TBS 1971年7月20日
あらすじ
堀田(花沢徳衛)の一人娘・ゆり子(丘ゆり子)に見合い話が。堀田は朝からソワソワ落ち着かない。もと子(ミヤコ蝶々)に付き添われ見合いに臨んだゆり子だったが、相手の大沢(ジャイアント吉田)から遊びのつもりだったと言われ…。
2024.1.15 BS松竹東急録画。
尾形もと子:ミヤコ蝶々…健一の母。字幕緑。
尾形健一:森田健作…大工見習い。字幕黄色。
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中西雄一郎:中野誠也…新築の家を依頼してきた。
堀田咲子:杉山とく子…堀田の妻。
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中西敬子:井口恭子…中西の妻。
堀田ゆり子:丘ゆり子…堀田の娘。
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大沢:ジャイアント吉田…ゆり子の見合い相手。
風間:立花一男…中西の友人?
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堀田:花沢徳衛…棟梁。頭(かしら)。
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生島新次郎:杉浦直樹…健一の父の下で働いていた大工。
咲子が歩いていると自転車のベルがけたたましく鳴る。
少年「危ないよ、おばさん!」
咲子「お前たちのほうがよっぽど危ないよ、まあ。こんな狭い道、並んで走ることないだろ!」
少年1「怒るな、クソばばあ!」
少年2「反動ばばあ!」笑いながら去っていく。
咲子「憎らしい。まあ、このごろの親は甘やかすもんだから」
これ、ホント字幕ないと”反動ばばあ”なんて言葉出てこないよ。自転車に乗った少年たちも今や60は過ぎてるよね。
咲子はにこやかに尾形家へ。「私よ。お邪魔していいかしら?」
茶の間にはもと子、新次郎、健一が揃っていた。
咲子「なあに? 御前会議?」
新次郎「こんばんは」
何となく表情がさえない新次郎たち。咲子がこんばんはと声をかけて、やっと健一も挨拶を返した。しかし、ちょっといいことがあってねと構わず話そうとする咲子。
新次郎は、もと子に私の思うとこは直接説明したほうがいいと思いますからと、これからちょっと中西さんとこ行ってきますと言った。
もと子「そうね。それも悪くないけど、でもねえ、あの…旦那と職人とさ、じかに話をするとなんか起きたとき困るんじゃない?」
新次郎「ハハッ。もめやしませんよ、私は」
もと子「そうね、新さんだもんね」
健一「新さん、俺も一緒に行っていいかな?」
新次郎「お目付け役か?」
健一「そうじゃないよ。ああ…どんなこと話すか見たいだけさ」
新次郎「いいだろう、じゃあ」健一とともに立ち上がる。
廊下に出た新次郎たちにもと子が声をかけた。「別に心配してるわけじゃないけどね」
新次郎「は?」
もと子「まあ、頑固じゃない新さんのことだから、かえって向こうの言いなりにならないでねって言いたいぐらいよ」
新次郎「いや、おかみさん。今度の仕事は今までのと違いますよ。私が責任持って図面引いたんですからね」
もと子「だから余計あんたカッとしやしない?」
健一「大丈夫だよ、母ちゃん。もめそうになったら俺が収めるから」
もと子「何を言うてんの。お前がもの言うたらややこしい。黙って聞いてよ」
新さん、大笑い。
健一「分かったよ。人をちっとも信用しないんだから、もう」
そこへ堀田が訪れた。玄関にいる新次郎に「ダメだよ、健坊連れ出して夜遊びなんかしちゃ」といい、健一が「そうじゃないんだよ」と否定してるにもかかわらず「まあまあたまにはいいでしょう。いってらっしゃい」って。
新次郎たちは玄関を出た。
堀田「あまり飲みすぎんじゃないよ、ハハハハ…」そして、もと子には「つまりそういうわけなんですがね」
もと子「何も聞いてないじゃない」
咲子「バカだね、あんた。話す間なんかあるわけないだろ」
もと子が堀田を招き入れる。
堀田「間があるかねえか、どうして俺に分かんだよ」
咲子「とにかくお座りよ、そこら辺に」
どうぞどうぞともと子に出された座布団には座らない頭(かしら)。
もと子「何よ? うれしいことって」
堀田「いえね、こいつがこのザマでしょ。私がまたこんな男だもんですからね」
