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【ネタバレ】木下恵介アワー「おやじ太鼓」 #55

TBS  1969年8月5日

 

あらすじ

 

鶴 亀次郎は裸一貫からたたき上げ、一代で築いた建設会社の社長である。ワンマンで頑固一徹な亀次郎は子どもたちに"おやじ太鼓"とあだ名を付けられている。この"おやじ太鼓"、朝は5時に起き、夜は8時になるともう寝てしまうが、起きている間は鳴り通し。そんな亀次郎をさらりとかわす7人の子どもたちに比べて、損な役回りはお手伝いさんたち。ひと言多いばっかりに、毎日カミナリを落とされる。

2023.9.26 BS松竹東急録画。12話からカラー。DVDは第1部の39話まで収録。

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鶴家

亀次郎:進藤英太郎…大亀建設株式会社を一代で立ち上げた。62歳。

妻・愛子:風見章子…良妻賢母。57歳。

*

長男・武男:園井啓介…亀次郎の会社で働いている。31歳。

妻・待子:春川ますみ…正子の紹介で結婚。

*

次男・洋二:西川宏…ピアノや歌が得意。空襲で足を悪くした。29歳。

長女・秋子:香山美子…出版社勤務。27歳。

三男・三郎:津坂匡章(現・秋野太作)…二浪して今は大学4年生。

次女・幸子:高梨木聖…大学4年生。

四男・敬四郎:あおい輝彦…浪人中。

三女・かおる:沢田雅美…高校2年生。

*

お敏:菅井きん…お手伝いさん。愛子の4つ下。53歳。

*

魚屋:水野皓作…魚一の息子。

*

BARドルダー…洋二がピアノを弾いている店。

金子:加藤恒喜…マスター。

芙佐枝:岩倉高子…ウェイトレス。

 

電話が鳴る。お敏が出ると魚一からでお刺身が何人前か確認の電話だった。刺身1人前、焼き魚5匹。刺身が1人前は少なすぎるだろ?と疑問に思っての電話だったが、お敏は旦那様も帰ってるから大急ぎでと電話を切った。

 

愛子がもう(亀次郎が)お風呂から出ますからねとお敏に声をかけた。どうも和室の奥のほうに風呂場がありそうな感じ。風呂が庭側にあってもおかしくはないか。お敏はビールを用意する。愛子さんは今日もワンピース。

↑お敏が用意したビール瓶は赤い星が見えるからサッポロビールかな。

 

忍び足でやってきた三郎がお敏に声をかけ、ビールを乗せたお盆を運んでいった。

お敏「ほんとに要領だけはいいんだから」

 

茶の間

三郎「はい、お母さん。お元気ですね。フフフッ。お父さんは今、お風呂だそうですね。ヘヘッ、毎日お元気で何よりですよ。この暑いのに、ヘヘッ。いや、やっぱり近頃の若い者とは違うんだな。精神の在り方が違うんだな」

愛子「飽きれてものが言えませんよ」←字幕が「飽きれて」だったけど、ちゃんと変換されるからちゃんとある言葉なんだ。初めて知った。

 

三郎が外泊したことを愛子は怒っていた。おばちゃんの所へ電話しても帰ってなかった。三郎は、おばちゃんがとっくに帰って寝てますよと言ってくれりゃ万事解決だとのらりくらりかわす。

 

愛子「そんな円満は大うそですよ。もうちょっとバカでも…でもいいから親に心配させないようにしてちょうだい」

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バカでも…のあとは↑これかな?

 

広縁のほうから「ひと風呂浴びてさっぱりしたぞ」と現れた亀次郎。庭側じゃなく和室の隣である可能性もあるかな? 

