公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意
昭和19年6月、空襲警報が増えた鹿児島。マリ子(熊谷真実)は、隆太郎(戸浦六宏)の指示のもと、落ち着いて逃げる準備をする。福岡のマチ子(田中裕子)は留守を預かる磯野家を守ろうと、火はたきを持って敵機の飛ぶ空をひとり睨む。翌日、東郷家ではじゃんぼ餅を焼いて食べるが、マリ子は初めて新八郎(田中健)の好きな食べ物だったと知る。その夜、夢の中に白い着物姿の新八郎が出てきて、ケガをしてしまったと言い…。
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日本軍部の誰もが想像しえなかった巨大な爆撃機B29が日本上空に不気味なその姿を初めて現したのは昭和19年6月16日の未明でした。
地図の中にある飯塚市って最近何かで聞いたなと思ったら「純ちゃんの応援歌」の雄太の生みの母が再婚して住んでるところだったね。
空襲警報に目を覚ましたマリ子は、貴美と外へ出ようとする。
隆太郎「うろたえやんな!」
マリ子「お義父様!」
隆太郎「まだ頭ん上には敵機の姿はなか。うろたえてけがでんしやんなよ」
マリ子・貴美「はい」
隆太郎「よし、支度がでけたら一気に庭へ下りられるごっ履き物を用意しておけ。わしは表を警戒してくっでな」
マリ子は新八郎の写真を手に取る。
磯野家には軍平がマチ子を訪ねていた。マチ子一人か。
軍平「何や北の方、やられよるそうばってん」
マチ子「本物の空襲のようですね」
軍平「そうたい。防空壕へ案内するけん、今すぐあんた一緒についてきんしゃい」
マチ子は、留守を預かっている責任があるとし、ここで頑張れるだけ頑張ると防空頭巾をかぶり、火はたきを持って空を見ていた。
マチ子「焼夷弾が落ちてきたらどんなことをしてでも消し止めないと!」
おしんも家を守るのは母のつとめと頑張っていたもんね。
空襲警報と人々の騒ぎ声のする中、病室のヨウ子の手を取るはる。療養所員が「いざという時に病人ば壕へ運べますな!?」という声に、こちらは大丈夫でございますと返すはる。
はる「何も心配しなくていいんですよ、ヨウ子」
ヨウ子「はい」
はる「人間、死ぬ時は死ぬのです。それがいつであるかということは神様がちゃんとお決めになっているんですからね。何も慌てふためくことはないのよ」
ヨウ子「はい」
はる「でも、警報が長引いて疲れるようだったらそうおっしゃい。壕に連れていって横にしてあげますからね。この療養所にはヨウ子よりももっともっと悪い人たちが大勢いらっしゃるでしょう? 今から押しかけていってあの狭い壕に割り込んだらその方たちが窮屈な思いしますからね」
ヨウ子「はい」
はる「もし、いきなり爆弾が落ちてきたらこのお母様が弾よけになってあげますからね」
ヨウ子「お母様…」
はる「さあ、楽にしていなさいね。寄りかかって。はい」
どれほど母親の心が尊くても、その肉体は弾よけになれるほど確かなものではありません。この未明、敵機は北九州市の軍需工場地帯をたたき潰しましたが、B29による空襲はマリアナに基地が出来るまでのまだ序盤戦に過ぎなかったのです。
療養所に防空頭巾をかぶった千代が駆け込んできた。
千代「空襲警報が鳴ったけん、息の続く限り走ってきました!」
はる「大丈夫よ、慌てんでも」
マチ子が家に一人でいると知り、寄ればよかったという千代。
はる「大丈夫よ。こういう時にあの子は意外と強さを発揮するんです。きっと今頃、火はたきを持って空をにらんでることでしょうね」
空襲警報が鳴る中、火はたきを持って空をにらみつけるマチ子。
ひとりちょっとまごつきながら台所にいる花江のもとをマリ子が訪ねてきた。
花江「マリ子さん! ゆうべ大丈夫でした?」
マリ子「はい。お義父様の指揮の下でおかげさまで慌てることなく済みました」
花江「まあ、それはよかったわ」
マリ子「お邪魔します」
花江「やっぱり軍医さんは軍人さんですものね」
マリ子「それで伯母様の方はいかがでした?」
花江「ええ。別に鹿児島が空襲を受けたわけではなかったのに市長さんともなれば、やっぱりおうちでのんびりお布団に入ってるわけにもいかないでしょう」
マリ子「それじゃあ伯父様は?」
花江「ええ。鉄かぶとなどものものしくかぶってずっと市役所に詰めっきりなの」
マリ子「それでお食事は?」
花江「いずれ何か出たんでしょうけれど、お昼ごはんは朝と兼用でこれから差し入れを持っていこうかと思って」
花江はしゃべりながらお皿にご飯をよそったりしてるけど、お嬢様育ちで家事が苦手な設定なのか、まごまごしてるように見える。
マリ子「それじゃあ私が届けに行きます」
花江「そう? 助かるわ」
マリ子はおにぎり作りを手伝おうとするが…
花江「駄目、駄目!」
マリ子「なぜですか?」
花江「もしも途中で空襲が来たら大変よ! それこそはるさんや東郷さんに申し訳が立ちません!」
マリ子「空襲なら大丈夫です」
花江「あら、どうして?」
マリ子「東郷の父が申しておりました。昼間だと発見されやすいから夜の方が襲ってくる公算が大きいでしょうって」
花江「まあ…。それじゃあまるで泥棒と同じようね」
