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【連続テレビ小説】マー姉ちゃん (111)

公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意 

ついに漫画「サザエさん」が新聞紙上に産声をあげる。磯野家の日常で起こるようなことを描いているのだが、誰の失敗がネタにされるかと内心ヒヤヒヤする周りの人々。そんな中、マリ子(熊谷真実)の失敗談が早速漫画のネタになり、怒ったマリ子はマチ子(田中裕子)を追いかけ回す。そこへ、満州から帰国した三郷(山口崇)が、道子(光丘真理)と言う少女を連れて、ボロボロの姿で磯野家を訪ねてくる。道子を風呂に入れると…。

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磯野家の前を一平がウロウロ。

一平「え~…まだかな~、うん…」

新聞少年「夕刊~!」

一平「あっ、あっ! ああ~、ご苦労さん、ご苦労さん」

新聞少年「あっ、お宅のは今、配達してきたですよ?」

一平「よかよか、わしに渡してくれたらよかて」

新聞少年「なしてですか? これは磯野さんのですよ?」

一平「分かってるて。今晩の夕刊はな、わしに配達させてくれんか? 頼むばい」

新聞少年「はい。それならお願いします!」

一平「ああ、ありがとうありがとう。はあ…夕刊! 『フクオカ夕刊』の夕刊ばい!」

一平は夕刊を持って磯野家に入っていく。

 

サザエさん

連載漫画 磯野マチ子

1コマ目

中央に舟、右にワカメ、左にカツオ。

舟「こちらはワカメ、こちらはカツオともうします」

 

2コマ目

舟が「サザエ! サザエ!」と呼ぶと「ハ~イ」と返事。

 

3コマ目

芋を片手に持ち、食べながらサザエ登場。

舟「これッ! なんです、そのなりは!」

カツオ「みなさんにごあいさつしてるとこだよ」

 

4コマ目

恥ずかしがるサザエ

舟「どうもあんなふうでこまります」

笑っているカツオとワカメ

www.asahi.com

ここに第一回作品の原画が載ってました。ドラマの絵はもちろん長谷川町子さんの絵なのですが、1979年当時の絵なんだろうな。当時ご存命だったからなせる業。本当の連載初回の絵とはまた違う。

 

そうです。以来33年、絵で見る日本戦後史でもある「サザエさん」がこの時に新聞紙上に産声を上げたのです。

 

はる「まあ何でしょう。自信満々だからどんなものから始まるのかと思ったら年頃の娘さんなのにお行儀の悪いこと」

はるは新聞を見て、隣にいたマリ子に渡す。

マリ子「だからお母様はちゃんと文句をおっしゃってるじゃありませんか」

はる「まあ」

 

一平「いや、結構結構。ほんで『サザエさん』は、これから先どげんな騒ぎを起こすか楽しみたい」

マリ子「そうでしょう?」

一平「うむ。明日の分は出来とるのやろ?」

マリ子「はい、出来ています」

一平「わしにだけちょこっと知らしてくれんか?」

マリ子「まいりません」

一平「冷たいのう、マー姉ちゃんは…」

 

マリ子「ごめんなさい。でも原稿がもう新聞社の方に行ってしまってるんです」

一平「う~む、ばってん筋はもうどげんか…」

マリ子「聞いたら漫画を見た時に面白くありませんでしょう?」

一平「それはまあそうじゃな」

マリ子「別にどうという目新しい筋はないんです。ただ毎日、我が家で起こってるようなことですから」

 

はる「まあまあ、一体どんなことを描かれるのやら」

マリ子「お母様は大丈夫ですわ。お母様は立派すぎて漫画にはなりにくいんですって」

一平「するとこの…」自分の胸をたたく。

 

マリ子「さしずめ、お千代ねえや辺りが狙われるんじゃないでしょうか」

はる「あらまあ。それでこのところお千代ねえやは妙におしとやかなのね」

マリ子「少し薬が効き過ぎたかな?」

はる「まあ」

 

食事の支度をしているお千代ねえや。マリ子が台所へ行くと…

千代「はあ、何でございましょうか?」

マリ子「どうしたの? お千代ねえや。口に腫れ物でも出来たの?」

千代「いいえ、とんでもございません。オホホ」

マリ子「嫌ね~、大丈夫だったら!」

千代「いえいえ…」

 

マリ子「本当に大丈夫だったら。まだ始まったばかりじゃないの。そりゃあ先行き詰まってきたら誰がどんなふうに描かれるか分かんないけど」

千代「(いつもの口調に戻って)ばってんマリ子お嬢様が」

マリ子「フフフッ、ごめん。あれは景気づけに脅かしただけなの」

千代「もうひどか~! もう~…こんな上品そうにしとったからもう一日中まあ肩凝ってしもうたですよ」

 

マリ子「だから慣れないことはするもんじゃありません」

千代「自分のデマば棚に上げといて!」

マリ子「まあ!」

 

