徒然好きなもの

ドラマの感想など

【連続テレビ小説】本日も晴天なり(101)

公式あらすじ※初見の方、ネタバレ注意 

順平は四国に行っていた。宗俊には内緒で、電話があったとトシ江(宮本信子)は元子(原日出子)に打ち明ける。トシ江は、毎日、家族の無事を祈りながら変わらぬ家事を積み重ねる女の仕事を「賽の河原の石積み」だと例えながらも、順平を信じていた。母の気持ちが心にしみた元子は、この話を随筆に書き新聞に投稿する。すると朝刊に掲載され、元子は「私はダメじゃなかったのよ!」と大喜びする。

大原家前の路地をトシ江が歩いてくる。

 

大原家

トシ江「こんにちは」

 

ダイニング

元子「四国? じゃあ、順平、四国にいたの?」

トシ江「河内山には、ないしょなんだけどね、昨日、電話があったんだよ、四国から」

元子「けど、黙って出かけてから、もう2週間でしょう。四国で一体何してんの?」

トシ江「詳しいことは、よく分かんないんだけど仕事だって」

元子「何の仕事よ」

トシ江「だから映画の仕事だろ。けどまあ、随分地味な仕事らしいんだよ」

元子「ふ~ん」

トシ江「でね、考えるところがあって、まあいずれ帰ってから、ゆっくり話をするから心配するなって」

元子「そんな…心配するなって方が無理でしょ」

トシ江「大丈夫。私、あの子、信じてるもの」

元子「お母さん…」

 

トシ江「女の仕事なんてね、賽の河原の石積みみたいなもんだって死んだおばあちゃんがよく言ってたよ」自分の手土産の風呂敷を広げながら。

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賽の河原というと思い出すのが「シンケンジャー」なんだよね。

 

元子「賽の河原の…」

トシ江「朝起きて、洗濯して、ごはんを食べさせて亭主に白髪が増えようが、子供たちが言うことをきかなくなろうが、毎日毎日、女のする仕事には変わりがないって。変わりがなくても毎朝、おてんとさんに今日も一日みんな無事でありますようにって手ぇ合わせるのが癖になってるからさ、手を抜くなんてことは考えられないけど…まあ、そうやってね、ああ、やっとここまで石が積めたなと思うと、それを勝手に蹴っ散らかして勝手に好きな方に行っちまうのは、いつだって男…。だから女がね、ああ、もうやめたって、かんしゃく起こしてしまえば世の中おしまいだよ。バカになって明日から、また石を積むのさ。一家安泰、人様(しとさま)にも迷惑かけないようにってね」

元子「お母さん…」

トシ江「でもね、何度蹴っ散らかされても不思議とね、そこの土台のところは、ちゃ~んと残ってるもんなんだって」

元子「うん」

トシ江「だから、順平が崩してしまった土台にも桂木の血と根っからの職人かたぎの血がね、お母さん残ってるような気がしてなんないのよ」

元子「そうよ、そうですとも」

 

トシ江「まあ、今度帰ってくる時も、どうせ素直な顔で帰ってきやしないだろうけど、けどね、今度は何か違うような気がしてなんない」

元子「お母さん…」

トシ江「だって、あんな電話してきたの初めてだもの。あの子、きっと何か見つけたんだよ。ああ、きっと何かね。そうともさ…」

元子「では、私もそう信じましょう」

トシ江「ああ、そうしてやっとくれよ。ね。そいじゃあね」

元子「あら、まだいいじゃないの」

トシ江「何言ってんのよ。私はこれでもね、吉宗のおかみでまだまだ現役なんだよ」

元子「大した鼻息だこと」

トシ江「えぇえぇ、いつまでも娘のところで油売っていられるような身分じゃないのよ」

元子「まあ」

 

