TBS 1970年5月19日
あらすじ
福松(進藤英太郎)と常子(山岡久乃)が万博旅行に出かけたため、修一(林隆三)は自分のラーメン屋を閉め、「菊久月」で和菓子作りに精を出していた。その夜、鈴木(甲田健右)が遺書を残して家を出たという電話が入る。
2023.11.22 BS松竹東急録画。
谷口和枝:尾崎奈々…福松の長女。21歳。(字幕黄色)
野口勉:あおい輝彦…直也の弟。20歳。
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野口直也:大出俊…和枝にお見合いを断られた鈴木桂一の友人。内科医。(字幕緑)
井沢正三:小坂一也…「菊久月」の職人。30歳。
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谷口修一:林隆三…福松の長男。26歳。(字幕水色)
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中川アヤ子:東山明美…トシ子の妹。和枝と幼なじみ。20歳。
野口正弘:野々村潔…直也と勉の父。
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石井キク:市川寿美礼…野口家に25年、住み込みの家政婦。
中川ます:山田桂子…「菊久月」の隣で文房具店を営んでいる。
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鈴木桂一:甲田健右…直也の竹馬の友。
女性客:谷よしの
菊久月の前を通りかかった勉がそのまま素通りする。和枝は商品棚のガラスを拭き、正三は作業場から菓子を持ってきて並べている。
勉は「どさん子」前までいくが、「本日は休ませて戴きます」の札が下がっていた。ぼかされてたけど、電話番号721-xxxxと出ている。これ、当時の本当の店舗で外観だけ撮影してたのかな。引き返した勉は「菊久月」へ。
勉が声をかけると和枝が店の奥から出てきた。野口と名乗り、「どさん子」でアルバイトしてみようかと思ってと事情を話す。和枝は「お兄さんとあんまり似てらっしゃらないわね」と話しかけた。
勉「そうですか。兄貴、すかしてるから」
お掛けになってと和枝に言われたが、外のウインドーなどしげしげ見ている勉。「兄貴がウインドーの花、きれいだって言ってましたよ」
和枝「もう少し崩れてしまって。自己流ですから」
勉「落ち着いたいい店ですね」
和枝「ガランとしてるでしょ? 和菓子の他になんにも置いてないから」
和枝は勉を奥の作業場に通し、店に来た客に応対する。
作業場では修一も和菓子作りをしている。「俺がラーメン屋もやってる修一」と自己紹介し、正三のことも紹介する。両親が万博見物に出かけているため、ラーメン屋は休業。
勉「あっ、ラーメンの他にお菓子も作れるんですか」
修一「餅は餅屋だもん」
正三「腕はいいんだよ」
修一「さあ、どうかな。何しろこの1年まるで手を出さなかったから」
修一が作っているのは練り切り。
勉「ああ、あのすごく甘いの」
正三「上生は学生さん向きじゃないな」
修一「年々ケーキに押されるわけだ。何しろうちなんかいまだに戦前と同じようなやり方で菓子作るんだから」
正三「まったく考えてみると、これだけの店構えててもったいないねえ」
修一「うん」
勉「あの…僕のアルバイトどうなります?」
修一「ああ、そうそう。その話が先だ。あんた、今日学校は?」
勉「一度出たんですけど1時間目は休校で」
正三「大学って変なとこだね。学校行ってみないと休みかどうか分からないの?」
勉「ええ、バカみたいなとこですよ」
修一「十何倍って競争して入学して休校だ、ストだって年中騒いでさ、まったくいい気なもんだ」
勉「入ってみるとくだらなくてやんなりますよ」
正三「親はたまんないねえ。さっさと卒業して稼いでくれなきゃ」
勉「ええ。うちでもおばちゃんによく言われちゃって」
