TBS 1973年7月24日
あらすじ
多美(上村香子)は、北(藤岡弘)に結婚の話を断った。北が出世の道を諦めて自分と一緒になることが耐えられなかったのである。その頃「二上」では、幸子(望月真理子)の子どもが良男(仲雅美)の子ではないとわかる。
2024.3.4 BS松竹東急録画。
北晴彦:藤岡弘…トラベルチェーン開発課の社員。
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中西良男:仲雅美…鶴吉の息子。
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大須賀伸(しん):荒谷公之…織庄の一人息子。
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山下幸子:望月真理子…自殺未遂後、「二上」で働きだす。
静子:相生千恵子…仲居。
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「二上」
桂帰宅。出迎えた静子(今日は和服)に幸子のことを聞く。気分が悪くなるのを度々見ていた静子に「あら、静子さんも経験あるんだっけ?」と聞く桂。静子は大慌てで否定する。幸子は多美と浦山の獅子舞を見に行っていると聞いた桂は「ハァ…のんきなこと」とため息をつく。
今週も「新日本紀行」秩父篇みたいに獅子舞を見ている多美と幸子。
帳場
桂「あら、明るいうちから随分ご機嫌いいのね」←桂も随分明るいうちに帰ってきたんだな。
鶴吉「ああ、桂ちゃん。これが飲まずにいられるかってんだい」
「まあ、聞いてくれよ」と言う鶴吉だが、桂は知っていて、良男がどこへ行ったか聞く。どこへでも行っちまえばいいという鶴吉に責任を取ってもらわなくちゃと言う桂。酔っ払って酒をこぼしてしまう鶴吉。
桂が厨房へ行くと、良男がネギを抱えて入ってきた。「おう、いやに早いな」
桂「早引けして帰ってきたのよ」←それでか。
良男「なんだ? 頭でも痛(いて)えのか?」
桂「そう、頭、痛いわよ」
良男「だったら、早く薬でも飲んで寝るんだな」
桂「何言ってんのよ。よっちゃんのおかげで頭痛いんじゃない」
良男「ああ、そのことか」
桂「そのことか、じゃないわよ。おじさんは飲んだくれてるし、さっちゃんは獅子舞見に行ったっていうし、一体なんだと思ってんのかしら」
良男「まったくだよな」
桂「ふざけてる場合じゃないでしょ」←包丁を持ってる良男を小突くな!
帰り道
多美は幸子にみんなには知らん顔するように言う。何も心配しなくていい、それより、あしたにでもお医者さんに行かなきゃねと励ます。黙ってうなずく幸子。それにしても真っ赤なワンピースのスカート丈が短いぞ。
多美と幸子が帰ってきた。
桂は「家庭医学事典」を広げて読んでいた。
今でもあるんだね。
ちょっと相談があるといって、桂の部屋に入ってきた多美。桂は慌てて読んでいた事典を本棚にしまう。幸子のことを話し始めた多美にやっぱりというリアクションを取った桂。知らなかったのは私だけだったのねと幸子は言うが、桂に鶴おじさんが飲んだくれていると聞いて、なんの関係があるの?と聞く多美。
よっちゃんの子供ってことは鶴おじさんの孫に当たるという桂に幸子からうちへ来る前だと聞いたという多美。わけが分からなくなった桂。
ボイラー室前に幸子を引っ張っていく良男。良男もまた真っ赤な長そでTシャツ。「いいかい? さっちゃんのおなかん中の子供は、この俺の子供なんだからね。分かった?」
幸子「えっ?」
良男「分からなくてもいい。信じてくれればいいんだ。その子供の父親はこの俺なんだからね」
幸子「だって…」