トシ江「だから、お前もしっかりおやりよ」

元子「フフ…」

トシ江「大介だってね、そろそろ、もう言うこと聞かなくなってくる年齢だろう」

元子「あら、それ脅迫?」

トシ江「まあ、そういうことかね」

元子「あきれた」

トシ江「何を言ってんの。じゃあね」

元子「はいはい」

トシ江「それじゃあね」

元子「あら、そこまで送っていくわよ」

トシ江「そんな暇(しま)があるなら、せっせと自分の石でもお積み」

元子「はいはい。気ぃ付けてね」

トシ江「うん、じゃあね」

元子「はい」

 

女の仕事は賽の河原。そう言いながらも順平を信じるトシ江の気持ちは元子の心に深くしみました。

 

茶の間

原稿用紙に向かう元子。

 

電話が鳴る。

元子「もう、人が何か始めようとするとこれなんだから。はい、大原でございます」

男「えっ? 大原?」電話が切れる。

元子「ん…間違えたのなら謝れ、無礼者!」受話器を置く。

 

元子「人生とは祈りと願いを込めて一つ一つの石を積んでいくことなのかもしれない。あの母が積んでくれた石の一つが、この私であるとすれば私も一人の息子と一人の娘のために日々新たな祈りを込めて、石を積んでいこうと思うのだが、それにしても…」

 

朝、新聞配達の少年が大原家のポストに新聞を入れる。

 

ダイニング

朝食中、正道は新聞を広げて読んでいる。

元子「おとうさん、食事の時、新聞は見ないって言ったでしょう」

正道「ん? うん…」

 

元子・心の声「やっぱり賽の河原なんだわ。これだけはいくら言っても…」

 

正道「いいじゃないか」新聞の上から目だけのぞかせる。

元子「いいわけないでしょう。そりゃお忙しいのは分かりますけどね、食事は楽しくって言ったの、おとうさんなんですからね」

正道「ほら、これだよ、これ」

元子「えっ?」

正道「ほら」

元子「はいはい…」

道子「あっ! お母さんの名前だ!」

大介「バカ!」

新聞を読もうとしてみそ汁をこぼした!?

 

大介「布巾、布巾! お母さん、布巾!」

正道「ちょっ…待て待て」流しに行き、新聞を軽く拭く。「あ…ハハ、大丈夫だ、ちょっとシミになったけどね、ハハハ」

道子「ごめんなさい、お母さん」

元子「いいのよ。そんなことはね、いいんだけどね」

大介「『毎朝新聞』に載るなんて、すごいじゃないか、お母さん」

道子「ねえ、読んで、ねえ、読んで」

 

正道「お母さんが読んでから」

大介「ずるいよ。自分だけ先に黙って読んでいながら」

正道「えっ? いや…ちょっと見たことある名前だなと思ったから見ただけだよ」

大介「ねえ、いつ書いたの?」

元子「えっ? ええ…」

正道「『賽の河原は女道』か、題がいいな、文学的だな」

道子「ねえ、早くってば!」

 

大介「僕が読んでやる。あっ!」元子のみそ汁をひっくり返す。

元子「あ~!」

大介「ごめん! ごめん、お母さん。本当にごめんなさい」

元子「いいのよ、いいのよ。別にね、天地がひっくり返ったわけじゃあるまいし」

正道「大丈夫、あのな、駅でな、新しいのを買っといてやるからな」

元子「はい…。それより皆さん、ほら、早く召し上がらないと遅刻しますよ」

正道「ああ…」

 

とはいえ、初めて掲載された我が投稿記事をしみじみと元子が読んだのは、みんなを送り出しコンロでみそ汁のシミを乾かしてからのことでした。

 

新聞記事

ボケてるところなど読めないところあり。

 

賽の河原は女道

 

…もちろん商売上のエチケットとは心得ながらも、ごく自然にいわれてみると、急に心が温まる。ご面相のことにふれられるだけでもゾッとする私にはパーッと光がともったよう。たったこれだけの言葉が、ツユ時でジメジメしている私の心を明るくしてくれた。そして、この娘さんはきっと可愛い奥さんになれるだろうとさえ思っ…

 

