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【連続テレビ小説】マー姉ちゃん (145)

公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意 

毎朝の朝刊に「サザエさん」が再登場する。凝り性のマチ子(田中裕子)は気に入らない原稿を描き直し、マリ子(熊谷真実)に頼んで原稿取りの池田(加藤健一)を待たせている。そんな中、朝男(前田吟)に引っ張られてきた均(渡辺篤史)が、道子(光丘真理)との結婚を認めて欲しいと直訴する。親子ほど年の差のある二人だが、道子は均の描くおおらかな漫画への愛を語る。二人の気持ちを聞いたマリ子は、結婚を認めるのだが…。

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磯野家にオートバイの音が近づく。

 

このオートバイは「サザエさん」の原稿取りです。そうです。連載漫画「サザエさん」は毎朝の朝刊に再登場しておりました。

 

道子「先生! マチ子先生! 毎朝さん、いらっしゃいましたよ~!」

マチ子「は~い!」

池田「失礼します」

 

イケメンバイク便のお兄さんは加藤健一さん。

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砂の器」では三森署のジープを運転する若い警官だったそうだけど、う~ん、よく分からない。

 

道子「あの、先生はもうご承知しておりますので、もうしばらくお待ちくださいませ」

池田「ああ…(腕時計を見る)」

マリ子「あっ! どうもいつもご苦労さまです。さあ、どうぞお掛けになって」

池田「しかし、あの原稿の方は?」

マリ子「あ…今ちょっと見てまいります。すいません」

 

2階

マリ子「あら、また難産?」

マチ子「うん、あともう少し」

マリ子「ん? 出来てるのあるじゃない」

マチ子「カツオの顔が気に食わないのよ。だから描き直してるってわけ」

マリ子「ということは?」

マチ子「あと、10…いや15分ね」

 

仕事とは全てこのように納得のいくまで挑戦しなければならないのであります。

 

玄関で待っていた池田はまたしても腕時計を見て立ち上がる。「それじゃあ、お電話お借りします」

マリ子「あっ、はい、どうぞどうぞ」

 

しかしながらマリ子の立場もまた大変です。

 

マリ子「あっ、あの…ただいまお茶を持ってまいります」

池田「もしもし。運輸の池田です。今、磯野さんなんですがね、10分待ってくれと言うんです。ですから多分30分でしょう。はい」

それを聞いていたマリ子は道子にようかんを厚く切り直すように言う。「だって何しろ30分ですもの」

 

そこへ天海が均と一緒にマリ子を訪ねてきた。

マリ子「あら、天海さんじゃないの。大宗さんもご一緒に?」

朝男「どうもこうもあるかい。この野郎ね、俺んとこへ来て、とんでもない話持ち込んできやがったんだ。じゃあ、出るとこ出ようってんでここへ引き連れてきたんだよ」

マリ子「ちょっと…出るとこって一体?」

朝男「そうよ、おめえさんのとこだ」

 

マリ子「あ~、もう…交番のことかと思ったわ」

朝男「ああ、交番へ行くよりな、ひでえこったい」

均「それはないだろ。だからこそ僕はまず君の所へ…」

朝男「冗談じゃねえぞ! ちょぼいち聞く耳は持たねえんだ」

マリ子「ちょ…ちょっと待ってよ。一体、どうかしたの?」

 

朝男「この野郎ね、嫁さんが欲しい。こう来たもんだ」

マリ子「まあ」

均「マ…マ…マリ子さん…」

マリ子「いえいえ、結構ですわ。私もひと事ながらとても心配してたんですのよ」

 

茶わんの割れる音。道子が割ったことにマリ子は驚くが、池田にお茶を出すこと、応接間にもお茶を持ってくるように言う。

 

マリ子「あ~、天海さん、ここじゃあお話も何でしょうし、どうぞ奥へお上がりください。ここからで結構ですから」

朝男「へいへい、分かった分かった。何ボ~ッとしてんだ。ほら、来いよ。行くぞ」

 