 

機嫌のいい亀次郎は三郎に「ビールを一緒に飲まんか?」と誘う。コップを取りに台所に行った三郎。

 

亀次郎「もうあんまりちょいちょいうるさく言うな。子供は鷹揚にのびのび育てるのが一番だ」

愛子「おや、今日は風向きが違いますね」

亀次郎「そりゃそうさ。あしたから会社休みじゃないか。あっ、どうだ。5日間もあるんだ。どっか行こうか」

 

1969年なら8月13日(水)~17日(日)がお盆休みかなあ。12日の火曜日に早めに帰宅したとか。

 

愛子はどこ行っても人でいっぱいだとあまり行きたくない様子。台所から戻った三郎は瓶ビールを1本持ってきた。

愛子「あんたは毎晩飲んでるんでしょ、洋二の店で」

三郎「そりゃまあ、ちょっとぐらいは飲みますけどね」

亀次郎「いいんだよ、いいんだよ。細かいことを言いなさんな。洋二が働いている店じゃないか。さあ、ついでやりなさい」

愛子が三郎のコップにビールを注ぐ。三郎は母さんが言うほど飲んでいないと言う。

 

それで洋二を車で送ったりもしてるのね?

 

亀次郎「大体、小遣いが足りないんじゃないのか?」

三郎「えっ?」

愛子「本気なんですか。そんなこと言って」

 

愛子は小遣いが足りないはずはない、たきつけるようなことを言わないでくださいと亀次郎を注意する。亀次郎は洋二の店に行くには小遣いだっているじゃないかととことん洋二に関することとなると甘い。

 

いつからそんなに寛大になったんですか?とピリピリムードの愛子に亀次郎は自分のコップを渡して1杯やりなさいとビールを注ぐ。三郎は自分のコップにビールを注いで亀次郎へ。愛子はビールが苦いとひと口飲んで置いた。

 

亀次郎「ハハッ、こんなおいしいもの。やっぱり男でなきゃ分からん味だよ。なあ? 三郎」

三郎「そうですよ、お父さん。お母さん、僕が飲みますよ」とコップに手を伸ばす。

愛子「まあまあ、いつもこんなふうに気が合ってくれるといいんですけどね。そうしたら私もどんなに気楽かも分かりませんよ」

三郎「気楽にいてください。お母さん」

亀次郎「そうそう」

 

亀次郎が飲んでたコップで愛子が飲む。愛子がひと口飲んだコップで三郎が飲む。三郎のコップで亀次郎がビールを飲む。昔ってこういうのわりと当たり前?

 

亀次郎は機嫌がよく明日から避暑に行こうと愛子を誘う。三郎は留守番してるから心配しないでくださいというものの、愛子は一番心配なのはあんただと言う。亀次郎は三郎にもっと飲めと勧め、女はクヨクヨ思っているのも生きがいなんだと話す。

 

愛子はゆうべは心配で寝られなかったと話すと、外泊したことがバレると思い、三郎が焦って止める。三郎は亀次郎にゆうべの客が粘って粘って、もう飲まさないというのに帰らないから帰りが遅かったと言い訳をする。三郎は夜更かしが大好きだと愛子が言い、夕飯を手伝いに行くと茶の間を出た。

 

武男と待子が正装して裏玄関に来た。

武男「お母さん、ちょっと行ってきます」

 

武男と待子は亀次郎に言われて?洋二の店に行く。なるべく早く帰るという武男にゆっくりいてやればいいと送り出す亀次郎。

 

あ、そうだと玄関を飛び出した亀次郎は「小遣いはたんまりあるのか?」と大声で武男に呼びかけた。

武男「ありますよ。なかったら借りてきますから。いってきます!」

 

亀次郎「仲のいいこと。夫婦はあれでなきゃ」

愛子「こっちはおあいにくさまですね」

亀次郎「お前との仲は揉めてるほうが面白いよ。つまりそのほうが飽きが来ないじゃないか」

愛子「今更来たってしようがありませんよ。なんですか、たんまり持ってるかなんて。近所の人が聞いたらびっくりしますよ」

亀次郎「まるで追い剥ぎかヤクザだな。ハハハハッ」

愛子「自分でおかしがってりゃ世話ありませんよ」

三郎も茶の間から出てきて洋二兄さんのバーに行ったつもりでもう1本飲みましょうか?と言う。

 

台所に入ってきた三郎はビールもっと冷やしといたほうがいいよとお敏に言う。最初に見たときはもっと冷えたビールをって意味かと思ったけど、冷蔵庫を開けて見てたからもっと本数を飲むからたくさん冷やしといた方がいいよの意味か。

 

愛子はムッとして、いいんですよ、もうと三郎をにらみつける。3本ぐらいがいいですねとビール瓶を持った三郎が台所を出ようとすると愛子が合図してテラスへ。三郎もついて行く。