外からマチ子に「すいませんけど、お水持ってきてくれる?」と声をかけられたマリ子はコップに水を汲んで、お盆に乗せて運んだ。

 

マチ子は庭にいてマリ子の姿にびっくり。

マチ子「あらやだ。私、お庭にまこうと思ったのに」

マリ子「お庭に?」

マチ子「そうよ、気分転換にそこの植え込みに水やろうと思ったら」

マリ子「え~…。それならそうって言ってくれりゃあいいのに…」

 

庭で水まきをしていたマリ子に2階にいたマチ子が「またまたすいませんけど、お水持ってきてくれる?」と声をかけた。

マリ子「オー イエー。オーケー、オーケー!」

今度はじょうろを持って2階へ。

マリ子「あ~、はい、お水」

マチ子「はい、ありがとう」

 

マチ子は薬を飲もうとしていた。

マリ子「あ…私、あの…出窓の鉢にやるお水かと思ったの、うん」

ヨウ子もマチ子も笑い出した。

 

サザエさん

1コマ目

「サザエ! みずをもってきてくれ~」

サザエ「ハーイ」

 

2コマ目

お盆に水を載せたサザエ「あれ?!?」

波平「オイオイ、にわにまくんだヨ」

 

3コマ目

「サザエ! またすまん、みず一ぱいくれんか」

 

4コマ目

波平「クスリをのむんだヨ」

サザエさんはバケツ一杯の水を持って来た。

 

マリ子はネタにされたとマチ子を追いかけまわした。

 

いやはや、早々にしてモデル問題が起きたようです。とはいえ、連載漫画「サザエさん」にいちいちこうしたモデル事件があったわけでなく、どこのうちでもよく見られるほほ笑ましい出来事がこの屈託のないおてんば娘に託されて明るい笑いが毎日、この地方の家庭へ送り届けられたのです。

 

軍平は家に帰ってくるなり玄関で夕刊を広げて爆笑。新聞少年も配達中に読んで笑い、トミ子も茶の間で芋を食べながら笑っていた。

 

時に昭和21年5月。あの敗戦から1年もたたず焼け野原の町にはまだ復興の兆しが目に見えない頃のことでした。

 

磯野家の縁側。畑帰りの千代?

マチ子「まあ、トミ子さんやお隣のおじ様までが?」

千代「はい『今日の漫画は一体誰の失敗か?』とそれはしつこく」

マリ子「嫌だわ、全部が全部、私のことを描かれてるみたいで」

千代「やけん『あれはマチ子お嬢様の頭の中にどんどん生まれてくるお話です』とそう申し上げておきました」

 

ヨウ子「そしたら?」

千代「『やっぱ天才なんやな』と感心しとんしゃったです。やけん『もちろんそうです』とそう申し上げておきました」

はる「まあ、お千代ったら」

マリ子「それにしても…」丸めた新聞紙でマチ子をたたく。

マチ子「痛~!」みんな笑う。

 

ますます明るい磯野家の表に今、思いがけない人が姿を見せました。

 

新聞少年「ここのお宅です」

男「どうもありがとう」

新聞少年「いいえ、ご苦労さまでした。じゃあ」

 

男「ごめんください」

千代「はい」

男「夜分、お邪魔いたします。私、三郷智正と申しますが」

マリ子「三郷さん…」

 

揃って玄関に飛び出していく磯野家の面々。ヨウ子が機敏。真っ黒でボロボロの服を着た智正が玄関に立っていた。帽子を取ると半分白髪頭。今までのあの黒髪ってカツラだったの? それとも今のがカツラなの?

 

智正「どうもすいません。船が博多港に入るのが遅れた上に手続きに手間取りましてこんな時間にお伺いしました」

hakatakou-hikiage.city.fukuoka.lg.jp

はる「何をおっしゃるんですか…。無事にお帰りなったのにこんな時間もあんな時間もございません。さあどうぞお上がりになって。どうぞどうぞ」

智正「はい、それでは。(後ろを振り返り)さあ、お入りなさい」

 

マリ子「それじゃあ!」

他の家族も無事なのかと思っていたが、玄関に入ってきたのは髪の短いボロボロの格好をした子供だった。磯野家の面々を見て恐れたような表情を浮かべる。

 

智正「満州からずっと一緒でしてね。あの小林道子ちゃんといいます」

マリ子「まあ、お嬢ちゃんでしたの」

マチ子「ごめんなさい。私はてっきり坊っちゃんかと思ってしまったわ」

ヨウ子「さあ、どうぞどうぞ。お上がりになってね、道子ちゃん」

智正「はい。それじゃあね、遠慮なく失礼しましょう。さあ、下ろしなさい」

 

マチ子「どうぞ、三郷さんリュックを」

智正「ああ、触らないでください。あかだらけですから」

マリ子「何をおっしゃるの」

智正「すいません」

マリ子「さあ、道子ちゃん、あなたも」

荷物に触れようとしたマリ子を拒絶する道子。

 

