手紙を渡した。今日、東京に出てくることが書いてある。南の旅行は2泊3日だが、旅行サポっちゃおうかなとと言い出し、夏目は今度の旅行は社長さんの発案だからと行くように言う。
思い出したように、お金を立て替えといてくれない?と頼む南。やっぱりそんな魂胆だったのね、と言いつつ笑顔の夏目。優しいなあ。
夏目「いくら、いるの?」
南はVサインを出して「…万円」
旅行のお小遣いだと思った夏目は驚くが、南は道夫が夜警でヘマして弁償しないとまずいと言う。結婚のことではなく、これは人助け、彼と約束しちゃったとアパートのほうに取りに来させると言う。「じゃあね、お姉さまさま。いってきます」とさっさと応接室を出てしまった。夏目に頼むのはどうかと思う。
自分の席に戻った夏目は母・しげの手紙を読む。
しげの手紙
「拝啓 夏も一番暑い候と相なり、お前様方もいかがお過ごしかと案じております。彦根も毎日30度を超え、日中はしんどいことです。そちらもさぞ暑いこととお察しします。先日の南からの葉書では、お前様にも新田一郎様かと申される立派なお相手が出来た由…」
夏目「冗談じゃないわ。南のヤツ、こんなこと母さんに…」
着信音が鳴り、夏目が電話に出た。「はい、総務です」
電話は一郎から。「ご心配をかけたそうですが、道夫の弁償金は僕のほうで払いました」
夏目「あっ、ああ、そうですか」
一郎「東京へ出たついでにそちらへちょっと寄ります。話したいことがあるんです。じゃあ」
夏目「あの、あの…今日は私、都合…」と言ってる間に電話は切れていた。
再び、着信音が鳴り、夏目が出ると玄関に母が来ていると言われてびっくり。
夏目が会社のロビーへ行くと、笑顔のしげが出迎えた。一緒にいたのは北見。
しげ「今、そこでご一緒してね。この方もお前に会いに来る途中だっておっしゃるもんで。フフフッ。ちょうどよかったよ。会社が分からなくて捜してたもんで助かっちゃってね」
北見「本当にちょうどよかったですね」
夏目「ちょうどよくなんかあるもんですか」
北見「いや、よかったな。案内できて。彦根からいらしたんじゃ分かんないでしょ? 東京は」
しげ「ええ。終戦の2~3年あとに来たきりですから。もう何年になりますかねえ」
北見「じゃあ、無理ですよ。大変化ですからね。そのころはまだ焼け跡が残って…」
夏目「今ね、手紙もらったばっかりなのよ。横浜に直接来るんだとばっかり思ってたわ」
しげ「早い時間の新幹線に乗ったもんでね、ここはどうせ東京駅から近いっていうから東京見物でもしてりゃいいと思ったのよ」
夏目「あのね、南もいないのよ。二晩泊まりで日光へ行ったの。会社の慰安旅行」
しげ「そうかい。4~5日いるつもりだから会えるさ」
夏目「ああ、それならいいわね。でも見物っていったって、お母さん一人じゃね…」
人に道を聞いて、そこらを見てくると言うしげだが、夏目は彦根と違って広いから無理だと反対する。北見は今日は珍しく暇だと案内を申し出る。「夏目さんのお母さんなら大歓迎です」と言うと、しげは北見のことを手紙に書かれた一郎だと勘違い。夏目も「あとで詳しく話すわ」と終わらせちゃうからなあ。
忙しくて自分の住んでる町もろくに知らないと笑う北見は久しぶりに東京見物がしたいと言い、しげはお断りしちゃかえって悪いと誘いに乗ることにした。
夏目は今日は1時間残業であと3時間もしたら帰れるから会社かそこの喫茶店で待っていたら?と提案するが、北見はそんなのは退屈だと、しげを連れていった。
東京タワーの展望台
北見「ほら、あの辺りが夏目さんの会社ですよ」
しげ「どこですよ? どうもボーっとしてて…少し目も遠くなっちゃってね」
北見「スモッグってやつでしてね、これも東京名物なんですよ」
しげ「はあ…」
北見は「笑って」としげに言い写真を撮る。さすがに怒った顔は撮らないか。
しげ役の北上夏代さんは「兄弟」では紀子の家の隣に住む畳屋のおかみさん。
喫茶店
水槽の魚を見ている一郎。夏目が入ってきて、今日はあんまり時間がないと言い、ホットコーヒーを注文。
夏目「私、あなたと言い合いするの少しくたびれましたわ。私のせいばっかりみたいに言いますけど。私だってイヤなんです。あなたがもう少し…」
一郎「ああ、いやいや…あのね、そういうふうに話しだすと、僕もつい言い返したくなっちゃうんだなあ。だからあなたとは、やはり用件だけにしないとダメだね。つまり、道夫と妹さんを結婚させないという大目的だけに的を絞らないと」
夏目「結構ですわ。私もそのほうがいいんです。でも…」
一郎「なんです?」
夏目「いつもその話からケンカ…いえ、やめときます」
一郎「いや、今日来たのは、さっき電話した道夫の弁償のことなんですよ。あいつ、実際しょうのないヤツですよ。あなたと一緒に行ったとき、あれほど夜警なんかやめろと言ったのに」