 

お敏「当たり前ですよ。あっちで寝たり、こっちで寝たり。どこがうちだか分かりゃしないんだから」と慣れた手つきでジャガイモの皮をむく。菅井きんさんは家政婦役が多いもんね~。

 

テラス

愛子「あんた、ゆうべどこへ泊まってきたの?」

三郎「お母さん、信用しててくださいよ。もうこの前で懲りてるんですよ。2度も追い出されたくないですからね」

愛子「じゃあ、ちゃんとうちへ帰ってきたらいいじゃないの。おばちゃんじゃないけど寝るとこがあっちやこっちや多すぎますよ。おばちゃんのアパートは引き払ってちょうだい」

三郎「じゃあ、こうしたらどうでしょう。それが一番いいんだな」

愛子「どうするのよ?」

三郎「おばちゃんもさみしいんですよ。僕を養子に欲しくってしょうがないんですよ」

愛子「だから養子に行きたいっていうの?」

三郎「そうじゃないんですよ。ただ寝るだけですよ。ちゃんとごはんの支度はしてくれるし、洗濯だってなかなかよくやってくれるんですよ。部屋代はタダだしね」

愛子「タダじゃありませんよ。ちゃんと食費だって部屋代だって払ってますよ」

 

三郎「あれ? 払ってるの?」

愛子「当たり前ですよ。バカね」

三郎「だっておばちゃんはしょっちゅう言ってるんですよ。あんたのお父さんのお金でこのアパートも建ててもらったし、こういうときに恩返しをしなきゃって」

愛子「それとあんたの世話とは別ですよ。ちゃんといるだけのものをあげてますよ」

 

まあ、そりゃそうだよねえ。こういうことは親戚間ならよりしっかりしとかないと。

 

亀次郎が愛子と三郎を呼ぶ。愛子は「お父さんとはっきり話を決めますよ」と言ってテラスを出ていくので三郎は大慌て。

 

亀次郎「なんだ、わしがせっかくいい気分で三郎と一杯やってんのに、なあ? 三郎」

三郎「はい、お父さん」

愛子「私はちっともいい気分じゃありませんよ。心配で心配で」

亀次郎「それがお前の取り越し苦労ですよ」

愛子「それがお父さんの油断大敵ですよ」

三郎「信用がないんだな」

愛子「身から出た錆ですよ」

亀次郎「まあ、いいからいいから」

愛子「いいからいいからじゃ済みませんよ」

 

⚟魚屋「はい、お待ちどおさま!」

 

裏玄関に魚一が配達に来た。愛子が刺身とアジを受け取る。うなだれた三郎が茶の間へ入る前に「お母さん、すいませんね」と頭を下げた。

愛子「すむかすまないか3本目辺りが危ないんですよ」

一部始終を見ていた魚屋は「何かあったんですか?」と三郎に話しかけた。三郎はいや、別にとだけ返し、魚屋も帰ろうとしたが、お敏が呼び止めた。

 

お敏は人から聞いたとして、今、恋愛してるんだってね?と聞く。ハープっていう洗濯屋の店にいる子だけは絶対やめときなさいと止める。そうかな?と魚屋はピンと来てない様子。

 

愛子「お敏さん、あんまり人のことに口を出さないほうがいいわよ」

お敏「いいえ、奥様。あのハープの女の子ときたら、まるで女じゃないんですよ」

愛子「だって当人にしてみればどうだか分かりませんよ。ねえ? そうでしょ?」

魚屋「はあ、それがどうも…」

お敏「そうもじゃないわよ。あんな女と一緒になったら泣きを見るのは、あんた一人じゃないのよ」

愛子「およしなさい、お敏さん」

お敏「いいえ、この子が親孝行ないい息子だから言ってるですよ。これがどっかの息子みたいにろくでもない、だらしのない子だったらこうは言いませんよ」

愛子「とにかくお鍋が煮え立ってますよ」

お敏「はい」

 

裏玄関のすぐわきの茶の間にいる亀次郎も聞き耳を立てる。

⚟お敏「とにかく親切で言ってるんですからね。このごろの若い人はフリーセックスでだらしがないけど、あんただけはしっかりしていてもらいたいのよ」←お敏さん、言うねえ!

