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【連続テレビ小説】本日も晴天なり(57)

公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意 

のぼる(有安多佳子)が元子(原日出子)に聞いてほしい事があるとやって来る。なんとハヤカワ(深水三章)にプロポーズされたのだという。元子はアメリカ人も日本人もないと励まし、正道(鹿賀丈史)はハヤカワの待つモンパリへと、のぼるを送ってやる。洋三(上條恒彦)と絹子(茅島成美)はのぼるが来ると席をはずそうとするが、のぼるは二人に「もしよかったら立会人になって頂きたいんです」という。のぼるの出した答えは…。

雨の中、大原家を訪れたのぼる。

元子「来た来た。いらっしゃい」

のぼる「ちょっと聞いてほしいことがあって」

元子「はいはい」

巳代子「さあ、どうぞどうぞ。どうぞお上がりになって」

元子「あんたはいいのよ」

巳代子「どうしてさ」

元子「いいから、自分のうち、お帰んなさいよ」

巳代子「あら、私の作文はどうなるのよ」

元子「そんなの自分で考えなさいってば」

のぼる「ごめん、悪いとこ来たかしら」

元子「とんでもない。ほら、巳代子、早く…早く。さあ、どうぞ」

 

案の定、元子の新たな心配、もしかしたらのひっくり返しがやって来たようです。

 

そして、こちらにも…。

 

モンパリ

ハヤカワ「ハロー!」

絹子「あら、いらっしゃいませ」

ハヤカワ「はい。これ、ママさんね」花束を渡す。

絹子「まあ、私にですか」

ハヤカワ「イエス。そしてこれは…」

洋三「ああ、申し訳ないんだけど、今、六根ちゃんいないんだよ」

ハヤカワ「いない!? どこ行きました?」

洋三「うん、それがあの…」

ハヤカワ「変ですね。今日、私、ここ来る。六根、約束しましたよ」

 

桂木家茶の間

トシ江「ということは六根さん…」

巳代子「うん。盗み聞きするわけにもいかないから帰ってきたんだけど、どうもミスターハヤカワからプロポーズされたみたい」

その会話を台所にいたキンが聞いている。

 

宗俊「何だい、おい、そのプロ…何とかってのは、え?」

巳代子「求婚よ」

宗俊「キューコン?」

順平「俺、知ってるよ。アイ ラブ ユーってんだろ」

宗俊「色気づきやがって、この野郎。テッ」

トシ江「だからさ、お嫁さんになってほしいって、こう言われたんじゃないんですか」

宗俊「お嫁さんにしてくれったって、野郎はやっぱりアメリカ人なんだろ」

キン「ねえ、おんなじ日本人の顔してるくせに『ワタシ コウ オモイマスネ』なんてなおさら気持ち悪いですよね」←なかなかの問題発言。

トシ江「おキンさん」

 

大原家

元子「それで六根、何て答えたの?」

のぼる「それがあんまりびっくりしちゃったもんだから」

元子「うん」

のぼる「ひっぱたいちゃったの」

元子「えっ!?」

 

モンパリ

のぼる「バカにするのもいいかげんにしてよ!」

ハヤカワ「誤解です。話し合いましょう」

ハヤカワをビンタするのぼる。

 

大原家

元子「痛っ!」縫い物してて針を指に差す。

のぼる「大丈夫?」

元子「大丈夫じゃないわよ」

のぼる「本当に?」

元子「冗談よ。それにしても困った人(しと)ね」

のぼる「ごめん」

元子「それでどうしたの?」

のぼる「また明日必ず来るから考えといてくれって」

元子「そんじゃあ、今頃来てるかもしれないじゃないの」

のぼる「だから出てきたんじゃない」

元子「何よ、六根らしくもない」

のぼる「だってまたまた来られたって返事のしようがないもの」

元子「どうしてよ」

のぼる「だって結婚する相手だとは思ったことなかったもん」

 

元子「フッ…」

のぼる「何さ」

元子「ううん、ちょっと思い出しただけ」

のぼる「何を?」

元子「私も確かそんなことを口走ったような記憶があるみたいだから」

のぼる「ガンコ」

 

元子「あれは確か場所もモンパリでだったかな。慌ててギャーギャーと騒ぎだした私に対して正道さんと結婚の意志がないんだったら放っとけって六根に冷たく突き放されて。それで初めて自分の正直な気持ちに気が付いたなんて、そんな一幕(しとまく)があったけど? 六根…」

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これが昭和20年末くらいの話。今は、昨日の回でメーデーの話をしてたから昭和21年5月頃。

 

のぼる「はっきり覚えてるわ。だけど、あの時のガンコとは事情が違うもの。あの時のガンコは本当にかわいかった。だから私たちも一緒になって芝居もしたし心配もしたわ。けど、彼の場合は、はっきりとアメリカ人なんだし」

元子「うん…。だけど、こんなことも覚えてるわ。あれは確か終戦のご詔勅が出るちょっと前だったかな。私たち海外放送をやりながら『日本は常に世界人類の幸福を念頭に置いて』だったかな、そんな原稿にぶつかって考え込んだことがあったでしょう」

