1986年 日本
あらすじ
昭和48年から13年にわたる灯台マン一家の物語。丹後半島からスタートし、日本列島を縦断しつつ四季を描いている。老父を演じた植木等が助演男優賞を総なめに。松竹大船撮影所50周年記念作品。
昭和48年春、丹後半島の経ケ岬灯台では、伊豆石廊崎灯台への転勤を控えた杉本芳明の送別会が行われていた。引っ越しを控え慌しい一家のもとに山梨から芳明の父・邦夫が訪ねてきて、伊豆まで同行したいと言い出す。
2023.12.31 BS松竹東急録画。ホントは古い順から録画を見ればいいんだけどねえ。
何度か映画化、ドラマ化された作品で1965年の木下恵介劇場でのドラマは「あしたからの恋」の植田芳子さんが脚本。これ、いつかテレビでやってほしいな。
キャスト的に面白そうなのは1972年の花王愛の劇場版だけど、再放送なんてしないだろうな。園井啓介さん、小坂一也さん、秋山ゆりさん、ナレーションが矢島正明さんと木下恵介アワーっぽいキャストなのにな。
原作/脚本/監督 木下恵介
音楽 木下忠司
昭和48年3月
ドキュメンタリーっぽい映像だと思ったけど、海上保安庁長官の卒業の祝辞を聞いている生徒の中に中井貴一さんを見つけた。
朝子や子供たちを大門(中井貴一)が車で経ヶ岬灯台まで送り届ける。朝子の格好がバブリーだねえ、1986年だもんね、と思ったら、映画の舞台は1973年だよ。
今日は芳明の送別会。長尾(田中健)も加わる。大門は長崎、芳明は石廊崎へ。もう転勤も決まっているのに、芳明の父が明日の昼に来ると言う。荷造りも終えた朝子はブーブー文句を言う。
芳明は父・邦夫(植木等)を迎えた。字幕水色。邦夫は離婚するつもりで来たと妻を「あのババア」と悪口ばかり言っている。
邦夫は天橋立が見たいと言い、以前、金華山にいたときは松島を見せてもらったとありがたいありがたいと感謝する。
元住んでいたところで布団まで借りて待っていた朝子だったが、今夜は旅館に泊まる邦夫と芳明。朝子に電話すると散々文句を言われる。布団を貸してくれた所長の奥さんは三崎千恵子さん。珍しく和服じゃない。
灯台に行って所長に写真を撮ってもらった邦夫は「あの映画はよかったですな。10回は見ました」と「喜びも悲しみも幾年月」の話をし、所長と2人で主題歌を歌う。映画は知らないのに、この歌を聞いたことがあったことにびっくりした。どこで聞いた?
邦夫と芳明は車で米原まで向かい、朝子と子供たちは新幹線に乗る。
お寺に行ったとき、一度行ったところなので芳明がそのまま車で待ち、邦夫が一人で参拝にいくと、女性を1人連れてきた。紺野美沙子さん!
北見由起子(紺野美沙子)は邦夫たちについて石廊崎に来て飛び降りるつもりだったと2年ぶりに訪れた石廊崎で朝子に告白する。朝子は由起子を連れて芳明の元へ行き、2人の前で生い立ちを話す。
下田の東急ホテルで食事をしましょうと由起子が誘い、邦夫も交え、食事をする。子供たちは食事を終え、退屈そうなので朝子が子供たちを連れてゲーム室に行った。
芳明は2歳で母親を亡くし、小学校教師だった邦夫は村一番の美人で事故で夫を亡くしたババアの婿養子になった。芳明は4歳。ババアの一人息子は一郎という名前だけど芳明の弟だというから年下なんだね。
由起子は灯台の人と結婚したいと考えていて、ゲーム室から戻ってきた朝子は驚く。
大門は飛行士になるべく福岡で訓練中。大分県上空を飛ぶ。大分県水ノ子島灯台には経ヶ岬灯台でお世話になった人がいると大門が言うと、一回りしてやろうと教官が言う。灯台の外で手を振るのは長尾。
長尾と話している小松の声が聞きおぼえがあると思ったら小坂一也さん! 若い頃より声がしゃがれた? 長尾と一緒に灯台で働いている。
長尾の元を藤田の紹介で由起子が訪ねた。ん? 芳明はwikiは”杉本”なのにみんな映画の中では”藤田”と呼んでるし、字幕だって”藤田”だった。
長尾は伊豆のミカンみたいな女性がいいと言っていたのに、美人な由起子はメロンやパパイヤみたいな女性で釣り合わない、情けなくて涙が出たと朝子に電話をかけてきた。いやいや、長尾さんだって十分カッコいいよ。
しかし、由起子からも理屈っぽい私には正直で素朴な長尾さんは合わないと断りの報告があった。
昭和54年9月
台風の夜。小松次長と長尾が必死で灯台を守る。なんとか台風が過ぎ去り、2人は助かった。長尾は生きてるうちにあの人にプロポーズすると小松の手を握り締めた。小松も母ちゃん、愛してるぞーと叫ぶ。小松次長52歳だって。
八丈島に転勤になった芳明のもとを船で邦夫が訪れた。長女の雅子は短大に行っている。芳明は息子2人と邦夫を連れて観光案内。千畳岩海岸や玉石垣で記念写真を撮った。しかし、邦夫は体調を崩して倒れてしまった。
布団で寝ていた邦夫にプリントした写真を見せる芳明。邦夫は布団をたたんでくれと頼み、夏に熱いお茶を欲した。邦夫は離れで一人暮らしをしていてババアから除籍して藤田から杉本に戻りたいと言う。ああ、それで。