咲子「そんなとこから話したんじゃ、なんのことだか分かんないだろ」
堀田「うるせえな、おめえは」
もと子「ゆりちゃんに縁談でもあったの?」
堀田「えっ?」
咲子「あら…ねえさん、どうして分かった?」
もと子「あら、やっぱりそうだったの」
あしたの日曜に見合いをしてみないかという話があった。駅の向こうの4~5階建ての大きな衣料品店のご隠居様で10年近く堀田が出入りしていて、ゆり子を喫茶店へ連れてって引き合わせたら相手と2人きり置いてくると言う。
頭(かしら)、”きっちゃてん”って言ってる。
もと子は今はそれでいいと言うものの、咲子は、ゆり子が健坊ぐらいしか男性と話すことがない、ただ黙ってうつむいていられたらおしまい、とても人見知りで九分九厘まとまる話も壊れちゃうような気がすると言い、堀田も器量の引け目があり、劣等感がある、ご隠居さんの代わりに誰かそばにいて話のつなぎをしてくれるものがいないと困るのではないかと、もと子に仲人代わりをお願いする。過保護するぎると笑うもと子だったが、ほかならぬゆりちゃんのためならと前向き。
中西家
風間「もちろんここまで進んでからなんか話すのは悪いんだけどさ、図面見て驚いたわけよ。それで彼に言ったら彼もまあ僕の説に賛成だっていうんで、それじゃ請負さんとこに相談に行ったらって言ったわけよ。だけどさ、それが、それを請負がなんとか調整しないでだよ、大工さんを直接、施主んとこによこすってのは、ちょっと怠慢なんじゃないかね」
健一「そうじゃありませんよ」
新次郎「いいよ、健坊」
健一「いや、うちが怠慢だなんて言われちゃ黙っちゃいられませんよ」
新次郎「いや、ちょっと待てったら、お前」
健一「俺の母ちゃんはねやるだけのことはちゃんとしたよ」
新次郎「そう、そうだ。やるだけのことはした。いやね、中西さんの言うことを聞くようにって長い間、説明してくれましたよ。で、まあ、どうしても納得いかないんで勝手に私、伺ったわけです」
敬子「でも出来上がったうちは私たちが住むんですから…」
中西「待て。ちょっと、新さんの話を聞きたいな、僕は」
新次郎「いや、もちろん、お入りになるのはおたくさんです。ですから、私、私の意地で言うこと聞かないんじゃありません。私にとっても今度の普請は初めて責任持って図面を引いた仕事ですから、いいかげんなところは一つもないと思ってます」
風間「しかし、抜けるところがないとは言えないわけよ」色眼鏡、拭き拭き。
新次郎「そりゃそうです。だけど、下見にしても部屋を壁で仕切ることにしても…」
風間「ああ…一つ一ついこうじゃないの」
建築パース付きで解説。
新次郎「外回りを羽重ねの南京下見にして白いペンキを塗るってことですが…」
風間「そりゃ南京下見ってのは学校や郵便局なんかで使っててさ、ちょっと住宅用じゃないって気がするかもしれないけどいいもんだよ。明治の西洋館みたいで」
新次郎「そりゃ確かに雨仕舞もいいし、もちもいいです。しかし、それはね、重なりを深くして金をかけた場合なんです」
風間「いくらでもないよ。そんなものは」
新次郎「いや、それに白いペンキを塗ればですよ、汚れだって早くきますしね」
風間「しかし、住めりゃいいってもんじゃないんだからね、外観のよさだって考えてもらわなくちゃ」
新次郎「考えてます。木肌を出した横羽目板でコストも安く見苦しくないうちが出来ると思ってます」
↑しかしこちらを見ると、縦羽目板のほうが張り替え、貼り直しがしやすいらいい。
風間「それじゃ、日本間を仕切ることはどうなの? これが洋間、これとこれが日本間。これが全部ふすまでツーツー出入りできるでしょ? これじゃ個室ってものが全然ない。これからの住宅はなるべく1部屋ずつ独立してないとね」
新次郎「それは私も考えました。でも、中西さんの場合お勤めの方です。まあ、帰ってくつろがれるのはテレビのある、この洋間か、この和室だと思います。お子さんでもできになれば、なおさら3人ご一緒にいるときが多いんじゃないかと思うんです。で、それをここで壁で仕切ってしまいますとね、風通しが悪くなる。その上になんとなく使わない部屋になって捨て部屋になりかねないと思ったんですよ。まあ、ご夫婦と赤ちゃん、お一人ならば壁で仕切るほどの個室はいらないと思ったんです」
風間「それじゃ洋間の寄せ木はどうなの? コストを気にするあなたにしちゃ、おごった寄せ木使うじゃないの」
↑ドラマの図面を見た感じは市松張りというやつかなあ?