道子「ごめんなさい!」

マリ子「私の方こそごめんなさいね。とても大切なものだったのね」

道子は黙ってうなずいた。

 

はる「とにかくお上がりなさい。さあ、どうぞ三郷さん」

智正「それでは失礼します」

マチ子「どうぞ」

はる「さあ、さあ」

マリ子「あなたも自分のおうちだと思って。さあ、はい」

はる「さあ、道子ちゃん。ねっ? 早くいらっしゃい」

マリ子「はい、上がりなさい」

 

三郷さんの連れはなぜか男の子のようなこの娘だけでした。

 

玄関に脱がれた靴もボロボロ。

 

客間にいる智正、はる、マリ子。

マリ子「そうですか…あの中にあの子のお父様のお骨が…」

智正「はい。どんな時でもしっかりと抱いて片ときも離そうとしませんでした。だからきっと…」

マリ子「そうでしたの…」

 

はる「それでおいくつになられるんですか?」

智正「16か17じゃないかと思うんですがね。いや、改めて年を聞くようなそんなゆとりがなかったもんですから」

マリ子「まあ…」

 

ヨウ子「道子ちゃん、私の服でちょうど合いそうでした」

はる「それはよかったこと」

マリ子「それでマチ子は一体何をしてるの?」

ヨウ子「もう道子ちゃんにつきっきり。今、髪を洗ってあげてます。でもゴシゴシっていう勢いだからかわいそうみたいで」

智正「むさ苦しくってすいません。消毒はしてもらったんですが…。あの子、お風呂に入るのは何か月ぶりでしょうか…」

 

はる「結構じゃありませんか。なぜか日本人はお風呂に入るとやっとうちに帰ってきたという気がするそうですから」

智正「奥さん…」

はる「本当に…よくお訪ねくださいましたわ」

智正「はい。マリ子さんから百道の海岸だって伺ってたもんですから」

マリ子「本当。お話ししておいてよかったわ」

 

智正「もう船が博多港に入ることが分かっていましたからね。その後、皆さんどうしていらっしゃるか、とにかくお訪ねするだけはしてみようと思いまして。それにしても際どく焼け残られましたね」

はる「おかげさまで」

マリ子「ヨウ子も元気になりましたでしょう。これでも2度入院したんですよ?」

 

智正「そうでしたか。いや、もうお顔を見るまでヨウ子ちゃんのことが一番心配でしたよ」

ヨウ子「ごめんなさい。ちっちゃい時からいつも心配ばかりおかけして」

智正「いいえ。でもお顔が見れて本当にこれでやっと一安心いたしました。お訪ねしたかいがありました」

はる「あの…?」

智正「はい。今夜は船で泊めてくれるそうなので、あの子が上がってきたら失礼いたします」

 

マリ子「駄目です! そんなことってありません!」

智正「しかし…」

はる「そうですよ、いけませんですよ。あなたもお風呂につかって、そして今夜はゆっくりこのうちで休んでください」

智正「いえいえ、それではあんまりです」

 

はる「いいえ。大変な思いをなさって、やっとこのお国へ帰っていらして、そして私どもを訪ねてくだすったんではありませんか。一体どこで手足を伸ばされるとおっしゃるんですか!」

智正「奥さん…」

マリ子「お願いします。そうしてください。ねっ、ヨウ子?」

ヨウ子「はい!」

智正「マリ子さん…」

 

マチ子「ただいまから我が家の末娘、道子ちゃんを紹介します! どうぞ!」

道子はすっかりきれいになっていた。

はる「まあ」

マリ子「この子があの子!?」

マチ子「さあ、道子ちゃん、ほら! さあさあさあさあ…おじ様の右に座って」

 

智正「ああ~…。いや~、道子ちゃんはこんなかわいい顔をしてたのか」

マチ子「まあ、ひどいわ、おじ様ったら!」

智正「い…いや…。初めて会った時から、この子、その…鍋墨をいっぱい塗ってたもんですから。いや~、それにしても実に驚きましたね」

 

ヨウ子「でしたら今度はおじ様が驚かしてくださる番ですよ」

智正「はあ?」

マリ子「さあ、お風呂にご案内いたしますから」

智正「あの、でも…」

マリ子「どうぞ、おじ様。さあ、早く早く」

智正「いえいえ…これはこれは…」

三郷さんって女性陣に囲まれてキャッキャッされてるのが似合うな~。今日はブルーバックの「ただいまの出演」で終わり。

 

しかし、三郷さんなんつー人生なんだ。満州からの引き上げで子連れと言うとどうしたって「純ちゃんの応援歌」を思い出す。このドラマは昭和22年ですが。

peachredrum.hateblo.jp

道子は、純子とほぼ同年代かな。純子の場合、満州で家族で暮らしたことはあったみたいだけど、あとは陽一郎の単身赴任状態だった。

 

あくまで明るい磯野家っていいな。