TBS 1973年7月31日
あらすじ
これ以上多美(上村香子)にプロポーズしても無駄だと悟った北(藤岡弘)は、「二上」を去ることにする。それでも北は福島からの団体の予約を取ってくれた。そんな北の心が桂にはうれしかった。
2024.3.5 BS松竹東急録画。
北晴彦:藤岡弘…トラベルチェーン開発課の社員。
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中西良男:仲雅美…鶴吉の息子。
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大須賀伸(しん):荒谷公之…織庄の一人息子。
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山下幸子:望月真理子…自殺未遂後、「二上」で働きだす。
静子:相生千恵子…仲居。
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竹子:大橋澄子…仲居。
社員:木村賢治…桂たちの同僚。
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女将さん、今回もいないんだ!?
せせらぎの間
桂「北さん、ホントに帰んの?」
北「ああ、一応引き揚げることにしたんだ」ネクタイを締めている。
桂「もう一度、姉ちゃんと話し合ってみるはずじゃなかったの?」
北「そう思ったんだけど、話し合いどころか会ってくれそうもないんでね」
桂「怒ってる?」
北「そういうわけじゃないが愉快なわけはないな」
桂「ハァ…困ったな。ねえ、もうちょっと待てない? 少しだけ時間をくれない?」
北「そんなことをしたら会社に遅れるぞ」
桂「しかたないわよ」
北「勤めはきちんとしなきゃダメだよ」
桂「北さんのように?」
北「俺は特別」
桂「私も特別。姉ちゃんの気持ちも分かんないまま引き揚げてしまうなんて気持ち悪くないの?」
北「多美さんの気持ちは分かったさ。はっきりプロポーズを蹴られたんだから、その上、邪魔になるから出ていけって言われたんだ」
桂「だから、それは…」
北「本人がはっきりそう言ってんのをまだ違うって言うのかい?」
桂「ハァ…困っちゃうな」
北「困ることはないさ。それより会計」
桂「こちらからお願いしたんですから頂くわけにはまいりません」
北「そうはいかないよ。1日や2日じゃないんだから」
4話で一旦、東京に帰った北は20日過ぎにまた来ると桂に言っていた。5月20日からなら2カ月以上、逗留してたってことかな。
桂「だって、姉ちゃんがそう言うんだもん。そうだ、そのことについて姉ちゃんと話し合ってみたら?」
北「よっぽど話し合わせたいらしいな。しかし、かえって決定的になるかもしれないぞ」
桂「それならそれで諦めます」
北「だから君は無責任だっていうんだよ」
ムッとして部屋を飛び出す桂。
帳場
多美「あら、まだいたの? 遅刻したって知らないから」
桂「姉ちゃん、ホントにいいのね? 北さん、もう支度してるわよ」
多美「じゃ、途中まで車で送っていただいたら?」
桂「うん。じゃ、そうするわ。それからね…」
多美「私、忙しいの。帰ってからにしてくれない?」
桂「姉ちゃん。北さんがお帰りになるっていうのにお見送りもしないの? 何をそう怒ってんの?」
多美「怒ってなんかいません」
桂「お客様をお見送りするのは女将代理の当然の務めよ」
多美は帳場の奥へ。
桂「フン、勝手にするといいんだわ」時計を見て「あ~あ、遅刻しちゃった」
仏壇に手を合わせる多美。
北がロビーに出てきて、多美と目が合う。「困りますね、取ってもらわないと」
多美は無言。
北「取ってもらうまではここを動きません」腕組みして壁にもたれかかる。
多美「じゃあ、1000円頂きます」
北「1000円? それじゃ1日100円にもならないな。帰ってきたらお母さんに叱られますよ」
多美「いいんです」
北「よくないな」
黙ってしまった多美に1000円を出し、カウンターに置く北。「言っときますが、僕はここを追い出されて出ていくんじゃありませんよ。用が出来たから帰るだけなんです。また来るかもしれません」
多美「困ります、それは」
北「あなたが困ってもしかたがないんだ」