夏目「だから、ああいうやり方はかえって逆効果じゃないかって」
一郎「だって、しょうがないでしょう。他に妙案はなかったんだから。何かアイディアあったんですか?」
夏目「いえ、別に。でも若い人って、あんまりギュウギュウやられすぎると…」
一郎「若い人? ああ、それは道夫たちのことですか?」
夏目「えっ? そうですけど」
一郎「若い人か。そりゃまあそうだな。なんてったって僕たちのほうが年上なんだから。でも、そういう言い方をされると、なんだか僕たちは…」
夏目「あの…僕たち僕たちって言わないでください。私たちはまるで…」
一郎「えっ? なんです?」
夏目「いいんです、別に」
喫茶店で入ってきたしげと北見。
一郎「とにかく金のほうは僕が弁償しましたから」
夏目「それはもうお聞きしました」
一郎「あなたが立て替えてくれることになってたそうですね」
夏目「いえ、それは南が勝手に…」
一郎「あれ? 違うんですか?」
夏目「そりゃ、弟さんが困ってたみたいでしたから」
一郎「いや、それが困るんですよ。そんなことはよしてください。そのことを言いたくて僕はやって来たんです。あなたは親切のつもりかもしれないけれども、そうするとどういう結果になると思います?」
夏目の席の背後にしげが立つ。
一郎「姉さんは口では反対していても結局は僕らの理解者だ。結婚を暗に支持していてくれるんだ。道夫はそう思っちゃいますよ。妹さんだって」
夏目「でも、それは変じゃありませんか。だって、あなたが弟さんから見て強引なだけで思いやりのないお兄さんに見えるから、だから道夫さんだってあなたにお金のこと言いだせないんですよ」
一郎「だって、こういうことで弟や妹によく思われようなんて根性じゃ…」
夏目「そんなこと言ってません。反対は反対でも、こんなふうに弟さんがホントに困ったときは、また別だと思うんです。そんなときにも頼れない兄さんだったら」
一郎「じゃあ、ただ甘けりゃいいっていうわけですか? 女性はそれだから困るんだなあ。ただ、おセンチなだけだったら…」
夏目「あなただって、結局、弟さんにお金を立て替えてあげてるじゃありませんか」
一郎「いや、僕は…その、僕は…なんといったって実の兄なんですからね」
夏目「そんなの屁理屈ですわ」
北見「あの…こんにちは」
夏目はようやくしげがいるのに気付く。「お母さん」
一郎「お母さん?」
北見「はあ~、ハハッ。またやり合ってんですか? どうです? もうこのへんでいいでしょう。座りましょうか?」
しげ「あっ、そうですね」
後ろの看板は
COFFEE
FACADE
ファサード…建物を正面から見たときの外観。店の名前??
しげと北見は夏目たちの隣の2人掛けの席に向き合って座る。北見はコーラ、しげはジュースを注文。しげは東京タワーに連れていってもらったと話す。
一郎「ねえ、これは一体…」
夏目「偶然です。誤解しないでくださいね」
一郎「誤解? 何を誤解しろっていうんです?」
北見「またもめてるんですか?」
一郎「君、もめてるなんて失敬だよ」
しげは北見に「一郎さんとおっしゃいましたね?」と聞く。
北見「いや、八郎ですよ」新田一郎さんはこの人ですよと紹介する。「ハハッ。台所のほうでしてね、厨房なんとか業。まあ、つまり青年実業家ってとこですかね」
一郎「新田です」
しげ「ええ。あなたが新田一郎さん、まあ。夏目の母です。夏目がお世話になりまして」立ち上がって頭を下げた。
一郎「よろしく」立ち上がって頭をペコッと下げてすぐ座る。
北見は北見八郎だと名乗り、しげは人違いをしていたと言い、夏目に「で、お前がおつきあいしてるって方は?」
夏目「お母さん、違うのよ。それは南が勝手に…とにかく違うの、全然」
しげ「何がさ? 新田さんって方と、お前とは…」
一郎「僕、帰ります」立ち上がり、北見に向かって「おい、君、どうする?」
北見「いや、僕は今、コーラ頼んじゃったからな。あっ…やっぱり帰るかな。あっ、コーラもどうぞ飲んでください。写真出来あがりしだいお届けします」
夏目「写真ってなんですか?」
北見「じゃ、失礼します」
一郎は北見と店を出ていった。
しげ「いいのかい? あのままお帰しして。お二人ともお前に用があって来られたんだろ?」
夏目「いいのよ。いつもあんなふうなの」しゃっくり
店を出た一郎。
先に待っていた北見。「ああ、僕のジュースいくらだった?」
一郎「いいよ、そんなもの。その…彼女のお母さんとだな、一体、何をしてたんだ?」
北見「ああ、東京案内ですよ」
一郎「なんだって?」
北見「『将を射んと欲すれば馬を射よ』。あれですよ」
ポカンとした表情の一郎。
新田家茶の間
くつろいでいる研二、サク。
麗子「ずっとしょげててかわいそうね」
テレビから音楽が流れる。お、このドラマ初!?
