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【連続テレビ小説】純ちゃんの応援歌 (140)

公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意 

金太郎(高嶋政伸)が村会議員に立候補した、とつや(白川由美)が浜風荘にかけつける。もも(藤山直美)も知らなかったが、金太郎は興園寺家の応援をことわり、自分の力で当選する、と選挙運動をしていた。純子(山口智子)はそのことを秀平(高嶋政宏)に話したいのだが、仕事で疲れて帰ってきた秀平は寝かせてほしい、とだけ言って聞いてくれない。そこへ、七年前のセンバツで浜風荘に泊まりに来た、木崎(坂本国博)が来て…。

お、月曜日回なのにオープニングが通常サイズだった。

 

浜風荘玄関ロビーのソファセット

純子「どうぞ」

つや「おおきに。まあ、そやけど残念やったなあ。あきさんがいてると思ってな、寄ってみたのに」

純子「すんません。暇な間に骨休めしてくる言うておじいちゃんと連れ立って温泉に行ってますねん」

つや「温泉? ええなあ」

純子「もうじき甲子園が始まりますやろ。そうするともうどないもならんほど忙しなりますよって」

 

つや「秀平さんは?」

純子「仕事ですねん。正太夫倶楽部の前に仕事部屋借りてから月のうち10日ぐらいはそこに泊まるようになってしもて」

つや「でもな、男の人は忙しいぐらいの方がええんとちゃう?」

純子「ええ、それはそうなんですけど」

 

もも「あ、奥さん、ようこそ」

つや「ももさん、ご無沙汰してますね」

もも「奥さんもお元気そうで」

つや「おかげさんで」

もも「いつもすんませんな」

 

つや「まあ、そやけどももさんも心配やな」

もも「へ?」

つや「いや、金太郎君のことや」

もも「あの…金太郎がどがいかしたんですか?」

 

つや「金ちゃんな、村会議員に立候補したんや」

もも「えっ?」

純子「金太郎君が?」

つや「うん。もう、そやから昨日からな、2人で選挙運動で大変や」

 

純子「ほな金太郎君もう選挙演説か何かしてはるんですか?」

つや「はあ」

もも「金太郎が演説?」

つや「うん」

もも「けど、あの子何でうちに相談せんのやろなあ」

 

つや「そらやっぱりな、お母ちゃんを心配さしたらあかんていう心遣いやないか?」

もも「ほらほやけどなあ…」

つや「うっとこもそういうことやったらな、興園寺家が後押しをして清彦がな、応援演説を引き受けて、なっ? 場合によったらな、うちも村の皆さんにな、ひと言ご挨拶してもええでてそう言うたんやけど」

もも「ほら、ありがたいわ」

 

つや「いや、そやけどな、うちも偉いと思ったんやけど、金ちゃんな、それ断りましたで」

もも「断った?」

つや「なあ、興園寺家の後押しがあったさか当選したなんて言われとうない、独自の力で当選したい、そやから選挙運動は、わいと嫁さんの2人でやるてそう言うてな」

純子「綾ちゃんと2人だけで?」

つや「昨日もなリヤカーにこの旗立ててな。もうそら大変やわ」

 

美山村村会議員候補

牛山金太郎

と書かれた旗

 

金太郎「私、牛山金太郎には若さがあります。実行力があります。この若さと情熱で美山村に道路を造り、産業の振興を図ります。800年間眠ってきた村に活力を与えます! 牛山金太郎でございます!」

綾「村民の皆さん、牛山金太郎の家内でございます。どうかどうか主人を美山村の議会に送ってやってください!」

桃太郎「じゃ~ん! 僕は牛山桃太郎です!」

金太郎はスーツに白手袋、綾はスーツに白い鉢巻き。桃太郎はサスペンダーに蝶ネクタイに短パンのコナン君スタイル(イメージ)。

 

純子「いや~、ちっとも知らんかったわ」

もも「奥さん、うち、何かもう美山村、帰りとうなってきた。うち、あの母親やさかいに村の人一人一人に、こうやって頭下げて歩いた方がええのと違うかな」

純子「そやな」

もも「いや、あかんな。あかん、あかんわ。うちにそんなことしてほしないから金太郎うちに黙って立候補したんやさかいな。あかんな。あっ、ほな、電報打つわ、電報。『金太郎 当選祈る 母』こいがええな」

