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【ネタバレ】木下恵介アワー「おやじ太鼓」 #21

TBS  1968年6月4日

 

あらすじ

鶴家には年頃の息子が三人いる。まず浪人中の敬四郎。ガールフレンドは一足先に大学に入り、今日も同じ大学の男の子と仲良く歩いている。チラチラとその様子を見る敬四郎の心は穏やかではない。そして足の不自由な洋二も、大学生の三郎も同じように悩んでいるのだった。

2023.8.9 BS松竹東急録画。12話からカラー。

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鶴家

亀次郎:進藤英太郎…大亀建設株式会社を一代で立ち上げた。2月5日で61歳。

妻・愛子:風見章子…5月で56歳。

長男・武男:園井啓介…亀次郎の会社で働いている。3月3日で30歳。独身。

次男・洋二:西川宏…ピアノや歌が得意。空襲で足を悪くした。28歳。

長女・秋子:香山美子…出版社勤務。26歳。

三男・三郎:津坂匡章(現・秋野太作)…二浪して大学生。

次女・幸子:高梨木聖…女子大生。1月の成人式に出席。

四男・敬四郎:あおい輝彦…浪人中。

三女・かおる:沢田雅美…4月から高校生。

*

お手伝いさん

初子:新田勝江…亀次郎と同じ誕生日2/5で30歳。

お敏:菅井きん…愛子の4つ下。6月で52歳。

*

水原トシ:西尾三枝子…幸子の友人。洋二とも仲がいい?

*

杉本:池田二三夫…敬四郎の浪人仲間。

井沢久代:聖みち子…敬四郎の思い人。

 

今回も脚本は山田太一さん。何となく味付けが違うような気がする。木下恵介さんの方がほのぼのしたファミリー感がある。

 

田園調布駅前 石碑が映し出される。

駅前にいた敬四郎が久代と出会う。久代は受験なんて半分まぐれだと話す。大学どう?と敬四郎に聞かれると、バカみたい。浪人の方がずっと充実してるわよと答えた。思い詰めちゃダメよと久代に言われて、そんなガラじゃないよと照れる敬四郎。頑張ってね、祈ってるわと言ってその場を離れる久代。

次に現れたのは杉本。元々待ち合わせてたのはこっちね。杉本は走っていく久代を見て「真っ黒な制服着てたときとじゃダンチじゃんか」と見ている。

 

杉本は家の前に落ちていた宝くじを拾って、渋谷行ってすぐ金に換えてくるから駅前で待ってろ、セスナだってヨットだって買ってやると敬四郎に言っていたものの、ただの空くじだったことが判明し、がっかり。コーヒーぐらいおごれと言う敬四郎にお前んちに行けばタダだと言う杉本だったが、土曜日だと時々ひょっこり(亀次郎が)帰ってくると敬四郎が言うと、杉本は帰ろうとした。

 

ひとりじゃつまんないからもう少し歩こうと歩き出すと、目の前を久代が男性と歩いているのが見え、慌てて街路樹に隠れる敬四郎と杉本。久代が気付いて近づいてきた。久代と一緒にいたのは先輩の西田という男。木村賢治さんという方かな。

 

杉本は無理すりゃあるからコーヒーをおごると言うが、敬四郎がおやじが帰ってないからと家に誘う。

 

台所

ニンジンの皮むきしている初子とタバコを吸ってるお敏。この前のジャガイモは包丁だったけど、今日はピーラー使ってる。

 

インターホンが鳴り、敬四郎が「お父さんのお帰り~」と言うと、初子は慌てて玄関に行こうとするが、お敏は亀次郎と敬四郎が一緒のはずはないといたずらだと思う。騙されるのは3度目で、お敏はもう一度言うまでほっとけと言う。

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正面玄関には亀次郎が敬四郎、杉本といた。亀次郎は「学問だけが人生じゃないさ。時には友人と語り明かすのも立派な勉強さ。ゆっくりしてらっしゃい」と敬四郎たちに話す。

 

もう一度インターホンを押して「お父さんのお帰りだよ」と敬四郎が言っても、お敏は「だまされませんよ~だ」と信じない。

 

