徒然好きなもの

ドラマの感想など

【ネタバレ】まあだだよ

1993年 日本

 

あらすじ

随筆家として、今も人々に愛される内田百閒。法政大学のドイツ語教授を辞したのちも弟子たちに慕われ続け、定例会「摩阿陀会(まあだかい)」も開かれた絆を温かく描く。 昭和18年の春。百閒先生(松村達雄)は教え子たちへ、作家活動に専念するため学校を去ることを告げた。教え子たちは「仰げば尊し」を歌い敬愛する先生を送る。退職後に引っ越した家にも、中年になった門下生たちが遊びに来る。

2024.8.8 BS松竹東急録画したのですが、HDDの中身が消えて2024.10.13に再録画。

 

製作:大映株式会社

   株式会社 電通

   黒澤プロダクション

製作協力:株式会社 徳間書店

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黒澤明作品

 

教室

タバコの煙漂う室内に入ってきた百閒は教室でタバコを吸うな、と一応注意したもののやめろと言われることはやりたくなると言い、生徒たちを笑わせた。書いたもので食っていけるから30数年続けたドイツ語の教師を辞めると生徒たちに伝えた。

 

東京

昭和十八年

 

出征兵士を送り出す行列が歩いている。

 

百閒は教師を辞めて、引っ越しをした。玄関に貼り紙。

 

面会日 一日、十五日

他ノ日 訪問無用

 

引っ越し蕎麦を食べる一同。奥さんは蕎麦屋から泥棒がよく入るから家賃が安いのだと聞き、不安がる。

 

丑三つ時、門下生の高山と甘木が内田家が用心してるかどうか様子を見にきた。裏門から裏口へ。「泥棒入口」と書かれた貼り紙に高山と甘木は声を殺して笑う。あっさり家の中に入ると「泥棒 休憩室」という貼り紙と「泥棒 出口」という貼り紙。二人はそのまま外に出たが、高山は癪だからと百閒の帽子を盗んできた。外に出て警官と出くわすが、何事もなくすれ違い、百閒を金無垢だと言って笑った。

 

後日、高山、甘木、多くの門下生が訪れた。百閒が60歳の誕生日ということで門下生を集め、故郷から送られた鹿の肉をつつく会を開く。門下生は16人。鹿の肉だけでは分量が心細く、馬の肉も加えて馬鹿鍋。

 

百閒は馬の肉を買いに行った肉屋でのエピソードを話した。店の前を軍馬が通りかかり、穴があったら入りたかったと言い、門下生たちは大笑い。空襲になったら闇鍋になると笑う門下生に百閒は暗闇が怖く、空襲は嫌いだとこぼす。

 

乾杯をし、仰げば尊しを歌う門下生たち。

仰げば尊し

仰げば尊し

  • provided courtesy of iTunes

空襲警報のサイレンが鳴り、歌声が止まる。

 

百閒の自宅は空襲で焼け、小さな小屋で暮らし始めた。雨の日、高山と甘木たちが食糧や一升瓶を持ってきた。小屋は男爵の屋敷の庭番の小屋で男爵から許可をもらって借りた。百閒は好きな「方丈記」だけを持って逃げたと言う。

たくさん飼っていた小鳥も焼けたが、ヒナから飼っているメジロだけは連れてきた。

 

近くの土塀に立小便をされるので、小便無用と書き、その下にハサミの絵を描いた。高山たちは見に行って大笑い。小屋に戻ると、百閒は雷の音に怯えて布団をかぶっていた。

 

夏、戦争が終わり、米兵たちが乗ったジープが走る。百閒は高山と甘木に戦争が終わって配給がなくなり、こじき同然と嘆く。高山は方丈記の一節を誦じて励ました。

 

高山と甘木は百閒の誕生日に「摩阿蛇会」を開く計画があることを話し、引っ越しをしようと持ちかけた。百閒は最初は遠慮していたが、出版社から本を書く権利を得る代わりに金を出してもいいという話に池のある家がいいと希望を言い始めた。

月

  • NHK東京児童合唱団
  • チルドレン・ミュージック
  • ¥255
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大きな声で「月」を歌う百閒。

 

小屋で過ごす内田夫婦。夏が過ぎ、秋が来て、冬、春へ。百閒は正装して「第一回 摩阿蛇会」へ出かけた。

 

