公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意
大介(木下浩之)は世界地図を広げて元子(原日出子)に説明する。ケニヤの小さな町でエビの養殖をするという。元子はそこには病院はあるのかなど、心配で仕方がない。編集室でアフリカの資料を探そうとしていると福井(三木弘子)が聞きつけ、興味のあることを自分で見つけて書いていくのは大賛成と勘違いされる。正道(鹿賀丈史)は旅費を貯めたり準備する期間を親子の猶予期間にして、考えが変わったら話し合おうという…。
BSのない環境にいたため、遅れ視聴しています。この回は2023年3月20日(月)放送。
月曜日回だけど、そんなにゆっくりに感じないオープニング。
三木弘子さんの役名は泰子から再び福井編集長へ。
大原家茶の間
地図帳を広げて、家族みんなで場所を確認中。
大介「えっとね…ほらね。ここがケニアでそのお隣がタンザニア。タンザニアの首都がダルエスサラームでここへは日本の船もよく行ってる。ケニアのモンバサもちゃんとした漁港基地なんだよ」
道子「へ~え。ケニアってライオンの国かと思ってた」
大介「高校生だろうが、お前は」
道子「だって『少年ケニヤ』の話があったから」
日本人少年・ワタルが戦時中に商社マンの父親とはぐれ、ケニアで父親を探す冒険物語。ドラマ版は1961年の話にしている。
正道「あ~…道子、黙ってなさい」
大介「でね、先輩のいる所はモンバサよりは少し離れてるんだけど、やっぱりこの海岸線の小さな漁村なんだ。そこにはまだ日本人は先輩ぐらいしかいないんだけど、モンバサまで行けば日本の船もよく来てるらしい」
元子「そこには病院なんかはあるんですか?」
大介「ああ、もちろんあるさ。大きな港なんだから」
元子「そうじゃないのよ。大介が行くその小さな村のこと言ってんの」
大介「大丈夫だよ。車で走れば2時間ぐらいのものだと言ってたし、ナイロビまで行けば、もう大都市だからね。必需品は何でもそろうそうだけど、そういうものは最小限に抑えて大自然を満喫すべきだと先輩は言っている。だからこそ、僕は行きたいんだ」
元子「大介…」
大介「このごろはね、日本のすし屋で握られてるすしもアフリカ産のものが多くなってきてるんだよ。だから先輩も現地の若者と共同体で養殖をやろうって計画中なんだ。日本人ほどエビの好きな人種も珍しいからね」
元子「私は別に好きじゃないわ」
正道「おい、元子」
食欲不振の元子のために正道が買ってきた寿司折。大介が食べたのは、えびとシャコ。元子は中トロ、コハダ好き、と。
大介「心配ないってば。お父さんも受賞したことだし、僕もそこで汗を流して働く。見ててよ、母さん」
元子「私はね…」
大介「うん、先輩への協力は、まず2年間と区切って約束したんだ。そのあとのことはまた考えるけど、その時は母さんたちも呼ぶよ。だから、様子を見に来たらいいじゃないか。見れば、きっと安心できるし留学させたと思えば、学費が要らないだけ得じゃないか。なあ? ハハハハ…」
大介と正道がお茶を飲んで湯飲みをテーブルの上に置く動きがシンクロしてる。
モンパリ
洋三「お~、正道さんが受賞した? そりゃ、よかった。大したもんだ」大介と圭子のテーブル席へ水を運んでくる。
大介「はい。おかげで僕も大助かりです」
洋三「ん…うん? どういう意味だ?」
大介「いやぁ、別に悪いことしてるとは思ってないけど、やっぱりおふくろがどう思うかと考えるとケニアの話、ちょっとばかし言いだしにくいところがったでしょ。だから、おやじの受賞は絶好のタイミングでした」
圭子「それじゃまるでどさくさ紛れじゃないの」
大介「それは言い過ぎだよ。受賞通知より僕の方が先だったもの」
圭子「ちゃんと自分から切り出せたの?」
大介「いや、おふくろの方から問い詰めてきた」
圭子「で、やむなく白状に及んだわけだ」
大介「お互いそういうタイミングだったのさ。あの人だって、どっちかっていうとピンと来る方だし、最近、僕が工事現場で働いてることぐらいおふくろとして嗅ぎつけていたからね」
圭子「で、反応は?」
大介「ああ、2年たっても僕の気が変わらないような所だったら圭子も冬彦を連れてやって来るって言ったのが、かなりポイントを稼いだと思う」
圭子「ずるいわよ、私たちをそんなふうに利用するなんて」
大介「だって、君はそう言ったじゃないか」
圭子「そりゃ言ったけど」
大介「だったら、利用するだなんて嫌な言葉は使ってほしくないな」
圭子「でも、自分の意志としてどうしてはっきり言えなかったの?」
大介「はっきり言ったさ。だから君にももう一度言っておく。失恋はしたけど完全に結婚を諦めたわけじゃないんだから」