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のぼる「うん」

元子「もしもよ、六根が本当に話し合える人だって思うなら日本人もアメリカ人もないんじゃないの? 世界中の人がみんな平和でみんな幸せになるためには日本だけの考え方、日本人だけの生き方にはとらわれることないんじゃないの?」

のぼる「理屈では分かるのよ。私だってこの先、彼ほど思い切った話ができる相手は二度といないって思うもん。だから彼が日本人でないことが悔しくてたまらないの」

元子「分かってるわ。戦争に負けてアメリカに尻尾を振ってるって人に思われるのが悔しいんでしょう」

のぼる「それもある。それもあるけど両親のことも…。私、一人っ子なんだし無事帰ってくる両親迎えるのは私しかいないもん」

元子「でも、彼と2人で迎えてなぜいけないの?」

のぼる「わがままのしっぱなしだし祝福されないまでもせめて許しは請いたいの」

 

元子「分かった」

のぼる「ごめんね。これじゃ、相談に来たんじゃなくて所信表明に来たみたい」

元子「六根って強いんだもん。他人がそうしろって言ったからって、それで動くような人じゃないもんね」

のぼる「かわいげないし、決して男性に好かれるタイプの娘だとは自分でも思ってません」

元子「でも、私が彼とお似合いだなって思うのは、そういうとこなんだけどな」

のぼる「ありがとう」

元子「六根…」

のぼる「帰るわ」

元子「うん」

 

玄関を出ると雨が上がっている。

のぼる「じゃあ、おやすみなさい」

正道「ただいま」

元子「あっ」

のぼる「お帰りなさい。お邪魔してました」

正道「どうぞゆっくりしてってください」

元子「すいません、六根を送っていっていただけませんか」

のぼる「いいのよ、そんな」

元子「ううん。ねっ、お願いします」

正道「うん、はい。それじゃ参りましょう」

 

桂木家茶の間

宗俊「どうやら帰(けえ)ったらしいな」

トシ江「いちいち聞きに行くことはないでしょう」

宗俊「バカ野郎。六根は親がいねえんだぞ」

トシ江「あら、縁起でもないこと言わないでくださいよ。親御さんはまだ満州から帰ってこないってだけのことじゃありませんか」

宗俊「だから帰ってくるまでは、いわば天涯孤独なんだ。な。つれえことがあったら俺たちが風よけになってやらねえで何が江戸っ子だ。じゃ、ちょっと…」席を立つ。

 

モンパリ

カウンターで酒を飲んでいるハヤカワ。「六根! 六根」

のぼる「お待たせしました。ごめんなさい」

洋三「ああ、それじゃあね、あの、僕たちは引き揚げるから。いいね? 平和条約は友好裏に締結してくださいよ。それじゃあね」

のぼる「すいません」

洋三「えっ?」

のぼる「もしよかったら立会人になってください」

洋三「立会人?」

ハヤカワ「お願いします」

絹子「ええ…」

洋三「あっ、それじゃあ…」

 

のぼる「ミスターハヤカワ」

ハヤカワ「イエス ミス タテヤマサン」

のぼる「あなた、この前、ガンコのうちでパイオニアになれっておっしゃったわね。結婚しても私が仕事を続けること認めますか?」

ハヤカワ「オフコース

のぼる「子供が生まれたら?」

ハヤカワ「六根が続けたい仕事なら続けるべきです」

のぼる「ガンコのうちとは違うんですよ。子供の面倒は誰が見るんですか?」

ハヤカワ「オー、六根。子供は2人の子供です。私にも育てる義務と権利があります。力を合わせれば必ず解決します。そして愛があれば」

 

のぼる「おじ様、おば様、今の言葉、証人になっていただけますか」

洋三「ああ、なりますよ」

のぼる「私はつい去年まで殺し合っていた国の人と結婚して、その国の人になるっていうことにもうひとつ抵抗があるんですけど」

絹子「ううん、そのことなら大丈夫」

のぼる「えっ?」

絹子「ハヤカワさんは日本とアメリカの両方に国籍があるんですって。だから、日本人の方のハヤカワさんと結婚すれば、六根ちゃんはそのまま日本人でいられるわけなのよ」

ja.wikipedia.org

1985年以降は22歳になるまでに国籍を決めなければならなくなったそうだけど、それ以前の人は複数持っていた。

 

のぼる「本当ですか!?」

ハヤカワ「しかし、私は私です。たとえ何国人であっても変わりありません」

のぼる「だったら日本人のあなたと結婚させてください」

ハヤカワ「六根」

のぼる「私、いろんなことがあるだろうけれど、新しい女性としてのパイオニアを目指してみようって決心したの。けど、せめて父と母が帰国するまでやっぱり日本人でいたかったんです」

洋三「それじゃあ、全て解決じゃないか」

ハヤカワ「サンキュー! サンキュー ベリー マッチ!」

洋三「おめでとう!」

ハヤカワ「サンキュー ママさん!」

絹子「おめでとう、よかったね…」

 