「どさん子」は時給150円。食事の時間にぶつかれば店のものを食べてもいい。出前もある。今は休業しているので5~6日したら電話すると修一が言う。
修一は和枝を呼び、勉の住所と電話番号をメモするように言う。勉はお菓子作りにも興味津々。「いや、だけどラーメンもいいけど作るの見てるとお菓子もいいな」
和枝「あら、うちだって人手不足で困ってんのよ」
修一はここの親父は人使いが荒いし、一日中、どなり通しだと言うが、正三は愛嬌があって、ちょっといいと言う。いやいや、勉君のほうがおやじのことはよく知ってるから、な~んて。
勉は兄貴がそう言ってたと話し、奥さんがとてもいい感じだとも言う。
修一「そうそう、おふくろに一目惚れだって言ってたな」
正三「へえ、あの若さで奥さんにね」
勉「いや、うちはおふくろがいないから」と住所と電話番号を書いた紙を和枝に渡す。
和枝「ねえ、私のことなんか言ってなかった?」
「別に」と勉に返されると、ムッとする。「ウインドーの花なんかに見とれちゃってバカにしてるわ」と奥へ。
勉「あの人いくつですか?」
修一「二十歳だよ」
勉「あっ、僕と同じ。3ぐらいかと思ったけど」
正三「怒るぞ。気が強いんだから」
初回では21歳と言ってたけど、今は20歳で21歳になる年ということかな。昭和45(1970)年に21歳。昭和24(1949)年生まれ。第一次ベビーブーム世代または団塊の世代。このドラマだけでも和枝、勉、アヤ子と3人もいるもんね。
修一「フフフッ、あれで美人のつもりでいるんだから」
勉「あっ、美人は美人ですよ。ちょっとおっかないけど」
和枝が戻ってきて「召し上がれ」と何か置いた。「おたくのお兄さんはスタイルの悪い女はお嫌いなんですってね」
勉「あっ、そうですか?」
和枝「私だって洋服を着たことがないわけじゃありません。ミニぐらいはけますわ」
独りで勝手に怒っている和枝がまた奥に行ってしまうと、残された男たちは、最初ポカーン、顔を見合わせて笑いだす。正三の自然な笑顔がステキ。
店でお赤飯の説明をする和枝。5合、8合、1升の三(み)とおりでそれぞれ460円、700円、870円。
女性「お赤飯は5合っていっても、あんまり量がないから」
和枝「でも、やはり箱から出しますと結構ございますよ」
女性「そうねえ。あまり多くても不細工だから5合のでいいわ」
和枝「ありがとうございます。これを15でございますね」
女性「11時までに間違いなく届けてくださいよ」
和枝「掛け紙は内祝いでよろしゅうございますか?」
女性「ええ、ついでに名前だけ書いといてちょうだい」
和枝「かしこまりました。毎度ありがとうございます」
この間は後ろ姿だけだった谷よしのさん。しかしさ、5合を15個ってすごい量じゃない!?
勉「お赤飯も作るんですか」
和枝「冬場はお餅の注文もかなりあるのよ」
勉「へえ、面白い商売だな」
和枝「大変な商売よ。私なんか高校を卒業する年にちょうど兄が別の商売始めちゃったでしょ。とうとう短大にも行けなくなっちゃって」
勉「大学なんて行っても行かなくても大したことないですよ」
和枝「今、妹が浪人中なの。1人ぐらい好きなことさせなきゃね」
桃子は和枝の2つ下の昭和26(1951)年生まれかな。
勉は修一の店を手伝うことにした。「配達も大変でしょ?」
和枝「正三さんが車で行ってくれるから。ガレージがないから別の所に置いてあんのよ」
勉「ああ、そうか。僕も手伝いますよ。免許証だけは持ってるから」
和枝「お兄さんは?」
勉「兄貴も取りましたよ。いや、だけどほとんど運転してないです。病院勤務も暇がなくてね」
和枝「そう? 随分暇なようだけど」
勉「あんな顔してますからね」
和枝「ほんとは勉強家なのね」
勉「無趣味なんだな」
客が来たので勉は帰っていった。この女性客もセリフがあるのにキャストクレジットはないんだね。お茶会で使いたい菓子を所望。唐突に車の話になったのは日産提供だからかな。