静子「あら、お発ちですか。いろいろとありがとうございました」
北「いえ」
静子「お荷物はないんでしたわね。竹ちゃんたちお発ちになること知ってるのかしら」竹子や幸子を呼ぶ。
北「それじゃ」
多美「ありがとうございました。またどうぞ」と思わず口に出る。
竹子や静子に惜しまれつつ見送られる北。多美は帳場の陰で見送る。幸子は北が出ていってしまった後、出てきた。
せせらぎの間に入る多美。
北は愛車で思い橋の上で立ち止まり、橋の上に立つ。ここの北の横顔、合成っぽいな。せせらぎの間から見ていた多美は慌てて障子を閉める。幸子がバケツを持って、せせらぎの間へ入ってきた。重いものを持っちゃダメじゃないのと幸子を注意し、はたきをかけるように指示した多美は掃除機を取りに行った。
厨房
静子と竹子が良男、鶴吉に北からもらったご祝儀を渡した。
鶴吉「へえ、裏方さんまでとはオツなマネするじゃねえか」
良男はご祝儀袋に1万円が入っていて驚く。鶴吉は「バカなことするヤツだな」と自らのご祝儀袋を開け、「こいつはもらえねえや。こんなにもらうわけがねえ」とドン引き。
良男「3万だろ? 親父やだったら、俺、もらっとく…」
鶴吉「バカ野郎! 誰がおめえにやるっつったい」
仲居たちもみんなもらっていた。
鶴吉「全部合わせると相当な額じゃないか。こりゃ、もらえないよ。一応、みんな、ここへ出しな」
良男「いや、一旦もらった物返せないよ」
鶴吉「バカ野郎!」
掃除機を取りに来ていた多美に「えらいことになったよ」と話しかけた鶴吉。多美は北からのご祝儀袋を見せられて驚く。普通に宿代取ったほうがよかったよね。
口笛を吹きながら車を走らせる北。
織庄
桂「ごめんなさい! すいません、どうも」
社員「おはよう」
桂「申し訳ありません」着替えに奥へ。
伸「お前さんね、最近、少し、遅刻が目立つぞ」
桂「すいません!」
伸「いつもそれぐらい謙虚であってもらいたいね」
着替えた桂が伸のところへ来た。「何言ってんの。いつだって謙虚じゃないのよ」
それより話があるのよと自分の席に引っ張る。姉ちゃんと北さんのことで…と言うと、伸はちょっとうんざり!? 少しは自分の心配したらどうなの?と聞く。
伸に北から電話があった。申し送り事項があるということで、桂に先に行って聞いておくように頼む。伸は隣で待ってるという。
モンモランシー
チェリッシュの曲が流れる。
チェリッシュ「ひまわりの小径」1972年5月25日発売
北のもとに桂が顔を見せる。「姉ちゃんと話した?」
北「いや、挨拶だけはしてきたけど」
桂「連絡は会社のほうでいいのね?」
北「ああ、何かあったら開発の北って言ってもらえば分かるから」
桂「訪ねていってもいい?」
北「もう、姉さんのことはいいよ」
桂「そんなうんざりした顔なさらないで」
北「ああ、それからね、万一、うちの会社の人間が訪ねていったり、動いてるようだったら、すぐ知らせてほしいんだ。相手に知れないようにね」
桂「どういうこと? 北さんだって会社の人間でしょ?」
北「子供は面倒なことに首を突っ込まなくていいんだよ」
桂「あっ、そうですか」
伸が顔を出した。北は「これは決まった分」とメモを差し出す。現在、交渉分の紙も渡す。「特にこの団体、大型だから他の旅館にも協力を願って逃さないように」
桂「はい」
北「ああ、それからね、この福島の分だけど、これは農協団体だからルートに農場見学かなんか入るといいんだがな」
伸「ああ、それなら芦ヶ久保にいい所があります」
北「そう。じゃ、帰り道に寄ってみようかな」←字幕は”そう”だけど”ありがとう”って聞こえる。
伸「僕が案内しますよ」
桂「あっ、私も…」
伸「お前さんは関西の荷出しのチェックがあるだろ?」
桂「はい、課長様」←伸は課長なんだ!?
伸「しかし、短い期間によくこんだけたくさん予約が取れましたね」
北「それはお手のもんだからな。じゃ、引き継ぎ事項はそれだけだ」
伸「しかし、どうして急に引き揚げることになったんですか?」
北「そこがサラリーマンのつらいところさ。じゃ、案内してもらおうか」
伸「ええ」
2台の日産車が走る。伸の車は日産スカイラインバン、北の車は日産ローレルと思うけど、全然詳しくないので違うかもしれない。
「あしたからの恋」の菊久月の車もスカイラインバンだったかも?