 

純子「電話で電報打ったらええやんか」

もも「電話、ええわ。ややこしいこと苦手やさか。奥さん、ちょっと電報局行ってくらよ。すんません」

純子「ももさん…」

 

つや「まあ、自分の力でっていうことは…なあ」

 

秀平「ただいま」

純子「お帰りなさい」

つや「お帰んなさい」

秀平「あ、奥さん、いらしてたんですか」

つや「ご無沙汰してます」

秀平「お久しぶりです」

 

つや「忙しいんやてなあ」

秀平「はい」

純子「どうぞ」

秀平「いや、いいよ。悪いけどクタクタなんだ。ちょっと眠る。奥さん、じゃあ失礼します」

つや「どうぞ、どうぞ」

純子「奥さん、ちょっとすいません」

 

部屋で一人でお絵描きしていた陽子。「お父ちゃんや。お帰り」

秀平「ただいま」

純子「春男君は?」

秀平「仕事部屋に残してきた」

枕と毛布を出して、そのまま寝ようとする。

陽子「お父ちゃん、ほら、お姫様の絵や」

秀平「うん、分かった、後でね。お父ちゃんね、眠いんだ」

 

純子「なあ、金太郎君がな、美山村の村会議員に立候補したんやて」

秀平「へえ~、話だけじゃなかったんだ」

純子「それでな、ももさんがな…」

秀平「悪いけど、夕方までちょっと寝かしてよ。昨日は丹後まで行って、ゆうべ現像で一睡もしてないんだよ」

 

陽子「なあ、お父ちゃん、なあ、お父ちゃん」

秀平「陽子、ごめん。純子、ちょっと陽子、下へ連れてってくれ」

陽子「お父ちゃん」

純子「陽子、下へ行こ。さあ。そんなんやったら仕事場で寝てきはったらええのに」

秀平もムッとするがそのまま枕に顔をうずめた。

 

板場

ため息をついているもも。

川井「あ、すんません、お茶」

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川井さん、まあまあ長く滞在してるね。

 

ヨシ子「あ、川井さん、今、お持ちするとこでしたのに」

川井「いやいや、自分で持っていきます。自分で持っていきます」

ヨシ子「今日は何時にお出かけですの?」

川井「今日でっか、今日はね、8時に工場が引けるさかいにそれから出勤ですわ」

ヨシ子「大変ですねえ」

川井「仕事ですさかいに。空調の取り付けちゅうのは工場が引けてからやないとね」

ヨシ子「そうですか。ほんなら頑張ってください。すんませんでした」

 

純子「松の間、6人さんやったな」

ヨシ子「はい、そうです」

純子「ももさん、どないしたん?」

 

石田「女将さん。ももさん、美山村へ帰った方がよろしいで。さっきからもう息子さんの選挙のことが気になって何も手につきまへんのや」

もも「純ちゃん。親にできることは辛抱だけやなあ」

純子「そんな瘦せ我慢せんかて」

もも「いやいや。旅館もな、こいからが忙しくなるさかい、そんなこと言うてられへんわ」

純子「そうか」

 

裏玄関が開く。

純子「あっ、木崎君!」

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木崎「こんにちは」

純子「こんなとこから入ってこんと表から入ってきはったらええのに」

木崎「泊まりに来たんじゃないんです」

純子「さあ、どうぞ、上がって」

もも「木崎君、どうも」

木崎「失礼します」

 

この青年、7年前のセンバツで北海道代表校の補欠として浜風荘に泊まりました。今は九州の炭鉱で働いているはずなのでありますが…。

 

純子「さあ、どうぞ、座って」

もも「冷たいお茶どうぞ」

木崎「すみません。すっかりご無沙汰しちゃって」

純子「今日は? 出張?」

 

木崎「ええまあ、出張っていえば出張なんですけど…。僕、去年、炭鉱やめたんです」

純子「あ、そやったん」

木崎「で、今、こういう所で働いてます」名刺を差し出す。

純子「『建築用鉄材販売 広沢商店 営業係 木崎豊』。はあ~、鉄、売ってはるの?」

木崎「はい。去年から八幡にあるこの会社に入りました」

 