マリ子「ええ。ですから、夜寝る時は持ち出すべき物は、ちゃんと枕元にそろえて寝る練習をつけることっていうご注意でした」
花江「お羨ましいことね。本当に冷静でいらっしゃって」
マリ子「でも、その分、私がそそっかしいからプラスマイナスゼロですわ」
花江「駄目よ!」
マリ子「はあ?」
花江「それは敵性語です」
マリ子「あっ、いけない。ほら、このとおりでしょう?」
花江「まあ。本当にマリ子さんが来てくださると心配事がきれいに吹き飛んでしまうようで、私、とっても心強いわ」
「澪つくし」「あぐり」「マー姉ちゃん」と再放送朝ドラに連続出場中の岩本多代さんだけど、何気に一番出演時間多くない?と思ったけど、「澪つくし」とそんなには変わらないかな? 岩本多代さんは他に「北の家族(1973年)」「いちばん星(1977年)」「虹を織る(1980年)」「天花(2004年)」「芋たこなんきん(2006年)」に出演してるので、次もこの中から再放送作品が決まらないかなー。「芋たこなんきん」は興味あるなあ。
貴美「ご主人が要職にお就きだとご心労も人一倍でしょう」
マリ子「ええ。それに伯母は東京では結婚した時についてきたばあやさんがずっとおりましたでしょう。ですから、割とお嬢さんでかわいらしい人なんです」
貴美「あらあら。かわいらしいマリ子さんがかわいらしい方っち言うと本当におかわいらしく聞こえるわ」
マリ子「まあ。私なんか本当は百戦錬磨のつわものなんですのよ」
貴美は新八郎から菊池寛先生の挿絵を描いた頃の苦労話を聞いていた。「それでいて少しもセコセコしたところのないのが新八郎にはとてもかわいく思えたのでしょうね、多分」。毎朝、陰膳を据える時、「お前も案外目が高かったね」と新八郎を褒めているという。
焼いた餅のようなものをたれにつける。
貴美「昨日、粉が配給になったのでとっときのお砂糖を新八郎のために思い切って奮発したとですものね」
マリ子「新八郎さんのために?」
貴美「あの子はお酒も頂くくせにこのじゃんぼ餅がまあ目がなくてね」
マリ子「これは、じゃんぼ餅というんですか? おだんごは」
貴美「ええ。串を2本刺しとるでしょう。だから両棒(リャンボウ)の薩摩なまりでじゃんぼ餅」
マリ子「そうだったんですか。新八郎さんはじゃんぼ餅がお好きだったんですか…」
マリ子が新八郎の写真の前にじゃんぼ餅を供えて、手を合わせる。
ふと、繕い物の作業をしている手が止まるマリ子。家族の心配をしていると思った貴美は、岩村さんからお休みを3~4日頂いてヨウ子の様子を見てきたらどうかという。隆太郎も賛成。しかし、マチ子の手紙を信用しているし、心配はしてないという。
貴美「だったら何かほかに気にかかることでも?」
マリ子「いいえ。あんなにおいしいじゃんぼ餅を頂いておきながら、ほかに何も気になることなんかありませんわ」
隆太郎「そいじゃが。あげな代用食ならいつでん大歓迎じゃ」
貴美「まあ、おまんさあはいつから甘党におなりになりましたか」
隆太郎「えっ…何、何?」とわざとらしく新聞を覗き込む。
優しいしゅうとしゅうとめと暮らしながら…いや、暮らしたからこそマリ子は心にかかることが生まれたのです。それは…
マリ子・心の声「私は新八郎さんの妻なのに、一体あの人の何を知っていたというのだろう…。お義母様とお話ししていてじゃんぼ餅がお好きだったというのも今日初めて知ったし…。子供の時のあの人を…そして中学生だったあの人のことも私は何も知らない…」
枕元に置いた新八郎の写真を見るマリ子。
マリ子・心の声「あなた…新八郎さん…。これで私たち夫婦と言えるのでしょうか? 私はあなたのことをもっと知りたい。もっともっとちゃんと知りたい!」
マリ子の心が通じたのでしょうか。その夜、マリ子は新八郎の夢を見ました。
新八郎「慌てることはないぞ、マリ子」
マリ子「あなた!」
新八郎「ハハハハッ!」
マリ子「あなた!」
坊主頭で白い着物を着た新八郎が現れる。
新八郎「いや、相変わらずの慌てん坊だな、マリ子は」
マリ子「だって…」
新八郎「大丈夫だ。僕たちは若いんだ。2人の時間はたっぷりあるんだから、もっとゆっくり研究したらいいんじゃないのか? 君の旦那さんを。ええ?」
マリ子「でも一体…」
新八郎「うん。研究の結果だ。酒もじゃんぼ餅も両方好きの両刀使いだということが分かって話が違いますなんて言ってももう遅いぞ。僕はマリ子を絶対に離さないから」
マリ子「でも、一体、どうしてあなたは?」
新八郎「うん? どうして会いに来たのかっていうのか?」
マリ子が新八郎をずっと呼んでいたから来たという。白い着物を着ているわけはケガをしてしまったから。指をケガしたと言って、マリ子に見せない。桜島の前で「指の一本ぐらいなくしてもいいだろう」と約束しただろうと笑顔。
マリ子「構わないわ! 私が足になります! 腕にもなります!」と新八郎に抱きつく。「ですから…必ずご無事で帰ってきて! 新八郎さん」
うなずく新八郎と眠っているマリ子でつづく。
夢に出てきた、白い着物、ケガをした…と不穏な言葉がいっぱいで明日に続く…新八郎さーん。いや、まあ「長谷川町子物語」も見たしね、知ってるけどさ。