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【ネタバレ】木下恵介アワー「おやじ太鼓」 #6

TBS  1968年2月20日

 

あらすじ

結婚式の祝辞を読む練習をしている亀次郎。しかし、どこか元気がないように見える。自分の子どもたちはまだ誰も結婚が決まっていないのに、他人の結婚式の祝辞ばかり練習するのはつらいものなのだ。特に、空襲で足が不自由になった洋二はどこか影があり、亀次郎は気がかりに思っていた。

2023.7.19 BS松竹東急録画。11話までモノクロ。

peachredrum.hateblo.jp

鶴家

亀次郎:進藤英太郎…大亀建設株式会社を一代で立ち上げた。2月5日で61歳。

妻・愛子:風見章子…5月で56歳。

長男・武男:園井啓介…亀次郎の会社の社長秘書。3月3日で30歳。独身。

次男・洋二:西川宏…ピアノや歌が得意。空襲で足を悪くした。27~28歳。

長女・秋子:香山美子…出版社勤務。26歳。

三男・三郎:津坂匡章(現・秋野太作)…二浪して大学生。

次女・幸子:高梨木聖…女子大生。1月に成人式に出席。

四男・敬四郎:あおい輝彦…浪人中。

三女・かおる:沢田雅美…4月から高校生。

*

お手伝いさん

初子:新田勝江…亀次郎と同じ誕生日2/5で30歳。

お敏:菅井きん…愛子の4つ下。

 

亀次郎は広間で結婚式のスピーチの練習していた。原稿は武男の作。

愛子「でも長々としゃべっといて『簡単ではございますが』なんて、あれだけは言わない方がいいですよ」

いろんな格言が入った入社試験の論文のような文章。お互い結婚生活では我慢してきたという話から、子供たちは1人も結婚は決まらないのはなぜかと亀次郎は不思議がる。

 

武男帰宅。汚い駆け引きをされたが、契約成立。

武男「学校を建てるのにも町の顔役が間に入るんですからね。まるでヤクザですよ」

 

亀次郎は報告を聞いて、風呂へ。武男は愛子を広間へ呼んだ。格言を棒に繋げただけの結婚式のスピーチがどうかしてやしない?と愛子は武男に言う。言葉を知ってるだけ利口に見えると堂々としている。

 

武男の愛子への用事を話そうとしたが、その前にお茶。夕食中のお敏が席を立ち、戻ってきた初子もそそくさと夕食を食べ始める。また亀次郎に怒鳴られたという初子。風呂の中に洗濯石鹸が入ってくさかった。

 

私たちだっていれたてのお茶が飲みたいと広間に持っていく土瓶からお茶を注ぐ初子とお敏。そこに愛子が来て「まだごはんだったの?」。お茶っ葉を入れ替えて、武男のお茶漬けとわさびを茶の間に持ってくるように言う。

 

台所の戸に錠をつけなきゃ、とても長生きできそうにないというお敏。ゆっくり食事もできないのはつらい。

 

茶の間

先日、神尾は亀次郎の怒鳴り声におっかなくなってしまい会わずに帰った。武男は神尾に初めて会い、好感を持った。

 

茶の間の隣が亀次郎たちの部屋で亀次郎はふすまを開けて石鹸くさかったと怒っている。「脚でも揉みなさい。不機嫌なまま寝るから」。愛子は足を揉みに行き、武男はお茶漬けを食べる。

 

台所に行った愛子は「まだ食べてるの?」とツッコミ。お敏は一粒も残さないといい、愛子は水を1杯頼み、帰ってくる子供たちのためにご飯を少し炊いといてやってとお願いする。

 

食べ終えたお敏は「親が死んでも食後の一服」とタバコを吸い始めた。武男にお風呂のお湯を入れ替えてと言われ、タバコに火をつけたばかりのお敏は初子に行くように言う。

 

亀次郎は布団に入り、愛子が足を揉む。かおるが帰ってきて「ただいま」のあいさつ。亀次郎はスカートは短すぎるし、透き通る寝巻きは欲しがるし…と早熟なかおるを心配し、性教育が間違ったんじゃないのか?と愛子に言う。女の子は女親の責任という亀次郎に女の子は男親に似ると愛子。

 

かおるが水を持ってきた。かおるは男の子の友達のところへ行っていた。父は二号さんのところに行ったきり、母にも愛人がいるような複雑な家庭の子だとペラペラ話す。何を教えたんだという亀次郎に愛子はちゃんと講習会で聞いてきたと性教育

 