 

魚屋はよく考えてみるよと言い、お敏は引っかかっちゃダメよ、よくお父さんとお母さんと相談してねと送り出した。

 

⚟お敏「こればっかりはいいからいいからじゃ済まないんだから、ほんとに」

 

三郎「ちょっと引っかかるよね」

愛子「耳が痛いんでしょ。どっかのうちみたいってのは、このうちのことよ」

亀次郎「何がこのうちだ。なっ、三郎」

三郎「はい。お父さん、どうぞ。おいしそうな刺身ですよ」

亀次郎「あれ? 三郎の刺身はどうしたんだ?」

 

愛子は三郎は数に入ってないから1人前しか頼まなかったと言う。亀次郎は大事な息子を数にも入ってないとはとんだ言いぐさだと抗議する。愛子は7人もいれば1人ぐらい手のつかない子供だっていると三郎に視線を送る。

 

亀次郎はうちにはいませんよと返し、さらにビールはうんと冷やしておきなさい、刺身をたった1人前しかとらないでと愛子に文句を言う。一家のやりくりは大変なんですよと愛子は茶の間を出ていった。

 

三郎は「どうも今日は逆だな、お父さんとお母さんと」と愛想笑い。

亀次郎「逆もまた真なりだよ」と三郎に刺身を勧める。「ひと皿のものを仲よく半分ずつ食べるのがスイートホームのいいとこだよ。ええ? ヘヘヘ…」とニコニコ。

 

台所

お敏「さあ、あとはアジを焼いてお吸い物を作るだけ」

愛子は鰹節を削っている。

お敏「奥様、私がかきます」

「削る」のことを「かく」とも言うんだね。

 

愛子「いいから、まあ一服してちょうだい」

お敏「そうですか。じゃ、1本吸わせていただきます」てすぐに煙草をくわえる。

 

愛子「敬四郎とかおるは何をしてんのかしら。もうとっくに帰っていいはずなのに」

お敏「だけどあれですね。一番世話の焼ける3人が残っちゃったんですね。秋子様は軽井沢だし、幸子様は山形のお友達か」

愛子「かおるもあしたからキャンプに行くから静かになりますよ」

 

かおると敬四郎が帰宅。茶の間に顔を出してあいさつ。

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↑かおると敬四郎が持ってるのは三越の紙袋。紙袋のリニューアルって2014年のニュースだったのか…私は旧デザインしか知らない。

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この回でも軽井沢に避暑に行くために三越で買い物をしていた。

 

かおるはすぐ愛子のいる台所へ向かったが、敬四郎は亀次郎に呼び止められ、一杯飲まんか?と誘われ、戸惑う。

亀次郎「そうさ、今日の雷は愛子のほうだ」

 

台所

愛子「だから昨日、お母さんと一緒に行けばよかったんですよ」と早速カミナリを落とされるかおる。

 

愛子「スラックスを作るのかと思ったら、ワンピースまで作っちゃって。勘定書きがまずくって、お母さん知りませんよ」

かおる「だって見れば欲しくなるわよ。すてきじゃない、この柄」

赤と紺のボーダーに白い細い線が入ったワンピース。

 

愛子「こんなもの着て山ん中歩くんですか」

かおる「あらやだ。蓼科なんて都会よ。山の銀座よ」

お敏「新宿じゃないんですか?」

かおる「新宿だっていいじゃないの」

愛子「そんならわざわざキャンプに行くことありませんよ」

 

敬四郎が台所に入ってきた。

かおる「すごいのよ、お母さんが」

愛子「すごいんじゃありませんよ。あんたはお金のありがたみを知らなすぎるんですよ」

敬四郎「そうなんですよ。僕なんかデパートの中、引っ張り回されちゃって」

愛子「あんたはこの前だって一緒に行ったじゃないの。どうしてこんな無駄な服を作るのを見てたんですか」

敬四郎「だってかおるがですよ…」

愛子「敬四郎もかおるものんきすぎますよ」

 

三郎が敬四郎にビールはまだかと叫ぶ。

お敏「やっぱりまだ飲むんですか?」

愛子「お父さんもお父さんですよ」

かおる「お母さんもお母さんだわ。せっかくあした出かけんのに」

愛子「彼だの彼女だの、どうせろくな子はいないんでしょ」

かおる「ええ、どうせね」と台所を飛び出していく。

愛子「それじゃ困るんですよ、お母さんは」

 