圭子「失恋だなんて」
大介「だって、ほかに説明のしようがあるかい?」
圭子「私は自分に自信がつくまで延期を申し込んだだけで結婚しないって言ったわけじゃないわ」
大介「だって…」
洋三「おいおい。君たちは、それは堂々巡りってもんだぞ」今度はコーヒーを運ぶ。
圭子「ほらごらんなさい」
洋三「君たちは亡くなった友達の子供を産んだり、それから、その出産を応援するために同棲したり、いわば私たちの持ってる既成概念をぶち破るところでやってきたわけだから、え、アフリカへ行くこともそれからその2年間をお互いに成長するように突っ張り合うことも、いわばその延長線上にあることなんじゃないのかな。うん? だから、それはとことんやるべきだし、だからこそ私たちは陰ながら自称応援団を自認しとるんだよ。ねえ、八木沢君」
八木沢「はあ」
大介「そうなんだよね。まあ、すぐに行くわけじゃないし、それまでにおふくろに何度か絡まれるだろうけど、じっくり分かってもらうよう努力するよ」
圭子「その限りにおいては私、いくらでも協力する」
大介「うん」
洋三「ハハハ、さあさあ…」
大介「頂きます」
しかし、元子の方はそう簡単には割り切れてはおりませんでした。
吉宗前の路地を歩いてくる元子。
吉宗
元子「ごめんください」
桂木家茶の間
巳代子「まあ、それはおめでとう。ねえ、で、いつが授賞式なの?」
元子「ううん。ゆうべ通知が来たばっかりだし、正道さんもさっき挨拶に出かけてったとこだから」
トシ江「まあ、そりゃよかったねえ。正道っつぁんが地道にコツコツとやってきなすったたまものだよ」
元子「はい」
トシ江「そいで、松江のおかあさん、お喜びだろ。何ておっしゃったの?」
元子「えっ…いいえ」
巳代子「いいえって、お姉ちゃん、まだ知らせてないの?」
元子「あ…すいません」
トシ江「すいませんじゃないよ。正道さん、ご長男なんだよ。それが東京へ出てきて陽子さんがあちらをちゃんと守ってくださるからこそ、今度のようなご褒美が頂けるような仕事ができたんじゃないの。どうかしてるよ、今日の元子」
元子「実は大介が…」
巳代子「大ちゃんがどうかしたの?」
元子「アフリカに行くって言いだして」
巳代子「え~!」
トシ江「アフリカ?」
巳代子「何しに?」
元子「働きに」
トシ江「そいであんた…?」
元子「承知したわけじゃないんですけどね、当の本人がすっかりその気になって旅費をためてるありさまなのよ」
巳代子「驚いたあ。小さい時から随分しっかりしてる子だと思ったけど、こう次から次へととっぴなことやる子だとは思わなかったわ」
トシ江「何言ってんのよ。別居したり戻ったり、あんた、人(しと)のことなんか言えませんよ」
巳代子「だってそれは、あんまりお母さんたちが心配するから」
トシ江「変なところで私をだしにしないでちょうだいな」
巳代子「大丈夫よ。お互い多少、引っかかりは残っているけど二度とご迷惑かけないようにちゃんと話し合ってルール決めてやってますから。それより今は大ちゃんのことでしょう」
元子「とにかくね、ゆうべの今日だし出かけるにしてもまだ先のことだから私の心づもりとしては一応聞き置きましたってことにはなってるんですけど」
トシ江「あの子は小さい時からめったなことは口にしない子だったね」
巳代子「じゃあお母さん認める気?」戸棚から大きなオレンジ?を取り出して配る。
トシ江「何言ってんのよ。認めるとか反対するとかどうして私が言えんの。大介の親は元子と正道っつぁんじゃないか」
巳代子「お姉ちゃん」
元子「そんな責め立てないでよ。私だって一生懸命考えてんだから」
トシ江「ああ。考えて考えすぎることはないよ。親の心配もちろんだけどね、大介の身になってよ~く考えてやっておくれよ。お父さんが生きてたとしても、きっとそうしただろうからさ」
元子「はい…」
山田木工所
山田「どうも。いやぁ、いいじゃないですか。大原さんは受賞、息子さんはアフリカなんて、こりゃもう万々歳だ」
正道「あ~、いやまだね息子のは決まったわけじゃないんですが、まあ、とにかく山田さんのおかげですよ」
山田「いやぁ、何言ってるんですか。私はあんた、大原さんの持ち込む案にはケチつけてばかりいただけでさ」
正道「いえ、それがよかったんじゃないですか。文句を言いながら、専門家としていろいろ知恵を出してくれた。いわば今度の賞はね、僕と山田さんの2人にもらったようなもんですよ」
山田「大原さん…」
正道「だからね、今、所長のとこ挨拶に行って、それでここ飛んできたんですよ。いや、本当にありがとう」
山田「いやぁ、とんでもない。礼を言うのは私の方だ」
正道「いや、冗談じゃないですよ」
