公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意
元子(原日出子)が洋三(上條恒彦)とともに大介(木下浩之)に会いに行く日、トシ江(宮本信子)が幸之助(牧伸二)と一緒に訪ねてくる。大介が家を出ていったと道子(川上麻衣子)から聞いて、心配してやって来たという。話がこじれるといけないので二人には帰ってもらい、元子は洋三と大介のいるアパートへ。一緒に暮らしている友達・圭子(鈴木美江)は大きくなったお腹で現れるが、この子の父親は大介ではないという…。
BSのない環境にいたため、遅れ視聴しています。この回は2023年3月9日(木)放送。
大原家ダイニング
コンパクトで口紅チェックする元子。
今日は、いよいよ叔父の洋三と共に大介に会いに行く日なのです。
戸が開く音
⚟トシ江「ごめんください。元子」
元子「はい」
玄関
元子「あら、おじさん…」
幸之助「いやぁ、もっちゃん、とんだことだったなあ。何て言ったらいいか分からねえんだけども河内山亡きあとは町内のことは全てこの俺が肝煎り役を引き受けてるんでな、で、まあ、おトシさんと一緒に来ちまったようなわけなんだ」
元子「でも、あの…」
トシ江「大介のことだよ、大介の」
大原家ダイニング
お茶を入れる元子。
トシ江「私があんなに心配して電話かけたっていうのに、こんな大それたことをどうして何にも言わなかったのよ」
元子「だってまだ何にもはっきりしてないんですもの」
トシ江「バカをお言い。現に大介、うち出たんでしょう。こんなはっきりしたことが一体どこにあるっていうの」
元子「けど、どうしてそれを?」
トシ江「道子よ」
元子「道子が?」
トシ江「ええ。昨日ね、学校の帰りに私のとこ寄ったの。そりゃまあ、たった2人のきょうだいですもの。親が頼りなきゃ私のとこ寄るの当たり前だわよ」
元子「とんでもないわよ。正道さんがお母さんには心配かけるなって言うから」
トシ江「現にこうやって心配かけてるじゃないの。ねえ、元子」
幸之助「まあまあまあ…落ち着いて、落ち着いて」
元子「冗談じゃないわよ。そりゃあんまり自慢できるような話じゃないから、だから知らせなかっただけで、なにもご近所にまで触れ回ることじゃないじゃないの」
幸之助「そ…そりゃ違うんだよ。これは、おじさんの地獄耳でな、通りで俊平ちゃんを遊ばせてるおっ母さんの顔を見た途端にピンと来てな、強引についてきたんだ」
元子「本当に心配かけて申し訳ありませんでした。でも大丈夫ですから」
トシ江「大丈夫? 一体何が大丈夫だっていうの?」
元子「だから…」
トシ江「どうやらお出かけの様子だけど、おおむね大介のところにでも乗り込むつもりなんでしょう?」
幸之助「ああ、よ~し、間に合ってよかった。俺が一緒に行こう」
元子「いいんです。立会人の人(しと)なら別にちゃんと決まってますから」
幸之助「誰だい、そいつは」
⚟洋三「ごめんくださ~い」
トシ江「洋三さん?」
元子「というわけなのよ。おじさんの気持ちはとってもありがたいんですけど話がこじれてもいけないし、また今度お願いしますから。このとおりです」頭を下げる。
トシ江もすまなそうな表情を浮かべる。
アパート
洋三「大丈夫だね?」
元子「大丈夫です」
洋三「それじゃあ、ノックして」
元子が扉をノックする。
⚟大介「はい」
ドアを開けた大介。「いらっしゃい。さあ、どうぞ」
大介の傍らに立つ女性はおなかが大きい。
圭子「いらっしゃい。お待ちしてました」
元子「えっ?」
洋三「さあ、もっちゃん」
元子「ああ…」
圭子「どうぞ、狭いとこですけど」
部屋に通され、外にブラジャーと男物のパンツが干されているのを見てしまった元子。