純子「営業いうたら…」

木崎「要するにセールスです。しかし、物が物ですからねえ、なかなか売れないんですよ」

純子「大変やね。ちょっとしたもんやったら、うちで買うてあげんねんけど、建築用鉄材やなあ、ちょっとなあ」

木崎「いや、とんでもない。そういうつもりで来たんじゃないんですよ。女将さんの顔見たら元気が出るかなって思って来てみたんです」

純子「そう。そない言うてもろたら、ほんまうれしいわ」

 

もも「木崎君、お代わりどうぞ」

木崎「すみません。あ、雄太さんは元気ですか?」

木崎君たちが来た頃のももさんはまだ食堂をやってて、忙しい時だけのお手伝いとして来てたんだっけ。

 

純子「うん、元気やで。あの子な、工業高校で数学教えながら、今な、野球部の監督してるねん」

木崎「本当ですか?」

純子「今年の夏の予選では4回戦で負けてしもたんやけどな、そやけど来年もある言うてな、今日も練習に行ってんねや」

木崎「来年もある…か」

 

純子「うまいこと言われへんけど、つらい時こそ元気出さなあかんのと違う?」

木崎「分かってるんですけど」

純子「なあ、よかったら今夜うちに泊まっていかへん? 今、割かし暇な時やし、宿代はええさかい」

木崎「いえ、とんでもない」

純子「けど、どこかに泊まるのやろ?」

木崎「はい」

純子「それやったら、うちに泊まっていったらええやん」

 

もも「そうそう、そいがええわ。そうしい、そうしい」

純子「なっ?」

木崎「すみません、それじゃあ」

純子「なっ、ほな、お部屋に行こか。お風呂入って、なっ、さっぱりして」

 

太夫倶楽部

太夫「建築用の? はあ。そらまあ、うちはもともと林業やさか建築関係はいろいろ知ってるけども。うん、うん、分かった。ほな、何軒か考えとく。うん? いや、後で電話する。今、動かれへんねん。何でて? いや、それがな…」

春男に受話器を持ってもらってポーズをとる正太夫。店にいた客の女性たちが正太夫をスケッチしていた。

 

浜風荘玄関ロビーのソファセット

純子「今な、お友達からこことここへ行ってみたらて電話もろたんやけど。これな。それからこれはうちに泊まらはった建設関係のお客さんのリストやけど行くだけ行ってみたら? これ紹介状書いたさかい」

今ならお客様の情報流すなよなんだけど、この時代だからね。

 

木崎「すみません」

純子「それから、こっちは正太夫倶楽部というとこや。地図描いといたさかい、明日にでも行ってみ」

木崎「はい」

純子「それからこれ、私の気持ちや」

 

木崎「何ですか?」

純子「開けてみて」

まずはネクタイ。

純子「そっちも開けてみて」

箱にはピカピカの靴。

純子「セールスの仕事やったら見栄えが大切やと思てな。セールスマンが疲れた顔してたらあかんし。これ、新しいネクタイきちんとして。なっ。それから靴もだいぶくたびれてたさかい買わしてもろたんや。大きさが分からへんもんやから、今、木崎君が履いてる靴を持っていって、これと同じもんをて言うたんやけど。歩き回らなあかんやろ。明日、はよう起きてひと働きしておいで」

木崎「はい、女将さん」

純子「ほな、ごゆっくり」

 

純子たちの部屋

純子「起きはったん?」

秀平「ああ。またこれから出かける。現像がまだ終わってないんだよ」

純子「そんなんやったら、なんも無理して帰ってこんでもええのに」

秀平「陽子や君が寂しがってると思うから、ちょっとでもと思って帰ってきたんじゃないか」

 

陽子「お父ちゃん、何色がええ?」

純子「陽子。お父ちゃん、お出かけやて。邪魔したらあかんで。お母ちゃんと遊ぼう。なっ、赤がええか?」

陽子「お父ちゃんとお母ちゃん、けんかしてるの?」

純子「けんかなんかしてへんよ」

 

秀平「行ってくる」

純子「…」

 

ただでさえ夫婦げんかが長引いてギスギスしてるのに、雄太も出ないなんて寂しすぎ。でも木崎君がまたまた出てきてくれただけでうれしい。