のぼる「ジャスト モーメント。もう一度プロポーズしてください」

ハヤカワ「イエス。私と結婚してください」

のぼる「イエス アイ ウィル」

ハヤカワ「アイ ラブ ユー 六根」

 

洋三「あ~、それじゃあ立会人は消えようね。はいはい…」

絹子「グ…グッド ラック」

洋三「グッド ラック」

 

ハヤカワ「愛してるよ、六根。愛してる」

のぼる「私、負けないわ」

ハヤカワ「ホワット?」

のぼる「私、決して負けません」

ハヤカワ「グッド」

 

両親の生死は、いまだ不明。しかし、のぼるは二世との結婚で新しい時代を積極的に生きてみようとしたのです。負けるな、六根!

 

ハヤカワの背中越しのキスシーン。のぼるみたいな頭のいい女性はやっぱりハヤカワみたいな人がお似合いだと思う。

 

大原家

宗俊「おめえさんは反対しなかったのか」

元子「お父さん」

宗俊「おめえは黙ってろ」

正道「いや、六根さんの人生です。六根さんが決めたら、あとは自分たちが見守っていってやればいいんじゃないでしょうか。変な言い方ですけれども今までは、こうあらねばならぬというようなもので我々生きてきたような気がするんです。だからこうしてみようという生き方があってもいいわけですし、まあ、その場合、本人が自分の行動に全責任を取るっていうことになりますけども、彼女はそこまで考えているようでした」

peachredrum.hateblo.jp

「『ねばならぬ』はヤボやで。そんなことにとらわれとったらあかん」と健次郎さんも言うてます。

 

宗俊「なるほど」

元子「だからお願い。六根のこと心配してくれる気持ちは分かるんだけど、もはや、余計な雑音は入れないでやって」

宗俊「雑音だ?」

元子「だって」

宗俊「てやんでぇ。そりゃな、おめえ、相手がアメ公側の人間だってのは気に入らねえがよ、まあ、六根が自分で考えて自分で決めたんだ。俺ぁ、女としちゃ、あっぱれだと、俺ぁ思ってるよ。俺たちにゃ、とってもそんな勇気ねえからな」

正道「六根さんもハヤカワさんも実に率直な人間ですからね、これからも自分に正直に生きていくことでしょう。だから余計ぶつかることも多いと思いますけれどもね」

宗俊「まあ、国籍はともあれ顔かたちはお前、れっきとした日本人だ。うまくさえやってくれりゃ俺たちは何も口出すことじゃねえやな」

元子「ありがとう、お父さん」

宗俊「なにもおめえが俺に礼言うことねえじゃねえか」

元子「だって…どうもすいませんでした」

 

宗俊「じゃあ、俺は寝るからな」

正道「あ…そうですか。あっ、元子…」見送りに立とうとした元子を止める。

 

正道「それじゃあ、おやすみなさい」

宗俊「おう」

元子「おやすみなさい」

宗俊「おう」

 

元子「ありがとう、正道さん」

正道「ん?」

元子「道々、六根の気持ちを聞いてくださったんでしょう」

正道「いや、別に」

元子「どうしてぇ?」

正道「う~ん、どっちかっていうと僕の気持ちを聞いてもらっちゃった感じだなあ」

元子「あなたの気持ち?」

正道「うん」

元子「あ…あなたの気持ちって一体…」

正道「元子と暮らして感じたこととかね、お義父(とう)さん、お義母(かあ)さん見てて、あ~、いい夫婦だなって思ったこととか、自分一人でいた時には感じなかったいろんなことが元子を通して感じられたりして。そんなことをとりとめもなく話してた」

元子「正道さん…」

 

正道「お茶、もう一杯もらおうかな」

元子「はい」

 

つづく

 

ミスターハヤカワは「純ちゃんの応援歌」のヒロイン・純子の夫となった速水秀平と同じで親の世代がアメリカに渡った日系二世だよね。だから顔は日本人だし、恐らく両親どちらも日本人。でも、秀平はアメリカ育ちというだけで精神は日本人だったような。だからこそ結婚後は純子が苦労した。ハヤカワは、夫という立場ではアメリカ人のままでいて欲しい。

 

純ちゃんの応援歌」はこのドラマの7年後1988年だからかアメリカ人と結婚するという点もそこまで抵抗ある感じに描いてはいなかったように思う。どちらの脚本家も戦争を経験した世代だし、単純に脚本家の違いだろうか。

 

しかし、ツイッターでも何でも、家もあり、家族も健在、夫も職もあって元子は恵まれてる…みたいな感想はウンザリ。

 

それと、恋愛パートがときめかないという感想をいくつか見た。えー? 元子と正道ものぼるとハヤカワもついでに宗俊とトシ江もめちゃくちゃ好きなのにな~。普段身長差萌えなんて全くしないのに正道と元子は、いいなあとか思ってるのに。ざっくりしてるというも見かけたから、私は逆に繊細なのが分からないんだろうな。