大介「じゃあ、適当な所へ座ってよ」
洋三「うん。そんじゃ…」
圭子が座るのを手伝う大介。「あっ、お茶いれるね」
洋三「ん…いやいや、お茶は飲みたい時にもらうから」
大介「そうですか。じゃあ紹介します。筧(かけい)圭子さん」
圭子「筧です」
元子「大介の母です」
圭子「お話はいつも大介さんからいろいろと」
元子「そうですか。でも私はあなたのこと何にも聞かされてないもんですから、今日伺いましたの」
圭子「じゃあ、今から話しますから何でも聞いてください」
元子「じゃあ、ずばりと聞きます。大介は、このお嬢さんのおなかの子のお父さんになるわけね?」
大介「将来において、その可能性はある。今はそれしか言えない」
元子「どういう意味なの? それ」
圭子「セックスの結果ということでは、この子の父親は大介さんではありません」
洋三「あ…ちょっと大ちゃん、順序立てて話してくれないかな」
圭子「いえ、私から言います」
大介「圭子」
圭子「ううん、これは私がしたことだから」
大介「分かった。じゃあ、補足は僕がする」
圭子「この子の父親は単に私とはセックスしただけの相手です。だからこの子は私だけの子供以外の何者でもないんです」
元子「分かったわ。で、相手の方は、このこと知ってるの?」
圭子「彼は関係ありません」
元子「関係ないわけないでしょう。もし子供が生まれたら父親が認知しなくてどうするの?」
圭子「ですから、この子は私だけの子だって言ったでしょう」
大介「圭子」
圭子「ううん、大丈夫。彼だって子供を作ろうと思って私とつきあったわけじゃないし、私もそうだったもの。あの時、つい寂しくて彼の下宿についていっただけのことだわ」
元子「随分、無責任な行動でしたね」
圭子「だから、よ~く考えて産むことに決めたんです」
元子「結婚もしないで?」
大介「母さん」
元子「ううん、大介がこの人を応援したいって言うんだったら、母さん止めるわけにはいかないけど、でも、母さんはね、この人にとって、もし大介みたいな男性がいなかったら、どうするつもりだったのか、それが知りたいの。別口の大介を見つけるつもりだったのか」
大介「やめてくれ!」
元子「それとも諦めて中絶するつもりだったの?」
大介「彼は死んだんだよ。陸送のバイトをやっててガ~ンとぶつかって…」
圭子「大ちゃん!」
大介「もうこれ以上突っ張るなよ、圭子。この2人は決して話して分からない人たちじゃないんだから。彼は同じサークルの友達で彼を圭子に紹介したのは、この僕なんだ」
洋三「ああ…。で、そのことで大ちゃんは責任を感じてるってわけかい?」
大介「ええ…。子供が出来たことについて、やつに結論を出せと迫ったのは僕だし、やつはあの時、もしかしたら、そのことを考えながらハンドルを握っていたとしたら…」
圭子「やめて、大ちゃん」
大介「しかしだね」
圭子「ううん。彼はバイトで自分の生活費を稼ぐのが精いっぱいだったし、大学も出ないうちに産めとは言えなかったのよ。それに今にして思えば、優しいあの人には処置してくれとも言えなかったの。だけど、あの時は、それが男の身勝手に思えて絶交だって言ってしまったの。そのやさきの事故で私は私一人でおなかの子のことを考えなきゃならなかった。それでやっと分かったの。彼に結論を出させることで私は自分の責任から逃れようとしてたんだって。彼が亡くなってから彼の下宿を整理したり、考えあぐねているうちに、ある日、ピクッて動いたんです、おなかの中の子が。友達にはこの時期ならまだ多少の危険はあるけど処置する方法はなくはないって言われたんだけど、それじゃ私の中で育っている、この一つの命を殺すことになるんじゃないかって思ったんです。私には殺せない…。で、ついこないだまで出産費用をためようとバイトしてたら急におなかが痛くなって流産の危険があるって言われて」
