公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意
もも(藤山直美)は興園寺家とは釣り合いが取れないと、金太郎(高嶋政伸)の結婚には反対だが、つや(白川由美)は好き合ってる2人なんだから賛成だ、と説得する。金太郎のことで、心労で倒れたももを見て、純子(山口智子)はそのくらい子どもを気にかけて育てるには、一軒家を借りなければという思いを強くする。自分が旅館の仕事から離れるために、経験のある仲居頭を新聞広告で募集すると、菊江(風間舞子)が面接に来る。
裏玄関を出たところで顔を洗うもも。
純子「ももさん。そないに反対せんかて…。金太郎君も綾ちゃんもお互い好き合うてんのやから。興園寺の奥さんも結婚させてもええて言うてくれはったでしょう。何であかんの」
もも「興園寺さんとうちとこでは、あんまりにも釣り合いが取れん。そいで…」
純子「何やの」
もも「興園寺さんとこは財産があるろ。うちな、金太郎が財産目当てに綾ちゃんに手ぇ出した言われんのが、世間に言われんのがつらいんやらよ」
純子「そんな…。さ、お部屋に行こ。興園寺の奥さんも待ってはるさかい」
もも「こういうことは男の方が悪う言われるやろ。けど、金太郎も何であがなことしたんやろな。うち、もう興園寺の奥さんには顔向けできん」
つや「ももさん」
もも「あ、奥さん」
つや「ももさん、うちはな別に反対してるわけやないんよ」
もも「すんません」
つや「どうやろな」
もも「すんませんな、あの金太郎のアホが」
つや「いやいや、うちの綾の方もな金ちゃんを好きやったっていうことやし言うことなしや。なっ? それに何や知らんけれども日頃からな、金ちゃんを顎の先であれせいこれせいて言うてたやろ。それにうちの綾の方が4つも年上やから、まさかこんなことになるとは夢にも思ってみいひんかったわ。だけど、あれやな、今考えてみると好きやったから、わだとああいうふうに意地悪しとったんやなあ」
4つ上!? 恭子と綾は同級生で昭、雄太、金太郎より3学年上と思ってた。恭子と綾が同級生とも言ってないか、そういえば。
昭和30年の夏に23歳になる綾にいい話がないといっていたつやさん。まだ誕生日が来てなかっただけで、24歳になる年だったのかな。金太郎が村会議員に立候補するとか言ってたのも同じくらいの時期でその時、金太郎は二十歳。
もも「奥さん、ほんまにそれで許してくれるんですか」
つや「許すも許さんも、だってあんた、なあ、綾のおなかにはもう子供がおることやし、ごちゃごちゃ言うたって始まらんでしょう。ももさんは反対なんか?」
もも「いえ…」
つや「そうか。ほな式は早いうちに挙げるちゅうことで、それでええな?」
もも「すんません。よろしゅうお願いします」
部屋
北川「しかし、綾ちゃんも僕に相談してくれたってよかったじゃない。僕だって一応は君の父親ってことになってるんだから」
綾、うなずく
北川「金太郎君も男らしくないよ。綾ちゃんに赤ん坊ができたって言われて大阪に逃げたりしちゃ、綾ちゃんが心細くなるのは当たり前じゃないか。どうせ逃げるんだったら綾ちゃんと一緒に逃げなくちゃ」
金太郎「いや、わい、とにかく、お母ちゃんに相談してみよ思て」
北川「今更お母さんに相談したって、いい知恵が出るわけないでしょう」
金太郎「ほら、そうやけど…」
北川「しかし、困ったね。肝心の金太郎君のお母さんがね…」
純子が部屋に入ってきた。
純子「金太郎君、お母さん、結婚に賛成しはったで。おめでとう」
金太郎「ほんまか?」
純子「ほんまや。よろしゅうお願いします言うて、興園寺の奥さんに頭下げてはった」
北川「そう。それはよかった。おめでとう」
純子「そやけど知らんかったな。綾ちゃんと金ちゃんが好き合うてたやなんて」
北川「嫌だねえ。正太夫君のところが1人だろ。それで今度は綾ちゃん。この年でもう2人目の孫だからね、参った」
この年でというのは結構まだ若い!? つやさんより年下の40代後半とか。
綾「しっかりしてな。お父ちゃんになるんやさか」
金太郎「分かったある」
あき「金ちゃん、ちょっと来て。ももさん、倒れたんや」
金太郎「えっ?」
純子「どないしたんや?」
あき「急に気分悪い言うてな板の間にヘタヘタと座り込んでしもたんや。はよう」
浜風荘ロビーのソファセット
つや「大丈夫やろかなあ。金ちゃん、おんぶして病院連れていったけど…」
北川「つやさん、僕たちももう年なんだねえ」
つや「何を言いたいんです? 北川さん」
北川「いや、別に」
つや「綾。あんた少し元気出さなあかんよ」
綾「うん…。なあ、お母ちゃん」
つや「ん?」
綾「金ちゃんやったら、あかなんだん?」
つや「いや…そんなことあれへんよ。あれへんけどな寝耳に水やったからな」
純子「ただいま」
つや「純ちゃん、お帰り。どうやった?」
北川「ももさん、大丈夫?」
もも「元気です」金太郎に背負われている。