邦夫は独りだけ杉本に戻るのもなんだから、お前も…と言いかけたとき、大門が訪ねてきた。朝子が迎えに行き、雅子と帰ってきた。芳明に隠れてろと言われた大門が隠れて朝子や雅子を驚かせた。
邦夫は夏祭りに行きたがらず、長く滞在する予定だった雅子が急に帰ると言い出し、朝子は大門との仲を心配する。いい青年だが、転勤が多いのが親としては心配。朝子は時が経ち、おばちゃんパーマになってる。長尾は結局、由起子と結婚した。
芳明は邦夫を引き取りたいと朝子に話し、朝子も受け入れる。邦夫に話すと、いい嫁さんもらったな。ありがとうと泣き崩れた。
昭和56年2月
長尾は青森県の尻屋埼灯台から広島に転勤が決まり、雪とおさらばーだと大喜び。芳明たちは7度目の転勤で今度は北海道・函館へ。邦夫たちは苗字が藤田から杉本へ変わっていた。そこはサラッとしてるのね。
アート引越センターのトラックが大きく映る。こういうのってスポンサーなんだなと最近ようやく気付いた。木下恵介アワーの日産車と同じね。
芳明たちはフェリーで函館へ。長男・英輔はあと1年で卒業なので置いてきた。末っ子の健三は中学1年生になる。
函館での暮らし。買い物から帰ってきた朝子は邦夫に男爵芋のまんじゅうをあげる。邦夫は北海道にはポックリ寺がないと言い、朝子を怒らせる。
ある日、健三が帰ると邦夫だけがいた。健三は石川啄木の話をし、邦夫は今まで撮った写真を見せる。私は岩手県人だから石川啄木はなじみ深いけど、函館に住んでいたということから函館でも話題に出る人なんだね~。
これでも啄木の話が出てたな。
芳明は恵山岬にこれから1週間泊まりこむ。船で海に出ていた芳明のもとに朝子が来た。英輔は呉の保安大学を受けたいと手紙に書いてあり、朝子は今度は海の上だと反対するが、芳明はしっかりした意見が書いてあると感心する。
邦夫が倒れたと連絡が入った。
昭和57年
大門と雅子の結婚式。邦夫も車いすで出席。
英輔の元を4歳の息子・邦之を連れた由起子が訪ねた。芳明は今度は五島列島に転勤。所長になるが、寝たり起きたりの邦夫を連れて行くことになり、より大変になる。
広島にいる由起子は集まって歓送会をしようと提案する。邦夫はもう76だから会えるの最後かもしれないからみたいな話になってる。
飛行機で到着した芳明は邦夫をおんぶしてタラップを降りてバスへ。朝子は長い髪をまとめたスタイルになった。長尾が運転する車に乗った杉本家の人々。原爆ドーム前で1分間止めてくれと邦夫がお願いし、黙とうする。しかし、そのまま寝ちゃう。
みんな集まり食事会。大門は舞鶴で10か11で出会った雅子を前途有望だと思っていたなんて…ええ~、初恋を貫いたぁ? ちょっと引いた。大門は大学を卒業したばかりの年だっけ? ええ~? まあ、みんな海上保安庁のエリートばっかりなんだよな。
邦夫が安芸の宮島を見たがっていたことを知っていた由起子は明日見られるように手配していた。最後はみんなで記念撮影。
翌日、芳明、長尾と船に乗って厳島神社へ向かう邦夫はついに安芸の宮島を見ることが出来た。
船を止めて写真を撮ろうと芳明が立ち上がるが、邦夫の手を握りしめ、最後の写真は昨日撮った、五島に送った写真も健三に燃やしてもらうと言う。ババアにもお別れにカステラを送ってやってほしいと言うので、写真を撮らずに安芸の宮島をあとにした。
長崎
救急車で病院に運ばれた邦夫。
次の場面ではお墓参りのシーン。ああ、野母崎は朝子のふるさとだった。おじいちゃんのお墓もここにしよう、定年後もここで暮らそうという芳明の言葉に朝子は涙する。
昭和61年5月 海上保安庁観閲式
彼岸の入りの日に邦夫が亡くなり、芳明と朝子はそろって来ることが出来た。
英輔は保安大学校を卒業し、カナダへ。英輔の乗る船を双眼鏡で見ている芳明と朝子。甲板で並んで手を振る英輔たち。戦争行く船じゃなくてよかったとつぶやく朝子。
健三は浜辺で邦夫の遺言通り邦夫のアルバムを燃やした…が、これは俺のだと火を消してカバンにしまい、啄木の歌を詠み、海を見つめた。(終)
オープニングで加藤剛さんなど主要キャストの名前が出ていたので、エンディングで最初に名前が出たのは小坂一也、三崎千恵子、竹内亨だった。
竹内亨さんも木下恵介アワーに出てたね! この映画だと最初に出てきた所長か。
小坂一也さんは主演の加藤剛さんとは絡みのない役だったし、アップで映る役でもなかったけど、木下恵介アワーつながりでちょっと嬉しい出演だったな。wikiにもあんまり詳しい出演者が載ってなかったから出てるのも知らなかった。
植木等さんは晩年もっと白髪のイメージがあったので、老人の役とはいえ、もう少し若いグレーヘアでした。紅白に久しぶりに出演するのはこの映画から4年後。
灯台守って転勤転勤で大変そうだな~。元の映画やドラマが観てみたい。