TBS 1972年7月25日
あらすじ
南(沢田雅美)と道夫(小倉一郎)は、結婚に備えて部屋を探していた。帰りに南の家に寄るが、夏目(倍賞千恵子)を恐れる道夫が家に入るのを渋っていると夏目が帰宅し、また結婚に反対して説教が始まるが…。
2024.6.10 BS松竹東急録画。
松田夏目:倍賞千恵子…昼はOL、夜は占い師の28歳独身。字幕黄色。
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松田南:沢田雅美…夏目の妹。19歳。
新田道夫:小倉一郎…新田家の五男。20歳。
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新田研二:倉石功…新田家の次男。27歳。
新田麗子:木内みどり…精四郎の妻。
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新田精四郎:山本コウタロー…新田家の四男。
新田英三:鹿野浩四郎…新田家の三男。25歳。
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畳屋:柳谷寛
戸川美子…占いの客。
佐山:中井啓輔…道夫の働くレストランのコックのチーフ。
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新田サク:小夜福子…新田家の母。
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監督:中川晴之助
横浜港
道夫の働くレストラン
道夫はチーフにアパートか持ち家か聞く。
佐山「アパートだよ。当たり前のこと聞くな。うちなんか持てるわけないだろ? こんな給料で」家賃は2万円。
家賃を聞き、さらに部屋数を聞く道夫に新聞記者みたいにうるさいと言う佐山。道夫が刻んだキャベツの千切りにこんなに切ってどうすんだとツッコむ。あのぐらいの量、すぐなくなりそうだけどな。
南から電話。一緒に見に行きたいところがあると言い、「お店引けたら石川町の駅んとこへ来てくれない?」
道夫「見に行く? 何を?」
道端
道夫「まだ兄貴たちを説得してないのに部屋探しなんて早すぎないかな?」
南「何言ってんのよ? だからこそ探すんじゃない。結婚したらさ、絶対にその住むとこって必要でしょ? その当てもないのにさ、結婚するする言ったって誰も本気にしないわよ」
道夫「そりゃまあそうだけどさ。しかし、ごみごみしたとこだな」
南「宗田(そうだ)君の紹介だから大丈夫だとは思うんだけどね。あっ、この畳屋さん」
木下恵介アワーでは珍しく道端からお店まで全部セットだね。
畳屋「なんか用事ですかい?」
南「あの…宗田さんって人から連絡ありませんでした? 部屋探してんですけど」
畳屋「ああ、ああ、新婚さんってのは、あんた方かい。随分遅くに来たもんだね。この裏だから、こっちから来なさい」
⚟赤ん坊の泣き声
⚟音木(おんぎ)の音と読経
畳屋「あっ、ガスのメーターが出っ張ってるから気をつけてな。さあ、ここだ」
⚟赤ん坊の泣き声
⚟音木(おんぎ)の音と読経
部屋に入って電気をつける。立てつけの悪い雨戸を開ける畳屋。「あんた方の力ならなんとか開くだろう。流しはここだし、便所は外だけどね。まあ、ゆっくり見て。帰るとき、雨戸を元どおりにしておいてくれんかね?」
畳屋さんの柳谷寛さんは「おやじ太鼓」ではタイのお寿司屋さん。
「たんとんとん」では布団屋さん。
一戸建ての平屋? 家賃は1万2000円。
⚟機械の作動音
隣が印刷工場、奥がカレー工場で匂いもする。畳はボロボロ。道夫はこんなとこで新婚じゃ味気ないとため息をつく。みんなこんなもんだと言う南に畳屋なら畳ぐらい新しくてもいいのにと文句を言う道夫。南もなんだかテンションが下がる。
占い師の夏目。「う~ん、これは…『かたくけい』といいまして、簡単に申しますと火と水という性格でお互いに背き合っています。つまり、その方とは合わないということですね」
火沢睽…字幕は平仮名だったけど、夏目が漢字で書いていた。
なぜか一郎の言葉が浮かぶ夏目。<<大体、あなたほど怒りっぽい人はいないな。あなたの悪口を言ったわけじゃなし、なにもそう怒った顔せんでもいいでしょう>>
女性「あの…そうしますと私たちはうまくいかないんでしょうか?」