吉田拓郎「旅の宿」1972年7月1日発売
麗子は道夫の部屋に行き、2万円ぐらいなんとかなると励ます。またいい仕事口、見つけてあげるから…って余計なことだよ~。道夫はお礼を言うが、麗子さんのは、いつも妙なのばかりだと言う。
一郎が部屋に入ってきて、道夫に話があると言うので麗子が出ていった。
道夫「ごめん、迷惑かけちゃって」
一郎「いっぱしのことを言うな。俺は今日、ある人に言われたんだが、お前を甘やかすために金を立て替えたんじゃないんだぞ」
道夫「分かってるよ。働いて、きっと返すよ」
一郎「いや、そんなことより、あんな無理なアルバイトしてまで、お前、どうしても結婚したいのか? お前があくまでもその気なら、今度こんなことがあっても、俺が金をなんとかしてやれるというわけにはいかんかもしれんぞ。それでもいいのか?」
道夫「それでもいいよ」
部屋を出ていった一郎は事務所で北見の言葉を思い出す。
<<『将を射んと欲すれば馬を射よ』>>
北見のアップ×5。面白いイメージ映像だなあ。悔しそうな一郎の顔。
アパート
お土産の八つ橋を開け、お茶を用意した夏目。
しげ「ここはいいけど、ちょっと蚊が多いみたいだね」
夏目「そうなの。川がすぐ近くでしょ? 臭うしね。あっ、今、蚊取り線香つけるわね」
しげ「いいよ、一晩ぐらい」
窓全開で網戸がなけりゃ、そりゃ蚊が来るでしょう! 「おやじ太鼓」の鶴家は、亀次郎が網戸の掃除をしてたこともあったし、もうとっくに網戸のある家だったけど、まだ一般的ではなかったのかな。他に見たことないかも。
蚊取り線香を切らしていたと気付いた夏目にしげは新田一郎さんは、お前とケンカしてたみたい、北見さんって親切でいい人だねえと話す。
北見のことは「あの人は、ただ寄ってくるだけよ。ずうずうしい人なの」という夏目。一郎との出会いを聞いたしげに南が…と話しかけたが、ちょっとした知り合いだとごまかす。
蚊取り線香を買いに出かけた夏目は管理人に声をかけられ、電話に出た。「今頃なんのご用ですか?」
一郎「いや、あのね、今日、突然にお母さんに会って、ちょっと混乱しちゃったんですけどね。あの…今、思いついたことなんですが、いっそ、この際どうでしょう? 道夫と妹さんのことをお母さんにお話ししたほうがいいと思うんですよ。いかがですか?」
夏目は母が聞いたら、南が横浜にいられなくなるだろうと反対する。こんなことで母に心配かけたくないと言う夏目に同意する一郎。「あの、ところであいつ、そっちへ行ってないでしょうね? いや、北見ですよ。いや、さっき将を射んと欲せばとか写真がどうとか言ってたもんですからね。いや、ちょっと気になっちゃいましてね、ハハハ…」
夏目「いるはずありませんでしょう。なぜそんなこと気になさるんですか?」
安心したように笑って電話を切る一郎。
電話を切った夏目が外に出るとアパートの階段に北見が座っていて、随分捜したと写真を届けに来た。慌てる夏目。(つづく)
「おやじ太鼓」は会社が休みの日曜日のエピソードが多いけど、このドラマは職場にしょっちゅう人が来るんだよね。電話もだけど。今の感覚だといつ仕事してんだ?って思ってしまう。女の仕事なんてそんなもんみたいにも感じられて、ちょっとね。道夫だって下手なことをせず、真面目に今のコック修行を続けるしかないのにね。
今日はすごく顕著だけど、職場に来客、電話、抜け出すばかりの描写で、そこがモヤッとするポイント。他のアワードラマならもうちょっとうまくやってたでしょ。
「おやじ太鼓」49話。洋二兄さんの看病をしたり優しい子ではあるんだよな、三郎は。
50話はこれから見ます。
で、金曜と月曜はゴルフで休止。朝は潰れにくい時間帯だと思っていたのにそうではなかった。せっかくもうすぐひそかに楽しみなあの人が出てくるのになー!