良男「だってもクソもない。そうすれば何もかもうまくいくんだよ。俺に任せろって。俺、一生面倒見るよ。俺、もともと子供好きなんだ。その子供の父親が俺であってもちっとも不思議じゃないだろ? さっちゃんのこと思ってるんだし。さっちゃんのおなかん中で俺の思いが芽生えたって、ちっとも不思議じゃないよ」
「困るわね、お母さんはいないし」と桂の部屋を出ていった多美。ひとり部屋に残された桂は「だましやがったな、あんちくしょう」と腕組み。
ボイラー室前
幸子は多美に本当のことを話したと良男に言う。桂に呼ばれて良男が幸子の元を離れた。
旧ツイッターで見かけて思い出したけど、「本日も晴天なり」の元子の息子・大介も良男と同じようなことをしようとしてたね。
時代もほぼ同じだから、なんかそういう流行?があったのかね?? 大介や良男は団塊のすぐ下の世代っぽいけど、産まれる子供たちは団塊ジュニアと呼ばれる世代。
せせらぎの間
多美が食事を運んできた。「遅くなって申し訳ありません。おなか、おすきになったでしょ?」
北「いや、何があったの?」
多美「ええ、ちょっと。取り込んでたもんですから」
北「やっぱり女将さんがいないと大変らしいね」
多美「そんなことありませんけど」
北「しかし、飯は遅れるし…」
多美「今日は特別です」
北「プロに言い訳は通用しないよ」
多美「すいません。会社の方、何時の電車でお帰りになりましたの?」
北「昼過ぎだったかなあ。あの男、さっちゃん知ってるらしいよ」
多美「そうらしいですね。あの男だなんて上司の方じゃありませんの」
北「そう。直属上司。僕の所属する課の課長だよ」
課長にも幸子の妊娠がバレて、そこで一波乱と思ったけど、そんなことはなかった。
多美「北さんは?」
北「平。平社員だよ」
多美「平社員がよくこうやって遊んでいられるのね」
北「うちの会社はそういう会社なんだよ」
多美「平のほうが威張ってるんですか?」
北「そう」
空のコップを置き、ビールの栓を開ける多美。
北「頼まないよ」
多美「遅くなったおわびです。どうぞ」
北「ダメダメ。そんなサービスしちゃ。どう原価計算したって足を出しちゃうよ」
多美「いいんです」
北「じゃあ。いただきます」一気飲み。「ああ~、うまかった。今日、獅子舞を見に行ったんだってね。僕も見たかったな。どうだった?」
無表情の多美。
北「どうしたの? 今夜の多美さん、なんだか変だな」
多美「そうですか?」
北「うまい。なかなかうまいよ。カリカリして香ばしくって」
多美「それ焦がして遅くなったんです」
北「どうりで焦げ臭いと思った。何か心配事があるんだったら、相談してくれないか?」
多美「お食事をお済ませになってから」
北「いいよ。少々のことぐらいで食欲が落ちるような繊細な神経は持ち合わしてないから」
多美「北さんにお願いがあるんです」
北「いいよ。なんなりと」
多美は「うちを引き払っていただきたいんです」と切り出す。突然のことに驚く北は、多美がまだ誤解していて、買収に来たと思ってるんだろうと聞くが、多美は北にいられると困ると言う。
北「理由を聞こう。理由如何(いかん)によっちゃ出ていかないこともないけど、困るって何? 僕がいるとどうして困るんだい?」
多美「その前にいつかのお返事はっきり申し上げます。わたくし、お受けできません」
北「お受けできないって、結婚の話?」
結婚の話から何だかんだもう2か月も経ってるのね。
うなずく多美。「私がいけなかったんです。早くはっきり申し上げなければいけなかったのに」
北「どうしてお受けできないか後学のために聞いておきたいんだ。要するに僕のような男は性に合わないってことなんだろうけどね」
泣きだしてしまう多美。