亀次郎「主人に向かって裏玄関へ回れとはなんだ!」と怒鳴ると、ようやく初子が銅鑼を鳴らす。初子は慌てて玄関へ出たため、はだしで亀次郎から「お前は猫か。はだしで上がり下りするやつがどこにいる」と怒鳴られた。

 

出迎えたものの何を怒っているのか分からない愛子。初子は「私、親にだって猫だなんて言われたことありません」と泣きだしてトイレ?に閉じ籠った。お敏も台所に隠れていた。

 

敬四郎の部屋

二人で飲んでるのは瓶牛乳。

敬四郎「悪いな、コーヒーできなくて」

杉本「しょうがないよ」

敬四郎「泣いちゃって泣いちゃって。あれじゃ夕飯だってできるかどうか分かりゃしないよ」

杉本「お前も大変だな」

敬四郎「あの調子で怒鳴るんだから、勉強しろ、勉強しろ、勉強しろ」

 

敬四郎は1日がかりで飛行機のプラモデルを完成させていた。どっか行っちまいたいよと嘆く敬四郎に杉本も同意する。杉本は敬四郎のプラモデルを手で持って動かしていて机の上の時間割を倒してしまう。敬四郎が慌てて取り返そうとするが、裏に久代の写真が挟まっていた。売ってるブロマイド並みのいい写真。

 

誰があんなのと久代の悪口を言い合い、そのうち、インディアンの真似をしてふざけている2人。そこに亀次郎が突然部屋に入ってきた。「なんだね、それは」

敬四郎「あの…ちょっとアメリカのことを。なっ?」

杉本「そうなんです」

 

亀次郎はベッドに座りタバコに火をつける。すかさず棚の上から灰皿を持ってきて差し出す杉本。ふざけた動きを西部開拓史の試験に出るとごまかす2人。

 

亀次郎「いくらわしが大学を出とらんでも試験の科目ぐらいは知っとるよ」

敬四郎「いや、世界史ですよ。世界っていえばアメリカだって南極だって…」

亀次郎「インディアンの踊りが試験に出るかね」

敬四郎「いや、やあ…それはもしかしたら…」

亀次郎「バカを言え!」

敬四郎・杉本「はい!」

亀次郎「わしはな、お前らが遊んどるのは怒らんよ。ごまかすのが気に入らん! 人に学問がないと思って西部劇を勉強だと抜かしたのが気に入らん!」

敬四郎「はい」

亀次郎「どいつもこいつも。これじゃ向こうへ行ってもこっちへ来ても、わしはちっとも気持ちが静まらん!」と部屋を出ていった。

 

階段を上る洋二の足元を映している。

洋二「♪黒い黒い空の涙が

僕の大地をぬらす」

洋二・トシ「♪いつの日にか 

しあわせの日が くるように」

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洋二の作った歌を歌いながら歩いてる。

 

トシ「休みましょうか、あそこで」

洋二「はたで見るほど疲れないんですよ」

トシ「私が疲れたんです」←こういう言い方いいね。

洋二「随分歩いたもんね」

トシ「やっぱり男の人、強いわ」

洋二「そりゃあ、そうさ ♪黒い黒い」

洋二・トシ「♪空の涙が 僕の大地をぬらす」急に歌いだしてもついてくトシ。

 

歩いているのは国立代々木競技場 第一体育館周辺。

洋二「もしいつか僕の絵が売れたら僕はそのお金で何をするだろう」

トシ「旅行」

洋二「静かに1人旅? ハハハ…そうじゃない」

トシ「買い物?」

洋二「お父さん、お母さんに? ハハッ、そうじゃない」

トシ「何かしら?」

洋二「うんとむちゃなこと。ハメを外してあきれるようなこと。なるほど、僕には似合わない。万事控えめで大人で身の程を知っていて」

トシ「でもそれは一生懸命自分を抑えているからだ」

洋二「君には分かるの?」

トシ「そんな気がしたんです」

洋二「そうなんだ。僕は自分を大人だなんて思ったことは一度だってない。ある日、僕は何もかも捨てて窓から飛び出すんだ」

トシ「そして何をするの?」

洋二「やりたいことをみんな。言いたいことをみんな。そのときは気をつけていたまえ。君にだって飛びかかるかもしれないぞ」

トシ「まあ」

洋二「ハハハ…もちろん冗談さ。そんなことは永久に起こらない」

トシ「でも、私、あの絵はきっと認められると思います」

洋二「ありがとう」

トシ「日本人ってこんなふうに美しかったんだなって」

洋二「僕は今の日本人を描いたんですよ。君や僕を描いたんだ。僕らの中にある単純なもの。例えば単純な思いやり。それを僕らは安っぽいと思ってはいけないんだ。それはやっぱり美しいんだ。その美しさを描きたかったんですよ」