高山が幹事で大きな会場で百閒は挨拶をし、両脇には主治医の小林、住職の亀山を従え、ぽっくりいっても大丈夫と大きなコップのビールを飲み出す。このコップがまた大きい。

 

門下生たちが一人一人スピーチする。おっ、岡本信人さんだ。もう一度、乾杯して、それぞれ談笑。スピーチが不得手だからと全国の駅名言うのすごい。他の人が話してもずーっと続けてる。

おつきさまえらいの

おつきさまえらいの

  • 小林衛己子
  • チルドレン・ミュージック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

「おつきさまえらいの」「月」を歌う門下生たち。

 

オイチニの薬屋さんをやろうと提案した百閒。門下生たちは並んで行進しながら歌う。オイチニの薬屋という薬の行商がいて、そのメロディに合わせて即興の歌を歌ってるのかな?

 

ようやく駅名を言い終えたころ、鉦の音がし、門下生たちが葬式っぽいノリ。運ばれてきたのは甘木で百閒に“まあだかい”と問いかける。百閒は “まあだだよ”と答える。

 

庭のある一軒家に引っ越した内田夫婦。百閒が考案したドーナツ型の池もあり、中の島には金閣寺のミニチュアが建っていて“禁客寺(きんかくじ)”と名付けられた。百閒の書斎。

 

アジの干物を与えたら居着いたノラと名付けられた白茶ネコを飼い始めた。

 

百閒の隣に3階建ての家を建てようとしていた隣人に百閒の家に日が当たらなくなるから絶対土地を売らないと突っぱねた地主。やり取りを見ていた高山たちは土地を買おうと話し合い、さりげなく地主の家を聞き出し、早々に内田家を引き揚げた。

 

地主のバラック小屋に行って話をつけた高山たちは地主に口止めをして、また百閒の家に引き返すことにした。

 

ノラがいなくなって百閒が毎日泣いていると奥さんに聞いた甘木と高山が内田家に駆けつけた。ノラがいなくなって食欲がなくなり、ノラのことしか考えられないと泣く百閒。

 

九州に講演会行った際も汽車の窓の向こうにノラの幻が見えた。奥さんの話によると、夜、出て行きたがったノラを抱いて庭に出ると、手をすり抜けて出て行ってしまった。その後、土砂降りの雨が降り、帰って来れなくなったのでは?という。びしょ濡れの猫のシーン、いらん! そんなシーン撮影しなくてよい。

 

高山と甘木が探しに出たが見つけられない。先生たちは俺たちとは違うという高山。この時代だと感受性が強い人という扱いなのね。

 

ノラや」を先生の優しい心の日記というナレーション。

焼け野原を走り回るノラのイメージシーン。

 

小学校に行き、チラシを配る百閒。少年に猫ならいくらでもいると言われるが、おじさんにはこの猫でなくてはダメ、おじさんの赤ん坊だと答えた。

リンゴの唄

リンゴの唄

  • provided courtesy of iTunes

街で「リンゴの唄」が流れる。

 

食欲がなくなり、眠れなくなり、ノラの布団が風呂のふたの上にあるため、風呂にも入れなくなった百閒に新聞広告を出したらどうかと提案する門下生。ノラのために自宅の番地を彫った首輪を買って待っているがノラは帰らない。

 

巡査が訪れ、三味線の皮にされたのかもと言う。余計なこと言うんじゃねー!

 

ノラが見つかったという電話に涙を流す百閒は、ひとしきり泣いて高山に電話をした。近所の人たちもおめでとうを言いに集まり、高山たちも駆けつけた。しかし、迎えに行った奥さんはノラではなかったと肩を落とした。「ノラはもういないよ。とっくに三味線になってる」というイタズラ電話にバカ野郎と怒鳴りつけて高山が電話を切った。昔からバカっているんだね。

 

庭に白黒猫が迷い込み、奥さんはノラの首輪をつけ、小アジをあげた。しっぽの短い白黒猫に“クルツ”と名付けた百閒。クルツはドイツ語で“短い”。甘木から知らせを受けた高山たちが内田家に行った。クルツをかわいがりながらも迷い猫が戻ってくるおまじないを続けている。

