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【連続テレビ小説】本日も晴天なり(63)

公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意 

元子(原日出子)が転んで腹をうった!宗俊(津川雅彦)が仁王立ちで指図し、善吉(小松政夫)がリヤカーに元子を乗せ、トシ江(宮本信子)とともに病院へ急ぐ。モンパリの洋三(上條恒彦)が連絡係となり、絹子(茅島成美)が桂木家に駆け込む。キン(菅井きん)も病院へ走っていて子供たちだけが心配していた。しばらくして病院から返された宗俊たちが戻って来る。そこへ正道(鹿賀丈史)も帰宅して異変を知り、走る!

吉宗前の路地

宗俊「おい、リヤカーだよ! 早くリヤカー持ってこい!」

善吉「へい!」

宗俊「おい、布団だ、布団だ!」

善吉「へい…ようござんすか」

 

小芳「もっちゃん、転んだんだって!?」

宗俊「おう、腹ぁ打っちゃったって、あのバカがよ」

幸之助「それで産婆は?」

宗俊「産婆じゃ間に合わねえから病院へ運んでくれって」

小芳「で、病院は?」

宗俊「おう、準備して待ってくれてるって言ってんだ。お~い! 何してるんだ! 早く…」

 

小芳「もっちゃん大丈夫かい! しっかりするんだよ!」←宗俊が元子をお姫様抱っこしてリヤカーまで運ぶ。

幸之助「大丈夫か!」

小芳「しっかりするんだよ!」

善吉「頭こっち、頭こっち…」

宗俊「よし、元子、しっかりするんだぞ。善吉!」

善吉「へい!」

宗俊「持ってくれよ!」

善吉「へいよ!」

小芳「しっかりするんだよ!」

宗俊「行くぞ!」

 

トシ江「じゃあ、後、頼んだわよ。モンパリに電話して、正道さん電話かけて必ずこう言う、早く帰ってくるようにってね」

キン「あの、細かいもんはね、後からまとめてすぐお届けしますからね」

トシ江「お願いします」

小芳「旦那はどうしたんだよ! 正道っつぁん、まだ帰らないのかい?」

巳代子「一度帰ったらしいんだけど…」

キン「あの、それより、ほら、モンパリ。あの~、で…電話を!」

巳代子「はいはい、電話ね!」

 

小芳「おキンさんもついていながら、もしものことがあったらどうすんだよ!」

キン「あ…ううっ…」しゃがみ込んで泣き出す。

 

いやいや…キンさん悪くないし。

 

モンパリ

電話が鳴る。

洋三「はい、モンパリです。あ~、巳代ちゃん。うん、大原さん来てないけど…。えっ、もっちゃんが!? ん? うん…で、一体? うん、うん…で、病院は?」

絹子「あなた」

洋三「あの~、よし、分かった分かった。うん、分かったから、そっちもしっかり頼むよ。うん…はいはい、それじゃあね」受話器を置く。

 

絹子「元子、どうかしたんですか?」

洋三「いや、巳代ちゃんでよく分かんないんだけどね、とにかく何かあって入院したらしいんだよ。ところが正道君が行方不明なんだって」

絹子「行方不明?」

洋三「うん、出版社へ電話したんだけどいないんで、ここへ来たら、すぐ戻るようにって言ってくれっていうんだけど」

絹子「だって…兄さんと義姉(ねえ)さんは?」

洋三「一緒に病院に行ったらしい」

絹子「じゃあ、あと巳代子とおキンさんだけ?」

洋三「ああ。それじゃあ、俺ね、正道君の方、当たるから行き先を。あんたはすぐ吉宗行ってやってくれ」

絹子「はい。じゃあ、よろしくお願いします」

洋三「あ…あの、お客さん、申し訳ないんですけどね、取り込みがありまして、店を閉めたいんですけどもいいでしょうか」

うなずく客たち。

 

桂木家茶の間

時計は11時52分あたり。

巳代子、順平、吾郎がいる。

 

絹子「こんばんは!」

巳代子「ああ、叔母さん…」

絹子「あら、あんたたちだけ? あっ、どうも」

小芳「今、おキンさんがね、こまごましたものを持って病院に行ったとこなんだよ。まあ、とりあえず握り飯だけでも作っておこうかなと思って」

絹子「まあそれはどうもすみませんでした。私もやります」

巳代子「あっ、私もやります」

 

小芳「あんたは電話番。父さんから連絡係頼まれてんだろ」

巳代子「でも、じっとしてられないし」

絹子「じゃあ、正道さん、まだ連絡取れないの?」

巳代子、うなずく。

小芳「だから、しっかり電話にらんでりゃいいんだよ。おばさんだって病院に行ってやりたいんだよ。だけどさ、お産のことは、さっぱり分かんないし、足手まといになったら何だから、ね、こっちの手伝いしかしてやれないんだよ」