トシ「分かるつもりです」

 

こういう会話がうまく言えないけど山田太一脚本だな~って感じた。

 

茶店

三郎はミナコという女性と話をしていた。ミナコは荘司洋子さん。

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「3人家族」では近所の理容室の光子。健の髪をカットしていた。

 

三郎「だってさ、君も夏が好き。で、僕も夏が好き。君はパリよりニューヨーク。で、僕もパリよりニューヨーク」

 

しかし、ミナコは三郎の話に付き合おうとせず帰ろうとする。コーヒー頼んじゃったと三郎が言うと、コーヒーばっかり飲めないわと言い、三郎が提案した紅茶もアイスクリームも断る。しかし、三郎がコーヒーをキャンセルしようとすると頼んだコーヒーを断るなんてみっともない、ケチだと顔をしかめる。

 

三郎「かわいいよ、君は」

ミナコ「つまんないお世辞」

三郎「女はバカほどかわいいってね。ハハハ…」

ミナコ「憎らしい」テーブルの上に置かれた本でたたく。

三郎「イタッ。どうして僕はこうなんだろう」

ミナコ「不真面目よ」

三郎「いつだって見当違いの人ばっかり好きになっちゃうんだ」

ミナコ「それで振られてるんでしょ」

三郎「同情してよ」

ミナコ「これで大学生なんだから」

三郎「そうなんだ。大学なんてくだらないところさ」

ミナコ「くだらないのは自分でしょ」

三郎「時代が悪いんだな。敏感なやつはたまんないよ。すぐ影響受けちゃってさ」

ミナコ「難しいこと言わないで」

三郎「そこだよ、ミナコちゃん」

ミナコ「何よ」

三郎「そこが君のかわいいところさ」

ミナコ「バカだって言いたいんでしょ」

三郎「バカはかわいい、かわいいはバカ」

ミナコ「知らない」席を立つ。

三郎「ちょっと」

 

こういう会話も山田太一脚本だな~って感じた。女性に対して辛辣な若い男が出てくる。男がみんながみんなこうじゃないし、言った男も痛い目に遭うのでドラマとしては面白い。

 

外に出てきた敬四郎と杉本。電車を見ている。怒鳴られたことでしょげてる。

 

亀次郎は庭で竹刀を振るい、家の中でも竹刀を振るう。愛子が持ってきたのは青、黄、緑のタオルが乗ったザル。すごいな~、おしぼり3本!

 

愛子「かわいそうじゃありませんか。敬四郎が」

亀次郎「いや、あのくらい言ってちょうどいいんだよ」

愛子「いいもんですか。お友達まで怒鳴りつけて」

亀次郎「日本人はそれがいかんのだ。人の子だろうと自分の子だろうと悪いものは悪い。ガンとやるのが大人の義務だ」

愛子「やり方の問題ですよ。半泣きでしたよ、敬四郎」

 

話しているうちに3本のタオルを使って顔や首筋などを拭いた亀次郎。

 

お敏が愛子に夕飯のことで声をかけた。亀次郎も一緒にいるのでものすごく小さくなってる。

亀次郎「なんでも好きなもん買いなさい。ビフテキかな、お敏さんは」←猫なで声

愛子「お敏さんはうなぎですよ」

亀次郎「ああ、じゃあ、うなぎにしよう。なあ、お敏さん」

 

ニコニコしながら、心の中では手を合わせてわびてるとお敏に言う亀次郎は、うなぎでもお寿司でもと言い、笑うように言う。亀次郎は例え愛子が死んでもその気になればみんな慕って集まってくると言う。

 

初子はまだ涙を拭いている。

 

茶の間では亀次郎、愛子、洋二、三郎がうなぎと肝吸いを食べている。

三郎「うなぎと肝吸いの夕飯じゃ、お敏さん楽をしたね」

お敏「おかげさまで」

 