お敏が敬四郎にビール瓶を渡し、愛子がそれでおしまいだとくぎを刺す。いいことを思いついたと台所に入ってきた亀次郎。このビールはもういらないよとお敏に返し、これからみんなで行こうじゃないかと豪快に笑う。

 

これから飲みに行くのに酔っ払っていてたまるかと言い、三郎は着替えに行き、敬四郎とかおるも連れていくという話に愛子はどこへ行くんですか?と聞く。

 

亀次郎「決まってるじゃないか。洋二の店ですよ」

敬四郎「ほんとですか? お父さん」

愛子はビールをお敏から返してもらい、これを茶の間で飲んでたほうが無事だと亀次郎を茶の間へ追い立てた。

 

亀次郎「お前はわしがせっかくいいことを思いついたのに」

愛子「そんな思いつきはいやらしいテレビのコマーシャルですよ。さあさあ、茶の間で飲んでてください」

 

当時はそういう「いいこと思いついた」的なフレーズのCMがあったとか?

 

茶の間

亀次郎「何がいやらしいことがあるんだ。わしは洋二のピアノが聴きたいからって言ってるんですよ」

愛子「そんなら自分一人で行ったらいいじゃありませんか。あしたから会社お休みなんでしょ?」

 

愛子がビールを開けようとするが、そんなビールは飲みたくないと亀次郎に言われ、お敏にごはんのすると伝えた。愛子は三郎と敬四郎にビールを注ぐが、亀次郎はそんなビールは飲むなと止めた。

 

お敏はこれからアジを焼くからちょっと時間がかかると言われると、亀次郎はお前がみんな食べてしまいなさいと言う。

お敏「はい、いただきます」←即答。

 

アジ5匹のうち、お敏が1匹と半分食べると言うと、亀次郎は、あとは明日の朝食べると言った。三郎と敬四郎にすぐ準備をするように言っていると、愛子が「親子そろってそんなとこ行ったら笑いものですよ」と止め、敬四郎とかおるは未成年者だと言う。さっきビール飲ませようとしてたけどね。昔だって、それなりに事故もあっただろうになんでこんなに飲酒運転に寛容だったんだろうと今は思う。

 

亀次郎「だから親のわしが一緒に行って社会見学をさせるんですよ」

愛子「真っ平ですよ、そんなこと。そんなさばけたとこがないのが、お父さんの身上ですよ。いやにくだけたような親は大嫌いですよ」

亀次郎「しかしだよ、愛子。わしは別に行きたくて行くわけじゃありませんよ」

愛子「じゃあどうしてですか。電話にも出なかったお父さんが」

亀次郎「お前だって三郎に聞いて知ってるだろ。あの店はな、いつ行ったって暇だそうだよ」

三郎「そうなんですよ、お母さん。夏場はダメなんですって。若い人がみんなレジャーに外に出ちゃって」

愛子「そんなこと知ってますよ。おばちゃんだって電話でそう言ってたもの。だから今日は武男さんたちをやったんでしょ? 1人でもお客が多いほうがいいと思って」

亀次郎「そうさ。せっかく洋二がピアノを弾いてるのに」

 

電話が鳴る。お敏が出ると洋二からだった。

愛子「お父さん、今日は出ますね?」

亀次郎「うん? さあ、どうしようかな」

愛子「照れるくらいならお店へ行かなきゃいいんですよ」

 

洋二の電話に出た愛子。武男と待子が出かけたことを言うと、まだ店に来てないという。話題は三郎のことになり、洋二が水原君に会って…と言いだし、そのうち、愛子が「ええ…ええ…」と相槌ばかり打つので会話の内容が気になる亀次郎、三郎、敬四郎。亀次郎は会話の内容が気になり、電話を代わると言いだすが、愛子が茶の間に引っ込んでてくださいと止める。

 

愛子は亀次郎を茶の間へ追いやり、ふすまを閉め、洋二からの電話を台所の電話と切り替えた。そういえば、台所にも電話があった。お敏さんが台所にいても着信があったときに台所で出ないのは切り替える手間があるからだろうな。お敏さんが注文の電話をするときは台所からかけるのかも。