応接室

マリ子「えっ、道子ちゃんを?」

朝男「ええ」

マリ子「お嫁に欲しいって大宗さんが?」

均「ああ…まことに申し訳ございません…」

マリ子「あ…いいえ…でも、一体…?」

 

朝男「それをね、こいつの口からきいた時、あっしはもうたまげたんだよ。ほら見ろ、マリ子さんだってびっくりなさってるだろ」

均「実にまことにもって、その…」

朝男「実もまこともあるかよ! ええっ!? お前いくつだ? 立派な四十男だろう? それに比べて道子ちゃんは20と3歳だよ。なっ? どう見たってこりゃあ親子だ。夫婦じゃねえぞ」

均「それは重々承知してるんだよ。だから…」

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↑こちらでも計算したけど昭和28(1953)年、道子は23歳(昭和5(1930)年生まれ)。均ちゃんは四十男と判明したので、天海さんより下で大正2(1913)年生まれの40歳ということになるかな。ま、四十男というのは40歳前後を指すと思うので、ぴったり40歳ではないかも。でもこの年ならお千代ねえやと同じ歳ということになります。

 

朝男「だから欲しいというのか? この泥棒め!」

マリ子「それはあんまりよ、天海さん」

朝男「何ですかい? すると、マリ子さん、ええ? はいはいとこのインチキ野郎にやろうってのかい?」

均「僕は…インチキでも誘拐犯でもないよ!」

朝男「バカ野郎!」

 

池田は玄関に座ってようかんをほおばろうとしていたが、天海の声に驚き、応接間の会話に耳を澄ませる。

 

マリ子「お願いだから、天海さん、そんな声でどならないで」

朝男「これは地声ですよ。それで、ど…どうだっていうんだい!」

マリ子「いいのよ。事の初めからちゃんと大宗さんに伺いますから」

均「はあ。全く、その…何と言ったらいいかな…」

 

応接室の前で道子もお茶をお盆にのせたまま聞き耳を立てる。

 

朝男「何だよ? 何だよ何だよ何だよ、じれったいな、おら! 要は事の初めはヨウ子ちゃんの、ええ? 結婚式からだろ?」

マリ子「ヨウ子の結婚式?」

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朝男「ほら、三郷さんが来れなくなって、道子ちゃんがうろうろ捜して心配なすってた時に、こいつはね、これはいい機会だと思って、そん時いろいろとこの…優しくしてやったんだ。なっ? それを道子ちゃんが間違ってこいつのことをいい人だって、そん時思ったんですよ」

マリ子「はあ。そういえばあのあともお母様のお用事で、ちょいちょい大宗さんのうちに伺ってたようだけど…」

均「はあ。それで…この人には私がついててあげなければいけないんじゃないかと、こう思ったらしいんですよ」

 

朝男「何だと!?」

マリ子「とにかく待ってよ、天海さん」

均「そうだよ。僕はね、君のことを兄のように思っているからこそ第一にこの切ない胸の内を聞いてもらおうと思ったんじゃないか」

朝男「バカ野郎! あんな若い子だまくらかしやがってよ! 17も年が違うんだぞ! ええ!? 『残り物には福がある』とでも言いてえのかよ! この野郎、うまいことやりやがって…」←天海さんの本音

 

マリ子「何ですって!?」

朝男「いやいや…こっちのことだ、へいへい…」

マリ子「天海さん!」

朝男「へえ、分かってますよ。だからよ、ええ? この話はな…」

 

マチ子「マー姉ちゃん! マー姉ちゃん!」

マリ子「もう…仕事にかかるとすぐこれなんだから!」

マリ子が応接間を出てきたので慌てて隠れる道子。マリ子は玄関にいる池田に「ああ…すいません…」と言いつつ、廊下奥へ。

 

台所の電熱器?で原稿を乾かすマチ子。

マリ子「出来たの?」

マチ子「ううん、あと5分…10分かな。ちょっと待ってって運輸部さんに言って!」

マリ子「もう…前通ってきたら自分で言ったらいいじゃないの」

マチ子「だから言ってって。お願い」

マリ子「もう…。道子ちゃんは?」

マチ子「ううん、知らない」

 