勉はバスに乗って国立第二病院へ。目黒行とバス停に書かれているから目黒にある現在の独立行政法人国立病院機構 東京医療センターらしい。門の前で鈴木と出会い、挨拶をした勉だったが、鈴木は無視。
勉「鈴木さん」
鈴木「なんだ、君か」
勉「どっか悪いの?」
鈴木「ノイローゼだ」
勉「ああ、兄貴に診察してもらったの?」
鈴木「野口なんかまだ外来は診られないんだよ。君、何しに来たの?」
勉「菊久月に行ってアルバイトのこと決めてきたから話そうと思って」
鈴木「菊久月? よしなさい。あんな店、名前聞いただけでも頭にくる」
勉「ラーメンのほうだよ。お菓子屋は関係ないんだ」
鈴木「生意気だよ、あの女」
勉「もう忘れることにしたんだろ? 鈴木さん」
鈴木「考えると腹が立つね。せっかくもらってやろうと思ったのになんでい」
勉「なんでい」
こういう人でもいずれ当時は結婚できたのだろうな。
院内放送「田中さん、田中シオさん。高橋和子さん、森竹さん3番においでください」
直也と会った勉。
直也「学校の帰りか?」
勉「これからもう一度行くんだよ。午後の講義だけでも出とこうと思ってさ」
直也「しょうがないな、休校が多くて」
勉「くさるよ、まったく。このごろは大学生って言うと肩身が狭くてさ」
直也「昼飯は?」
勉「おごってくれる? 当てにしてきたんだよ」
直也「やなヤツ。来いよ」
勉は菊久月に行き、和枝に会ったことを話す。「なかなかいい子じゃないか。鈴木さん振られるわけだ。ハハッ」
直也「バカ」
勉は和枝がミニスカートぐらいはきますと直也のことを気にしていたと話す。門の所で鈴木さんに会ったけどやな感じで和枝さんにはもったいない。
会社帰りの正弘を「旦那様! 旦那様!」とキクが追いかけてきた。「案外、足がお速いんですね。私、もうフーフー言っちゃって」
正弘「太ったんだよ」
キク「やなことおっしゃる」
正弘「ハハハハッ」
キク「あのね、写真が出来たもんですから」
正弘「ほう、それは楽しみだな。どう? よく撮れたかな」
キク「ええ、まあね」
正弘「じゃあ、帰ったらゆっくり見せてもらうよ」
キク「なんだか照れちゃいますよ、フフッ」
正弘「キクさんはいいなあ。いつまでも若くて」
キク「どうかなすったんですか?」
正弘「いや、別に。日が長いね。6時過ぎてもまだ明るいじゃないか」
キク「旦那様も再婚なさりゃようござんしたねえ」
正弘「うん。見合い写真でも撮るかな」
キク「旦那様がなにも写真お撮りにならなくたって」
正弘「ハハッ、冗談だよ。来年早々定年になる男が今更結婚でもないだろう」
キク「若い人には分かりませんけど年を取るほど身の回りが寂しくなりますからね」
正弘「キクさんは僕たちに構わず良縁があったら結婚しなさいよ。直也も勉もあんたに大きくしてもらった。これからはなんとでもなるんだからな」
泣き出すキク。「私、旦那様に優しいこと言われるとすぐ涙が出ちゃって。どういうんでしょうね。直也さんや勉さんが何を言っても蚊に刺されるほども感じないのに。こっちが大人、向こうがジャリなんですね」
正弘「フフフフッ」
正弘役の野々村潔さんって当時いくつくらいの方だったのかな?と調べたら、岩下志麻さんの父!? 大正3(1914)年生まれの当時56歳。実年齢と近い役。キク役の市川寿美礼さんは昭和3(1928)年生まれの当時42歳。正弘とキクもこのくらいの年齢差があるのかな?
野口家
勉に「早く飯にしてよ」と言われながらも茶の間のテーブルの上に自身の見合い写真を並べるキク。「この写真の割り振りがつくまではおちおちご飯なんか…」
正弘「6枚とはまた思い切って用意したもんだな」
キク「1枚は旦那様」
正弘「えっ?」
キク「会社関係の人にお願いします」
正弘「みんな結婚してるんだ」
キク「そのうち別れる方も出ますでしょう。中年になって急にお互いが儚くなっちゃうケースが多いそうですから」
勉「そうそう。残りの人生を自分らしく生きようって夫婦が多いんだってね」
へ~、今っぽい考え方!