元子「流産?」
圭子「でも大丈夫です。大ちゃんが来てくれたし、1週間ぐらい安静にしてれば平気だって言われたから」
元子「で、ご両親は、このことを…?」
圭子「いいんです」
元子「どうして? 赤ちゃんに対してちゃんと責任を持った考えを持ってるってのは分かるけれど、そこでどうしてご両親のお気持ちも大事に考えてあげられなかったのかしら」
圭子「私、両親を信用してませんから」
洋三「かっこいいけど、どうも私には身勝手なように聞こえるなあ」
大介「だけど、僕がついてるから」
元子「うぬぼれるのもいいかげんにしなさい。どうして圭子さんのご両親よりあなたが力になれるって決められるの?」
圭子「世の中、大ちゃんのお母さんみたいな人ばかりじゃありません。愛し合っても信じ合ってもいないのに一緒に暮らしてる夫婦なんて私の親だけでたくさんなんです」
元子「あなた、おいくつ?」
圭子「二十歳、短大の2年です」
元子「じゃあ、学校は?」
圭子「中退です。どうしても産むって言ったら送金ストップしてきたから」
大介「だから圭子が働けるようになるまで、おじさん、バイト続けさせてください。お願いします」
洋三「ああ。それで、将来生まれてくる子供の父親になる可能性があるかも分からないっていうのは、どういう意味なんだい。聞かせてくれよ」
大介「つまり、僕は…」
圭子「大ちゃん、私、同情は嫌なの」
大介「そんなこと、もっとお互い時間をかけてみなきゃ分からないじゃないか。父親にならなくたって父親の代わりになる人は、その子のために必要なんだから」
圭子「大ちゃん…。ありがとう」
見つめ合う2人にいたたまれない元子。
大介「お茶、いれるね」
圭子…鈴木美江さん。鈴木 淑恵さんの旧芸名。この方も「おしん」は書いてるのに「本日も晴天なり」は書いてない。おしんの孫で仁の長女の田倉あかね。妹のみどりが川上麻衣子さんで、偶然にも「おしん」以前に共演してたのね。
夕方、大介たちの部屋を出る洋三と元子。沈んだ様子で帰る。
夜、大原家ダイニング
正道「だから、心配するなって言っただろ」
元子「そうはいきませんよ。心配しないで心配するのが親の務めなんですから」
正道「しかし、日頃、いいかげんな若い親が多すぎるって憤慨してた君のことだ。むしろ同性として頼もしいお嬢さんと出会ったことになったじゃないか」
元子「よくそうやって他人のようなことが言えますね。それだけ私は複雑なんですよ」
戸が開く音
お風呂上がりの道子。「お先に」
元子「はい、おやすみ」
正道「お~、おやすみ」
元子「あなただって、大介の父親でしょう。それなのに…」
正道「いや、僕は大介を信用していたし、それに洋三叔父さんだって行ってくれたんだから」
元子「それでいいんですか? 大介は、その娘さんと結婚するかも分からないって言ってるんですよ」
正道「可能性があると言っただけで、その娘さんに対しても時間をかけて考えようって言ってるんだから」
元子「そうは言っても…」
電話が鳴る。
元子「はい、もしもし大原です」
巳代子「お願い、お姉ちゃん、すぐに来てちょうだいな!」
元子「どうしたのよ、巳代子」
巳代子「どうもこうもないわよ! 私たちもう離婚です! 離婚! 離婚!」
元子「離婚!? あなた、巳代子が離婚だって…。もしもし巳代子? ちょっと落ち着いて、ちゃんとしゃべってごらんなさいよ。どうしたのよ!」
つづく
ん~、正道さんは意外と妻>子供なのかもしれない。元子が他人のようと怒るのも分かるような。はあ~、6日分やりたかったけど、今日はもうやめとこう。