マリ子は廊下から玄関へ。

マリ子「あの、うちの道子ちゃん知りません?」

池田「知りません」

マリ子「あら、おかしいわ。一体どこに行ったのかしら?」

池田「あの…」

マリ子「あっ…いけない! あの…あと5分お待ちくださいませんでしょうか? 今、墨を乾かしておりますので」

池田「するとあと10分ですね」

 

バタバタとマチ子は2階へ。

マリ子「あのとおり、急いでおりますので」

池田「はあ…」

マリ子「あっ、じゃあ奥も取り込んでおりますので、ちょっと失礼いたします。すいません」

 

応接室

マリ子「道子ちゃん」

均と道子が並んで立っていた。

道子「突然のことで本当に申し訳ないと思っています。でもどうか大宗さんとの結婚を許してください。お願いいたします」

マリ子「許すも許さないもそういうことじゃないじゃありませんか」

 

均「それでは…」

朝男「それでは何だい? ええっ!?」

マリ子「いいえ、でも何だかこうしてお二人が並んでるところを見ると当然のようなことの気もするけど…。とにかくどうぞ(とソファに座らせる)。はあ…でも一体いつこんなふうになったのか私にはさっぱり分からないものだから」

道子「私…奥様には本当に申し訳なくって…」

均「いや、あの…マリ子さんにはまことに申し訳ないんですけども、おかあさんのご厚意に甘えて、みっちゃんに掃除してもらってる間に、どうも僕は道子さんの母性本能を刺激しちゃったらしいんですよね」

 

マリ子「母性本能!?」

道子「はい。大奥様のお言いつけですけれども週に1回、この私が行かないと大宗さんのお部屋、紙くずでいっぱいになってお洗濯物なんか丸めて、あっちにもこっちにも置いてあって、それにお食事なんかもどうかすると焼き芋ばっかり3日も4日も食べたりして…」

均「道子ちゃん、それは…」

道子「だって本当のことです」

 

朝男「離れて離れて。まだ決まったわけじゃねえんだからよ。すると何だい? ええ?  お前、田河先生の所の書生になって何年になる?」

均「かれこれ20年近く」

朝男「その20年の間、漫画は駄目だが掃除、洗濯、草むしり、ええ? 書生としては一番だった、そう言われた男だろ。甘ったれるんじゃねえぞ。その何とか…ええ? 道子ちゃんの何とかのあれを何とかするってのは手が汚えんじゃねえのか?」

そう! それは気になってた。家事はやればできる男なのに。

 

道子「待ってください! 大宗さんはそんな卑劣な方ではありません!」

マリ子「それは私も保証します」

朝男「やれやれ…」

道子「ごめんなさい。でも、私、大宗さんのちょっと変わってるけど、そのおおらかで温かくてこせこせしない大きな漫画が大好きなんです。好きなんです。本当に好きなんです」

 

マリ子「道子ちゃん」

道子「はい。私、その絵を大宗さんにいつまでも描き続けてもらうためにも少しでもお役に立ちたいんです。奥様お願いです。私をお嫁に出してくださるっていうんだったら、どうか大宗さんの所に出してください。お願いです。お願いします。お願いします」

マリ子「分かったわ」

道子「奥様…」

 

マリ子「それで大宗さんの方はいかがなんですの?」

均「はあ。まことに面目ない次第ですが、男としてこれほどまでにいじらしい事を言ってくれる道子ちゃんに対して僕はもう一生懸命いい漫画を描くことで幸せにしてやりたいと思ってます」

マリ子「それじゃなにも問題なんかないじゃありませんか。ねえ、天海さん」

朝男「ええ。2人のね、気持ちが決まってるんだったら、あっしがごちゃごちゃ言ってもね、ええ、何も始まりません。ええ」

マリ子「そしたら、ちょっと私失礼します」

 

