公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意
新八郎(田中健)の出征のために広島に向かう道中が、二人の新婚旅行となった。そんな二人をガランとした家の中で思いやる隆太郎(戸浦六宏)たち。汽車の中で、マリ子(熊谷真実)と新八郎は、子どもができたらと二人で名前を考える。幸せな時間もつかの間、広島に到着する二人。別れ際、敬礼する新八郎の瞳を見て、想いを巡らせるマリ子。その後、9日ぶりに磯野家へ帰郷したマリ子。マリ子はいつものように明るく振舞うが…。
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どうでもいいことだけど、このドラマ、お弁当をカバンに横に入れるのが気になる…。汁っ気のあるものは入っていないのか。
マチ子は手提げかばんにお弁当を入れ、布団から起きてご飯を食べているヨウ子と付き添っているはるに挨拶をして出かけようとしていた。
マチ子「うん、ヨウ子も頑張ってね。今日一日の辛抱だから」
ヨウ子「えっ?」
マチ子「明日の夜になったらマー姉ちゃんお土産いっぱい持って帰ってきてくれるからね」
ヨウ子「ううん。もっともっと東郷さんと一緒にいられたらいいのに」
マチ子「ヨウ子…」
マチ子はマリ子が帰ってくる事だけを楽しみにしてるんだよねえ。
はる「大丈夫ですよ。東郷さんはまたひょっこりと帰ってきて何かを早く早くってせかすに決まってます」
マチ子「そうよね! きっとそうよね!」
はる「そうですとも。婚約の時も出征の時も婚礼の時だってそうだったでしょう。あの慌て者のマリ子と一緒になるからといってなにもご自分まで慌ただしくすることはないのにね」
マチ子「となると、今度は何の時に飛び込んでくるのかしら」
はる「さあ~?」
マチ子「まあいいや。それを考えるのもまた楽しからずや。ねっ、ヨウ子」
ヨウ子「もちろん!」
マチ子「おっ、元気だな」
ヨウ子「元気です!」
はる「何をしてるんですよ。早く行かないと遅刻しますよ、お仕事の」
マチ子「あっ、いけない」
はる「マリ子はもうお嫁に行ったんですからね。あなたが磯野家の戸主なんですよ。その自覚をもってもらわなくてはね」
マチ子「とうとうお鉢が回ってきたか」
はる「ええ、名目上はあなたが総大将なんですからね」
ヨウ子「行ってらっしゃいませ、旦那様」
マチ子「あっ、ブルータスお前もか」
ヨウ子「はい」
マチ子「しかたがない。こう裏切り者が多いのでは行くよりほかになかりけり。では余は行くぞよ」
はる「はい、では殿様のお見送りに」
マチ子「きゃ~! 退散退散!」
玄関に行ったはるとマチ子。小声で話す。
はる「あのね、帰りに進藤先生の所へお寄りしていってちょうだいね。このところ夕方の熱が8度も上がるのよ」
マチ子「無理してるのよ、ヨウ子。私たちに心配かけまいとして明るい顔してるのよ。私、ちゃんと分かってるの」
はる「だからこそ、私たちは分からないふりをしなくてはね」
マチ子「ええ」
はる「じゃあ、お願いしますよ」
マチ子「はい」
普通のボリュームに戻る。
マチ子「行ってきま~す!」
はる「行ってらっしゃい!」
布団に寝ているヨウ子が「マー姉ちゃん…」とつぶやく。
新八郎が軍服に着替えていよいよ出発しようとしていた。
新八郎「では、父上、母上」
隆太郎「うむ、武運長久を祈る」
新八郎「はい」
貴美「マリ子さん、どうぞよろしくお願いいたします」
マリ子「はい、確かにお供をしてまいります」
隆太郎「うむ」
新八郎「(父に向かい)では、新八郎、ただいまより行ってまいります! (母に向かって)では」
見送る隆太郎と貴美。
隆太郎「泣くな。おはんも武人の母ならば晴れの門出に涙を見せるな」
貴美「はい、そうでごわんな」
隆太郎が空を見上げ、見上げた先は桜島。
新八郎「ええ~? 東京へ初めて行くのに八幡で降りて大阪でも途中下車したのか」
マリ子「だからあの時は一体何日掛かりで東京に着いたのかしら」
新八郎「驚いたね~、ハハハッ。しかし、君たちらしい話だ。うん」
マリ子「だから今度もあちこちそうして行かれたらどんなにうれしいか」
新八郎「マリ子…」
マリ子「ううん、これ以上はぜいたくよ! お義父様たちを追い出してあんなにゆっくりさせていただいたんですもの」
新八郎「うん。すまないな」
マリ子「何をおっしゃるの。これ以上はぜいたくだって言ったでしょう。あんまり多くのものを望むと後の勘定書きが大きいっていうのご存じないの?」
新八郎「こら」マリ子のほっぺを指でちょんとつつき、笑い合う。
マリ子「あの時、私、女流画家を目指してたの。でも私、挿絵家に転向して本当によかった」
新八郎「どうして?」