山田「いやぁ…」
正道「ハハハ…」
山田「そうはいってもね、商売なんでね。いつぞやそんなもうけ主義の仕事をするのかと大原さんに言われた時は、私はね…」
正道「いや、あの時のことでしたらね、私もちょっと言い過ぎたと思ってね、反省してるんですよ」
男「おやじさん、これ貼っとくよ」
山田「おう。けどね、あの時、頭にカッカとなる大原さんの仕事があったからこそ職人としての誇りというんですか、そういうのをなくさずやってこれたと思うんですよ。まあ、とにかく何でもやってみることですわ。そうだ! 息子さんがアフリカに行くんじゃ向こうじゃどんな木でどんな椅子を作ってるんだか写真を撮って、ひとつ送ってもらおうじゃありませんか」
正道「ああ、そうですね…。しかしね、大介の方はまだ先の話ですし、まだ決まったわけじゃないんですよ」
山田「何だ、すぐじゃないのか…」
正道「ハハ…」
女性時代編集部
野村「へえ~、アフリカの資料?」
元子「はい」
野村「アフリカの何の資料ですか?」
元子「例えば、漁業とか音楽とか東側の方のものでいいんです」
野村「東側っていうと…」
福井「何を始めるつもりなの? 大原さん」
元子「あっ…いえ、別にそういうことでは…」
福井「いいじゃないの。興味のあること、自分でそうやって書いていくこと大賛成よ」
元子「でも私、あの…」
福井「あなたもこの世界じゃ結構古顔なんだし…。それ、お願いね」
冬木「あっ、はい」
福井「いつまでもお仕着せルポライターに甘んじていることはないのよ。持ち込みも結構。いいものが書けたら持ってらっしゃい」
冬木「すごいな。さすが大原さん」
福井「いつまでも若くて飛び回れるわけじゃなし、チャンスは自分で生かしていくべきです。野村君、資料室へ案内してあげて」
野村「はい」
福井「けど、いきなりアフリカとは少々驚きね。大原さんが書くとしたら、もっと足元の問題から始めると思ったけど」
元子「あっ…どうもすいません」
野村「それじゃあ、行きましょうか」
元子「はい…」
大原家茶の間
テーブルの上に広げられたアフリカ関連本。元子は原稿を書く。
編集長に勘違いされたまま、元子は気を取り直して書きかけの我が来た道、自分史に取り組みましたが、気になるのはアフリカのことばかりでした。
夜、ダイニング
道子「それじゃ、私たち授賞式に招待してもらえないの?」
正道「いや、そんな大げさなことじゃないんだよ。お父さんが行ってな、ありがとうございましたって賞状をもらってくれば、それで済むことなんだ」
道子「残念なの。ねえ、お母さん」
元子「でも、そういうことなんだからしかたがないわよ。そのかわり、みんなでうちでお祝いしたらいいわ。ささやかに心を込めて」
大介「うん、賛成」
正道「というわけで、こっちの問題が片づいたとなると次は大介だ」
大介「はい」
正道「旅費がたまってな、いざ出発となるまでにお前の計画じゃどれぐらいの余裕がありそうだ?」
大介「今のところ半年以上はかかりそうです。旅費だけじゃなく、たつ前に先輩から依頼されてる養殖場の見学もあるし、早くて10か月ぐらいかな」
正道「それで大学はどうするんだ? 卒業する気はあるのか?」
大介「単位はがっちり取ってあるので空いた時間に顔を出すことで卒業させてもらえると思うけど。難しいとなれば…本当にお二人には申し訳ありませんが卒業証書をもらうためにだけで中途半端なことはしたくないと思ってます」
正道「それで後悔はしないのか?」
大介「母さんは放送局を受ける時に専門学校を中退したの後悔してる?」
元子「ううん、後悔はしたことないけど」
大介「だったら同じさ。卒業を条件のところに就職することは駄目になるけど反対にアフリカでの経験を買ってくれるところでは働けるもの」
正道「うん。よし、じゃあ、こういうことにしよう。その出発までの10か月間を猶予期間としよう。その間に、お前の考えが変わってもよし、こっちにしてもまた新たな反対理由が出てくるかも分からん。その時はその時でお互いにまた腹をぶちまけて話し合う。な、そういうことでどうだろう。なあ、元子」
元子「ええ、そういうことでしたら」
正道「よし。じゃ、大介もなその間に反対されないようにしっかりと勉強しなくっちゃ。な」
大介「はい。ありがとう父さん、母さん」
元子の顔を見てうなずく正道。
多分、これよりほかに今は方法はないのでしょう。
つづく
明日も
このつづきを
どうぞ……
今は昭和47年の3月くらい? 大介は大学4年になる直前くらいかな。卒業だけはしとけというのも分かるけど、大介の言うように経験を買ってくれるところで働くとか起業するとか、行動力のある人ならどんな対応でもできそう。