すっかりお茶もなくなった湯飲みをひっくり返している池田。マリ子は2階へ。

 

マリ子「どんな様子?」

マチ子「うん。ぬれてる所を消しちゃったもんだから目玉が流れ落ちちゃったんだけど…。よし! いいわね、出来上がり!」

 

1コマ目

サザエとカツオが道でばったり。

カツオ「ア、ねえさんだ!」

 

2コマ目

サザエ「まてっ」とカツオを追いかける。

 

3コマ目

サザエがカツオの首根っこを捕まえた。

カツオ「ボク、なにもしてないよ」

サザエ「じゃ、なぜにげるのさ、バカね」

 

4コマ目

仲よく歩くサザエと頭をかいているカツオ。

カツオ「ついしゅうかんになったんだね」

 

マチ子「はあ~、吸えるもんならここでタバコを吸うときっとおいしいんだろうな~」

マリ子「そんな悠長なこと言ってないで。封筒はどこなの?」

マチ子「そこそこそこ。あ~…」

マリ子「持っていっていいのね?」

マチ子「ザッツオールライト」

 

ここでマリ子は今仕上げた原稿じゃない紙を封筒に入れて持っていった。マチ子は残された原稿を笑顔で破く。

マチ子「あっ…」

 

この顔。描き直した方を破った顔です。

 

マリ子は既に1階で池田に原稿を渡していた。

マチ子「はあ~…」と机に突っ伏した。

 

夜、磯野家客間

はる「結構じゃありませんか。年の差なんか気にすることはありませんよ。要は2人の気持ち次第ですからね」

道子「申し訳ございません。でも金子さんからのお話し頂いて何だかちょっと言いにくくなっちゃって…」

はる「いいじゃないの。それも何となく道子ちゃんらしくて。さあ、それでは忙しくなるわね」

マリ子「そうですね。お式の日取りやらお支度やら、それから住むうちのことも考えなくちゃね」

道子「あの…」

 

はる「大丈夫ですよ。マリ子にドンと任せておきなさい。こういうことになると私以上に張り切るんですからね」

道子「いえ、私、そういうもの何にもいらないんです」

マリ子「道子ちゃん…」

道子「着のみ着のままでいいって大宗さんも言ってくださいましたし」

 

はる「だからと言うて何のお支度もなしというわけにはいかないでしょう」

道子「いえ、ですから、その分、お金で持っていこうと思っています」

マリ子「お金で?」

道子「はい。大宗さんもマリ子奥様や水泡先生が立ち会ってくだされば、それでいいって言っていますし。それに仰々しい披露宴なんてもったいないでしょう」

はる「ええ、それはまあね…」

 

道子「それで皆さんからもお祝いは品物じゃなくって現金にしていただこうと思ってます。変ですか?」

はる「いえ、別に変ということはないけどね…」

マリ子「そうね…ゼロからの出発ということではとても似つかわしいと思うけど…」

道子「よかった。ウフフッ!」

 

こういうのをちゃっかりしてるとは言わず、しっかりしていると言うべきなのでしょう。

 

今日の話は、前段として道子に金子さんという人から(前に出てきた取次店の人かな?)お見合い話があって、道子が言いだしにくかったのを均が朝男に相談して判明したってことかな? 最後の方に道子が唐突に”金子さん”とか言ってるけど、カットされた部分がありそう。

 

マチ子の原稿破りは「長谷川町子物語」でもあった。とても追い詰められていたシーンで、そこから漫画やめるにつながるシリアスな感じになってたけど。

 

道子が合理的なのが、「あぐり」の千花ちゃんを思い出した。

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千花ちゃんは昭和22年に18歳だから、大体同世代というかそれこそ「純ちゃんの応援歌」の純子と同じ歳じゃないの。戦前、戦中を生き抜いてきた大人と比べて、戦争を経験したもののまだ子供で新しい価値観を持ってるタイプというか、はるやマリ子はそんな道子に世代間ギャップを感じたということだよね。静尾ちゃんも同じタイプかな。