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【ネタバレ】木下恵介アワー「おやじ太鼓」 #24

TBS  1968年6月25日

 

あらすじ

お手伝いの初子が急に結婚して辞めてしまった。一方、武男は片桐のことが気になって仕事も手につかない。三郎も友達が学生結婚をすると聞いてショックを受けている。さらに洋二もくよくよと水原との関係について悩んでいる。そんな子どもたちを見て、愛子は大きなため息をつく。

2023.8.14 BS松竹東急録画。12話からカラー。

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鶴家

亀次郎:進藤英太郎…大亀建設株式会社を一代で立ち上げた。2月5日で61歳。

妻・愛子:風見章子…5月で56歳。

長男・武男:園井啓介…亀次郎の会社で働いている。3月3日で30歳。独身。

次男・洋二:西川宏…ピアノや歌が得意。空襲で足を悪くした。28歳。

長女・秋子:香山美子…出版社勤務。26歳。

三男・三郎:津坂匡章(現・秋野太作)…二浪して大学生。

次女・幸子:高梨木聖…女子大生。1月の成人式に出席。

四男・敬四郎:あおい輝彦…浪人中。

三女・かおる:沢田雅美…4月から高校生。

*

お手伝いさん

初子:新田勝江…亀次郎と同じ誕生日2/5で30歳。

お敏:菅井きん…愛子の4つ下。6月で52歳。

*

片桐黄枝子:堀井永子…武男の好きな人。

 

インターホンのブザーが鳴り、愛子が裏玄関を開けると敬四郎が帰ってきた。この時代、一人一人がカギを持ってるわけじゃないからいちいち開けたり閉めたりしてたってことだよね。「道」でも留守番する人がいないと~と言ってるのはそのせいかとちょっと納得。

 

敬四郎が台所へ行くと愛子があわただしく料理をしている。なんと初子が結婚! ほんとかな?と疑う敬四郎にちゃんとお婿さんと並んでる写真を置いていったと言う愛子。しかし、写真はお敏が見ていたが見当たらない。

 

またブザーが鳴り、敬四郎は裏玄関へ。電話が鳴り、愛子が出ると間違い電話だった。黒猫のエミちゃんってどんな店?だよ。帰ってきたのは武男で、初子の結婚に驚いている。

 

初子の結婚は突然で挨拶にも来ず、横須賀の兄が荷物を取りに来た。先週の土曜日に横須賀に行き、日曜日にお見合い。

武男「それでもう行っちゃったの」

愛子「行くにもなんにも隣のアパートよ」

これって横須賀の兄の家の隣にそういう人が住んでたってこと?

 

初子は30歳で焦っていた。同じ歳の武男もちょっと胸が痛いと言う。

 

また呼び出し音が鳴り、敬四郎が裏玄関へ。

 

愛子「どうして胸が痛いの?」

武男「仕事が手につかないんですよ。早く帰ってきちゃったんですよ」

愛子「困るわよ、あんたがそれじゃ」

武男「あの人は今頃どうしているでしょうかね」

愛子「知りませんよ、そんなこと」

武男「多分いい感じは持っていないでしょうね」

愛子「そりゃそうでしょ。あれだけお父さんに怒鳴られれば」

 

初子じゃなくて、片桐さんのことを考えてたってことね。武男は、ああ、情けない。どうして僕はこうツイてないんでしょうと嘆く。

 

お敏が買い物かごを抱えて帰宅。初子の結婚写真を持ち歩き八百屋でも肉屋でもみんな大笑いだと言う。写真は画面に映らないが、お敏が言うにはお婿さんが横目でジロッと初子の顔を眼鏡越しに見ている。初子はすまし顔。敬四郎もお敏も笑う。お寿司屋だってうなぎ屋だっておそば屋だって、みんな大笑いだと愛子に報告する。初子が挨拶に行かない代わりにお敏が一軒一軒見せて歩いた。

 