新次郎「安い板張りで無地のカーペットを敷き詰めるってことですが、失礼ですが、あなた、お子さんをお持ちですか?」
風間「子供が汚すってえの?」
新次郎「思った以上に汚しますよ。おつゆはひっくり返す、ミルクはこぼす。とにかく簡単に拭き取れるものを考えておかなくちゃですね、洗濯代で寄せ木のコスト高くらいたちまちすっ飛んじまいますよ」
風間「ハッ…なかなかまくしたてるなあ、この人」
中西「しかし、言われてみると実に新さんよく考えてるなあ」
敬子「コンセントの位置はどうでしょうか?」
新次郎「ええ。ただしね、タンスをここへ置くことになると、ちょっと不便なことになるんでね、タンスはこちらに置いていただいて、このふすまははめ殺しってことを考えないといけないと思いますね」
中西「じゃあ、台所と洋間の境はどうでしょう?」
新次郎「これはね、よくアコーディオンカーテンを使って仕切るんですがね、まあしかし、明かりのことを考えると木ぶすまにガラスをはめたもののほうがいいと思いますよ。まあ確かにレールが下に来ますけどもね。これは住んでご覧になってみると、よく分かるんですが、それほど気になるもんじゃないんですよ。それに木ぶすまにしとけば冬、洋間で石油ストーブたいたときも外へ逃げませんしね。お子さんがつかまり歩きするようになったときも、まあしっかりとした支えになると思うんですよ」
健一は熱心に新次郎の顔を見て話を聞き、色眼鏡を拭いていた風間は髪をかき上げ、すっかり降参した様子。
帰り道
健一「迫力あったね、新さん」
新次郎「そうかな」
健一「あの男、全然圧倒されて口利けなかったじゃない」
新次郎「旦那の言うことにはムキになって反発しちゃいけねんだけどな」
健一「中西さん、新さんに全然参っちゃってたよ」
新次郎「ハハッ、しかし、変なもんだな」
健一「うん?」
新次郎「俺としたことがあんなムキになるとは思わなかったよ」
健一「本当だね。やっぱり違うんだね、棟梁ともなると」
新次郎「そうかなあ、フフッ」
健一「ゲンキンだなあ、まったく」
新次郎「この野郎!」じゃれあう二人。
しかし、中西さんも変なの連れてくんなよっ!
嫌がるゆり子の手を引く咲子は尾形家へ。もと子は帯を締めてる途中。
喫茶店
もと子の前にパフェが運ばれてきた。「アハッ。なんか私ばっかりにぎやかで悪いみたい」
大沢「甘い物お好きなんですか?」
もと子「いえ、こっち(酒)のほうもいけるんですけどね。あまりこういうこと入らないでしょ。それとなんか1人で来んのもわびしいし、といって誰かに甘い物一緒に行かない?って誘っても来てくれる人もいませんしね」
大沢「なるほどね」
もと子「だからね、こういうチャンスに思い切りいただいておかないと、フフフ…」
「お先に」とコーヒーを飲もうとした大沢に「お先に」とオウム返ししたゆり子。もと子は大沢の砂糖を入れるように指導。
大沢「あっ、僕がお入れしましょう。おいくつですか?」とゆり子のコーヒーに2杯砂糖を入れた。ゆり子がやろうとすると自分でやりますからとさっさと入れる。
もと子「あの…随分世慣れてらっしゃいますね」
大沢「いやいや、もう正直言ってね、お見合いなんて今日初めてなんですよ」
もと子「あら、その割に落ち着いてらっしゃる」
大沢「いやいや」
もと子「いや、そらねえ、それにしてもさ。うちの、この、ゆり子ちゃん純情でしょ? 同じ初めてでも大変な違いなんですよ。でも、こういうかわいいほうが男の人はいいんでしょ?」
大沢「ええ、正直もうあれですね。すれっからしなんてのは、あんま味気ないですからね」
もと子「フフフッ。ハァ~いただきましょ」大沢に仕事の内容を聞く。
