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【連続テレビ小説】芋たこなんきん(71)「おかあちゃん」

公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意 

健次郎(國村隼)の長女、由利子(土岐明里)が、きんぴらゴボウを作ろうとして鍋を焦がす。町子(藤山直美)たちが行った澄子の法事で、母の手料理を懐かしく思い出し、まねたのだ。晴子(田畑智子)は、法事を行ったことで、子どもたちが今はもう食べられない母親の手料理を思い出し、かえってかわいそうなことになったと非難する。町子(藤山直美)は、澄子の作った手料理がどこかに残っていないかと家中を探すのだが…。

澄子の法事は町子の知らないところで後遺症を残していました。

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前回の振り返り

工藤酒店前

由利子、下を向いて歩いている。

貞男「よう! 由利子ちゃん、お帰り。昨日はありがとう」

由利子「こちらこそ」

貞男「うん、ご苦労さんやったね、うん、うん」

しょんぼり歩いていく由利子。

タエ「あれ? 由利子ちゃんか?」

振り返りここまで

 

路地

喜八郎「そない言うて! よう言わんわ!」

一同の笑い声

喜八郎「こっちじゃ! こっちじゃ、こっちじゃ!」

 

アムール前

和田「あ~、またね~!」客を送り出して外に出る。

 

喜八郎「あ~、ママ! ハハハ!」

和田「いや~、ご機嫌さんやねえ!」

ツネ「ここ、お酒…おいしいお酒ある?」

和田「ええ、そらもう!」

 

ツネ「ここでもうちょっと飲んでいこ!」

イシ「あげ~、まだ飲むの?」

喜八郎「まだまだしゃべり足らん! しゃべり足らん、しゃべり足らん!」

和田「さあさあさあ、どうぞどうぞ! どうぞどうぞ! はいはい! 6人様~!」

ツネ、喜八郎、イシのほかに男性1人、女性2人。同郷の仲間?

 

夜、拍子木の音と「火の用心!」の声。

由利子は一人台所に立ち、ゴボウをささがきしていた。

 

玄関

ツネ「喜八郎さんちさえ!」

喜八郎「いや、お前…」

イシ「シ~ッ…」

ツネ「シ~ッ! シ~ッ! シ~ッ!」

 

物音がして、イシが慌てて家に入る。

喜八郎「何だ?」

 

台所

煙が出ている。

イシ「やあ! 由利子、どないした!?」

由利子「おばあちゃん!」

喜八郎「あっ! あ~あ!」

イシ「えらいこと…」火を消し、フライパンを流しへ。

 

由利子「キンピラ作ろ思て…」

イシ「キンピラ? あ…」

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回想

由利子「お母ちゃん、こんなんつけてたんやね」

イシ「え? ああ、家計簿」

由利子「もう食べられへんねんな、お母ちゃんのキンピラゴボウ」

回想ここまで

 

イシ「そうか…」

喜八郎「由利子、やけどせなんだか?」

由利子「してへん」

 

町子「わ~、どないしたんですか?」

イシ「あの、由利子がお料理の練習してて、お鍋焦がしてしもたんや」

町子「お料理?」

イシ「あ…あの、学校で習たんやて。なっ」

町子「あ~、何でこんな夜中に? お昼間に言うてくれたらええのに…」

 

由利子「ごめんなさい…」

イシ「ええから、はよ寝なさい。なっ」

町子「おやすみなさい」

喜八郎「おやすみ!」

 

茶の間

ツネ「母親の手料理?」

イシ、うなずく。それにしてもお着物姿のイシさん、すてき。

ツネ「思い出して懐かしくなったんじゃよ~。新しいお母さんと子供たちはうまくいっているの?」

イシ「うん。子供らとは、ほんましっくりいってんねんよ。あの子らのやり方で子供たちとうまいことやってる。時々、感心してしまうわ」

ツネ「へえ!」

イシ「はあ~。けど、母親の手料理だけは私かて作ってやりとうても、こればっかりは本人やないとねえ。はあ…。かわいそうやけど、由利子には忘れなさい、言うてやらんと…」

 

翌朝

廊下で体操をしている喜八郎。

町子「おはようございます」

喜八郎「あっ、おはようさん」

 

町子「お母さん、おはようございます」

イシ「あ~、おはようさん。朝方までしゃべってしもて、あれやこれや昔話。ツネちゃん、元気やわ。ハハハ!」ぬか床をかき混ぜる。

町子「あっ、洗面所にタオル置いときます」

イシ「おおきに」

 

洗面所

顔を洗うツネ。人が近づいてきた気配でしゃべりだす。「あ~、イッちゃん、ゆうべの話だけどね、お嬢ちゃんにしてみたら亡くなったお母さんの味っていうのは恋しいもんだからや、あんまりきつう叱ったらいかんよ。う~! あっ、あ…はいはい」