夏目「えっ? えっ、いえ、あの、それは恋愛の場合でして、あの…ご夫婦ですと、表面上は、まったく違う性格で事ごとに合わないようなんですが、内面では案外、一致したところもあるんです」
<<内面では案外、一致したところもあるんです>>
<<内面では案外、一致したところもあるんです>>
<<内面では案外、一致したところもあるんです>>
一郎の顔が浮かび、自らの言葉がリフレインする夏目だったが、突然、雨が降りだし、急いで片づける。
占いに来た女性は戸川美子さん。
晃と一郎に話しかける近所の主婦。
二上にきた団体客の一人。ほか「たんとんとん」や「あしたからの恋」でも客の役。
アパート
雨にぬれて帰ってきた南は道夫にタオルを渡す。「でもさ、私、雨にぬれると美人に見えるでしょ?」
道夫「ああ、でも、お姉さんがな…」
南はそんなにお姉さんが怖いなら戸を開けとけばいいと言ってるうちに夏目帰宅。「あ~、またやられちゃった。ああ、このごろ雨ばっかりよ。ハァ~、大体、ツイてないな~」下を向いてカツラを取って、ようやく道夫に気付く。
会釈する道夫。南はこの近所に部屋探しに行き、急に雨に降られて雨宿りに寄っただけだと言い訳をする。
夏目「今、なんて言ったの? 部屋探し?」
そうなのとあっさり認めた南は着替えに別室へ。夏目も続く。カーテンで仕切られただけなので道夫にも会話が聞こえる。道夫は夏目のかぶっていたカツラをかぶってみる。
もう一度部屋探しについて問いただす夏目。「あなたたち、そんなとこまでいったの?」
南「そんなとこって…やだわ。だってさ、結婚するとしたらさ、どうしたって住むとこが必要でしょ? だから探しに行ったのよ。それだけ」
夏目「私がいくら反対しても結婚するつもりなのね」
南「うん。お姉さんや道夫君のお兄さんには悪いけどね、そのつもり。この間も東京で言ったとおりよ」
夏目「そう。あくまでもやるつもりね」
南「うん。これだけはお姉さんの言うこと聞けないの。ごめんね」
誰かがドアをノックした。南が出るとサクだった。「おや、お前も来てたのかい? いつぞやは失礼いたしました」
夏目「い…いいえ」
サク「あの、上がらしていただいてもよろしゅうございましょうか?」
夏目「はい、どうぞ」
サクはこちらで結構ですと今まで道夫が掛けていたダイニングの椅子に腰掛けた。「天気予報を聞いて、傘を持って出てようございましたわ。ちょっとあなたに占っていただこうと思いまして、伊勢佐木町まで行きましたら、この雨でしょ?」
夏目「占い?」
縁談だと言うサクに道夫は自分たちのことだと思うが、サクは研二のことだと言う。夏目は南にお茶を出すように言う。
倍賞千恵子さんが髪をおろしてシンプルなTシャツを着てるだけで美人が際立つ。さくらなら絶対しなさそうな格好だけど似合う。
サク「ああ、あなたが南さんですか?」
南「あっ、はじめまして」
サク「いいえ。いつだかそこでお会いしましたでしょ? ほら、すれ違って」
南「ああ、あのとき…」
かおると高円寺のおばちゃんの初対面! リアルタイムだとこの次が「おやじ山脈」で再び共演したんだよね。見たいなあ~。
夏目「あの…今日はどなたのご縁談で?」
サク「これの兄なんです。いえ、一郎ではなくて次男の研二なんです」
夏目「ああ…そうですか」←あからさまにほっとしたような笑顔。「ああ、あの、それで、今ここで占って差し上げるんでしょうか?」
サク「あの、ここではまずいでしょうか?」
夏目「こういう所ではどうも…」
サクはまたお店を出してらっしゃるときで結構だと言い、占ってもらうには相手の娘さんのどういう点まで分かってればいいのか聞く。趣味など知ってることがあれば詳しいほうがいいけど、生年月日だけでほとんど分かりますからと夏目が答えた。
南がお茶を出した。
サク「あっ、どうも。あの、この間は、また一郎が映画に誘っていただきまして」
夏目「あの、それは…誘ったっていうわけじゃないんです。南が勝手に…」
サク「一郎はお礼も申し上げてないみたいで失礼いたしました。あれも仕事一方で堅いもんで、何しろあの年までデートなんてろくにしたこともないもんで」
夏目「デートなんて…そんなふうに取られると困ります。私、そういう気持ちは全然…」