店へ出て売るだけ。一日中、プリント着分、2割引きなんて生地の中で働いてる。モテるでしょうともと子に言われると、お客さんは生地のほうばっかり見てて僕の顔なんか見てくれないと謙遜する。
もと子「ねえ、ゆりちゃん。こういう男性は浮気しそうな気がしない?」
大沢「割かし言いたいこと言うなあ」
もと子「フフッ、でもね、本人さんがあんまりおとなしいもんだから、私が横からつついてやらないと、あなたのいいとこ悪いとこ分かんないでしょ」
大沢「僕こそ分かりませんよ。こう神秘的に黙ってられちゃね。なんだかこう夢ばっかり膨らんじゃうな」
もと子「まあ、お上手おっしゃって」
もと子あてに電話が来て、もと子は席を離れる前にゆり子に話をするよう促す。
ゆり子「あっ、あの…スポーツお好きですか?」
大沢「いやいや、見るほうばっかりですよ」
もと子への電話は尾形家にいる咲子からで堀田もいた。
もと子は大沢がゆり子にコーヒーのお砂糖を入れてくれたこと、案外二枚目であること、愛想がいいことを話し、咲子は喜び、堀田はいいかげんにしなよとあきれる。しかし、もと子が電話中にゆり子は「失礼します」と席を立ち、店を出てしまった。
慌てたもと子は電話を切り、ゆり子を追いかけたいものの、元いた席の料金を払うため、財布を出してオタオタ。
急に電話が切れてわけの分からない咲子。堀田は機嫌が悪い。
咲子「あの子が嫁に行けなかったらそれこそ大変じゃないか」
堀田「行きゃいいってもんじゃねえんだぞ。俺は反対だい。あいつをそんなに早く嫁にやるのはイヤになったんだ」
咲子「今になって何言うんだよ」
堀田「それが親ってもんだい」
咲子「気まぐれ言うんじゃないよ」
堀田「気まぐれとはなんだい、気まぐれとは!」
尾形家にもと子も大沢もいる。もう7時近いので帰らせてもらいたいという大沢だったが、堀田夫婦は怒っていて大沢を問い詰める。
大沢「だけどね、俺、そんなひどいこと言ったわけじゃないもん。みんなして俺の責任みたいに言うけど、俺、参っちゃうよ、ホントに」
咲子「あんたじゃなくて誰の責任だっていうのよ!」
堀田「おい、若(わけ)えの」
大沢「な…なんですか?」
堀田「おめえ、さっきから2時間の余もここにこうしていて、まだ俺たちの気持ちもゆり子の気持ちも分からねえのか」
大沢「そんなこと言やあね、俺の気持ちだって分かってほしいですよ」
堀田「迷惑がってるだけじゃねえか!」
大沢「だってそうでしょ。社長のお母さんがですよ、ご隠居さんが俺の店へ来て、俺の働いてる姿、ジロジロジロジロ見て、あんた、いい顔してるからなんて」
咲子「何がいい顔ですかよ」
大沢「だって俺が言ったんじゃないもん」
咲子「だけど内心そう思ってんだろ。うぬぼれるんじゃないよ!」
堀田「うるせえな、おめえは。いい顔してるから? で、どうだってんだい」
大沢「だから、早いとこ身を固めないと変な女に引っ掛かるから、あさってお見合いしなさいよ、なんて。言ってみりゃね、社長命令で見合いしたんですよ」
咲子「だからってね、言いたいこと言っていいってもんじゃないでしょ」
大沢「ただスポーツだっつっただけですよ。俺だって若いんだからね、そんな早く結婚なんかしたくないですよ。おたくの娘さんだってそうでしょ。面白半分に来たと思ったんですよ。みんなそうなんですよ。俺の友達なんかね、結婚はしたくないけど、お見合いは面白いからなんて、みんなやってますよ」
咲子「あきれてものが言えないよ」
大沢「大体、深刻にね、見合いするなんてね、古いですよ。俺に言わせりゃ」
もと子「ちょっと待ちなさい」
大沢「やんなっちゃうな、まったくもう」