正弘「うん、しかし、そういう夫婦は別れたって、なかなか再婚しないんじゃないかね」
キク「不自由ですからね、やっぱり」
正弘「うん」←さっきから老眼鏡をかけてまでじーっとお見合い写真を見ている。
キク「1枚は直也さんに」
勉「兄貴が預かるもんか。あんな仏頂面してんだよ。見つけるもんか、キクさんの相手なんか」
正弘「うん」
キク「旦那様。フンフンおっしゃってないで積極的にお願いしますよ。こういうことはずうずうしいくらいでないとけないんですから」
正弘「うん。あっ…まあ、折を見て話してみるよ。さしあたって該当者はなさそうだな」
勉「僕も1枚預かろうかな」
キク「イヤですよ、勉さんなんか」
勉「どうして?」
キク「ゲバ棒振り回してる学生に見せたって…」
勉「そうでもないんだぞ。案外、俺の友達は律儀で古くさいんだから」
キク「イヤですよ。生活力のない人間なんか信用しないことにしてるんだから」
勉「フン、兄貴だってまだペーペーじゃないか」
キク「ペーペーだってお兄さんは、お給料もらってるもの」
勉「あっ、そうですか。キクさんなんかね、でっかい子供が5~6人もいる所へ後妻に行って毎日泣かされてそれでもいいんでしょうねえ」
キク「私は子供のいるとこなんかにお嫁に行くもんですか」
勉「ヘーンだ。ずうずうしいね、その年で」
キク「私はね、これでも500~600万円は持ってるんだから、いや、ひょっとするともう1000万円ぐらいにはなるかな」
キクの田舎の土地が値上がりしていて、もらい分はそれくらいにはなると話すと、勉は大げさに驚く。話を聞いていた正弘も金でなく土地でもらっといてよかったよとキクに言った。勉はおばちゃんの世話を一生見てもいいとがっつくが、キクはさっさと大学を出て3万円でもいいからきちんとお給料をもらってくるようにとたしなめる。
作業場
修一は生地を焼き、正三はクルミをむいていた。
正三「薄焼きにしないと折ったとき割れ目がつくだろうね」
修一「ワッフルと同じ要領なら大丈夫さ」
正三「クルミであんを包んだら月餅みたいになるかね」
修一「皮がやわらかいから口当たりもいいだろ」
桃子がいつまでやってんのと呼びに来たが、修一は和枝と先に食べてろよと作業続行。鬼のいない5日間にいろいろと試作品を作っている修一と正三。
アヤ子がラーメンのほうが休みだと生きる張り合いがないと言っていたと桃子に伝えられた修一はアヤ子からの好意を「バカバカしい。子供のくせに」と切り捨てた。
正三「上がいいせいかどうもアヤちゃん見劣りしちゃって」
修一「正ちゃん、気になるんだろ? トシちゃんが」
正三「とんでもない」
修一も「年頃もいいしな」と認めてる!? アヤ子が顔を出すと桃子に変なことを言うなとくぎを刺す正三。アヤ子は人の顔見てうろたえちゃってやな感じと言う。
修一「アヤちゃんは若く見えるってことだよ」
アヤ子「当たり前よ。二十歳でおばあさんに見られちゃたまんないわ」
アヤ子は和枝に用があったわけじゃなく「修ちゃんって何やっても上手ね」と修一に会いに来た? アヤ子はお隣同士仲よくしないとと言うと、桃子はうちでもお宅と仲よくしたがってる人がいるんだと正三に話を向ける。正三は知りませんよとごまかすものの、分かった!とアヤ子も桃子も大はしゃぎで笑う。
和枝が店番が終わって作業場に顔を出し、ご飯を先に食べようという話になる。アヤ子は谷口家がまだごはんが済んでいないことに驚く。お母さんと2人なので6時半に食べたという。アヤ子はお茶入れるから上がんない?という言葉に甘えて奥へ。
お母さんと2人きりと聞いた正三は慌ててアヤ子に話を聞く。トシ子は伯父が入院したため、ばあやさんと2人で留守番と病人の世話をするため大阪へ行っている。2ヶ月ぐらいは大阪暮らしと聞き、ガッカリしている正三。その姿に桃子もアヤ子も和枝も笑う。
あんなに若いキャピキャピした女の子に囲まれながらトシ子に一途な正三を応援したいよ。修一と比べると勝ち目なさそうだけど。