北「ごめん。そうだな。本人を目の前にして理由を言えなんて酷だな。じゃあ、撤回するよ。もう何も聞かない。しかし、客としている分には一向にかまわんだろ? もうその話は一切口にしない。それだったらいいだろう? 長逗留してる客が1人いるぐらいに思ってくれれば、それでいいんだ。なっ?」
首を横に振る多美。
北「僕がいるだけでも困るの? どうして?」
手で顔を覆って泣きだす多美。
帳場
いびきをかいて寝ている鶴吉。
桂「他のこととは違うのよ。もし、さっちゃんが悪い人で、じゃ、そういうことにしてくださいって言ったら、どうするつもりだったの?」
良男「どうするって育てるよ」
桂「産まれてくる赤ちゃんを? その子はよっちゃんの子じゃないのよ」
良男「そのぐらい分かってるさ」
まだいびきをかいて寝ている鶴吉。
良男「人の子だって、さっちゃんの子には違いがないんだよ」
桂「さっちゃんの子ならどうでも育てるの? 鶴おじさんや私たちがどんなに心配するか考えてみなかったの?」
良男「人のことなんて考えちゃいられねえよ」
桂「よっぽどさっちゃんに惚れちゃったのね」
良男「まあ、そういうことかな」
桂「あれぐらいの子、いくらでもいるわよ」
良男「それがいないんだな」
桂「あっ、そう。まあ、よっちゃんにとってはマドンナなんだそうだから、そうかもしれないけど」
良男「まあ、少なくとも誰かさんとは比べものにならないよ」
桂「ええ、どうせ、そうでしょうよ…ちょっと何言わせんの? 私、あんたにお説教してんのよ」
鶴吉のいびきに「うるせえな!」とどなる良男。
桂「うるさいとは何よ」
良男は鶴吉の鼻をつまむ。
桂「第一、こんなことがバレないで済むと思ったの? 単純ね。産まれた日から数えれば、うちに来る前だってことぐらい、すぐ分かんじゃない」
良男「早産ってことだってあるじゃないかよ」
桂「まるまる太った未熟児が産まれることでしょうよ。それに産まれてくんのは、よっちゃんとは似ても似つかぬハンサムよ」←セーキよりよっちゃんのほうがカッコいいよ。
良男「桂ちゃんも男の子だと思うかい?」
桂「勝手にしなさい」
良男「自分が振られたからって、そうキンキンすんなよ」
桂「私が振られた? 誰に振られたのよ」
良男「俺だよ、俺」
桂「こんな大事な話をしてるときに、そんなややっこしいこと言わないでよ」
二上の玄関から入って来た伸はタオルを肩にかけ、帳場に入ってきた。「おお、やられとる、やられとる。お邪魔するよ。できちゃったことをいつまでも言ったってしかたがないじゃないか。それより今後の問題よ。どうすることにしたのよ?」
桂「伸ちゃんは黙ってて」
伸「いいかげんに勘弁してやんなよ」
呼び出し音が鳴り、桂が出ていくと、伸が良男に近づく。「女っていうのはしつこいからな」
良男「嫉妬は怖いよ」
伸「嫉妬? しかし、うまいことやったな」
良男「分かってないのは黙っててくれよ」
鶴吉が大あくびで起きた。「おい、良男。おめえ、まだ生きてたのか。おめえみてえな恥知らずは豆腐の角へ頭ぶつけて死んじまえ。(大あくびして)ああ~、俺は死ぬぞ」再び横になる。
北からの内線を受けていた桂。戻って来た多美が泣いていて驚く。
せせらぎの間
桂「それで、姉ちゃん北さんに出てけって言うの?」
北「うん。その理由が残酷じゃないか。俺がここにいると好きな人に誤解されるんだってさ」
桂「好きな人? そんな人、北さんの他にいるはずないじゃないの」
北「だってそう言うんだからしかたがない」
桂「出るの? 北さん」
北「邪魔になるって言われればしかたないじゃないか」
多美の言動が信じられない桂は姉ちゃんに聞いてみる、これにはきっと何かわけがあるのだと考えた。
北「この責任は桂君、君にもあるんだぞ。君が適当にけしかけるから…」
桂「とにかく聞いてみるから待って」