もと子「まあまあ、聞きなさいよ。そりゃね、あんたの言うお見合いも分からんことはないわよ。そりゃ相手によってはちょっとしたスポーツかもしれん。でも、大体、そのお見合いというものは元来、結婚に基づいて行われるもんでしょ? まあ、例えば、相手がよ、真剣に考えて、ああ、これは末始終、一緒にいく人だから、どんな人だろう。末を託していく人だからどんな人だろうと真剣にその席に臨んだとしても何が古いのよ。何がいけないのよ。そうでしょ? それが会ってみてよ、遊びじゃないか、スポーツじゃないか、そんなこと言われたら相手はどんな気がする? どんな寂しい思いがする? バカにされたと思ってせきを切って出ていったって当たり前のことじゃないの。何言ってんの、あんた。大体あんたね、そういうね、思いやりがないというのは、あんた男としての値打ちは5割引きよ!」
神妙な表情の大沢。
もと子「かわいそうにゆりちゃんは口では早いとかなんとか言ってたけど今日の見合いは真剣に考えてたのよ」
堀田「帰(けえ)んな、もう」
咲子「ホントにねえ。元はといえばこの人と私のせいだけど造作のせいでつまんない苦労させちゃう、ホントに」
逆にお見合いの時代って「あしたからの恋」の和枝みたいに勝手に人に気に入られて、ああだこうだ言われるから美男美女もまた大変だな~。大沢もまた当時の美男のうちに入るんだろうけど、健一が出てくるとかすむ、かすむ。
レストラン
大きなコップでお酒?を飲むゆり子。ジョッキじゃないから中が見えない。
健一「ごきげんだね」
ゆり子は健一にも飲みなさいよと勧める。
健一「だけど、ホントに母ちゃん知ってんだろうね?」
ゆり子「何よ。大きななりして母ちゃん、母ちゃんって」
健一「夕飯、作ってたら困るもん」
ゆり子「だから、さっきも言ったようにね、私は健坊の母ちゃんと一緒にお見合いに行って、それで別れて、現場行ったんじゃないのよ」
健一「そりゃ分かってるけどさ。夕飯ゆりちゃんと一緒に食べるってこと知ってんのかどうか」
ゆり子「やあね、いい年して、いちいち母ちゃんのことなんて気にしないの! もう…」
健一「俺、ちょっとトイレ行ってくるよ」
ゆり子「さっき行ったばっかしじゃないのよ」
健一「何べん行ったっていいだろ?」店員がトンカツを運んできたタイミングで席を立った。
ゆり子「トイレだけよ。子供みたいに電話なんかすんじゃないのよ」
健一「分かってるよ、うるさいな」
ゆり子はちゃっかりお代わりのお酒?を注文。
健一はもと子に電話をかけ、ゆり子と一緒だと話した。
席に戻った健一はため息をつく。
ゆり子「長いトイレね」
健一「ハハッ、混んでたんだよ」
ゆり子は私と一緒じゃつまんない?と聞く。健一は楽しいと返す。ゆり子はつまらないと言いながら少し泣きだしそうになっている。
健一「やだやだ。ゆりちゃんは泣き上戸かい?」
ゆり子「泣いてなんかいないわよ」
健一「だけど、なんだか泣きそうだぞ。変な顔すんなよ」
ゆり子「変な顔は地顔よ!」
健一「そんなことないって。ゆりちゃんなかなか色気出てきたぞ」
ゆり子「生意気言ってるわ」
今日はとことんつきあうぞとビールジョッキを手にした健一(高校中退したとはいえ未成年に変わりない)におばさんに話したの?と聞くゆり子。「笑ったっていいのよ」
健一「何笑うんだよ?」
ゆり子「私だって親が気にするほどボーイフレンドがいないわけじゃないのよ」
健一「そんなこと気にしてるもんか」
ゆり子「してるのよ。うちの親父ったら」
健一「いいじゃないか、ほっときゃ」
ゆり子「そうもいかないのよ。ボーイフレンド、そりゃいるけどさ。フレンドなのよ、結局。愛だの恋だのっつうとこはよそへ持ってかれちゃうのよ。面白おかしいとこだけ私とつきあってさ。私が愛だの恋だのって言いだしたら、みんな笑うに決まってんだから」
健一「言ってみなきゃ分かんないじゃないか」