武男がなかなか男前だと言うもの、お敏はよく見るとそう見えるかもしれないけど、ちょっと見ると変だと言う。敬四郎はお敏をからかい、かおるが言っていた60の人との縁談のことを聞くが、お敏はこのうちで若い皆さんにモテてたほうがいいと言う。

 

敬四郎「そうそう。お敏さんは偉いよ。そのほうが現実的でクールな考え方だよ。どうせ今頃からお敏さんが結婚したって便利で重宝、タダでこき使おうって魂胆だからね」

愛子「そうばっかでもありませんよ」

敬四郎「そうですよ。大体結婚なんてのは双方が便利だからくっつきたがるんでしょ?」

武男「そんなことがあるか。もっと神聖だよ。もっと精神的な愛情の問題だ」

 

うむうむ、いろんな意見が出たけど、敬四郎の意見がいちばん分かる。

 

再びインターホンが鳴り、敬四郎が出ていく。

 

愛子「愛情の問題はいいけど困ったわね」

お敏「いいえ、奥様。私はよくよく考えてみないとお嫁になんか参りません。まして60のおじいさんなんてとんでもありませんわ。真っ平です、そんな年寄りなんか」

亀次郎も60だと愛子が言うと、こちらの旦那様は特別だとお敏は言う。早寝早起きが薬で若い、お敏自身は上まぶたと下まぶたがチューインガムで貼り付けたみたいにくっついちゃうと言う。

 

三郎帰宅。狭い台所に愛子、武男、三郎、敬四郎がいてお敏は作業しづらそう。構わず話し続けた三郎は演劇部のリーダーが同級生と学生結婚して窮地に追い込まれたと訴える。

 

またインターホンが鳴る。裏玄関に敬四郎が行き、これ以上人が増えたら狭いからと愛子と子供たちは茶の間へ移動した。

 

一人残ったお敏。「だけど、ああは言ってみたものの結婚ってよっぽどいいものらしいわ。見合いしちゃおうかしら。60のおじいさんでもいいから」と大きな独り言を言う。

 

敬四郎が戻ってきて、みんな茶の間に行ったとお敏から聞くと移動。入れ違いに台所に入ってきたのはかおる。なんか食べるものない?と聞き、お敏の目の前にある大きな鍋からふかしたじゃがいもを箸にさして塩をかけて食べ始める。

 

茶の間

三郎は親に逆らい学生結婚した2人を鶴家の別宅に置いてやりたいと思っていた。あいつにはいろいろと助かってると言うものの、金を貸したことはあっても借りたことはないと言う。どういう世話になってるのかと愛子が聞くと、言うに言えない無形の恩恵ってものがあると答えた。

 

しかし、武男は住むところもないのに結婚しようってのが無理なんじゃないのかと言うが、三郎によれば親の反対で送金を打ち切られ、アパートも今月いっぱいで追い出される。さっきは反対していた敬四郎も学生結婚した2人に同情する。

 

敬四郎「そこが僕はアイスクリームなんですよ。クールって言葉がはやってるでしょ。冷たいけどすぐ溶けちゃう」

初めて聞いた、そんなの。

 

愛子はお父さんが承知するわけないとこのうちはダメだと言うが、三郎はひと月やふた月でいいと言う。隣の別宅の敬四郎の部屋か三郎の部屋に入ってもらい、敬四郎と三郎はひとつの部屋へ。部屋代をとればいいと敬四郎は言うが、三郎はタダで貸すつもりでいる。結婚を延ばせばいいと言う武男に熱くなってるからそうもいかないと言う三郎。かおるも茶の間にやってきて愛子に抱きつく。

 

またインターホンが鳴り、敬四郎が出ていく。

 

かおるは好きな英語の先生がこの秋結婚すると知り、がっかりしていた。先生は28歳。洋二兄さんと同じだね。と思ったら、洋二が帰宅。敬四郎は面倒だから鍵をかけないできたと言う。

 