南は、お姉さんは道夫君のお兄さんにかなり関心があるようだと指摘。夏目はサクに2人で部屋探ししていることを説教していたとサクに話した。今の2人じゃ経済的にも他の点でも結婚は早すぎると言っても聞いてくれなくて困ってる。
サクは部屋代も上がってますしねえととぼけた答え。
夏目はそういうことより2人してもっと貯金でもしてからというと、南はそのことなら考えていると反論。しかし、道夫はムッとして反対する。「そりゃ、僕は君との結婚を真剣に考えてるさ。でも、君がバーやキャバレーに勤めるなんて、僕は反対だな。そんな君だったら…」
サク・夏目「バーやキャバレー?」
南「例えばの話よ。バカね」
サク「おや、バカですか?」
夏目「い…いえ、あの、口が滑ったんでしょう、ねっ?」
南「はい。それぐらいの決意だっていうことなんです。それを真に受けるなんて」
道夫「そういう顔で言うからさ、君が」
南は磯子のほうの製油会社にかわろうと思っていると話す。仕事は梱包やなんかできついらしいが、今のところより1万円余計にもらえる。道夫君は男のくせに仕事探しも部屋探しもいろんなことにちっとも積極的じゃない。経済的自立が大事だって言ったのは道夫君のほうだが、口先で立派なことを言ってもダメ。今の道夫君を見てると経済的にも精神的にも自立なんて無理だとまくし立てた。
サク「そうそう。ホントにそうですよ、お前は」←寛大な母だな~。橋田ドラマなら…ってすぐ思っちゃう。
道夫「僕、帰るよ。さよなら」部屋を出ていった道夫に、雨が降ってるよと話しかけたサクは、研二のことはいずれお店のほうで、と帰り支度。短気で困りますと言い、「一体私はなんのために来たのかしら」と道夫を追いかけ帰っていった。
新田家
窓辺でハムスターの世話をしている精四郎と合掌造りの本を見ている麗子。
精四郎「そういうのはなんか三渓園にもあるよ」
麗子「あれはね、白川村のをこっちに持ってきたのよ」こんな大きなおうちがあれば、ここんちの人もみんなお嫁さんもらったって悠々だと言う。
精四郎「じゃあ、麗子はあれかい? 大兄さんや研兄さんとこにお嫁さんが来たら一緒に暮らす気なのかい?」
麗子「そうよ。私、みんなとうまくやっていけるもん。好きだしね、みんな、いい人ばっかりだから。そうね、うちさえ広ければ、そのほうがにぎやかで楽しいし、いいわね」
あきれたような顔の精四郎に「何、妙な顔してるの?」と聞く麗子。
精四郎は同居に反対。今は麗子と母さんはうまくいってるけど将来は分からない。自信満々に絶対うまくいくと言う麗子。精四郎は他の嫁さんはどんな人が来るか分からない、大家族なんて合掌造りみたいにうまくいかない、現代はもっと複雑だと言い、麗子は単純すぎて子供みたいだと続けると、麗子は子供だと言われたことに怒る。
麗子が母さんとうまくいってるのは、母さんが大人だからと精四郎が言う。さらに、麗子の作る料理をかなりなものだと批判し、麗子をもっと怒らせた。
普通は男ばかりの兄弟で姑付きの家なんて同居したくないよな~。ただ、麗子さんみたいな人が1人いるとうまくいきそうな気もするけどね。
台所
精四郎はタレつくり。道夫は慣れた手つきでキュウリを刻む。
英三「実際、イヤんなっちゃうな。なんで、お前、料理のことで夫婦ゲンカなんかするんだよ。昼飯作らされるなんてかなわねえよ。とんだとばっちりだぞ」と麵を茹でている。
精四郎はサクが出かけていることを知らず、麗子も本気で映画に行くとは思っていなかった。「あきれちゃうよ、まったく」
道夫「俺だってこれから店があるんだよ。うちにいても千切りなんてくさっちゃうよ、まったく」
今は冷やしそばの材料しかないからとにかくやってくれという精四郎。道夫にとってはいいコックの勉強になる。こんだけ兄弟がいて千切りできるのは、お前だけとおだてる。道夫は冷やしそばなんてイタリー料理と全然関係ないと言っていると、英三が雑に麺を鍋から開けた。
道夫「ダメだよ。英兄ちゃん、いきなり。水で冷やすの。分かってねえな」
英三「そういうもんですか」道夫に卵焼きを切るよう命じられる。
精四郎の焼いた卵焼きは真っ黒だと英三に責められ、精四郎は立派に食えますよと口に入れた。「うん…ああ、苦みはあるけどね、なかなか、うん、オツなもんですよ、これは」
英三「何がオツだよ。聞いてあきれるよ、ひどいよ」
研二が入ってきた。英三がサクと麗子がいないため昼食づくりをしていると説明。さっさと椅子に腰掛けた研二に手伝うように言う精四郎。