ゆり子「分かってるわよ。私だって自分がどういうふうに見えるかぐらいは少しは分かってるもん」
健一「俺はゆりちゃんが好きだな」
ゆり子「でも結婚したくないでしょ?」
健一「ハハ…年下じゃないか、俺は」
無責任だな~と思いつつ、だからといって正直すぎるコメントは聞きたくないから、やっぱり健一の言い方は正しい。ゆり子だって本気にしてないし。
ゆり子「私の写真見てさ、それでもお見合いしようっていう人がいるっていうから、私だって、そりゃ少しは期待するとこがあったわよ。そしたら義理と面白半分で来たって言うんじゃない。傷ついちゃうわよ、まったく」
健一「俺はね、ゆりちゃんがホントにいい結婚をするといいと思うよ。心からそう思うよ」
泣きだしたゆり子を周りの客が見て「何見てるんだよ?」と威嚇する健一。泣きやまないゆり子に「いるさ、絶対に幸せにする人がいるさ」に真剣な表情で語りかける健一だった。(つづく)
それにしても健一の顔がいい。そりゃ人気出るよ。
レストランの生演奏
「知床旅情」からの「二人の世界」だった。
また竜作いないの?とふと近藤正臣さんの当時の出演ドラマを調べたら、「たんとんとん」(1971/06/01 ~ 1971/11/30)と時期がかぶってるドラマがこんなにもあった!
「千葉周作 剣道まっしぐら」 1970/11/02 ~ 1971/08/30
「冬の雲」 1971/01/14 ~ 1971/08/26
「ガッツジュン」 1971/04/11 ~ 1971/11/21
「清水次郎長」 1971/05/08 ~ 1972/04/29
「つくし誰の子」 1971/07/19 ~ 1972/01/24
「太陽の恋人」 1971/07/22 ~ 1971/10/14
「刑事くん」 1971/09/06 ~ 1972/10/02
「続・氷点」 1971/10/25 ~ 1972/01/24
「冬の雲」は木下恵介・人間の歌シリーズの4作目。1971年12月からの6作目「春の嵐」では近藤正臣さんが主演。木下恵介アワーと人間の歌シリーズに両方出てる人、多い。
「ガッツジュン」は高校野球のスポ根ドラマ。「柔道一直線」の後番組ということで、桜木健一さん、近藤正臣さんがそれぞれゲスト出演。范文雀さんも出てる。
「清水次郎長」は竹脇無我さんが清水次郎長、あおい輝彦さんが森の石松。竹脇無我さんとあおい輝彦さんは「二人の世界」(1970/12/01~1971/05/25)の終盤と少しかぶってるのか。近藤正臣さんは追分三五郎。こっちにも范文雀さん。猫目のお竜。ちらほら木下恵介アワーで見かけた人もいるけどフジテレビ。「たんとんとん」の中西さんも1話だけ出てる。
YouTubeに東映公式1話があったー! 何この歌…って思ったら歌ってたのは竹脇無我さんだった。すいません…歌唱力じゃなくて時代劇っぽくないと感じてしまって。脚本が向田邦子、葉村彰子。最初のシーンは森の石松と猫目のお竜の出会い。
「つくし誰の子」は橋田壽賀子脚本。第1シリーズの「つくしの子守歌」という主題歌を近藤正臣さんが歌っている。作詞が橋田壽賀子さん。
「太陽の恋人」「刑事くん」は桜木健一さん主演のドラマにゲストって感じかな。
度々最近もドラマで主演する人も脇に出てる人も同じ人ばかり出ているという批判が生まれるけど、今の比じゃないくらいかぶってる。
でも、こうして調べると面白そうなドラマを見つけてしまって見たくなる。「清水次郎長」は旧ツイッターでほのぼのして時代劇らしくないという批判を見つけたけど、逆に血なまぐさい時代劇が苦手な私には見やすいかも? 竹脇無我さん時代物結構出てたんだね~。でもちょんまげより現代劇で見たかったのよ。