北「まあ、出るったって、今すぐ出ていくわけにいかないさ」
桂「北さん、まだ起きてるでしょ?」
北「寝ろったって寝られやしないよ」
せせらぎの間を出た桂。「どうして、こう、みんな世話を焼かせるんだろう」
伸がロビーにまだいたことに驚く桂。忙しいといって、漫画雑誌を預けて、多美の部屋へ。
真っ暗な多美の部屋。桂が戸を開けても「入らないで」と拒絶し、桂がわけを聞こうとしても「変なおせっかいしないで。来ないでちょうだい」と言う。もう一度話し合うように桂が言うと、また突っ伏して泣いてしまう多美。
ロビーで一人でいる伸。
桂「まあ、漫画の本なんか読んでよく笑ってられるわね」
良男「おい、退屈してんだったら芋の皮でもむけよ」
伸「芋の皮? ここもおばさんがいねえとさっぱりだな」と席を立たず。
せせらぎの間
桂は静かに首を振り、多美が泣いてたことを報告。「出ていってほしいなんて言っといて、泣いてるなんてどういうこと?」と不思議がる。
桂「私の考えじゃね、こういうことじゃないかと思うの」
北「ちょっと待て。君の珍解釈はもう聞き飽きたよ」
桂「あっ、そう。じゃ、しかたないわね」
北「なんだい? とにかく言うだけ言ってみろよ」
すねた桂にビールを勧めたり、部屋に入るように言う北。部屋に入った桂は日記に変なことを書いたのを姉ちゃんが見たんじゃないかと推測。北さんのことを素敵な男性、男性的でどっか野性味があって、ちょっぴり教養がにおってて、どことなくライオンに似てる…その日記を見て桂が北を好きになったと誤解したんじゃないか。
桂「私が姉ちゃんの恋人を横取りするような女に見える?」
北「君のそういうところがいけないんだ。姉さんの恋人だなんて決めてかかっちまうから、つむじを曲げられてしまうんだ」
桂「だってそうじゃない」
北「結局のところは、こっちの片思いだけだったらしいや」
桂「絶対そんなことないって」
日記には続いて”純粋な雄を感じる”とも書いていた。
北「ますます動物並みだな」
桂「だってそうなんだもん。あれを見て姉ちゃん危険を直観したんだわ。私も北さんのこと好きになってて、このうちん中、ひっかき回されると思ったのかもしれないわ」
北「もうその話はいいよ。あした、もう一度、よく話し合ってみるさ」
どう見たってこっちのほうがポンポン言い合えていいように見えちゃう。
ロビー
退屈になった伸はたたんでいたタオルを頭に乗せ「お邪魔さまでした!」と叫んで、文句を言いながら外へ。
厨房
すべてを話した良男に鶴吉はあきれる。「つきだしたウソなら、どうしてとことんつき通さねえんだい」
良男「そんな理屈ってあるかよ」
鶴吉「だから腰抜けだっていうんだよ」
説教を聞くのがイヤになったのか厨房を飛び出した良男を追いかけてくる鶴吉。「さんざっぱら大騒ぎさせたあげくに引っ込んで、それじゃさっちゃんはどうなるんだい? さっちゃんとおなかん中の赤ん坊はどうなるんだよ? 立つ瀬がねえじゃねえか。ええ? そうだろう?」
良男「すいません」
鶴吉は俺の子供ってことにしてかわいがってやろうと思っていたと話す。俺の子供? 孫じゃなく?
鶴吉と良男の言い合いに桂が「おじさん、何わめいてんの?」と割って入る。
鶴吉「おめえさん方には分かるめえがな。これが大正生まれの心意気ってもんだい」←花沢徳衛さんは1911(明治44)年生まれの明治男だけどね。
桂「大正生まれがどうかしたの?」
多美も部屋から出てくると、階段に幸子が立っていた。幸子に寝るように言う良男。階段を上っていく幸子を見ている鶴吉、良男、多美、桂。(つづく)
来週金曜日が最終回であらすじも見たけど、幸子の動向が書かれてなく、気になるな~。それと次の作品も気になるな~。古い作品でひとつお願いします。