 「そんなヒタイは…だよ」と笑われてしまったけれど、私にはあの時の楽しさは忘れられない。この若い美容師さんのようにどこでもどんな点でもよいからその人の長所を見つけて、ごく自然に相手を喜ばすような術を会得しなくてはならないと思った。それはその人の人柄でもあるが、修養すれば私にもできないことではないと思った。

 世の中が忙しくなればなるほど人の心も殺風景になるものだが、小さな心づかいのある言葉をだれもがかけられるようになりたいものだと思った。

(東京都台東区下根岸町

     大原 元子 36才)

 

結構読めたけど、タイトルと内容違うような? これは気の利く美容師さんにあたった話だね。いい娘さんがかわいい奥さんになれるも今はちょっと…かな。既存の新聞記事にタイトルと名前だけはめ込んだんだろうか。でも、いい文章だよね。

 

元子が自分の記事を読んでいると電話が鳴った。「もう! 人がしみじみと見てるのに無礼者めが。はい、もしもし」

のぼる「私、六根。読んだわよ」

元子「あら、何を?」

 

東洋テレビ

のぼる「気取ることないでしょう。今朝の『毎朝新聞』随想としては一級品よ」

 

元子「あっ…あのタイトルね、母が言った言葉なのよ。もう、しみじみと言われてものすごい実感があったのね。それで、これだって思って母が帰ったあと、一気に書いたものなの。けど、不思議よね。うんうんとうなって書いて自信のあるものが駄目で虚心坦懐、あっさりと書いたものが採用されるって、これ、どういう意味?」

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のぼる「ものによりけりです。これは随想だから嫌みがなくて女の心にしみいるわけで、どれもこれもがそういうわけじゃないの」

元子「それはそうでしょうけどね…」

のぼる「でね、これ、そっくりそのまま使わせてもらえない?」

元子「え!?」

のぼる「番組によ」

元子「番組って六根の女性ニュースに?」

のぼる「当たり前でしょ」

元子「だけどあの…改めて読むとなると、私、しばらくマイクなんかから離れてるから」

のぼる「ううん、いいのいいの。読むのはうちの若いアナウンサーが読むからいいのよ。来週のテーマが『母と語る』なんだけど、その枕としては最高の随筆だと思うの。多分、ブルース辺りも目をつけてると思うけど、話が来た?」

 

元子「来たらどうする気?」

のぼる「これ、ビジネスなのよ。真面目に答えてよ」

元子「来るわけないでしょ。私だってようやく今、落ち着いて読んでたとこなんだから」

のぼる「じゃあ、いいでしょう? 新聞社にはこちらから連絡しておくから是非ともうちで使わせてよ。僅かだけど、もちろん稿料もできるだけ払ってもらうようにするから」

元子「お金のことなんかどうでもいいのよ」

のぼる「そうはいかないわよ。だけどさ、本当にいい随筆だった。何気ないことなんだけど、女性独特のペーソスと温かみがあるのよね。見直したわよ、ガンコ。これからもいいもの書いてよね」

元子「ありがとう、六根」

のぼる「じゃあね、放送日と構成が決まったら、また連絡するから。あっ、名前出してもいいんでしょ?」

元子「もちろんよ。よろしくお願いします」

のぼる「それじゃあね」

元子「どうもありがとう」受話器を置く。

 

元子「やった~! やった、やった! やっぱり私は駄目じゃなかったのよね! 見ろ見ろ、見ろ見ろ…。あ~」茶の間のテーブルの周りをまわって、エプロンを巻く。

 

正道の事務所

正道「ああ、どうもすいません」

橋本「おお…その電話だ」

正道「はい」

橋本「あ~、すごいねえ。今朝の奥さんの随筆。あれ、東洋テレビで放送されるんだって?」

正道「何だ、そのことか」

橋本「『何だ、そのことか』ってないだろ。早く出ろよ」

正道「うん」

 