 

台所の扉を閉め、会話を続ける愛子。亀次郎たちも台所の前に立つ。かおるが買ってきたワンピースを着て亀次郎たちに披露する。亀次郎は静かにしなさいと注意し、敬四郎は「そんな服よりはお母さんの雷のほうがおっかないんだよ、今日は」と言う。

亀次郎「ちょっと荒れてるよな?」

敬四郎「お父さんも顔負けですね」

三郎「いやいや、似たもの夫婦ですよ」

 

電話を終えた愛子は三郎を呼び出す。「三郎はほんとによくやってくれたんですよ」と愛子のトーンが変わっている。

 

広間

愛子「ありがとう。お母さん、とんだ思い違いをしていたわ」

三郎「いや…いいんですよ。お母さんと僕の仲ですからね」

愛子「洋二もあんたにはとても感謝していたわ」

三郎「やだな、感謝だなんて照れくさくてムズムズしちゃうな」

愛子「あんた、偉いわよ。兄さんのために水原さんたちのグループの中へ乗り込んでいくなんて」

三郎「だって、彼らの考えている本心を聞きたかったんですよ。だって、水原さんは洋二兄さんをどう思っているのか腹が立ってきましたからね」

愛子「それで、徹夜で議論してしまったの?」

三郎「議論っていうよりも水原さんに文句を言いたかったんですよ。そしたら全学連の仲間が3~4人いましてね。しゃべり疲れてごろ寝しちゃったんですよ。もう明るくなってましたからね」

愛子「やっぱりお母さんの取り越し苦労だったわ。でもね、とことんのとこでは信用してたのよ」

三郎「ほんとかな、それは」

愛子「そうですよ。ただ今日はお父さんが甘いほうに回って、お母さんが辛いほうに回っただけですよ」

 

BARドルダー

洋二のピアノの奥のカウンターで話し込む金子と芙佐枝。客は武男と待子のみ。

時には母のない子のように

時には母のない子のように

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1969年2月発売のこの歌のメロディに聞こえたけど違うかもしれない。

 

三郎が店に入ってきた。

 

武男「洋二、お父さんもお母さんもみんなが来たよ」

洋二「お父さん」

 

三郎「さあさあ、どこでも好きなとこ掛けてくださいよ」

 

亀次郎「洋二」

洋二「すいません」

 

よそ行きの着物に着替えた愛子も亀次郎の後ろで微笑んでうなずく。

 

亀次郎「いいから、いいから。お前のピアノを聴きに来たんだよ。久しぶりでな」

 

亀次郎も敬四郎もスーツ、かおるは新品のワンピース、三郎は割とラフなチェックシャツ。

 

ウルウルしている洋二が弾き始めたのはおなじみ「おやじ太鼓」だった。三郎たちは手拍子を送る。客は鶴家しかいなかった。(つづく)

 

「おやじ太鼓」は洋二、三郎、敬四郎と中間子が話の核になっていて、同じく中間子の私は意外に思っていました。大人数の兄弟ものだと長男か末っ子が中心になったり主役になる話が多くて、中間子が空気になることが多い。

 

だけど、木下恵介さんが8人兄弟の四男と知り、納得。作曲家で弟の木下忠司さんは五男、脚本家で次女の楠田芳子さんは末っ子。木下家は男6人続いた後に女の子が2人という構成。

 

「おやじ太鼓」も残り10話。BS11の「ほんとうに」も同時期に終わるのに早々に次の作品「おんなは一生懸命」が発表されて、CMでもやるようになったのに、「おやじ太鼓」の次の作品がまだ不明。

 

BS松竹東急の国内ドラマ一覧は日付順に並んでなくて見づらい。ただ、「3人家族」の1話が10/7の7:00~と「二人の世界」の1話が10/8の10:30~それぞれ再放送されることは分かりました。またやるんだ?

 

だけどこうして「おやじ太鼓」を2期分見せてもらうと、「3人家族」も2期目をやってほしかったと思う。「二人の世界」も確かに面白かったんだけど、留学から帰ってきた雄一と敬子の話が見たかったな。何より耕作パパが見たかったんだよ。