英三「これ、ホントに食わせんのか?」
研二「おい、汚らしいそばだなあ。これ食うのか?」
英三「食ったって死にやしないよ」
お皿に盛られた麵の上に雑にキュウリやハム、卵、トマトなどをのせていく。
研二「俺、今夜の話し合いに出ないよ」
英三「ええ? また…主役じゃないか。今夜はね、研兄ちゃんの結婚についてさ、みんなでいろいろと…」
研二「兄貴の留守になんかコソコソしてるようでイヤなんだ」
英三「そんなことないよ。いずれ、大兄さんには言うんだもん」
研二「そりゃそうだけど…どうもな。第一、結婚っていうのは…(冷やしそばを口に入れ)あっ、なんだい、こりゃ、辛くて食えないぞ」
精四郎「えっ? そんなはずないけどな。(食べて)な…なんとか食えるよ」
道夫「何と何、入れたの?」
精四郎「う~ん、しょうゆだろ、酢、それにごま油に…それと塩だな」
道夫「砂糖は?」
精四郎「砂糖? 砂糖も入れるのか」
道夫「辛いわけだよ」
精四郎「じゃ、この上からかけたんじゃまずいかな?」英三の皿にそのまま砂糖をかけようとして「おい!」とツッコまれ、道夫、研二にも拒否され、自分の皿に砂糖を何杯もかける。「これでまあ、なんとかうまく食えるんじゃないかと、俺は思うんだよな」
冷やし中華のタレも自作しないといけないのは大変だな。もちろん自作したことありません(恥)。手っ取り早く店屋物でも取ったらよかったのにね。
研二「とにかく結婚っていうのは、おのおのの人生で一番大事なことだろう。集まってワイワイやるようなこととは違うって気がついたんだ」
砂糖をかけた麵を混ぜてまずそうな顔をしている精四郎を見て、ニヤリとする道夫。電話が鳴り、精四郎がイラつきながら道夫に出るように言う。
電話に出ていたのは一郎。
道夫「大兄さん、どうしたの? 旅行出なかったの?」
一郎「うるさいな!」と道夫に向かって怒鳴り、誰かと丁寧な口調で話し続ける。
電話を終え、道夫に研二を呼ぶように言う。
研二「あれ? もう帰ってきたの?」
一郎「ああ、川島さんが軽い胃けいれんを起こしたんでな。一足先に帰ってきたんだよ」
一郎は研二にタバコを勧め、この間の縁談は佐藤さんから断ってきたと話した。間に入った人の手違いで先方はもう他の話がまとまっていた。しかし、一郎は適当な言い訳くさいウソだと思っていて、この結婚に反対だったが、そことこれとは話は別。「まあ、イヤな気分だろうが、我慢してくれんか?」
研二は見合いしたいわけじゃないからいいと気にしてないと言う。
しかし、一郎は断り方に腹を立て、ムシャクシャするから外へ出る、昼飯は駅弁を食べたと出かけていった。研二は気にしてないとまた言う。
アパート
夏目のカツラをかぶっている南。「お姉さん、ダメね。日曜まで会社の仕事をするなんて。そんな愛社精神ね、今頃、はやんないよ」
南は会社のボウリングに出かける。「お姉さんも少し遊びなさいよ」とささやき、鍵閉めといてと出かけていった。
タイプライターに向かう夏目。紙を差し込み、打った文字は
いいいいい…
ちちちちち…
ろろろろろ…
ううううう…
一郎が歩いているのは提灯が下がって遊園地っぽくも見える。赤い公衆電話を見つけた一郎は黒い手帳を開いて電話をかけた。「あっ、もしもし、セイザン荘ですか? あの…松田さんをお願いしたいんですが。えっ? あっ、姉さんのほうです。はい」(つづく)
時々、あらすじの文章と中身が微妙に違うね。道夫は部屋に入ってたし!
あんな無礼なことを言われて続けてもなお一郎が気にある夏目。やっぱり顔!?
「おやじ太鼓」47話。セリフのない回想シーンが好きだな~。
「おやじ太鼓」好きな人には観て欲しい映画。高峰秀子さんが主演の映画ですが、進藤英太郎さんが幼い息子2人を持つ猟師役を演じています。今回の回想シーンと重なる。
48話はこれから見ます。
週末の「兄弟」は17、18話。ああまでして修太郎のご機嫌取らなきゃダメ!?
先週から「ありがとう」の再放送が始まり、山岡久乃さんは「あしたからの恋」と丸かぶりで沢田雅美さんは「兄弟」の終盤とちょっとかぶったんだね。洞外次代の見た目が見たことある気がしてたら、京子と同じだった。
来週の金曜日にはもう「幸福相談」の最終回。大体26話だと17、8話あたりから次のドラマの予告を流し始めるので、今週中には流れるかも!? 木下恵介アワー継続でありますように(祈)。