大黒様

大黒様

  • provided courtesy of iTunes

百閒は自身を因幡の白兎で大黒様は周りの親切な人々だと「大黒様」を歌う。

 

時が過ぎ、ノラとクルツの供養塔が庭に建った。ノラは帰って来なかったが、クルツは十分に生きた。

第十七回 摩阿蛇会

すっかり白髪頭になった百閒。77歳を迎え、今回もまたグラスに注がれたビールを手に取る。百閒は年々、グラスが小さくなることに主治医に文句を言う。ビールを飲み干して“まあだだよ”。喜寿の祝宴に門下生の娘たちから花束を受け取る。

 

7本のろうそくが立ったケーキが門下生の孫たちによって運ばれてきた。百閒はケーキを子供たちにあげたいと席に呼び寄せ、自分が本当に好きなものを見つけてくださいと言葉を贈った。

 

百閒は不正脈の発作を起こし、席を外したが、会は続いた。会場を出る前、ありがとうと頭を下げた百閒に門下生は「仰げば尊し」を歌う。

 

内田家

主治医は帰り、百閒の寝室の隣で高山たちはタバコを吸い出した。奥さんは高山たちのために熱燗を作ろうとしたが、甘木がこのままで、と一升瓶とコップを持って行った。さっさと帰れよ!

 

奥さんは禁客寺で休むと出て行った。高山、内田、桐山、沢村が飲み始めると、隣の部屋から「まあだだよ」と聞こえた。襖を開けて様子を見た高山は、よく眠ってると言い、飲み始めた。

 

着物を着た子供たちが「まあだかい」「まあだだよ」と言い合う。「まあだだよ」と言って隠れた子供が夕陽を見上げた。

 

内田百閒:松村達雄…字幕黄色

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高山:井川比佐志

甘木:所ジョージ

桐山:油井昌由樹

沢村:寺尾聰

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小林:日下武史

亀山:小林亜星

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奥さん:香川京子…字幕緑

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多田:平田満

北村:頭師孝雄

太田:岡本信人

古谷:渡辺哲

村山:冷泉公裕

三井:松井範雄

平野:杉崎昭彦

石川:竹之内啓喜

竹村健

竹之内啓喜

島木元博

佐々木正

桝田徳寿

長沢政義

中嶋しゅう

遠藤良光

桜井勝

沖隆二郎

伊藤哲哉

重水直人

天田益男

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平野稔

野村昇史

笠井一彦

佐々木敏

名取幸政

円谷文彦

永幡洋

春延朋也

坂口進也

中平良夫

牧村泉三郎

三田康二

長克巳

児玉頼信

世古陽丸

当山三郎

嶋崎伸夫

吉見純麿

窪園純一

大念寺誠

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巡査:板東英二

土地を買った男:草薙幸二郎

地主:山下哲生

巡査:桜金造

肉屋の親父:谷村昌彦

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高山の息子:吉岡秀隆

大寶智子

魚屋の娘:鈴木美恵

中野聡彦

内田百閒の少年時代:西亨大

酒屋の御用聞き:頭師佳孝

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劇団ひまわり

劇団青年座

株式会社円企画

劇団俳優座

株式会社TAMBA

プロダクション・タンク

星プロ・グループ

早川プロダクション

Office Be

宝井商店

優企画

窪町小学校の皆さん

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原作:内田百閒

新輯内田百閒全集より(福武書店版)  

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脚本/監督:黒澤明

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音楽:池辺晋一郎

 

いや~、80年代以降エンディングにいっぱい名前が載るようになって長くなったんだな~。これぐらいでやめとこう。

 

協力

Matthews Group/Hollywood Rental

岡山県郷土文化財

日本たばこ産業株式会社

東宝ビルト

セビロシステムズ東京花菱

マックスファクター

アート・メーク・トキ

大井川鉄道株式会社

御殿場市

法政大学

KUROSAWA ENTERPRISES U.S.A.,INC

 

 

前半、男子高ノリ?みたいなものが苦手だったけど、ノラのエピソードにグッと引き込まれた。映画が公開された1990年代でさえ、あそこまで猫を大事に思うエピソードを笑う人のほうが多かったんじゃないかと思う。昔から嫌がらせするバカは一定数いる、と。ノラのエピソードがないとなかなか見続けるのがきつい映画ではあった。