作業場に戻り、修一になにも姪を呼ばなくたってとこぼす正三。修一は急にゲッソリした正三を心配し、そのうちおふくろさんから話してもらうと言うが、あきらめムードの正三。「番茶も出花っていうけど、あの人は玉露みたいだからな」
修一「高根の花か」
修一が話してもいいと言うが、正三はきっぱり断られたら夢がなくなると断る。
修一「恋か。恋とか夢とかそんな和菓子、出来ないもんかな」
正三「修ちゃんときたらすぐ商売のことになるね」
修一「こう見えても菓子屋の息子に生まれついて一とおり親父にたたき込まれたんだ。頭ん中は菓子のことでいっぱいさ」
正三「旦那はいいよね。奥さんと2人で万博なんか見ちゃって」
夏になったら少しは空くらしいから日帰りで行ってこようかと修一から提案されるも夏になったら水羊羹や金玉糖(きんぎょくとう)で追いまくられて忙しいし、休みの日ぐらいアパートでのんびりごろ寝がしたいと断る。厭世的になった正三をしっかりしろと励ます修一。
中川文房具店をキクが訪れた。店は新学期から日も経ち、配達も断っているほど暇。ますはトシ子を大阪の兄の所にやっていると話した。小さいときからかわいがってもらっていて、息子は外国に行っているため、病気して困っているのに知らん顔もできない。商売に差し支えるならはっきり断ればいいとキクが言うが、ますは息子と一緒にしたいと言う気持ちもあると言う。
キク「ああ、そんならしょうがないわ」と一瞬納得するが、「いとこでしょ? よしなさいよ」と反対する。
ます「財産はあるし、息子だって銀行マンで将来性もあるし、もう考えちゃうわよ」
キクは写真を持ってきていた。
ます「そう。私も気にしとったとよ。ブクブク太っとっとじゃなかろうかと思うて」
キク「あんたと違って固太りだから」
ます「見せなはいよ。見りゃ分かっとだけん」
勉がラーメン屋でアルバイトするため、上等の半紙を1畳買って隣にあいさつに行くつもりのキク。半紙を贈るっていう習慣があったんだ?
「ブッキーバインダーある?」と男性客が来店。この人もクレジットなかった。次々、スーツ姿の男性たちが来店し、キクは「私は福があんのよ」とますに言う。
ますはキクのお見合い写真を褒めた。「ご本人のいいところだけかき集めたごたる」
実物がいいからだと言うキクにこの写真でダメなら諦めるようますは言う。しかし、キクは結婚したら旦那様が寂しがるのではないかと気にする。
ます「あんた、旦那様に惚れとったと?」
キク「まあね。だけどつくづく考えてみると儚くなっちゃって」
ます「諦めが肝心よ。片思いばっかりして一生終わる人間は、あんた一人じゃなかとだけん。切ないもんよね」
キクは大きなため息をつき「イヤね。女と男って」。
菊久月
キクが来店。和枝が修一に野口さんのばあやが来たと伝えると、手が離せないので作業場に来てもらうように言うと、和枝が店に行っている間に裏口の戸を開けてキクが入ってきた。修一に頭を下げ、また作業場に戻って来た和枝が驚く。和枝が店に戻ると、和枝を「ほんとにいい娘さんねえ」と褒める。
キク「竹馬の友とかなんとか古くさいこと鈴木さんに言われて、うちの直也さん、あれで人がいいから、すっかり男気出しちゃって、今どき友達の恋愛に引っ張り出されて一生懸命になるなんてバカバカしい。そんな暇に自分が恋愛でもしてみるといいんですよ」
電話が鳴り、和枝が出ると直也からだった。鈴木が遺書らしきものを残して家出した。直也は鈴木家に行くが場合によっては谷口家に寄ると言われ、和枝は私の責任じゃない、迷惑だとはっきり告げる。なぜかケンカ腰の直也と和枝。正三、修一、キクも聞き耳を立てる。電話を切った和枝はプンプン。(つづく)
今回は福松も常子もいないのに、キクの本心が分かったり、和菓子を作る修一だったり、人当たりのいい勉だったり、やっぱりむかつく鈴木だったり、いろんな人が見られてこれはこれで面白かった。