見晴らしのいい駐車場に止まる2台の車。それぞれの車から降りる。
伸「あの山が全部果樹園になってるんですよ」
北「果樹園村か」
山に「あしがくぼ果樹公園村」の看板。
伸「ええ。まあ、村ぐるみの農園と言っていいでしょうね。季節の果物…例えば、イチゴとかブドウとかプラムとか。まあ、やって来た人たちがそれを自由にもぎ取って買って帰るというわけですよ」
北「こいつは面白いな」
伸「じゃ、行ってみましょうか」
北「うん」
花の咲く道を歩く2人。
北「わあ、見事だな」
伸「1週間もすれば、もっと色とりどりになりますよ」
北「地元のほうの交渉は伸ちゃん、頼むよ」
伸「はい、承知しました」
山の見える高台へ
伸「どうです? 武甲山がきれいでしょ?」
北「ああ、ここもいいハイキングコースになるなあ」
伸「ええ、駅から1キロ。歩いたって、ちょうどいい距離です」
小径を歩く2人
伸「北さん、またいらっしゃいますでしょ?」
北「さあ、どうなるか」
伸「多美さんもがっかりなさってるでしょう?」
北「とんでもない。それより君と桂君とはどうなんだい?」
伸「あの子もウナギみたいなところがありますからね」
北「ウナギ?」
伸「ええ。つかんだと思ったらスルリ。飛び込んできたと思ったらクラリ」
笑い飛ばす北に「いや、笑い事じゃありませんよ」と伸。
2台の車が連なり、のどかな道を走る。
至 八王子、東京
至 秩父市内
と木の標識が出ている分かれ道で車を停め、それぞれ降車。北はお礼を言い、「伸君、桂君とのことはのらりくらりじゃダメだぞ」。
伸「は?」
北「君がうまくリードしなきゃ」
伸「はあ」
握手し、また会おうと去っていく北。伸は気をつけてと手を振る。
良男は新聞紙に包まれた一升瓶を2本抱えて帰ってきた。
厨房
中身は牛乳とハチミツ。橋本さんのところで分けてもらったという良男。
鶴吉「それ以上、元気になってニキビでも出来(でか)そうってのか?」←初めて聞く言い回し。
ハチミツほど栄養のあるものはないという良男だったが、鶴吉は「鼻血ドバッになりてえのか?」。
良男「親父は漫画の見すぎだよ」
これかな?
竹子が厨房に入ってきた。「あら、今夜は洋食ですか?」
良男「お前さんたちにも少しは分けてやるよ」
竹子「私、牛乳嫌いなの」
良男「だから、ブクブク太るんだよ」←竹子さんは太ってません!
静子「あら、私がどうかしたの?」←こんなセリフ言わせるな!
良男「ハッ、ここにもいた」
幸子を見かけた良男は「これから毎日牛乳もらうことにしたからね。どんどん飲むといいよ」。
鶴吉「なるほど。そういうことか」
良男「栄養つけてもらわなきゃな」
竹子「だって牛乳が必要なのは赤ちゃん産まれてからじゃない?」
良男「そうか?」
良男はレモンも持ってきて、ハチミツと牛乳を混ぜた。
静子「ねえ、青いのが足りないんじゃないの?」
良男「あっ、そうか。青汁でも入れるかな」
タバコを吸いながら笑う鶴吉。
良男「まあ、これだけありゃカロリー満点だ」
鶴吉「ハハッ。さっちゃんも災難だな」
良男「何言ってやがる。俺が毒見してみるからな。こんなうまい物を…(飲んでみて)甘みが足りねえのかな? 塩気がいるのかな? 何か足りねえようだけど、まあまあ、いいや。良薬は口に…」
鶴吉「苦し」
良男「分かってるよ。苦くねえから、お前、考えてんじゃねえか」
「さっちゃん飲みな」と目の前にコップを差し出したが、口を押えて厨房を飛び出していった。鶴吉は「いちいち間が抜けてる」といい、静子に様子を見に行かせた。
良男「ハァ…んっ、ダメなヤツ」と自らの頭をコツン。
レモン果汁とハチミツをしっかり混ぜとかないと牛乳を入れたときに分離してしまうそうです。でも、別に他に調味料はいらないみたい。
織庄
真面目に机に向かう桂の目の前に1輪のバラの花を差し出す伸。
桂「ああ、また計算分かんなくな…フフッ、おかえんなさい。どうだった?」
伸「バラがね、とってもきれいだった」
北の言動を気にする桂。なんの話をしたのか聞かれた伸は「ウナギの話」「ぬらりくらりの話」と言うと、桂は多美のことだと勘違い。
伸「分かっちゃいないんだね、まったく」
桂「あんないい男のどこが気に入らないんだろう。気が知れないわ」
川で魚釣りする良男。
麦わら帽子で釣りキチ三平っぽい。
帰宅した桂。竹子に多美の様子を聞く。あら、竹子さん、今は和服になってる。
厨房
良男はヤマメの骨抜きをしていた。俺が釣ったというが1時間に1匹だけ。桂は冷蔵庫の飲み物を飲んで驚く。良男は最新の美容食だというが、桂の口には合わなかったのか一口飲んで立ち去ろうとした。
しかし、引き返してこれから続けざまに団体が3組か4組入ると報告。
帳場
多美にも報告する桂。多美は法事を少し延ばさなきゃねと言う。これだけ続けば世間並みの法事ができるという桂。
法事のことはサラッと終わったことになってるかと思ったら、まだやってなかったのか。
北が何のために長い間、二上にいたのか不思議がる桂。多美はうちを守るためだと答え、桂が変なおせっかいを焼きだすからとわけを言わない。桂がおせっかいを焼くのは多美のためだけじゃなく、多美の結婚が遅れれば、それだけ自身の結婚も遅れると言い、多美が謝る。
多美はなにも遠慮はいらないからどうぞお先にと言う。
桂「それでは、お先にすんずれい」←加トちゃんのギャグ!?