電話に出る正道。「はい、もしもし、僕だ。うん…うん、分かった。今、作業中なんだよ。そんなの昼休みでも間に合うんだろう? 買った買った。松江に送る分もちゃんと買ったから。人形町のお義母(かあ)さんにね、お礼言っときなさいよ。うん、はいはい…それじゃあ、おめでとう」受話器を置く。

 

橋本「おい、えらくそっけないじゃないか」

正道「いや…ちょっといい気になりやすいんだよ」

 

茶の間

受話器を置く元子。「はあ…申し訳ございませんでした」

 

電話が鳴る。

元子「はい、大原でございます」

恭子「私よ、ブルース」

元子「ああ」

恭子「読んだわよ。いいじゃないの。とってもいいわ」

元子「残念でした。あれはもうね、はやばやと売り切れです」

恭子「売り切れ?」

元子「申し訳ございませんが、先口がございまして、へへ…。六根がね、女性ニュースに使いたいって言ってきたのよ。一足遅かったわ。ごめんね」

 

NHK

恭子「相変わらずなんだから」

元子「えっ?」

恭子「そういうふうにいい気になるところがガンコの悪いところなの」

元子「あ…はい」

恭子「いつも言ってるけれど、素直に書けばガンコの一番いいところが出てくるのよ。だから、それを言おうと思って電話したの」

元子「はい」

恭子「だけど本当におめでとう。いつも嫌がらせみたいなことばかり言ってるけれど友達だと思うからで悪く思わないでね。じゃあ頑張って。六根の放送は必ず見るから。皆さんによろしく」

 

茶の間

元子「どうもわざわざありがとう。それじゃあ」受話器を置く。「はあ~、バカだねえ、私も。いけない、いけない」

 

自分の頭をげんこつでコツンも昭和仕草だね。新聞を畳んでダイニングへ。

 

雨が降り出した大原家前の路地

大介「お母さ~ん! 雨だよ、雨!」

 

ダイニング

元子「は~い、お帰り」何か書いている。

 

⚟大介「雨だってば! 洗濯物がぬれてるんだよ!」

 

元子「あっ、ごめんなさい! 降りだしたの気が付かなかった!」

大介「いいから、いいから。それより道子は?」

元子「美香ちゃんち遊びに行くって言ってた」

大介「だったら迎えに行ってやらなくっちゃ」

元子「うん、いい。お母さん、これ終わったらね、迎えに行くから」

大介「ぬれたついでだもの、僕が行ってくるから傘貸して」

 

道子「ただいま!」

大介「バカだな、今、迎えに行ってやるところだったんだぞ」

道子「だって」

元子「いいから早く上がんなさい」

 

洗濯物を取り込んで物干しざおが傾いたまま。

 

元子「ほらほら、頭拭いて。着替えたらね、あったかいココア入れてあげるからね」

道子「勉強してたの? お母さん」

元子「あ…ごめんね。それでうっかりしちゃって」

道子「けど、美香ちゃんのおばさんったらさ」

元子「うん」

道子「道子ちゃんのおうちは子供よりお母さんのほうが勉強家ねって」

元子「まあ」

道子「だから道子、お兄ちゃんもお父さんだって勉強家よって言ってやった」

元子「そうよ。生きることは学ぶことってね、人間死ぬまでお勉強を忘れちゃいけないの」

 

大介「だけど、僕と一緒にされちゃかなわないよ」

元子「あら、どうして?」

大介「だって僕は義務教育中だけど、お母さんは趣味の勉強でしょ」

 

それを立証するかのように元子の投稿大作戦は各紙各社に黙殺されました。

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外は雨。

 

つづく

 

明日も

 このつづきを

  どうぞ……

 

そんなに甘くはなかったということか。いい気になったっていいじゃないか! 今日は出演者少なめ(宗俊なし)。電話での会話が多かった。主要人物以外、間違い電話の声の人、新聞配達の少年は名前も出ず、八星プロ、早川プロ、劇団いろはでした。

 

宮本信子さんの演技に見入った。当時36歳で50代の演技は、流石だね~。