帰ってくるなり洋二を変な顔をしていると指摘した愛子。「面白いことがありますか。お母さん、頭がガンガンするのよ。少し静かにしてちょうだい」

敬四郎はお敏にお茶を頼む。

愛子「ほんとに初子さんはお嫁に行っちゃったし、お敏さんは寝坊だし忘れっぽいし」

洋二「えっ? 初子さん、お嫁に行っちゃったんですか?」

愛子「そうなの。今日、横須賀の兄さんが来て荷物も持ってってしまったわ」

洋二「ほんとですか、それ」

かおる「そうよ、私もお敏さんから聞いてびっくりしちゃった」

愛子「あっさりしたもんよね、出ていくときは」

敬四郎「クールだよね」

 

愛子は武男があんな困った人を好きなんてと武男に言い、秋子の結婚、お敏も60の人とまんざらではないとかおるも言う。お茶を運んできたお敏は、そのことを聞かれるとあら恥ずかしいとくねくねして去っていく。敬四郎の分のお茶が足りないと言っても聞いてない。

 

洋二は自分のお茶を敬四郎に渡し、部屋で寝っ転がるからと出ていく。何があったのか聞いてもあいまいに答える。三郎が水原さんのことじゃないの?と言うと、多分、そうかもしれないよと出ていった。

 

愛子「ハァ…どうしてうちの子供たちってこう難しい人ばっかり好きになるのかしらね」

かおる「個性がはっきりしてんじゃないかしらね」

 

武男も部屋へ行って寝ると出ていき、三郎も順番だからと出ていく。

愛子「バカね、あの子は」

かおる「ほんとバカね」

愛子「何がバカですか。お兄さんにバカなんて言うあんたの方がよっぽどバカですよ」

かおると言い合いになった敬四郎も出ていき、かおるも後を追う。

 

愛子「結婚だの恋愛だの、どうしてこうめんどくさいのかしら」

愛子さんがやってるのはスナップエンドウの筋取り?

 

お敏が茶の間に入ってきて湯飲みを片付ける。お敏さんだけが頼りだと愛子が言うと、またまたチューインガムを目に貼り付けたみたいだと話す。

 

お敏「そうそう、絵に描いた地震っていう言葉があるじゃありませんか」

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普通にある言葉なんだろうけど、聞いたことなかったな。

 

愛子「なんのこと? それ」

お敏「絵に描いた地震は動かないんですよ。つまり無精者のことじゃないんでしょうか」

愛子「あきれた人ね、あんたは」

お敏「ほんとにどうかしてるんですわ」

夕飯の支度をしなくちゃとあわただしく湯飲みと愛子が作業していたスナップエンドウの入ったざるを運んでいく。

 

台所

お敏「さてと一服してから張り切っちゃおうかな」とタバコを取り出すが、その前にほぐしておかなくちゃとマッサージ椅子に10円を入れる。「ああ~、雷おやじはうるさいし息子も娘も世話が焼けるし」とまたまた大きな独り言。

 

そしてインターホンが鳴る。今、かけたばかりで動きたくないお敏。愛子が裏玄関に行くと幸子が帰ってきた。もうみんな帰ってきたから鍵をかけてちょうだいと愛子が幸子に言う。

 

お敏「いちいち鍵なんかかけなくたっていいのに。どうして金持ちってこう用心深いのかしら」とマッサージ椅子に座りながらひとりごと。愛子に見つかっても「すいません、つい10円がもったいなくて。途中で立ったら損しちゃうんですもの」と悪びれもしない。

 

幸子にこれからは少し手伝うんですよと愛子が言うと、幸子は夏休みにグアム旅行に誘われたと話す。愛子はダメですよと即答。「ガムはお敏さんのチューインガムだけで結構ですよ」と取り合わない。

 

幸子「なあに? お敏さんのチューインガムって」

お敏「幸子さんも寝る前に一度やってごらんなさいよ。鼻の穴を塞いじゃうんですよ。そうするといびきをかかないんですよ」

幸子「いびきなんてかかないわよ」

幸子が言ってしまうと、今度は電話が鳴る。お敏はまだ半分残ってますよと立とうとしない。

 