プイッと横を向いちゃう多美。よく笑わないな~。
桂「どうして北さんみたいな人が気に入んないのか、私にはさっぱり分かんないわ」
多美「そう思うなら桂ちゃん、北さんと結婚したらいいでしょ」
桂「姉ちゃんのヒステリー」
厨房
虫眼鏡でヤマメの骨を観察している良男。「まだまだダメだな。細いのが2本残ってたよ」と反省している。桂は鶴吉が食べたと思っているが、良男は濁す。
帳場
お風呂上がりの伸は多美にお礼を言う。
多美「冷たいお茶でも飲んでらっしゃい」
伸「いいですか? なんだか寂しいですね」
多美「そう? お母さんがいないからでしょ?」
伸「おばさんもいないし、北さんも帰っちゃったし」
多美「桂、呼びましょうか?」と言うと慌てて止め、「ちょっと知恵貸してください」と多美の腕をを引っ張ってロビーのソファへ。
ロビー
伸は桂のことを父に話したもののいい返事をしなかった。はっきり言うと反対された。今更、うちがどうの親戚がどうのなんて、あることないこと並べ立てて、桂のことをあんなにかわいがってるくせに身勝手だとこぼす。多美は父とケンカしてでも桂と一緒になる気はあるのかと聞く。
伸「もちろん。だからこうやって相談してるじゃないですか」
桂がロビーに顔を出す。今度の日曜日、東京へ行くという。多美は桂に伸にコーラでも抜いてきてあげたら?と言うが、「うちも自動販売機置かなきゃダメね」と去っていった。多美は「ホントに心にもないこと言う子だから」と伸に謝る。
桂を見つめる寂しそうな伸。(つづく)
伸ちゃんの自分のかっこよさを自覚した飄々とした感じが最近お気に入り。
そろそろ次の作品を…と思ったら、3/18から「太陽の涙」とCMで流れたそうです。山本陽子さんの追悼の意味もあるのかな。しかし、放送順に「たんとんとん」の次にやってほしかったけどね。今はとにかく木下恵介アワーじゃないけど「記念樹」が見たくて。
そして、去年は4月からずっとBS11で夕方に橋田脚本のドラマを見てきたので、久しぶりにBS11をチェックしてみたら4月から石井ふく子プロデュース「ちょっといい姉妹」というTBS木8ドラマの再放送があるみたいです。木曜日の夕方から2話連続放送。1週間に2話ずつ放送ってのもまた微妙だなあ。
【お詫びと訂正】
— BS11ドラマ【公式】 (@bs11_drama) March 1, 2024
昭和ドラマ「#ちょっといい姉妹」の投稿内で
出演者のお名前に誤りがございました。
訂正してお詫び申し上げます。
訂正)
山岡久乃、京塚昌子、大空眞弓が演じる
歯科医の3人姉妹がそれぞれの道を見出すまでの
心温まるホームドラマhttps://t.co/9M5d71iaWT
「心」の次の次、1981年11月から1982年5月までの全29話。脚本は橋田さんではありませんが、キャストがいいね。
石井ふく子プロデュースの昼ドラは平成初期ということもあり、ちょっとビミョーだったけど、これはちょっと楽しみだな。BS11も字幕つけてくれたらなあ~。