町子は無言でタオルを差し出す。

ツネ「あ~、ありがと、ありがと。あ~、さっぱりした!」

顔を拭き終わる頃には町子の姿はなく、廊下の向こうで体操する喜八郎だけ。

 

ツネ「あれ?」

喜八郎「うん?」

ツネ「はっ?」

喜八郎「はっ?」

 

台所

イシ「ちょっと浅いけど、ええか…」ぬか床から大根を取り出す。

町子「お母さん」

イシ「うん?」

町子「ゆうべ、由利子ちゃんが作ってたキンピラ…」

イシ「!」

町子「亡くなったお母さんのお料理まねしようとしたんですね。恋しなったんですね」

 

健次郎「おい!」

町子「はい!」

健次郎「トイレの紙、切れとるで」

町子「新しいの出しときます」台所から出ていく。

 

イシ「このおしゃべり!」

健次郎「何?」

イシ「由利子のキンピラのこと町子さんに…」

健次郎「え? 言うてへん、言うてへん。僕、ちゃうよ!」

イシ「ほな、誰が!?」

 

2階から降りてきた由利子。

町子「あっ、由利子ちゃん。あのノート見たんやて?」

由利子、うなずく。

町子「お母さんの家計簿。毎日の献立、書いてあったでしょ。私もあれ見てね、すごいなあと思たわ」

由利子「うん」

 

町子「それでキンピラ食べたなって、ゆうべ作ってたん?」

由利子「うん…。けど、でけへんかった」

町子「そうか…」

 

階段を下りてきた晴子も話を聞いてしまう。

町子「お母さんのお料理、恋しい?」

由利子「ううん。昨日、思い出したらちょっと食べたなっただけ。無理なんは分かってるもん。食べたい思ても、そんなん無理やもん。登や隆なんてもう、お母ちゃんの味、覚えてへんのやろしね。亜紀なんかもっと覚えてへん。行ってきます、おばちゃん」

町子「行ってらっしゃい」

由利子「行ってきま~す」

町子「行ってらっしゃい」

 

階段を下りてきた晴子は町子の顔をじっと見て、そのまま通りすぎていった。

 

町子「お母さんの味か…」

 

診察室

晴子「ほら見なさい」

健次郎「何が?」

晴子「由利子」

健次郎「ああ…」

 

晴子「法事なんかするから母親思い出してしもたやないの?」

健次郎「思い出すのは別に悪いことやないがな」

晴子「思い出して寂しなってしもたんやないの。手料理なんて食べられへんのよ、絶対に」

健次郎「はあ…。それはそやな」

 

晴子「かわいそうやわ…。どないすんの?」

健次郎「『どないする』てどないしようもないがな。無理なことは諦めなしゃあない。それより、お前、今日、お母ちゃんの代わりに受付頼むで」

晴子「有馬温泉か…。ツネおばちゃんて、お母ちゃんより年上?」

健次郎「3つ上かな」

晴子「元気やなあ…」

 

仕事部屋

純子「手料理ですか…」

町子「健次郎さんに聞いて味似せて作ってみよかな…」

純子「意味ないです」

町子「意味ないですよねえ…。けど、私にはそんなことぐらいしかでけへんのやもん…」

 

純子「う~ん…冷蔵庫に何か残ってないでしょうかね。発掘すれば茶だんすの奥のお菓子とか…」

町子「古墳、探してるんやないんですよ。お菓子って、もう4年もたってるんですよ」

純子「そうですよね…」

町子「手料理か…。タイムマシンでもあったらなあ…」

 

茶の間前の廊下

健次郎「あ~、晴子のやつ、こんなとこに薬袋落として…」

 

内用薬

碇ツネ殿

 

用法

一日3回1包

毎食後 7日分

 

内科・外科・小児科

奄美医院

鹿児島県名瀬市入舟東町三丁目五番六号

電話(0997)97-849

 

健次郎は薬の包みを取り出し、匂いを嗅いでみる。

 

そして、その日の午後…

 

茶の間

ツネ「ハハハハハ! やっぱり温泉はいいわ!」

イシ「楽しかったねえ!」

ツネ「いいお土産もできたしさ!」

 

健次郎「あ~、お帰り」

ツネ「あ~、健坊」お菓子をすすめる。

健次郎「あ~、後でもらう。お母ちゃん、ちょっと受付来てくれるか」

イシ「はいはい。ほな、ちょっと」

ツネ「母さんをあんまりこき使うたらいかんよ! 社長! あっ、院長か…。うん」

 