絹子「その点、私もそうなんですよね」

巳代子「あれほど転ぶな転ぶなと毎日みんなから何度も言われてるくせにそそっかしすぎるのよ、お姉ちゃんは!」

小芳「そんなふうに言うもんじゃないよ。もっちゃんだって転びたくて転んだわけじゃないんだから。ものにははずみってもんがあるんだよ」

巳代子「だけど、どういうことになるの?」

小芳「さあねえ…」

 

吾郎「いいよ、俺が見てきてやる」

順平「俺も行く」

絹子「バカなこと言うんじゃないの」

吾郎「どうしてだよ」

小芳「お父ちゃんが行ったんだから何かあったら知らせてくるって。あんたたちは余計な心配しなくたっていいんだよ」

巳代子「そうよ、あんたたちは、ほら、2階行ってなさい」

小芳「うん、それがいい。お握りが出来たら持ってってあげるから」

吾郎「じゃあ、おねえちゃんたちが帰ってきたら、きっと教えてよ」

小芳「うん…」

絹子「さあさあ、ほらほら。それじゃ、やってしまいましょうか」

小芳「ええ」

 

子供たちは2階へ、絹子と小芳は台所へ、戻ってきた巳代子は電話の前に座るが、仏壇にお線香をあげ、手を合わせる。「あんちゃん、お姉ちゃんと赤ちゃんをお願いします。みんな、赤ちゃんは、あんちゃんの生まれ変わりだって言ってんの。だからお願い、赤ちゃんと力合わして頑張って。そして、お姉ちゃん守って…!」

 

吉宗前の路地を歩いてくる宗俊、善吉、幸之助。

ササッと小走りになって扉を開ける善吉。「ただいま」

巳代子「どうだった!?」

幸之助「うん? ああ…」

小芳「あんた!」

善吉「すいません。私のせいなんです」

絹子「善さん…」

善吉「いえね、考えもなく、あっしが『あの野郎、金持ってドロンしやがった』なんて、でっけえ声出しちゃったもんですから」

 

小芳「ドロンって、一体、どうしたんだい?」

善吉「草加の野郎でさあ。それで、大原の旦那とそれと藤井のやつがやつ捜しに行って…」←みんなから呼び捨ての藤井は若いってこと?

巳代子「で、どこ行くって言ってたの?」

善吉「さあ、そいつは…」

幸之助「それで驚いたというか心配したというかつまずいちゃったんだよな、もっちゃん」

小芳「なんてことだろうね、全く」

 

無言で家の中に入っていく宗俊。

絹子「兄さん!」

幸之助「待ちなよ」

 

仏壇の正大の写真を見る宗俊。「正大…」

 

幸之助「祈ってんだよ、宗俊は」

絹子「それじゃあ、子供は?」

幸之助「いや、俺たちには分からねえよ。だから帰(けえ)ってきたんだけど…どうも腹の打ち所が悪かったらしいや」

巳代子「嫌よ! そんなの嫌!」

小芳「巳代ちゃん…」

 

善吉「あっ、大原さん!」

 

正道「あっ、どうもいろいろご心配かけました」

幸之助「そんなこっちゃねえよ、かみさんだよ。もっちゃん!」

正道「元子が?」

 

宗俊「おい、芳町産婦人科だ。すぐ行ってくれ。すぐ行ってくれ!」

 

芳町産婦人科

キン「ああ…」

正道「おキンさん」

キン「大原さん…」

正道「子供は…?」

泣きながら首を横に振るキン。

正道「それで元子は?」

キン「申し訳ありません…。私らがついていながら本当に申し訳ございません…」

正道「おキンさん」

キン「注射で今、休んでいらっしゃいます。それでおかみさんがそばに…」

正道「それで部屋はどこですか?」

部屋の方を指さし、泣いているキン。

 

部屋をノックする正道。

トシ江「はい」

部屋に入ってきた正道に頭を下げるトシ江。元子は真っ白い顔をしてベッドで眠っていた。

トシ江「堪忍してやってくださいね、正道さん」

正道「お義母(かあ)さん…」

トシ江「この子、最後まで子供助けて助けてって叫んでたんですよ」

正道「それじゃあ、元子は…」

トシ江「最後はもう麻酔をかけましたから、何も分からなくなってしまっただろう…。でも転んでお産婆さんから早く病院へって言われた時にはもう、ある程度のことは分かってたんじゃないかと思うんです。本当に申し訳ありませんでした。松江のご両親やおばあちゃんに何て言って、私、おわびしていいのか…」