マリ子「ん~、新八郎さんって案外鈍いのね」
新八郎「僕はそんなに鈍いか?」
マリ子「そうよ。そのおかげで私たち知り合えたんじゃありませんか」
新八郎「何だ、そんなことか」
マリ子「『そんなこと』って言うことはないでしょう」
新八郎「いや、僕はこう思ってるんだ。たとえマリ子が挿絵画家にならなくてもね、僕たちは巡り会い、そして結婚していた」
マリ子「あら、どうして?」
新八郎「そういう星の下に生まれたんだ、僕たちは」
マリ子「まあ新八郎さんって運命論者でしたの?」
新八郎「いや、別にそういうわけじゃないんだけど、そういう巡り合わせになっていたのだ」
マリ子「亭主関白」
新八郎「おう、少なくとも2~3年分はまとめて発揮しないとな。すぐに広島に着いちゃうからね」
マリ子「嫌!」
蒸気機関車の車輪と走行音。
帝大の分室。時計は4時半過ぎ。
マチ子「マー姉ちゃん…。私の人生の全部の時間をあげてもいいわ。だから…今のマー姉ちゃんの時間が永久に続きますように」
蒸気機関車の車輪とウトウトして新八郎に寄りかかるマリ子。
新八郎「ああ、どうした? んっ? 大丈夫か? 疲れたろ」
マリ子「えっ? いいえ。ねえ」
新八郎「うん?」
マリ子「『新太郎』っていうのはどうでしょう?」
新八郎「『新太郎』?」
マリ子「嫌だわ、子供の名前」
新八郎「ああ、そうかそうか。う~ん」
マリ子「新八郎さんの『新』の字を一字頂いて」
新八郎「悪くないな。いや、しかし、女の子だったらどうする?」
マリ子「一緒に考えて」
新八郎「よし」
汽笛の音にハッとした表情をするマリ子。
磯野家。ヨウ子の熱を測りに来たはる。
ヨウ子「もうそろそろ広島でしょうか?」
はる「そうね…」
新八郎が過ごした隆太郎と貴美の隠居所では貴美が新八郎の着物を畳んでいた。縁側に体育座りをする隆太郎。
隆太郎「考えてみたら新八郎たつは初めての2人旅じゃのう」
貴美「はい、そうでごわんな」
隆太郎「うむ、よかよか。出征と新婚旅行を一緒に決行するなんち新八郎もなかなかやるぞ。ハハハハハハ」
貴美「はい」
広島の兵舎?
新八郎「気を付けてな。後のことはよろしく頼むぞ」
マリ子「ご無事のお帰りをお待ち申し上げております」
新八郎「うん」
マリ子に向かって敬礼。マリ子は頭を下げた。新八郎を見送る。
蒸気機関車。車内のマリ子。
マリ子・心の声「あの人の船は今夜中にあの港を離れてしまうのだろうか…」
そして、マリ子が9日ぶりに世田谷の家に帰り着いたのは、その翌日のことでした。
マチ子が仕事から帰ると、玄関にマリ子の草履と「お帰り~!」という声が聞こえてきた。
マチ子「マー姉ちゃん! 帰ってたの!?」
マリ子に腰を押すように頼まれたマチ子。
マリ子「だって列車に乗りづめだったんですもの。もう、ミリミリ音がしそう」
マリ子「やっぱり我が家が一番よ」
はる「まあまあ何でしょう、お嫁に行った人が」
マリ子「だって東京で暮らしていいっていう条件だから、お嫁さんになってやったんですもの。ねっ、ヨウ子」
ヨウ子「ええ」
マチ子「やれやれ、せっかく戸主になれたと思ったのに、すぐ姉っ風吹かすんだから本当に嫌になっちゃう!」
マリ子「本当に申し訳ございませんと!」
はる「でも本当にご苦労さんでしたね」
マリ子「はい」
ヨウ子「やっぱり変よ」
マチ子「何が?」
ヨウ子「お嫁さんに行ったのがご苦労さんだなんて」
マリ子「本当だ!」
はる「まあ、そう言えばそうだわね」
皆で笑い合う。マチ子のお土産を取りに行ったマリ子。
そうです。語らなくてもみんなにはマー姉ちゃんの複雑な胸の内が分かっているのです。この時、既に東郷新八郎は愛するマリ子、愛する日本を後に南の海へと向かっておりました。
そして、その秋にはイタリアが連合軍に降伏。ドイツは既にソ連戦線において大敗を喫し、日独伊三国同盟も空中分解同然の中で日本は理工科系以外の大学生に対し、学徒出陣令を公布。秋雨の煙る神宮外苑での壮行式はまさに悲壮感漂うものでした。
おなじみの映像だけど1分近く割と長めに流れたな。昭和18年10月21日。それでもまだ昭和18年か。
「マー姉ちゃん」2本立ては内容ぎっしりで残しておきたいことも多くて結構きついな。無理せず、25日の土曜日で終わらせて3日から始めてくれたらよかったのに…。
新八郎は昭和男のカッコよさなのか大声と強引さがあって、「はね駒」の源造さんみたい。源造は明治男だけどね。源造役の渡辺謙さんは演技力は確かだったけど、それだけに大声が迫力あり過ぎて怖かった。でも細かな表情は好きだった。新八郎はそれに比べるとイマイチなんだよな~。せめて坊主頭くらいしてくれよ的な。源造も初登場は変な坊主ヅラだったけどさ。
来年というか、もう数日後には始まるんだね。戦争は早く終わって欲しいよ。