純子「金ちゃん、お母さん、部屋に連れていって寝かしてあげて」
金太郎「ご心配かけました」
金太郎がももを背負い、綾も付き添う。
あき「純子、どないやった?」
純子「それがな、心臓やら血圧やら一応全部調べてもろたんやけど、どこも何ともないて先生は言わはるのや。金太郎君のことで心労いうんか疲れてしもたんやないやろか」
あき「ほんま…」
つや「そやけどなあ、結婚させるて言うてんのやから、なにもそんな気にすることないのにな」
純子たちの部屋
眠っている陽子に歌を歌っている秀平。
多分、これ。
秀平「あ、お疲れさま」
純子「やっと一段落したわ」
秀平「今日は大変だったね。ももさん、大丈夫かな?」
純子「うん。2~3日寝てたらええやろと思うけど。病院の先生もな、精神的なもんやろうて言うてはったし」
秀平「金太郎君のことがよっぽどショックだったんだろうねえ」
純子「つくづく親やなあて思たわ。結婚してから幸せにやっていけるかどうか心配なんや」
秀平「一人息子だからねえ」
純子「親いうもんは、やっぱり寝込むぐらいに子供に気ぃかけなあかんのや。やっぱり陽子、ここで育てるの、ぐつ悪いんやないやろか」
秀平「別に一軒か?」
純子「そうや。私にも陽子のことだけを考える時間が欲しいし」
秀平「旅館はどうするの?」
純子「しっかりした仲居頭を雇うた方がええのかもしれんな。私の代わりができるような。ももさんもあんな具合やし」
秀平「仲居頭ねえ」
純子「経験のある人や」
新聞記事
求む仲居頭さん
経験のある方四十五才まで
詳細面談 甲子園 浜風荘
板場で新聞を見ているあきと純子
あき「そやけど、広告の効果て、あるんかなあ」
純子「広告出したばっかりやから、やっぱり1日か2日たたんと応募者もないんと違う?」
あき「そやろかな」
ももが起きてきた。
あき「気分がようなるまで休んでたらええのに」
もも「いや、別に体がどうのこうのちゅうわけやないんやさか」
あきたちが見ていた新聞を引き寄せる。
もも「すまんな。仲居さん、募集しやんのやてな」
あき「ももさん、金太郎君のことな、おめでたいんやから素直に喜んであげたら、えやないか」
もも「そうはいかんねら。そら金太郎はな、うちの一人息子で親の欲目かも分からんけど、ええ子や。ほやけどな、いくら何でも興園寺さんの家とうちとでは釣り合いが取れん。結婚してもいつまで続くか分からん。興園寺の奥さんかてな、しぶしぶ2人の仲を認めたんに分かったあんねん」
純子「そんなことないて言うてはったやんか」
もも「そいはうわべだけのことや。うちはな、もう、申し訳ないやら心配やらで…」
純子「ももさん、2~3日、何も考えんと寝てたら、じき元気になるて。なっ?」
浜風荘ロビーのソファセット
面談に来た和服女性の履歴書を純子、あき、秀平でチェック。
純子「ええ旅館に勤めてはったんですね」
菊江「ええ、ここ5年ほど仲居頭務めさせてもうてました」
秀平「どうしておやめになったんですか?」
菊江「私、主人が建設関係の仕事でずっと別居しとりましたんや。主人が道路の技師で日本国中、あっちこっち行ってたもんですさかい。そしたらけがしましてな、西宮の労災病院に入院したんですわ」
あき「いや、お気の毒に」
菊江「背骨、折ってしもて1年は入院せんならん言われて、それやったら西宮の旅館にかわって、毎日、見舞いに行ってやりたい思いまして」
純子「そうですか」
菊江「そやから広告に飛びついたんですわ。ここやったら労災病院までも歩いて20分とかからしませんやろ」
あき「そうですなあ」
純子「経験10年…。どやろな」
あき「そやなあ」
純子「ちょっとすんません」
電話のある部屋に移動
純子「どない思う?」
あき「ええんと違う? お給料かてこっちの言うとおりでええて言うてはるんやから」
純子「そやなあ」
秀平「僕はいいと思うけどなあ。第一美人だし」
純子「顔は関係あらへん」
秀平「それはそうだけど、ああいう仲居さんがいた方がお客さんもいいんじゃないの?」
純子「ほな、決めてもええやろか」
秀平「僕は賛成」
あき「お母ちゃんもええと思うで」
純子「ほな決めるで」
秀平「オーケー」
菊江のところに戻った純子。「ほな、今日から働いてもらえますか?」
菊江「ほんまに? おおきに。一生懸命働かしてもらいます」
純子「はい、よろしくお願いします」
板場
菊江「あ、それ、楓の間ですやろ? 私がお運びします」
ヨシ子「お願いします」
あき「よう働く人やなあ」
純子「やっぱり大きいとこで仲居頭をしてはっただけのことはあるわ」
あき「よかったな」
忙しく働く純子たち。
まだ一軒家にこだわる純子。旅館の仕事を仲居頭に代行してもらって、陽子にベッタリするのが理想なのかな。でもさ、ももさんだってそんなにベッタリと金太郎を育てたと思わないけどなあ。忙しい農家でかなりほったらかしの状態もあったと思うけどな。一軒家理論がまだ理解できません。