台所

かおるはお敏にもう50過ぎちゃったんでしょ?と聞く。6月で52歳。お母さんより老けてるけどちょうどいい、向こうの人は60歳と縁談を勧めている。お店を床屋に貸して、子供たちも独立した遊んでる人。世話もかからない。こんないい話ないんじゃない?と聞くがお敏は乗り気じゃない。お敏さんが嫌なら初子さんでもいいとかおるは言うが、初子にしてみれば30歳も年上の人はお断り。

 

洋二と三郎が帰宅。洋二は「お母さん、ただいま」と声をかけ、三郎は「お父さん、ただいま」。亀次郎はなんで洋二は「お母さん、お母さん」と言うんだとちょっと気にしている。愛子は寝てると思ったからでしょとすかさずフォロー。

 

7人もいるのに1人も片付かんと嘆く亀次郎に愛子は秋子と結婚したいって人が今度の日曜日に会いたいといっていると伝えた。「こっぴどくかみついてやろうか」という亀次郎に、そんなこと言ってるから1人も片付かないとあきれる愛子。

 

秋子は神尾と映画に行っていて、銀座で武男と会ったと聞いた亀次郎は武男を呼べ!と布団から起き上がって怒り出す。

 

亀次郎「お前は映画がどういうものか知ってるのか? エロもエロも大エロだぞ。そんなものを若い娘が若い男と見てもしフラフラっと熱くなったらどうするんだ」

愛子「見たことあるんですか? あなたは」

 

ともかく武男を呼んで来いと言い、愛子も神尾をとってもいい青年でしたよと報告。この家に来たと話すと、誰の許可を得てこの家の敷居を跨がせたんだと愛子を責める。武男が来ると、武男に殴りかかりそうな勢いで怒る。

 

亀次郎の怒りは高円寺のばばあ推薦の代議士の息子と秋子が会っていると勘違いしていたせいで愛子は否定し、武男はテレビ局勤務の二枚目だと教える。

 

お敏と初子は何度も声をかけられるのがうっとうしくなったのか台所につっかえ棒を置いて開けられないようにしていた。愛子は亀次郎に出がらしの薄いお茶をお願いした。大声で怒鳴り散らす亀次郎の話をするお敏と初子。

 

お敏「底力があるのね、頭が薄くなっても」

初子「カッカするたんびに毛が抜けるんじゃないのかしら。どうもそんな気がするわ」

いやいや、亀次郎さん全然薄くないよ、むしろ濃いよ!

 

愛子が部屋に戻ると亀次郎は布団に入って目をつぶっていたが、今度は頭を揉めと言ってきた。

 

台所

三郎とかおるがお茶漬けを食べている。誰か帰って来た気配に敬四郎だろうと言うかおる。秋子姉さんは彼氏と映画、幸子姉さんは全学連の同志と語らってる。帰って来たのは敬四郎。台所をいったん出て、亀次郎に「ただいま」のあいさつ。

 

うちの子たちはのびのびいい子に育っているという愛子は普通ならいじけるという。「一度テープに入れてみるんですね、ご自分がどんな声を出してるか」。うるさく言うのは親の情だという亀次郎。

 

亀次郎がやっと寝ると言いだしたころ、ピアノの音が聴こえ始める。

亀次郎「洋二がピアノ弾いてるのか?」

愛子「あの子だけどっか暗いところがあるんですよ。今頃1人でピアノを弾いてるんですからね」

亀次郎「脚のことが気になるんだろ。早くいいお嫁さんをめっけてやるんだな」

愛子「かわいそうにあの子だけ戦争のとばっちりを受けちゃって」

亀次郎「あの空襲じゃどうしようもなかった。まさか防空壕がやられるとは思わなかったもんな」

愛子「思い出してもゾッとしますよ。あんな嫌なことってもう二度と起こらなきゃいいんですけどね」

亀次郎「それが危ないもんだよ。人間のバカさ加減なんて底が知れん」

愛子「あんなきれいな音楽を作ったのも人間ですのにね」

亀次郎「日本もどうなることか。学生は騒ぐし、政府は弾圧するし、うちの幸子も騒ぐほうの仲間じゃないのか?」

愛子「どうもそうらしいんですけどね。心配なんですよ、女だから」

 

広間でピアノを弾く洋二。そっとお茶を運んできた初子は洋二の演奏に聴き入る。(つづく)

 

全体にコメディなのにぐっとシリアスになるのもいいね。洋二と幸子は他の兄弟たちに比べるとどこか陰がある感じ。