診察室

イシ「薬? ツネちゃんの?」

健次郎「胃炎の薬や」

イシ「胃炎?」

健次郎「うん」

 

イシ「いや~、そんな話ひと言も聞いてへん。痛そうにもしてへんかったし」

健次郎「いや、まあそんな強い薬というわけやないねんけどな。まあ、気ぃ付けといてあげた方がええなあと…。もしあれやったら診察するけど」

イシ「本人が話、してくれたら。なっ」

 

茶の間

ツネ「おいしい?」

亜紀「うん」

ツネ「あ~、おいしいでしょ?」

 

町子「ありがとうございます」

純子「パパイアのお漬物おいしかったです。ありがとうございました」

ツネ「珍しいでしょ? 奄美ではね、お漬物といえばパパイアなのよ。みそ漬けていうのもあるの」

純子「みそ漬けですか?」

ツネ「はい」

純子「へえ…」

ツネ「ハハハハ! 今度ね、うちで漬けたのを送るわ」

純子「そんな、催促したみたいで…。いいですか? わあ、うれしいです!」

 

町子「お漬物…。そう、お漬物なんよ! お漬物! お漬物よ!」

茶の間を飛び出した町子と茶の間に入って来た健次郎がぶつかる。「ああ!」

町子「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい」廊下を走る。

健次郎「何を慌ててんねん?」

 

町子「これや! ないわ! やっぱりない! ないの! ない! ない、ない、ない、ない! ない! ない! ない、ない!」家計簿を持って戻ってきた。

健次郎「何をバタバタしてんの?」

町子「あった~!」台所からぬか床を見つける。

純子「先生?」

町子「あった! あった、あった、あった! あった! あった…」

健次郎「あった?」

 

町子「ないの…」

健次郎「ない?」

町子「これにね、『お漬物買うた』という記録だけがないの!」

健次郎「そらそやがな。こうやって毎日家で漬けと…。あっ!」

純子「ああ…」

 

町子「ほれ、健次郎さん、手料理!」

健次郎「ああ…」

ツネ「ハハハ! これは母親の味じゃが!」

町子「よかった~!」

みんな喜んでいるが、イシだけ沈んだ表情。

 

イシ「町子さん…。違うのよ、これ…」

町子「え?」

イシ「残念やけど、これ、澄子さんのぬか床やあれへんの」

町子「え…」

イシ「去年の夏、いっぺんあかんようにしてしもてね…。それで私が新しく…」

 

町子「そやったんですか…」

イシ「ごめんなさいね! せっかく町子さん…」

町子「いやいやいや…それはお母さんのせいやありませんので」

健次郎「まあ、ええがな。なっ。もう手料理は諦めなしゃあない」

 

純子「あ~っ! あ~あの…あの…あの…はあは!」

町子「『はあは』?」

純子「あの…ほら、た、た、た…」

町子「何て?」

 

純子「たこ~!」

健次郎「たこ?」

純子「たこ芳!」

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回想

りん「私ね、時々澄子さんとは、こっそりお料理教えたり、教えてもろたりしてたわ。あ…お漬物習たりね」

回想ここまで

 

純子「もしかしたら、たこ芳のりんさんかも!」

町子「それよ~!」

ツネ「あ~っ!」

健次郎「おい!」

家を飛び出し、町子が走る。「ちょっとごめんなさ~い!」

純子「先生!」

 

アムール前

町子「ちょっとすいません! ごめんなさい!」

ヘロヘロで追いかける純子。昨日のミニ予告。

 

たこ芳

町子「開店前にすいません!」

りん「あら、どないしはりました?」

町子「つかぬことお伺いいたしますけども、ぬか床持ってはりますか?」

りん「え?」

 

町子「亡くなはった澄子さんのね、ぬか床探してるんです。はあ…こちらやったらあるんやないかなと思いましてね」

純子「あの、澄子さんにお漬物教わったっておっしゃってたの思い出しまして」

りん「ああ、確かにそうですわ。澄子さん、ぬか床くれはって漬け方も全部教えてくれはりました」

 

町子「そしたら…!」

りん「え~っと、それがやな…う~んと…去年の夏に…あ…カビさしてしもた」

町子「え…」

純子「あ~!」

町子「また去年の夏や~!」

純子「もう、去年の夏が目の前にいたらひっぱたいてやりたいです!」

 

りん「何でそんなもん探してはんの?」

町子「母親の手料理をね、食べさしてやりたいなと思いましてね、子供たちに。いや、それがね、手料理と言えるかどうか分からへんのんですけどもね」

 

ミニ予告

由利子が料理してるの手伝う町子。「上手にできるやん。はい、4センチ」

 

去年の夏がいたらひっぱたいてやりたいって面白い表現だなあ。