正道「そんなことよりまず元子です」

トシ江「正道さん…」

 

モンパリ

洋三「お帰り」

のぼる「ガンコの赤ちゃんは…」

絹子、首を横に振る。

のぼる「じゃあ…赤ちゃん駄目だったんですか」

絹子「子供もだけど元子も危なかったらしいのよ」

のぼる「そ…それで今は?」

絹子「正道さんとお義姉さんがついてるわ。元子は今、薬をのまされて眠ってるだけだって、おキンさんが言ってたけど目が覚めた時のこと考えると、私、切なくてねえ…」

のぼるは隣に座っていたハヤカワにもたれかかって泣く。

ハヤカワ「オー ノー…」

 

洋三「六根ちゃん。あんただってお母さんになる体なんだから泣いてくれるのはうれしいけど、あんまり嘆くと体に障るよ、え」

絹子「ごめんなさい。私、つい…」

絹子の肩をたたく洋三。

 

ハヤカワ「大丈夫です。六根には私ついてます。大丈夫ですね」

 

桂木家茶の間

遠くから野犬の遠吠えが聞こえる。

長火鉢の前に座る宗俊。「正大のバカ野郎めが…」

 

みんなからあれほど待たれていた子供なのに本当に思いがけない出来事でした。

 

ひとり萩焼の湯飲みに酒を注いで飲む。

 

おじいちゃんと呼ばれるのは真っ平だと憎まれ口をききながら初孫の誕生を実は一番待っていたのが、この宗俊かもしれません。

 

翌朝、病室

元子「ごめんなさい」

正道「ガンコ…」

元子「本当にごめんなさい…」

元子の涙を拭く大原さんの手が優しく大きい。

元子「あなた…」

正道「気分はどうだ?」

元子「私…」

 

トシ江が病室の前まで来て立ち止まる。

 

正道「名前をね、考えてたんだ」

元子「名前…?」

正道「名前がなくちゃ、かわいそうだからね」

元子「あなた…」

正道「僕とガンコの一字ずつ取って元正(もとまさ)ってのはどうだろう」

元子「男の子だったの?」

正道「うん」

元子「会ったの?」

正道「うん」

元子「どんなだったの? ちゃんとしてたんでしょう?」

正道「弟か妹が欲しいって言ってた」

泣き出す元子。

正道「先生がね、今はまず体をちゃんとさせることだって」

元子「でも…あの子、帰ってこないわ。あの子、私が殺したんだもん…」

正道「そんなふうに言っちゃいけないよ。あの子は必ず帰ってくる。弟か妹連れて必ず帰ってくるよ。だからね、早く体を治さなくちゃ。元正のためにも弟と妹、産んでくれなきゃ」

 

泣きなさい元子さん。そして泣くだけ泣いたら早く元気になるのです、元子さん。

 

病室の前にいたトシ江は涙を拭きながら引き返す。

 

つづく

 

「本日も晴天なり」は近藤富枝さんがモデルと言われているけど、アナウンサー時代のエピソードは同期の武井照子さんのエピソードも多いと感じていました。

www.nhk.or.jp

こちらのリンク先の全文掲載のPDF文書に詳しく書かれています。

 

以前、読んだこちらの記事に結婚して最初のお子さんを亡くされたことも書かれていたのですが、このエピソードまで…。近藤富枝さんもこんなエピソードをお持ちなのか分かりませんが、長いこと妊婦姿を見てきたので悲しい。

 

80年代朝ドラには死産、流産するヒロインが多くてねえ…。「おしん」も「澪つくし」も「はね駒」もそう。昭和末期の1988年の「純ちゃんの応援歌」は、そういうエピソードはなかったし、それ以降は見かけないけど…。昭和の朝ドラは、それにプラスして今の時代では考えられないデリカシーのない励ましをするまでがセット。

 

あ、今日の正道さんの励ましは優しいと思ったけどな。あれを聞いて、すぐ次産めってことかよって解釈しないで、そんな日がいつか来たらいいねという話でしょう。

peachredrum.hateblo.jp

流産後、双子を出産したかをるに

久兵衛「手間が省けてええ。なあ流産した分取り返した。いっぺんに元取ってしもたわい」…こんなこという父よりいいでしょう。

peachredrum.hateblo.jp

鹿賀丈史さんが出演していた「藏」。鹿賀さんは帝大出のボンボンで母は香川京子さん。母の決めた相手と結婚し、子供を設けるが15年の間に8人も流産、死産し、9人目に生まれたのがヒロインの烈。明治時代の話だけど、子供が生まれてくることは当たり前じゃないということか。

 

今週に入って何だか不穏だったけど、でも子供は無事産まれると思ってたよ。