幸子が電話を受けると誰かが危篤だと知らせを受けていた。

お敏「危篤って誰か死にそうなのかしら。まあまあ自分さえ生きていりゃ、こうして椅子にもかけていられるし」

 

しかし、危篤なのはお敏のお母さん。幸子から知らされても椅子に座ったまま、まあどうしましょう、まだ椅子が止まらないとそのまま。幸子は愛子を呼びに行く。

 

お敏「絵に描いた地震ってこのことだわ」でまだ揺られている。

 

子供たちみんなが食事を運んで大忙し。

敬四郎「ああ、全く食べるってことは勉強するより大変ですね」

かおる「敬四郎の勉強よりはね」

敬四郎「こら!」

愛子「かおるがいけませんよ。いちいち逆らうんだから」

三郎「どうしていちばんしまいにこんなあせものよりみたいな子が出来ちゃったんですか?」

敬四郎「ワハハハッ」

かおる「お母さん、なんとか言ってよ」

愛子「言いませんよ、もうくたびれちゃって」

 

うるさい敬四郎や三郎を注意する洋二。

かおる「洋二兄さんだって悩んでんのよね、今日は」

かおる、敬四郎、三郎に順々に顔を覗き込まれた洋二は隣に座る三郎の額を小突くと順々に頭をのけぞらせた。

幸子「いいのよ、あんたが口出さなくたって」

 

幸子が奥の真ん中に座り、左側に手前から洋二、三郎、敬四郎、かおる、右側に手前から愛子、武男が並ぶ。なんで幸子が中央? 

 

これまで出てこない亀次郎はすでに帰宅し、風呂に入っている。かおるに様子を見に行くように言う愛子。かおるは風呂場へ駆け出す。

 

三郎「どうして末っ子は出来が悪いんだろう」

愛子「悪くありませんよ、別に」

幸子「三郎兄さんだって口が多いのよ」

三郎「口が多いのは全学連ですよ。どこへでも出しゃばってさ」

幸子「あら、私、関係ないわ」

 

愛子「明日っからどうなるのかしら。お手伝いさんが2人もいなくなってしまって」

洋二「手伝いますよ、僕だって」

三郎「お母さん、任しといてください」

幸子「そうよ、私だって手伝うわ」

敬四郎「ええ、僕だって予備校なんか休んじゃいますよ」

愛子「休んじゃダメですよ」

武男「来年こそ落っこちないようにしてもらいたいな」

敬四郎「ああ、そうですか」

幸子「心細いわね」

 

かおるが戻ってきて、亀次郎がタイルを洗っていると報告。まだ夕食にありつけずがっかりの三郎と敬四郎。

愛子「お父さんは働いてないと気が済まない人よ。怠けるってことを知らない人なんだから」

だから怒鳴ったって仕方ないと納得する三郎。

 

またしてもインターホンが鳴る。

黄枝子「わたくし先日失礼なことを申し上げに伺った片桐でございますけれど、ちょっとお詫びに伺いました」

インターホンを聞いていた敬四郎が「この間、怒鳴り込んできた武男兄さんの初恋の人ですよ」と報告。

武男「えっ? 片桐さんが?」慌てて正面玄関へ向かい、滑って転ぶ。

 

敬四郎「ハハハハ! まるでなっちゃいないよ。お母さん、武男兄さんが滑って転びましたよ」

 

⚟亀次郎「こら! 何をわめいてるんだ、うちの中で!」

 

敬四郎の困り顔でつづく。

 

亀次郎も黄枝子も声のみの出演。それにしても初子だよ。役者都合と思うほど突然の結婚。写真も出てこないのがまた不思議。洋二と何となくやりとりがあるのかな?と思ったんだけど、洋二もまったく知らされてなかったようだし、なにより水原さんのことで頭がいっぱいっぽいし…。思えば前回も横須賀に行ってるとして出てこなかったもんね。このままフェードアウト?