亀次郎は子供たちが2人しかいないことに不満げ。初子は魔法瓶でお湯を持ってきたが、亀次郎の顔を見ないようにお敏に渡した。愛子は敬四郎が帰ってこないのは亀次郎と顔を合わせたくないからだと言う。

 

インターホンが鳴り、敬四郎帰宅。愛子の言うことを気にしてか、席を外す亀次郎。敬四郎は亀次郎の存在を気にする。「お前もいけないんだぞ」と洋二が言う。敬四郎も分かっているが、親友まで怒鳴られたことが嫌だった。

 

三郎「全く女ってやつはバカばっかりさ」

洋二「いい人を知らないんだ、お前は」

三郎「へえ、兄さん、誰かいるの?」

洋二「一般論さ」

三郎「どうだか」

 

バカばっかりと言いながら、バカっぽい人が好きなんだもんね~。

 

敬四郎「兄さんみたいに不潔じゃないんだ」

三郎「聞こえるじゃないか」

 

⚟亀次郎「こら! 三郎、お前は不潔なのか?」

ふすまの向こうで聞いてた!

 

三郎「とんでもない。相手がいませんよ」

 

⚟亀次郎「それでも男か」

 

三郎「ごちそうさま」

敬四郎ニヤニヤ。

 

敬四郎は台所でうな重を食べることにした。三郎も食べ終わり、部屋を出ると電話が鳴っていたので出た。「なんだ、あんたか」と敬四郎に電話を代わる。

 

杉本「おい、鶴か?」

杉本はガラガラのガウンを着ている。杉本は井沢久代に電話し、率直に伺いますと恋人の有無を聞き出し、敬四郎のことは尊敬してますと言う言葉を引き出した。そばで聞いてる三郎。好きな人はいない。敬四郎は「サンキュー!」といきなり電話を切り、三郎に抱きつく。

 

敬四郎「兄さん、ハハッ」

三郎「なんだこいつ」

敬四郎「やっぱり持つべきものは親友ですね」

洋二「何をはしゃいでるんだ?」

敬四郎「あっ、兄さん。女の人にもいい人はいますね」

洋二「そりゃそうさ」

敬四郎「三郎兄さんは知らないんですよ」

三郎「どうせね」

 

敬四郎はもう1回電話しようと電話に向かうが、一人でゆっくりと話そうと別宅へ向かおうとする。ごはんは?と声をかけたお敏にもお敏さんにやるよとはしゃいでいる。

 

洋二「よほどいいことなんだな」

三郎「初めてモテたんでしょ、かわいそうに」

洋二「お前はモテるからな」

三郎「まあね」

 

三郎は敬四郎のうな重を食べると言って台所へ入っていった。階段を上ろうとした洋二が受話器に手を伸ばす。手がきれい! 敬四郎は別宅の電話で杉本と電話中。

 

洋二「今日は随分歩かせちゃって。ハハッ、僕は大丈夫だけど、君が疲れたんじゃないかと思ってね」

 

台所

まだ泣いてる初子の横でうな重を食べる三郎。お敏はまたタバコ。泣いてる女性に「うるさいな」と言えるメンタルを持つ三郎。

お敏「三郎さんも彼女んところへかけたらどうなんですか」

三郎「うるさい!」

 

敬四郎も洋二もまだ電話で笑ってる。敬四郎は彼女への電話じゃないけどねー。

 

亀次郎は愛子にマッサージされている。

愛子「だから電気椅子にすればよかったんですよ」

亀次郎「バカなこと言うな。電気椅子は死刑のときだよ」

愛子「同じ椅子でも天国と地獄ですか」

亀次郎「お前の按摩にはかなわないよ」

愛子のマッサージに悶絶する亀次郎。(つづく)

 

やっぱり微妙に違うキャラクターになったように感じる。今日は7人のうち、洋二、三郎、敬四郎のみ。こうしてみると意外と幸子やかおるもいないこと多くような。

 

三郎は今のところ、神尾のおばあちゃんに対しての礼儀以外はいいとこなしのキャラクターに見えてしまう。「兄弟」の静男は全然違うんだよ~。秋野太作さんはどちらかというと三郎みたいな軽い明るいキャラクターを演ずることが多かったのかもしれないけど、一流大学→一流会社の静男もいいんだよ~。「兄弟」の再放送希望。